表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/119

DAY-05 八百万の国の賢者 魔術師の覚悟

ED後編です。


珍しく風邪をひいたようです、インフルで無いだけマシかな?

 日本国 東京 総理官邸


 その室内はまさに戦場であった。

 部屋の主人の机の上は書類が山脈を造り、パソコンに情報が流れ続け、固定電話や携帯端末の着信音が途切れる事は無かった。

 臨時に持ち込まれた机やテーブルでは複数の人々が主人と同じような作業に追われ、駆け足で室内を出入りしていた。

 切っ掛けさえあれば殴り合いの喧嘩を始めそうな活気にあふれていた。

 矢吹は執務室で書類と格闘しながら秘書官から報告を聞くと言う激務をこなしていた。

 非合法な手段とはいえ、日本のトップにたった事により、今まで放置されていた案件に対して積極的に推し進めているのだ。

 現在、非常時を理由に両院を凍結している為、野党や反対勢力の介入を防いでいる事が出来るが、それも永遠と言う訳にはいかなかったが。

 それでも、政治的にフリーハンドを手にした今こそ、既得権益や老害を一掃するまたとないチャンスであった。

「矢吹総理。 関連各省庁の部長達から日本の基幹産業の企業に対する税制の優遇措置、ならびに法令の整備に関係する要望書が上がってきましたが、どの様に処理いたしますか?」

 鵯感からの報告に手や目を一時も休める事無く、鼻で笑いながら返事をする。

「ふん! 日本が世界から孤立した時に真っ先に本社機能を海外に移転し自己保身を図り、逆に日本がそれらの圧力を退けたら今度は手のひらを返して擦り寄って来たか」

「会談を要求している企業のトップも居るようですが。 是非にと、言ってきている者達も・・・・」

 パソコンに何かを打ち込みながら、傍に居る別の秘書にサインをした書類の束を渡す、彼は書類を手に駈け出して行く。

「既得権益にしがみ付く老害どもに配慮は必要か?」

 端末に右手で高速にメールを打ち込み、書類を決算していく。

「断る方向で?」

 コンビニのお握りを齧り付く。

「いや! この際、大掃除を行う」

「では?」

「職務怠慢を理由に、叩きだせ! 退職金などは必要ないぞ! 今まで散々稼いでいたんだ、財産を捕られなかっただけ有り難いと思えと、言ってやれ!」

「不当解雇と騒がれる可能性がありますが?」

「ガタガタ言うんだったら、少し脅してやれ! それでもクーデターで政権を取った総理に文句を言う度胸があったら雇い直してやる」

 持ち込まれた書類を一瞥、三行ほど余白に書き足し差し戻す。

 役立たずの老害の政治家たちを放り出したまでは良いが、ハッキリ言って人手不足である。

 各省庁で既得権益を守る為、仕事をボイコットしている連中を蹴り出す事で、下で燻っている連中を引き上げれば、この状態から脱する事も出来るが、それはもう少し後の話である。

 今は彼と彼の信頼における部下達で支えていくしかないのである。

「ふっ 分かりまして。 自衛隊の制服組に後ろに控えてもらう事に致します」

 秘書官も人の悪い笑みを浮かべる。

「それより、中小企業の手当て厚くな。 孫請けやひ孫受けだった零細に直接、仕事を回せ」

「分かりまして。 手配します」

 ペットボトルの水を一気に飲み乾し、一息つく。

「その他の案件は?」

「後は・・・・・・・、全国に散らばった飛行する大型生物に対する事だけです」

「は~、官僚お得意の甲種なんちゃら特殊危険何とか特定爬虫類型生物とか書いてあった書類の事か?」

 手元の書類やファイルを捲り、何とか探そうとする。

「はい、それです」

「素直に"竜"て書けよ」

「何とか整合性を取れる様に"作文"した結果でしょう。 それでどうしますか?」

 結局、見付けられず諦め記憶を頼りに質問する。

「被害にあったと言う報告は来ているか?」

「ありません」

「実害が無いなら、無視しろ。 "触らぬ神に祟りなし"だ! 藪をつつき過ぎて蛇を出すな」

「この場合は蛇よりたちが悪いですね」

「そう言う事だ」

 こうして日本では海外とは違い、古竜に対して何らアクションを取る事なく自然と受け入れていくのである。


 数年後になって分かった事であるが、竜が住み着いた地は自然からの恵みが溢れ、植物の生育が促進され、大規模な災害も抑えられ、何時までも豊かな実りがもたらされるのであった。



