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DAY-05 魔術師達 行きがけの駄賃

 前回の前書き「各個撃破を狙う者達」を変更し。


「各個撃破される者達」に変更します(笑)

 人気の全く無いビルの谷間に男の絶叫が響き渡る。

「だああああ!!」

 真空の超音速の刃が街を駆け抜ける。

「ほい」

「ぬおおおおおお!!」

 片手から極低温の咢が唸る。

「よっと」

「ああああああああっ!

 両手から発生した竜巻を叩きつける。

「そ~ら」

 あっ! ごほっ! ごほっ! がほっ!!」

 限界まで絞り出した力を使いすぎ嵐のイアンは酸欠になり、顔色は蒼白を通り越し既に土色で呼吸すら困難な状態に陥る。

「もう終わりか?」

 それに対してチヒロは涼しい表情で、先ほどまで彼に向けられていた攻撃がまるで他人事の様に尋ねる。

「はあ はあ はあ きっ貴様! な、何だその魔導具は?」

 ようやく呼吸を整えたイアンの視線が、チヒロの右手に握られた道具に注がれる。

「これか?」

 チヒロは軽く右手を持ち上げそれを目の前に掲げる。

 イランは声に出す事無く頭だけを上下させ肯定する。


「こらは、単なる"うちわ"だ」

 うちわ(団扇)、手で扇いで風を起こす道具の一種。

 絶句する、、"翡翠の教団""九聖の剣"第五席、嵐のイアン。

「その辺のデパートで買って来た。 定価800円(税別)の芯に竹を使った使い勝手が良いやつだ」

 そんな事はお構いなく説明を続ける。

「流石にそれなりの値段が付いているだけはあるね~! 芯がプラスチック製とは手にかかる負担も風の感じも違うんだこれが!」

(注・事実です! 筆者も竹製を愛用しています。 プラ製と扇ぐ比べてみればその違いが直ぐにわかります!)


 イアンは慄然としていた、先ほどから彼が仕掛けていた必殺の魔術は、チヒロの持つうちわから発せられる微風に完全に相殺されているのである。

「くっ! ならば!」

 だが、彼の戦意はいささかも衰えてはいなかった、

(運が無い・・・・。 どうやら一番の強敵に当たった様だな)

 イアンは自分ではこの男にには勝てないと悟り、他の場所で対峙している仲間が来るまで時間稼ぎに戦術を切り替えた。

(だが、足止めは不可能では無い。 そうすれば・・・)

