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LIVE.29 霊人の遺言開く時、奴のパンドラの箱も開くっ!?

 メイと藍統、そして魅子は、

 円卓のテーブルを囲んでわらび餅を食べていた。


 メイのトイメンに、朱雀がおり、玄武も幸せそうに日本茶をすすっている。

 なぜか、玄武が茶を飲む姿を見ると心が和む気がしてならないメイであった。


「あらためまして、僕の名前は大国 戒人という。

 今は、イソノカツオとして身を隠している」

 にかっと笑う戒人。

 なかなか底が見えない男だ。


「薙杜の末裔のメイだ。

 よろしくな、戒人」

「闇喰 魅子よ、はじめまして。

 正直驚いたわ、一度も会ったことはなかったけど、なんていうか、もう少し大人しいイメージを持っていたっていうか」

 魅子が言うと、

「へえ、魅子もそう思ったんだ!」

 と、からりとメイは口を挟んだ。


「よく言われるよ! こんな辺境の地にきてくれてありがとう!

 朱雀の淹れるお茶は格別なんだ。

 是非飲んでみてくれ」


 そう歯切れよく言って、戒人は朱雀に笑いかけた。


「まあ、戒人様はお上手なんだから。

 ありがとうございます」


 朱雀は、割烹着のままで嬉しそうに照れ笑いをした。


「さて、戒人君、我々がここに来たのには理由があってな」


 話を切り出したのは藍統だった。


「ああ、何と無く分かっているよ」


 そう言って、戒人はまとう空気をガラリと変えた。


 メイはその変化に息を飲む。


「時が来たんだね。よし、親父の……霊人れいとの遺言を開こう」


 と言って、戒人は玄武に視線を送る。

 玄武はすぐさま立ち上がり、部屋から出て行った。

 しばらくして、小さな木箱を正面に掲げて持ってきた。


「霊人の遺言?」


 メイの目は、玄武の持ってきた箱に釘付けになった。

 魅子は、なんだか胡散臭そうにその箱を眺めている。


 戒人は、厳重に紐で縛られているその箱を開けにかかる。


「僕が身分を隠して暮らしてきたのは、

 親父の遺言のためなのだそうだ。


 遺言といっても 、まだ死んだ事が確定した訳ではない。

 遺体も見つかってはいない。


 だが、死んだと言われても不思議でもないし、

 今更、やっぱり死んでいました、と言われたって、動揺することもないだろうね……よし、開けよう」



 カタン



 木箱の中には、真っ白な封筒が納められていた。

 上に桜の花が乗っている。


「はい、姫巫女。この花は君の元に行きたいらしい」


 戒人はそういうと、桜の花を魅子に差し出した。

「へ?」


 これには、魅子も素っ頓狂な声をあげた。

 予定調和で受け取るものの、ぽやんとしている。


 メイはなんだかそれが気に入らなかった。


 戒人は続ける。


「実は、僕はもう一つ、親父からの遺言を預かっていたんだ。

 それがこれだ。

 18の誕生日に開示するようにと託されていた、封印された遺言、と言ったら聞こえはいいが、体裁のいい指令書だろうな」


 ふっと笑う顔が、どこかさみしげに見えたのはメイの気のせいだろうか。


 戒人は、純白の学ランの襟を正した。

 正座をし、遺言、と達筆な字で書かれた封書を頭上高くに掲げる。


 部屋の空気が張りつめて息苦しいとメイは思う。


「霊人が『次元の扉』を封鎖する直前に、僕に預けていったものだ。


 この存在は、式神たち以外誰も知らない。

 僕自身も見たことはない。

 今、これを開示することにする」



 そう告げて、戒人は、封書をさらに頭上高くに掲げて一礼をした。

 続いて、朱雀と玄武が、厳かに首部を垂れる。

 メイは、慌てて朱雀たちの真似をした。


 さらに、部屋の空気が、ぴ ん、と張り詰める。


