LIVE.35 神剣使いと姫巫女、初戦臨ませていただきます!
「問題ないか? 戒人」
藍統が戒人の顔を覗き込んで来た。
「ティルナノーグに行けと言われたよ」
「そうか」
「上に行こう。魅子が心配だ」
戒人は神楽を鞘に戻す。
「戒人、上に出たら、帝国からの迎えが来ている筈だ。
メイには、こちらに残ってもらう。
迎えは叉爾と琴子という。
十字をモチーフにしたキテレツな軍服が、ティルナノーグ帝国軍のものだ。
今、メイが来ているやつだ。
左手首に十字架をつけている。
目印にしろ。
彼らと合流してティルナノーグに向かうんだ」
「藍統はどうするんだい?」
「少し、気がかりな事があるんでな。別行動だ」
「了解だ。行ってくるとしよう」
戒人はニカっと不敵に笑うと踵を返した。
藍統はその背中を見ながら呟く。
「は、参ったな、生きうつしだーー霊人、」
☆ ★
戒人は振り向きもせずに、螺旋階段を駆け上がる。
戒人は、自分の身体を異常に軽く感じた。
神楽は、戒人の掌にぴったりと吸い付いているようだ。
「軽いなぁ、面白いっ!」
戒人が入り口から出ると、魅子が異人達と対峙していた。
「魅子!」
「遅い! ノロマ戒人︎」
神楽を抜きながら、魅子に駆け寄る戒人。
途端に、異人達の空気がざわついた。
ざっと数えて異人は50程はいる。多勢に無勢にも、程がある。
「ヤリクチが、フェアじゃないな! 恥ずかしいとは思わないのか、単細胞分裂型!」
異人は何の反応もしない。
「会話のキャッチボールができないとは、損をしているね」
ドスルーは、神剣使いにNOダメージで終わる。
異人のマスクの赤黒いまだら模様は、それぞれ違っていた。それがまた、異様だと戒人は思う。彼にとって、初めての異人との戦闘である。戒人は、興奮が止まらない。
「オオ、クニ、、、オオクニ、ガガガベ」
サーベルをちゃりちゃりと鳴らして、変声された声を紡ぐ。
異人達は、戒人と魅子を中心に、円を描くように取り囲んでくる。
「戒人、指名されてるわよ?」
「僕の指名料、結構高いけどね」
二人で背中合わせになり、
戦機をはかった。
マスクのせいで、表情が読めないため、対人戦闘とは勝手が違う。
神楽を構えて、視線を巡らせる。
じり、と全体の円が小さく収束する。魅子は、腕から流血していた。
「魅子っ! 怪我してるのか?」
「そろそろ疲れた。昼寝がしてぇ」
「アテにしていたんだがな」
と、戒人。
「あたしをアテにするのは、夜だけにしてもらいたいわ」
二人は感じていた。
背中越しの温もりが、なんだか心地よいと。
「すごく滾ってきたよ」
「お手並み拝見させていただくわよ。神剣使い!」
戦いを前に血が沸いている。
神楽がさらに熱を持ってきた。
「では、始めようか」
沈黙したまま迫り来る異人に、神楽を構え直す戒人。
そして呼吸を忘れて、踏み込むタイミングをはかるーー。
神話が、更新され始めようとしていた。