 信頼すべき彼の仲間が駆け付けてくれる、彼は自分にそう言い聞かせた。

 僅かばかり回復した魔力を込め、再びダウンバーストを叩きつける為に力の循環を始めた。


「あっ! それはさっき見たから、やらんでいい」

 彼の覚悟とは裏腹に、非常に軽い声が彼に向けて発せられた。

「なに?」

 思わず何を言われたのか理解できず、魔術を行使する手を止めてしまった。

「手品のネタが尽きたなら、もう良いよな?」

「何を?」

 言葉は理解できる、だが意味を理解する事が出来ない。

「今度は、オレの"ターン"」

「風系統はあんまり得意じゃないんだよ。 制御が甘くても文句は言うなよ」

 名も知らない相手は彼に意味不明な事を告げる。

「なっ! ちょっと! まっ

 彼の静止の声も最後まで聞かず。

「それ!」

 うちわを下から上に勢いよく扇ぐ。

 待てええええええ!」

 瞬間移動か? と言った勢いで嵐のイアンの身体は、絶叫と共に忽然とその姿を消した。

「う~ん、やっぱり制御が甘いな」

 チヒロは晴れ渡った空を仰ぎながら唸っていた。

「成層圏まで飛んだかな?」




 氷のユリアスは会心の笑みを浮かべ、モデルの様に片手を付きだし、カメラ目線を意識した様なポーズをとっていた。

 と言うかそのポーズまま固まっていた。

 氷の中で。

「ちょっと、力加減間違えたかしら?」

 サクラはゆっくりと氷柱に近づき。

《コン! コン!》

 軽く氷の表面を手で叩き、自ら創った物を確認する。

「この感じだと・・・・。 二百年くらい解けないわね」

 人気の無い街角を見回し、ゴミ箱に視線を向けながら。

「こんな粗大ゴミ、街中に置いとくと迷惑千万よね」

 視線を氷柱に戻し。

「氷が有ってもおかしくない所に捨てましょ」

「・・・・・・取り敢えずまだ生きているみたいだし、宇宙に捨てるのは論外として」

 少し考えてから。

「う~ん、南極か、北極ね」

 氷柱の中でカメラ目線を意識した様なポーズをとっている氷のユリアスを見て。

「道化としては面白かったし、海に浮かべるのはちょっと可哀想ね・・・・」

 微笑。

「南極にしましょ♪」


「むっ! 何か良く無い事が起こっている様な・・・・。 急がないと」

 サクラは全ての後始末を終えて、意味不明な事を呟きながらカズマの元に転移するのであった。




「あっははははは! 脆い! 脆すぎるわ!」

 彼女、幻のエリザベスの視界の中で少女が投げナイフで串刺しとなり、精神をズタズタに切り裂かれて息絶えていた。

「わらわの精神攻撃の前には如何なる力も無意味よ! あっはははは!」

 狂ったような哄笑が人の居ない街中で響きわたる。


「随分と・・・・、楽しいそうね。 どんな夢を見ているのかな?」

 60代の白髪の老女が、木にもたれ掛る様にして静かに眠っていた。

 ミウは視線を凝らし、老女、幻のエリザベスを観た。

「生きてはいるけど・・・・。 多分、もう目を覚まさない」

 エリザベスはミウに仕掛けた精神攻撃を障壁で反射され、自らの攻撃で精神に致命的なダメージを負ったのである。

 ミウ達であれば目覚めさす事も出来るが・・・・。

「・・・・・起きる事がこの人にとって幸せな事とは限らないよね」

 ミウは静かにその場所を後にする。


 幻のエリザベスはこの後、昏睡状態のまま病院に保護され、その長い人生の最後を夢の中で終えた。




 公園内にマイヒメの怒鳴り声が鳴り響く。

「誰が! 脳筋よ!!」

「うっ、ぐぐぐぐぐ・・・・」

「そりゃあ~、やっている事は、脳筋と変わらないかもしれないけど・・・・」

「初対面の人間に指摘されたくないわよ!!」

「ぐっぐぐぐぐ」

「ちょっと! 聞いているの!」

「いぎっぎぎぎ・・・・」

「返事くらいしなさいよ! うめき声ばっかりあげてないで!」

 頭にきたマイヒメはワザと障壁を薄くし、素でマーカスの鎖に触れたのである。

 つまり、彼女が装備しているバットステータスが付きまくっている装備の状態を鎖を通して流し込んだのである。

 結果、鎖のマーカスの現在の状況は・・・・、

 猛毒(継続ダメージ)

 麻痺(行動不能)

 呪い(全ステータス低下)

 沈黙(声を出せない)

 盲目(眼が見えない)

 石化中(カウントダウン中)

 死の宣告(カウントダウン中)

 といった感じのバットステータスのオンパレード状態で、"石化中""と"死の宣告"のどっちが早いかチキンレース状態だったりするのである。

 死の宣告が先になったら問答無用であるが、石化が先なら取り敢えず死を避ける事が出来る、運が良ければ解呪も可能であろう。

 彼は即死が発動しなかかっただけ、まだ運が良い方だったりするのだ。


 つまり、返事はまず不可能だったりするのであるが・・・・。


「ちょっと! なに、勝手に石に為っているのよ! 魔術師なら根性でレジスト(抵抗)くらいしなさいよ!」

 どうやら、石化が先だったようである。

 良かった! 良かった!(?)


