DAY-05 ローマ皇帝の決断 神々のティータイム
DAY-05 ED前編かな?
アメリカ合衆国 ホワイトハウス 大統領執務室
「つまり・・・、要約すると中国大陸との全ての連絡が途絶えたという事だな」
部屋の主は手元のタブレット型の端末に投影された情報を斜め読みしながら担当者に確認をとる。
「はい、大統領閣下。 現在、観測可能な全ての機器を使用しても、中国大陸から如何なる種類の電波や、それに類する放射も確認されておりません」
その担当者も、手元の端末に指を滑らせ一枚の画像を呼び出し、困惑の表情を浮かべながら言葉を続ける。
「もっとも、この状態の大陸が大陸と称すべきかは判断が分れるところですが・・・・」
執務室に集まった者達はその画像を確認し、ある者は驚愕の表情を浮かべ、とある者は険しい表情を浮かべ言葉も発することなく思案に沈んでいた。
大統領ですら事前に知らされていたが、驚きを隠し通す事は出来なかった。
「お手元の画像は僅かに残った偵察衛星から送信されてきた物です」
現在、この国の衛星監視システムは、お世辞にも充実した物とは言えなかった。
この数日間で、極東方面に軌道変更した衛星が次々と落とされているからである。
今は、高軌道を周回する軌道天文台を、本来の目的とは逆に向けて、星空では無く地上監視に転用し、何とか情報を収集しているのが現状である。
「なんとも・・・・・、ファンタジーだな・・・・・。 この大陸の破片の拡散予想は出来ているか?」
彼等の手元には、地球から剥離し、次第に細かく割れていく大陸の破片が拡散していく様子が、時系列で次々と映し出されていた
「はい、温測が大部分を占めますが、次のファイルにシュミレーションが有ります」
それぞれの端末に3D地球儀が映し出され、大陸の破片がタイムラインと共に世界中の空を覆っていく様子がアニメーションとして映し出されていく。
「・・・・・・・この解析が正しいとすると、世界中に拡散するのか」
将軍の一人が端末から目を離さず呟く。
「落下する可能性は?」
国務長官が端末から顔を上げ、誰もが思っていた疑問を担当者にぶつける、それに合わせて全員の視線が担当者に注がれる。
その視線に若干怯みながら。
「・・・・・・・・それは、何とも・・・・・」
「だろうな」
「ただ、細かな破片も浮いている事から、可能性は低いと推測しています」
「止めるのは不可能だろう。 まして破壊できるか試すまでも無い。 第一破壊できたとして、地面に落ちるとは限らんし、推測するも馬鹿らしい土砂が降って来るのはあまり面白い現象では無いな」
大統領が端末を机の上に放り投げその身体を椅子に沈める。
「それに、自らその状態を招くのはバカを通り越しています」
「領空、領土問題は考えるだけでも鬱陶しいな」
「専門家に検討させますが、当分は放置で良いと思います。 それより問題なのは、経済の方です」
国務長官がこの件を一旦棚上げし、次の問題に皆を導く。
「これか・・・」
大統領は手元に端末を引き寄せ、更に難しい表情を浮かべ考え込む。
国務長官は手元のタブレットを操作しながら、グラフや表を交え、淡々と説明していく。
「大華中の消滅、そう表現して問題ないと思いますがこれにより国内企業、特にグローバル企業が軒並み資金繰りに詰まり近い将来、瓦解します」
さらにCIA長官が補足する。
「それに、ジャップ、もといジャパンとの関係が完全に切れたのも響いています。 予定では今頃、東京を完全に占領し、合衆国の優位が確立されていると考えられていましたので」
「それで、この株価の乱高下か」
「先日まではスットプ高、今日は底が見えません」
CIA長官が何とか掴んだ日本・東京の情報を開示する。
「東京では先日から株取引が停止されています」
「じりじりと沈んではいますが、我が国ほど危機的状態ではありません」
「大部分を占める中小企業は政府が保護し、この難局を乗り越えると推測されます。 もっとも、日本を見捨てて外国に逃げた企業はその限りではありませんが」
「さすがだ。 ヤブキは素早いな」
大統領は天井を見上げ思わず称賛する。
椅子のリクライニングに身体を預け、ほんの少し瞑目し自嘲する。
「それに引き換え我が国は。 ・・・・机上の空論に踊った結果か」
「「・・・・・・・・」」
姿勢を正し、今後の方策のに対する意見を求める。
「諸君らは我が国の基本的な方針に腹案は有るかね?」
まず、国務長官が発言する。
