LIVE.3 うちの兵器が、神がかり過ぎて滾る件。
叉爾とメイは、玄鉄班の琴子、エイナ、光揮と合流して、帝国に向かっていた。
帝国までは、神風工厰産飛行兵器『翼』で移動する。
二人乗りの飛行機である。
機体は、下から半分はコバルトブルーで特殊塗装されており、天井部分はクリスタルで出来ている。
人が二人乗るスペース以外は、エンジンと、戦闘用の武器が積んであるだけの簡素なものだ。
移動兵器、疾風と同じく、電動式である。
ちなみに、疾風は、20世紀に製造されていたローラースケートをコアモデルにして作られた。
『翼』と疾風の動力源は、帝国で生産される『Mエナジー』だ。
フィィィィィィィィ
独特のエンジン音は、飛行速度が安定すれば人間の耳では聞き取れない超音波になる。
メイは、離陸時と着陸時に鳴るエンジン音があまり好きではなかった。
目下には、一面の海。
『翼』と同じコバルトブルーが広がる。
メイは、前方に、帝国の入り口である漆黒の門が開門されているのを認めた。
玄鉄班と共に、第二世界連邦に出撃していたソウルシーカーズたちの乗る『翼』は、帝国の漆黒の門へと吸い込まれていく。
いよいよ着陸時が近くなってきたので、エンジン音がフィィィィィィィィ、と一層強く響く。
鋭く耳をつんざく機械音に、心底うんざりした顔でメイは呟く。
「ううう、苦手、この音……」
メイの前の席で叉爾は顔色一つ変えずに、
「情けない声だな、メイ。
『翼』に乗っている時のお前は一番可愛げがある」
「どういう意味だよ!?」
つっかかるメイに、続けて叉爾は、
「お前は喋りすぎる。加えて、面倒事ばかり持ってくるからな。
目付け役としては、『翼』に閉じ込めて放置しておきたいくらいだ」
淡々と言いながら、着陸態勢に入るため、ハンドルを握った。
「誰も頼んでねぇよ!」
ピーピーピーピー
機内に、通信が入る。
「玄鉄だが。叉爾、メイ、災難だったな」
少し鼻にかかったような声に、叉爾の背筋が伸びた。
玄鉄は、叉爾とメイが所属する第一部隊長であり、帝国軍に13部隊存在する精鋭部隊 ソウルシーカーズの隊長である。
ソウルシーカーズは、異人の滅殺と、地球人の遺体回収をメインミッションにしている。
あえて言おう。
ソウルシーカーズは、帝国軍隊の花形である。
「玄鉄班、全員帰還いたしました」
叉爾がカッチリとした物言いで報告する。
「お疲れさん。
帰って早々申し訳ないんだけど、メイの馬鹿を連れて執務室まで来てくれないか?」
「ひどいですよ、馬鹿だなんて」
メイはあっけらかんと声をあげた。
「真実だろ」
と、叉爾は、無線音声が拾えないボリュームでボソリと呟く。
「ひっでぇな、大体叉爾が俺を見失うから、第二地区を一人で彷徨う羽目になったんだぜ!?」
メイは、前の運転席のシートをガタガタと揺さぶった。
「あっはっは。いいコンビだねぇ、お前たち」
と、玄鉄は呑気に笑った。
玄鉄という男は、帝国の幹部である。
帝国の柱である者の証である『炎のモリビト』の称号を持っているが、その威厳は彼の言動に全く反映されていない。
あえて言えば、玄鉄隊長はゆるい。
「すみません、玄鉄隊長。メイを連れてすぐに向かいます」
「よろしくね〜」
間の抜けた鼻声は、ブツリと切られた。
「なあなあ、叉爾、今日会った女の子さぁ。
特務の魅子。また会えるかな?」
地上に着地した『翼』から、メイは下りながら話しかける。
二人が降りたのと入れ替わりに、整備班が近づいてきた。
叉爾は、整備班に測ったように30度きっちり会釈をする。
メイは、会釈をする代わりに犬のように人懐っこい笑顔を向けて挨拶をした。
『翼』の機内は、決して広くはない。
ていうか、狭い。
座るスペースしかない。
3時間も乗れば、立派なエコノミー症候群が出来あがる。
狭いスペースに、押し込まれていた身体をほぐすべく、メイは思い切り背伸びをした。
叉爾は、すでに疾風を地面に滑らせ始めていた。
メイの起動準備を待つ様子は毛虫の毛ほどもない。
「ちょ、叉爾、はぇえよ」
「ノロマが。置いていくぞ」
「もう置いていってるじゃねぇか!
付き合い悪いぜってば」
叉爾は、すいすいと、『翼』のポートを拔けて、帝国本部目指して滑っていく。
叉爾とメイの頭上には、次から次へとコバルトブルーの機体が舞い降りてきている。
天井部分がキラキラと太陽の光を反射している。
「うん。今日も綺麗だ」
メイは、一人、満足そうに言ってから、
「ヨッコイショーキチ」と、疾風を起動させた。
★ ✩
ティルナノーグ帝国
フロントエリア 帝国軍本部
ソウルシーカーズ屯所 第一執務室
「おかえり、叉爾、メイ。
メイは、初出動だったが、楽しかったか?」
直立不動の叉爾とメイの前で、
執務机に寄りかかり書類を見ていた男は、中肉中背の赤毛の男だ。
短髪の燃えるように立った髪は、一度見たらなかなか忘れられない。
このインパクト強の男こそ、
帝国幹部の一人、『炎のモリビト』炎 玄鉄隊長である。
深いワインレッドの軍服は、身体にほどよくフィットしている。
「おかげさまで♪」
メイは、無邪気に答える。
隣で叉爾が苦虫を噛み潰したような顔をした。
その様子を愉快そうに一瞥し、赤毛の軍人は、
「それは何よりだ。
さぁて、早速だが、
可愛いお前たちにとっておきの任務が下りたぞ。
存分に暴れてこい!」
そう言って、一枚の紙切れをピラリと宙に舞わせてみせた。




