LIVE.32 それって救い、なくなくない?
「疑問で来たか。つまりそういうことだ」
「死んだ人間が、死界にいけなくなってるというのは、本当だったのか」
戒人は俯き、何やら考え込む。
「本当だ」
と、藍統は答えた。
「2320年以降、ティルナノーグの皇帝は、帝国をかりそめの死界にしたんだ。時空のモリビトと共にな」
「かりそめの死界?」
戒人は魅子と顔を見合わせる。
「一時的に死人を預かる場所を創造したのさ。
最新科学技術を駆使してな。
帝国には、対異人用兵器開発のために、人類史上最も優秀な博士や技師たちが集結していた。
科学技術と神の力のコラボレーションが実現して、今の帝国が確立されたのさ」
横から生えた小枝を、ばきりと手折り、藍統さんは俺たちに道を作る。
「なんだか難しい話だわね、あたしパス」
魅子は、新たにビーフジャーキーを取り出し、噛みちぎる。
「今、地球人は死んだら帝国に回収され、蘇生装置を施される」
「そんな馬鹿な」
「最先端の科学技術をナメるな、戒人」
「その人たち、『次元の扉』が開放されたらどうなるんだい?」
「死界にいくのだろうな」
顎を引いて、さらりと言われ、戒人から「なんと」と、素っ頓狂な声が出た。
「戒人、世界の理に背くことはできない。
あそこの住人のほぼ全員が死者だ」
「皆、死んでるのか、ーー響大将も︎?」
「ややこしいんだが、響みたいな初期からいる奴等は、正確には死んでない。
だが、ティルナノーグ帝国は一種の異次元空間に存在する為、生身の人間では生きられない。所謂、仮死状態にある」
「仮死状態……」
「無事にお前が『次元の扉』を開放すれば、皇帝によって、全ての人間は死界に導かれるという算段だ」
「どっちにしたって、死ぬ……」
「まあ、そうだな」
「それって救いないな」
「下がれ」
その時、藍統が誘導の手をあげた。




