LIVE.14 ちょっと、地球の話を聞いてくれまいか。
噂の特務兵、魅子の登場の前に、
今までの地球の歴史を振り返ってみようと思う。
ーーえ?
さっさとヒロイン出せって?
すみません、ちょっとばかし付き合ってください。ごめんなさいごめんなさい(土下座)。
さてーー、
2324年までに地球は1度の地の軸移動と、
3度の地殻変動に見舞われた。
それによって、2324年現在、
地球上にある大陸は大きく3つのみである。
旧南極大陸であるZ大陸、
ティルナノーグ帝国が存在するG大陸、
そして、第二世界連邦国の領土である第二世界連邦大陸だ。
それ以外は海に没してしまった。
Z大陸、通称ダーウィンの箱庭は、かつてオーストラリア大陸があった辺りに存在する。
人類が住まない大陸である。
動植物が独自で進化を遂げていると言われているが、詳細は一切不明である。
2つ目に、G大陸。
北アメリカ大陸とユーラシア大陸の中間地点のやや西寄りに浮かんでいる。
2200年以降に、突然隆起してきた大陸で、大きさは250平方キロメートル。
イギリス程の大きさだ。
この大陸の気候は、
2000年頃の、まだ四季があった頃の日本のそれに酷似している。
連邦が所有する人工衛星からの情報によると、
2310年の第一次異次元戦争勃発と時を同じくして、
G大陸西部に巨大な一隻の船が流れ着いていると観測されている。
有力説として、この船には、
連邦内部の軍人達が乗っており、
連邦に反旗を翻して、陸を渡ったのではないかと言われている。
また、この巨大な船の出現と共に、G大陸一帯の衛星映像に原因不明の電波障害が発生。
暫く観測できなくなるという事態が起こる。
そして、再び衛生観測が開始された2320年以降、
G大陸は文字通りその姿をその地上から消してしまっている。
第二世界連邦の配信する第二世界地図に、G大陸は存在しない。
最後に、第二世界連邦大陸。
これは地球上で、最も大きな大陸だ。
2310年12月の新月の夜のこと。
絶界にある『次元の扉』が、異次元からの侵略を許した。
『次元の扉』に発生した大規模な『次元の歪み』から、
大量の異人たちが侵入を果たす。
これをキッカケに、第一次異次元戦争が勃発。
地球は、異人からの侵略を受けて、植民地化されていく。
2310年以前はと言うと、
度重なる天変地異を逃れて、なんとか生き延びていた地球人たちが、寄せ集まって国を作っていた。
世界連邦(現第二世界連邦)は、『選抜地球人』によって統治されていた。
彼らは、完全なる選民思想の元で、その権力を揮っていた。
だが。
その傲慢で自己愛に満ちた統治はどれも長続きせず、
連邦では常に内戦が起こっていた。
ーー地球は長い間、何が正義で、何が悪かが分からない混沌とした時代にあった。
あるものは偶像を崇拝し、
あるものは宇宙に希望を託し、
あるものは生き急いだ。
地球人は、肉体的にも精神的にも、疲弊し、路頭に迷うしかなかった。
2310年の第一次異次元戦争は、
そんな地球人たちの心の隙をついた、
まさに青天の霹靂であったーー。
異次元より来た異人は、地球人に対して、容赦ない暴力に加えて、『選抜地球人』の抱え込みを行った。
この侵略に対して、当時の連邦政府の主要人たちはあっさりと彼らを受け入れてしまう。
ーー後に明かされる事なのだが、
異人たちは、2310年以前にすでに連邦に侵略を始めていたのである。
地軸移動の度に、地上のそこかしこに生じていた小規模の『次元の歪み』を介して、少しずつ、連邦政府の中枢から蝕んでいっていた。
かくして。
第一次異次元戦争勃発により、公になった異人の存在は、
連邦政府を味方につけて、
さらに地球人を虐殺していくーー。
内戦に明け暮れていた地球人の中には、
連邦中枢の異常を感じ、
反連邦軍を起こした者もいた。
彼らの必死な抵抗も虚しく、
反連邦軍は、次々に敗戦していく。
圧倒的に異人の数は多く、数で勝負してくる彼らに、反連邦軍は為す術もなかった。
異人に乗っ取られた連邦軍と、
地球人が構成する反連邦軍との抗争。
だが、財力も権力もない反連邦軍に勝目など毛頭なく、
犠牲しか生まれない戦局に、反連邦軍は降伏をするしかなかった。
後に、十年戦争と呼ばれるこの戦争によって、
地球人は治めていた領土の全支配権を、異人に奪われてしまう。
第一次異次元戦争が終戦した2320年1月1日。
異人元帥ロード・トワは、
植民地化した連邦の国名を『第二世界連邦』と改めた。
併せて、これより前の連邦の呼称を『旧世界連邦』とした。
ついに、連邦国は、異人元帥であるロード・トワの支配下に置かれた。
連邦国政府にも地球人も存在したが、
全員がトワの配下にある者だった。
ロード・トワという名は、コードネームであり、実名かどうかは定かではない。
実際に、連邦の元帥執務室にはトワと名乗り、
「ロード・トワ」と呼ばれている異人が常在していたが、
彼が同じ人物かどうかの保証はどこにもなかった。
理由として、異人に個体識別は存在しない事があげられる。
というより、地球人からは、見分けがつけられないのだ。
何故ならば、異人は全員が同じ第二世界連邦の正規の軍服を着用しているからである。
頭には白地に赤黒いダマ模様のマスクを被り、
その上に白の軍帽を被って、
さらに変声器を使用している。
手には、マスクと同じ布地を使用した手袋をつけ、
肌の露出は皆無である。
また、彼らに個体識別をする為の名前は、存在しない。
常に集団で行動をし、お互いを呼び合わない。
意思疎通がはかれているかは不明である。
2320年以降、いよいよ、異人が公に権力を持ち始める。
地球人にとっての生き地獄の始まりである。
白の軍服を着た異人たちは、定期的に地球人居住区に出没しては、無差別に虐殺し、大量の死体を彼らの本拠地である白のドウムに運び込んだ。
地上のスラム街に住む地球人は、奴隷同然の扱いをされ、強制的に労働を強いられ、人権は剥奪された。
地球上に生きる人間の誰もが、
もう自分達に未来はなく、
ただ、異人の奴隷に成り下がるしかないのだと諦めていた。
ーーーー地球にとって運命の日、
2320年1月1日。
十年戦争の終戦のトリガーは、一人の男と一人の女神によってひかれる。
大国神社の神主であり、大国家の正統後継者である大国 霊人は、
男ひとりを引き連れて、絶界にある『次元の扉』の前に佇んでいた。
絶界は、地球と異次元世界との狭間に存在する空間である。
霊人は、190センチの細身の身体を聖職者の正装である式服に包んでいた。
タレ目の線の細い男だ。
首から紺碧の勾玉の首飾りを下げている。
左側の前髪のみをアップにしている銀髪は短く襟足を揃えられ、
瞳は満月のような黄金色をしていた。
「幸ッせなーら、手を叩こぉー♩」
ひゅうと口笛を吹き、呑気な歌を歌っているその男は、ひと目で、只者ではないと分かる程の、異様なオーラを纏っていた。
「状況は?」
明るいアルトの声色は、やけに艶を持っている。
「本当にやるのか? ーー霊人」
声に答えたのは、漆黒の軍服を着た霊人と同じ背丈の男だった。