「株価は農業関係が若干ですが上向きつつあります、市場は当面は孤立主義政策になると考えています。 残念ですがそれを否定出来ないのが現状です」
国内はモンロー主義に傾きつつある事を示す。
アメリカは農業大国である、輸出や輸入に頼らなくても決して餓える事は無いのだ。
「それに、我が国にはニューヨークで回収した『Sphere』が有ります。 少しずつですが成果が上がっていると報告も受けております」
CIA長官が補足の説明をする。
「・・・・・現状は我慢し、未来に託すか」
大統領はそう結論付けた、後ろ向きだが今はそれしかないのである。
「「・・・・・・・・・」」
その結論に対して、誰も意見する事は出来なかった。
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ロスアラモス国立研究所 地下
その室内の様子は一言で言い現わすなら"カオス"であった。
「アッハハハハハハハハ!!」
薄暗い室内で一人の男が、狂喜していた。
「アッハハハハハ!! そうだ! 何も観測できない! これだ! これが証明だ!」
彼の手元の机の上だけでなく、足元には複雑な計算式や図形が描かれた書類が足の踏み場も無い位散乱していた、壁一面には様々な図形が子供の落書きの様に描かれていた。
「観測できない! 観測できない事が証明ではないか!!」
男は、まるでリドル(謎かけ)の様な事を、譫言の様に喋り続けていた。
「我々が持つ機器で観測出来ないという事が、"観測できない何か"が有るという事ではないか!!」
その目には既に正気は無く、あるのは"狂喜(狂気)"、それだけである。
「つまり! 観測できないという事が証明ではないか!」
誰も聴いて居ないのに同じ事を何度も繰り返す。
「ダークマターか、ダークエネルギーか! それとも全く未知の何か! それを観測できれば良いんだ!! アッハハハハハハハハハ!!」
狂った笑い声をあげながら、彼は室内を出ていく。
『He』、これがアメリカ政府が彼に与えた固有名詞。
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アダマス・オブ・ザ・シーズ船内 カフェ
カズマたちは夜空の見えるオープンテラスの一角で、夕食後の雑談と言う名の情報交換をしていた。
「・・・つまり、翡翠の教団と言うのは、この世界の魔法を使う者達の秘密結社と言う訳か?」
チヒロが番茶片手に確認をとる。
「・・・・ああ、イングリットから聴いた話ではそう言う事らしい」
「良く簡単に聞き出せましたネ?」
「尋問?」
「頭の中、かき回した?」
「拷問でもしたか?」
カズマは仲間たちの遠慮ない発言に豪快にテーブルに突っ伏し肩を震わせる。
「・・・・お前ら! 俺を何だと思っている・・・・」
「ヘタレ」
「ハーレム予備軍」
「取り敢えず喰う派」
サクラは席を外している事を良い事に言いたい放題である。
カズマはいつの間にか椅子の上からテーブルの下で横たわっている、何やらブツブツと独り言が響いていた。
メイド達はいつの間にか枕と掛け布団を用意していたりする。
「冗談はここまでとして、実際はどうなんだ?」
チヒロは脱線しそうになった話を強引に戻す。
いつの間にか椅子に座り直したカズマが遠くを見ながら。
「自分から聴いてもいない事までベラベラと際限なく話すのは良いとして、時たま服を脱ごうとしたり、切腹しようとするのはどうかと思うがな・・・・・」
マイヒメが驚愕の表情を浮かべながら率直な感想を述べる。
「・・・・・・、良くサクラがキレ無かったね?」
普段のサクラであれば今頃、シーズは海の底である。
「頭の中は少しおかしくなってはいるが・・・・いるのか? まあ良い、上下関係はしっかり理解しているようで、サクラの事を"若奥様"と呼んで俺より丁寧に対応していたからな」
一口、番茶を飲んでから。
「身体をくねらせて悶える姿は少し引いたな・・・・」
「サクラ姉を一瞬で籠絡・・・・・・」
「・・・・・・末恐ろしいでス」
イサベラが空の湯呑にお茶を注ぎながら。
「それは良いとして。 まだに何か仕掛けが有るのですか?」
「ああ、何でも禁断の秘術が有るらしい」
ミウが溜息を付き一言。
「もう一働きするんだね」
「・・・・・そうだな」
エレェリアが湯呑を両手で包むように持ち、それに視線を落としながら本当に困った様子で。
「弱い者イジメは嫌いなんですヨ・・・」
DAY-05 ED後編「八百万の国の賢者 魔術師の覚悟(仮)」




