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LIVE12 閑話休題:嵐の前の静けさ

 メイと叉爾さじそして鬼のモリビト 鬼道きどう 藍統あいとは、地下街を通り抜けて、大国神社に向かっていた。


「地上に出なくていいんだ……」


 と、メイがごちる。


「年寄りには階段はキツくてね」


 と先頭を行く藍統が答える。


 どことなくなまりのある話し方に、メイはなぜだか親近感を覚える。

「あの藍統さんと普通に話してやがる……、参ったぜ」

 と、メイのとっつきやすさと、人懐っこさに叉爾は半分呆れていた。

 実際、叉爾は緊張していて、さっきから変な汗が出っぱなしである。


「地下街は初めてだったな、メイ。

 なかなかいいだろう?」

 そう言って、藍統は露店を指差した。


 光が届かない地下ではあるが、

 蝋燭の照明は美しく、何より活気があるのにメイは驚いた。


「おぉっ! ソウルシーカーズのお兄ちゃん、これ持って行きなっ!

 金はいらねぇよ!」


 威勢の良い50代くらいの男性は、屋台で売っていたスープをメイに押し付けてニカッと笑う。


「ふぇ?! あ、ありがとうございますっっ!」


「ソウルシーカーズ、頑張れよ!」


 グッと親指を立ててウインクする陽気な親父に、メイはなんだか嬉しくなって叉爾を見た。


「よかったな、食べ過ぎるなよ」

 と叉爾は言って、露店の親父に会釈をする。


 スープは、濃厚なコーンスープでメイはほっこりとした優しい味に舌鼓を打って満面の笑みを浮かべた。


「あぁら、藍統さん、可愛い子を連れているのね。

 これ、よかったら持って行ってちょうだい」


 と、今度はエプロンをした中年の女性が、チキンフライを袋いっぱいに詰めたものを藍統に差し出す。


「ありがとうございます、マダム。

 育ち盛りなので、喜びますよ」


「先月は、ありがとうございます。

 息子のマミヤも、すっかりよくなりました」

「それは良かった」


 藍統はチキンフライを受け取ると、メイに手渡した。


「ふぁぁぁ、う、うまそう……ッ」


 メイは袋から漏れるジューシーな香りに、たまらず手を出しそうになる。

 が、叉爾がそれはそれはものすごい形相で鋭く睨むので、大人しくしておくことにした。


「藍統さん、こんにちは」

「こんにちは」

 藍統は、ゆったりと歩きながら、露店の人たちと穏やかに挨拶を交わす。


「有名なんだな、ソウルシーカーズって。っていうか、藍統さんが、かな」

 メイは、両手いっぱいに差し入れを持って感嘆の声を上げた。


「地球人からすれば、最後のとりでだからな」


 藍統はもらったイチゴをひょいとつまんで頬張りながら答えた。

 鬼のモリビトは、甘党らしい。


「あの、あの人たちは、俺たちの正体を知っているんですか?」

 と、メイは尋ねる。


「知らないよ」


 藍統は短く答えた。


「えぇ!?

 じゃあ、俺たちが一度死んでるってことも、知らないんですか?」


「ああ、知らないな。

 蘇生された事実は、言ってはならないことになっている。

 もし告げたら最後、帝国に幽閉されるのさ。

 秘守義務については、座学でならったろう?」

 むごいことをサラッと言う藍統。


「ふぇぇ……、そういえば」

「どうせメイは寝てたんだろ」

 叉爾は、差し入れには全く手をつけずに冷たく言った。

「う。なんでそれを」

 嫌味に気づかないのがメイという男だ。

「共通認識として、海の向こうにある反連邦組織ってくらいなもんだろう。

 死んでるとはいっても、食べるし寝るし排泄もする。

 延命してるだけだからな、生きてる人間とは変わらないさ」

 藍統は街の人たちに挨拶をしつつ話す。

「へええ、」

 メイは素直に驚き、あたりをキョロキョロ見ながら歩く。まるでお登りさんである。


「ほんと、なんでお前が玄鉄班にいるのか、不思議でならないぜ」

「そんなこと言うなよ、叉爾〜」


 しばらく歩くと、露店は消え、トンネルの入り口に辿り着く。

 人が一人通れるくらいの狭いトンネルだ。

 高さは一メートルほどしかない。

 トンネルの入り口には、二人のソウルシーカーズが警備をしていた。

 三人に気づくと、敬礼をする。


「ここを抜けると、地上に出る。

 大国神社の守護処の目の前に出る」


 藍統は言うと、

「屈まないといけないのが、ネックなんだ」

 と、長身を折り曲げて見せた。


 薄暗いトンネルの中に視線を送ってから、

 差し入れで前が見えなくなっているメイを見やる。


「ふむ、考えなしにいただいておいてなんだが、地上に出るまでに平らげねばならないな」


 のんびりと藍統は言うと、チキンフライを取り出してかじりついた。


「さあ、お食べ。

 今から働いてもらわないとならんからな」


 藍統はむしゃむしゃと食べつつ、

「叉爾、警備しているソウルシーカーズにも持っていってやってくれ。食べ切らん」

 と、叉爾に頼んだ。

「了解です」

 と、叉爾は器用に差し入れをよそう。


「メイ、食べてもいいぞ」

「マジですか?! じゃあ、ありがたくっいただきまぁぁあす」

 藍統の許可を受けたメイは、瑠璃色の瞳をキラキラと輝かせて、骨付き肉にかじりついた。


 大食漢のメイが、両手にもった食料を平らげるのに時間はかからなかった。


「はぁ、大丈夫なのかなぁ、こんなんで……」


 叉爾は、任務中にも関わらず、遠足のようなほのぼのした空気に、

 一抹の不安を抱いたのだった。

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