LIVE.21 炎のモリビト 炎 玄鉄のゆーうつ。
2324年1月31日 23時
ティルナノーグ帝国
フロントエリア 帝国軍本部
ソウルシーカーズ屯所
玄鉄隊長執務室
「玄鉄班 隊長補佐 叉爾 、只今帰還しました!」
「同じく、琴子、只今帰還しました!」
ソウルシーカーズの任務を終え、玄鉄班のメンバーである叉爾と琴子は、ソウルシーカーズの隊長である玄鉄に帰還報告をしに来ていた。
叉爾は、魅子たちと地下街で別れた後で、玄鉄班と合流し、パトロールをして帝国に戻ってきたのだ。
執務室でパソコンを開いていた玄鉄は、顔をあげると二人を一瞥した。
そして、「ご苦労さん」と、労った。
二人は頭を下げてから、執務机に近づく。
玄鉄は、
「早速なんだが、少し厄介ごとがあってなー」
とぽつりと漏らす。
彼が厄介ごとを抱えた時は、だいたいこうだ。
炎のモリビト 炎玄鉄隊長は、空中をぽん、とタップし、空間にデータ画面を起動させた。
玄鉄の右の袖口から、白い包帯が覗き見えたのを、琴子は見逃さない。
「玄鉄隊長、お怪我の具合はいかがです?」
「ダメ、無理」
「迷いなき弱音!」
顔色を変えずに答える玄鉄に、琴子はすかさずツッコんだ。
「うっそーん。
このとおり、執務に支障ない程度には動けるもんねー」
へラリと笑ってから、玄鉄はぴらぴらと手首を振ったり肘を曲げたりして見せる。
彼は、先の異人との戦闘で右手を捻挫していた。
「うっわ、死語です、隊長。
それマジで死語ですから。
年バレますから!」
アッシュ系の茶髪に赤いカチューシャをした琴子は、
襟足を綺麗に切りそろえられたボブを揺らして、呆れた声をあげた。
「冷たいなあ。
俺、お前らの事、ご飯我慢して待ってたのにさ」
玄鉄が口を尖らせると、
「本当、酷い言い草だな、琴。
思いやりの欠片もない女は、男受けしないぜ」
隊服のマントを整え、胸元のオーヴを磨きながら、叉爾が毒づく。
「叉ァ爾!
あんたのその性格の悪さ、いつかトリトン神殿に埋葬してやるけんね!この八方美人野郎!」
「本当の事」
「こんのカバチタレめが!
先輩に対する口の聞き方ってもんがあるでしょうがっ!
隊長から何を教わったのよっ!?」
地方訛りの強い琴子は、一気にまくし立てる。
が、残念、この叉爾という男、一枚上手である。
「俺は、隊長からここでは実績が全てであり、
年齢や性別、過去の経歴における差別が存在しない、と習いましたがなにかー?」
片目を閉じて叉爾は返す。
「あぁん?!」
カッチーンとばかりに叉爾を睨みつける琴子。
「わかりやすく言う。
自分は、どこかの口ばかりのお調子者と違って、
軍部における実技・筆記試験ともに満点の主席なんですが、ねぇ?」
「くぅぅぅっ!」
澄ました顔の叉爾に、琴子は反論が出来ない。
「さらに申し上げれば、異人から地球人の魂を回収した数は入隊以来歴代でトップ10入りしています。
あれ?琴子サン、自己ベストが8位でしたっけ?」
流暢に語り、鼻で笑う叉爾。
「減らず口!ムカつく!今ここで昇天しんさい!!!」
「相変わらず、お前らは帰って早々五月蝿いなー」
玄鉄がいつも通りの痴話喧嘩に苦笑した。
「どーもすみませんね!」
謝る気持ち皆無の琴子。
「申し訳ないです、琴子サンが」
「なんですってぇ?」
「おっと」
隊内では馴染みの、叉爾と琴子のやり取りを眺める玄鉄の顔色は、浮かないものだった。
いつもならば、玄鉄も一緒に会話に入ってきて、三人でじゃれ合うところだ。
いつまでたっても、上官からの調子の良い合いの手が投げられない事に、琴子は訝しがる。
「玄鉄隊長?
お顔の色が、優れないようですけど」
玄鉄の目は、どこか虚ろだった。
「ん? ああ、なんでもない。
叉爾、話がある。琴子、席を外してくれ」
切るように言われて、琴子は怯む。
「わかりました。では、出直します」
「悪いな」
その様子は、明らかに異常であった。
玄鉄は、隊長という肩書きにも関わらず、帝国軍一“とっぽく”、ある意味、不気味な程のポーカーフェイスである事で有名であった。
その彼に似合わず、表情と態度には、全く余裕が見られない。
「あの、何かあったんですか?」
それでも、首を突っ込まずにはいられないのが、彼女の悪癖である。
「女子禁制。女子は口が軽いからなー。俺、女子、キライ」
玄鉄は、チャラけた態度でかわして、叉爾を手招いた。
「茶化してからにっ!
もう、後で報告書お持ちします!
失礼します!」
分かりやすく誤魔化された琴子は、渋々執務室を後にして、そのまま食堂に向かった。