 第九席 鎖のマーカス 心からの叫び。

「良くない! ちっとも! 良くない!!」


 公園内にマイヒメの罵声が虚しく響く。




《タンッ》

 エレェリアの足が一度だけタップし、無人の倉庫が立ち並ぶベイエリアにその音が妙に大きく響き渡る。

 100体ほどの魔神がその音で、一斉に空中で静止する。

「?」

 魔神達はその表情(?)を恐怖に歪め、チラチラと召喚者である"界のダン"の方に視線を向けながら、その場に留まり続けた。

 彼は明らかに苛立ちながら、もう一度強く命じた。

「滅!」

 本来なら召喚者の、その言霊の乗った命令に逆らう事など不可能な魔神達が動こうとはしなかった。


 魔神達の現在の状況を説明すると

 一対多数の某殲滅系アクションゲームのスーパー・イージー・モードの序盤の一般兵が、ステータスがカンストし最強装備を身に着けた武将と対峙している様なものである。

 はっきりとその心境を言葉にするなら・・・・・。

〈無理! 無理! 無理!〉

〈うちのボスてっ! きっついわ!〉

〈てっ言うか、あれを相手にするなんて! 有り得ないっしょ!〉

〈俺達なんて、お替り三杯の、一山幾ら? の世界でしょ!〉

 とっいった感じである。


《タンッ!》

 先ほどよりキツメの音が鳴り響く。

 魔神達は冷汗をだらだらと下に池が出来そうな勢いで流し続けていた。

「滅!!」

 召喚者から強烈な反抗不可能な言霊が発せられる。

 魔神達はお互いに顔を見合わせ、それぞれが覚悟を決め・・・・。


《タンッ!!》

 最後通牒の発生。

 覚悟。

 ・・・・・・・消し飛びました。

 そして・・・・・・・。


「滅! 滅! 滅!! 滅!!!」

 言霊を無視し彼女の周囲で土下座してます。


「五月蠅いですヨ」

「ひぎっ!!!」

 余りにも五月蠅い言霊が癇に障ったエレェリアが、ほんのチョッと【威圧】を視線と共に界のダンに放った。

 彼女にとっては軽いそれは、彼の精神を削るには十分すぎるほどの威力を持っていた。


 言葉を失い震えるローブの間に水たまりが作られる。

 風が彼のローブをめくれ、ローブの下から10代前半のニキビ顔の少年の恐怖に歪んだ顔を露わにした。


"エレェリアは全てを観て知っていた"

 だから、きついお仕置きをしたのだ。


 一時間後、巡回中の警察によって、自らの名前も忘れ、泣き崩れた少年が保護される。




「アタマイテ」

 街の中でカズマはようやく収まった体調がぶり返しそうであった。

「如何して、こうなった?」

 彼の目の前には剣を鞘に納め地面に置き、"翡翠の教団"九聖の剣"第七席 斬のイングリットが跪いていた。

「え~と、イングリッドさん・・・」

「陛下! 奴隷に"さん"などと付けず! イングリッドと呼び捨てにしてください! いえ! むしろそれすらも不敬! 犬畜生や道具の様に扱いください! 何でしたら衣服など不要と!」

 周囲に人が居たら正気を疑う、ドン引きの台詞を大声でまくしたてていた。

 しかも、たちの悪い事に本人は大真面目であるので、更に始末が悪かった。

(え~と、確か・・・・・・)

 思わず頭を抱え、原因を思い出そうと努力するが・・・・・。

(だめだ! 全然、思い当たらん!)

 彼の記憶では彼女が切りかかって来て、10~12合ほど打ち合ったはずである。

(なんか、徐々に熱っぽくなっていったような・・・・。 興奮してた様な気がしたが・・・)

 そして突如、この状態である。

 カズマは気が付いていなかったが、体調が万全でなかった為、若干だが力加減を間違え、剣に【威圧】を乗っけて打ち合ってたのである。

 つまり、彼女は打ち合い中にガリガリと精神力を知らずに削られていたのである。

 現在の彼女の状態を一言で言い現わすと、一種の発狂と言うか狂気と言うか、本性が丸出しの状態だったりするのである。

 もっとも。彼女の本質がツンデレと言うかド・○ムでなければここまで極端には変化しなかったのも事実である。

 彼は恐る恐る、彼女の方に目線を向けると。

 なんか息遣いが非常に荒く、眼には熱狂的な興奮が見て取れる。

 もし、尻尾が有れば千切れんばかりに振っていた事であろう、て言うか尻尾を幻視しそうである。

(・・・・・凄く怖いんですけど)

 カズマは別の意味で恐怖を感じていた。 

 後ずさらなかったのは流石と称するべきであろう。

 意を決して声を掛ける。

「え~、イングリッド」

「はっ! 陛下! 何なりと御命じ下さい! 鉄砲玉でも! 暗殺でも! 夜伽でも! 何でも御命じ下さい!」

 其処で一旦言葉を切り、少し赤面しながら。

「ただ、初めては優しくしていただければ・・・・はっ! いえ! この考えこそ不敬! どうぞ獣の様に! 存分に蹂躙ください!」


【カズマはイングリッドの眷族化に成功しました】


 後にカズマのくノ一&自称・情婦のイングリッドとカズマの出会いであった。



 この直ぐ後、自ら服を脱ごうとするイングリッドに、それを慌てて止めさせようとするカズマ、そこに乱入するサクラと、場は一種のカオスと化してしまうのであった。


 追記

 東京が更地にならなかったのはある意味、幸運と偶然の産物である。






 次回から本筋に戻ります。


 

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