 たじろぐ程の神気を感じて、メイは顔をあげると、それが朱雀と玄武から放たれていることに気付く。

 息を殺して目を見張るメイ。


 大国神社は、古から『天界の門を守護する神社』だと讃えられていた。


 その大国神社の宮仕えの放つ神気たるや、下手な鬼程度ならば、しっぽを巻いて退散するだろう。



「では、読むとしよう」


 戒人は深呼吸をひとつして、する、と封筒から遺書を引き抜く。


 遺書が綴られている紙は、時間の経過を全く感じさせない。


 まるで、つい先程、新品のものを出してきたかのようにピンとした張りがあった。


 深呼吸を二度したあとで、戒人は、浪々と読み上げ始めた。


「ーー戒人、これを読む頃、僕はすでにこの世にはいないでしょう。

 まず、十八歳のお誕生日おめでとう。

 よく生きてこれたね。

 その姿を見れなくて、とても残念です」


 ここまで読んだだけで、メイの目からは涙が溢れてきた。

「ちょっと、メイ!?」

 魅子が慌てて自分の革手袋でメイの頬を拭う。


「わかんない、でもなんだか懐かしいんだ」


 唐突に、そして鮮明に、かつての地球の息吹を感じた。

 メイが生まれたての頃、まだ大国が平和で満ちていた頃を。


 今まで、記憶の奥深くに閉じ込めてきた、あのあたたかい思い出が蘇る。


「泣く人間が違うだろうが」

 と、玄武はくしゃりと笑った。


 戒人は続ける。


「戒人、十八歳という年齢は大国家にとって、

 非常に大きな意味を持つ んだ。

 君が十八歳になるという事は、

 この世界にとって、とてつもない重要事項になる。

 君は、2324年2月11日をもって、

 大国神社が代々祀ってきた『神剣 神楽』の正統継承者として、

 使命を果たす任務につかねばならない」


 無遠慮に続く言葉から、戒人は顔を上げる。

 朱雀が少し物悲しそうな顔で、戒人を見ていた。

 戒人は、表情を変えずに遺書に視線を落とす。


「『神剣 神楽』の継承の後、

『次元の扉』を開け放て。


『次元の扉』が封鎖され続ければ、地球の均衡が崩れてどうなるかわからない。

 ありていにいえば、世界の危機が迫っている。


 必ず、この地球を異人から取り還して欲しい。

 ーーお前にしか、できない。

 これは大国家に生まれた君の使命であり責務だ。


『神剣 神楽』を継承してくれ。

 約束の地で、君を待っている。


 大国 霊人

 ーーーーここで終わっている」



 戒人は、丁寧に遺書を折りたたむと封筒に戻した。


「なるほどね」

 と、顎に手をあてて考え込む戒人。

「それで、今日、あなたがここに来たというわけですか、鬼道 藍統」


「頭の良さは、誰に似たのだか」


 藍統はクックッと愉快そうに笑う。


「僕は何をすればいいですか?

 どうせなら楽しく暴れたい」


 両手を大きく広げて、戒人は言って、

「僕は、辛気臭いのは、嫌いなんだ」

 と、魅子に笑いかけた。


「あんた、面白いね」

 魅子は、突飛な戒人の振る舞いに小さく吹き出して、花がほころぶように笑って見せた。


「さすが姫巫女だ、美しいなあ」

 ニコニコと二人の世界を作る戒人と魅子に、


 ごきん!


「歯が浮くから!」

 と、メイは戒人の首を横に倒して勢いよく押しのけた。


「あれ、俺何してんだ?」

 ふとメイは我に返って、目をぱちくりさせた。

「さすが薙杜の末裔だ、心強い!」

 戒人は、そう言うと、メイの肩をバンバンと叩いてやった。


「なんだか面白いことになりそうだな」

 と笑う藍統は相変わらず物見遊山スタンスだ。


「呑気なのは変わりませんね、藍統殿」


 玄武は藍統に栗羊羹を差し出して、複雑な顔をした。

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