 日本国 東京 某所


 蝋燭による僅かで揺らめく照明の中、一人のローブに包まれた人物が重そうな身体を引きずりながら、部屋の隅に居る人物の元にゆっくりと歩を進めていた。

 彼が一歩、進むごとに身体から灰色の砂状の物が少しずつローブから零れ落ち、歩んだ道にその痕跡を残して行く。

 室内全体を見渡せば、床に複雑な魔法陣が描かれ、その図形の要点にローブが無造作に置かれ、その端から灰色の砂がこぼれていた。

 それはかつて人であったもの、星読み達のなれの果てである。

「・・・・・・・宗主」

 唯一、残った星読みが、部屋の隅に立つ壮年の男、宗主に向かって一抱えある水晶球を差し出す。

 その手からは絶え間なく灰色の砂がこぼれ、彼がやがて他の星読みと同様に崩れ去る事を決定付けていた。

「これが・・・・、そうなのか?」

 宗主は水晶を受け取り、その中を覗き込む。

「・・・・・はい」

 暗黒の中で無数の光が瞬いていた、まるで星空を凝縮したようなそれは吸い込まれるほどに美しかった。

「御武運・・・・・・を・・・」

 一声出すごとに身体が崩れていく、既に言葉を発する事すら困難な様子である。

「当然だ!」

「先に・・・、神の・・・・・身許・・・・で・・・お待ち・・・・してい・・・・ます」

 宗主はほんの少し冗談を言う、彼を安心させるように。

「待たせる事になるぞ、私はゆっくりと行くつもりだ」

「人・・・・の・・・時間・・・では・・・あっと・・・・いう間・・・で・・す」

 今まさに命が燃え尽きそうな星読みは、自身の役目が終わった事を悟り静かに瞑目する。

「・・・そうか」

「で・・・・は、・・暫・・・・・し・・・のお・・・別・・れ・・・で・・

 最後の星読みが、別れの言葉を最後まで言い切ることなく、彼の目の前で崩れ去った。

 宗主は短く黙祷し、彼等の冥福を祈る。

「さらば。 我が兄弟達よ・・・・」

 彼は静かに部屋を出て隣室に移動する。

 隣室は一面がガラス張りな事を除けば、豪華な家具が置かれてはいるが何の変哲も無いリビングで、カーテンが開け放たれた室内に、ビルの谷間から黄昏の風景が室内を朱に染めていた。

 彼は一言も発することなく、テーブルに水晶球を置き、その身をソファーに沈め、暫し沈黙する。

 感情を全く表に出さないその表情から、何を考えているのか余人にはうかがい知る事が出来ない。

「・・・・・・・・」

 どれ程そうして居たであろうか、日はとっくに沈み暗い筆内で、突然、虚空に向かって静かに声を掛ける。

「・・・・・ADAM! EVE!」

 声と共に、突然、室内に気配が生まれ、音も無く一組の男女が片膝を付き彼の前に出現する。

 金髪の男と銀髪の女。

 九聖の剣 第一席 日陽のアダム

 九聖の剣 第二席 月陰のイブ

「「ここに」」

 全く同時に声を発する。

「うむ! 全員に召集しろ!」

「明日! 我らの"敵"を殲滅するとな!」

「「御意」」

「行け!」

「「はっ!」」

 二人の姿は現れた時の同じく、音も無くその姿が掻き消える。

「・・・・・・・・・・」

 再び、室内に彼だけが残される。

 自然と彼の視線はテーブルの上の水晶に注がれる。

 星空を凝縮したような瞬きを発するそれを眺め、宗主は静かに宣言するのであった。

「待っていろ! この力を持って地獄に叩き落としてくれる!」


次回からDAY-06始まります。


お知らせを一つ。

 新しい物語を構想中です、年内にプロローグくらいは投稿できると考えています。(願望)

 大まかな設定は既に出来上がっています。

 キーワードの予定は、異世界、転生、ロボット、チート無し、お気楽、現代知識、こんなところかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