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DAY-04 セイレーン

 今回は少々、非人道的かな?


 もっとも、ドラゴンに人道がどこまで通用するやら・・・。

 日本国 九州 福岡市内


 上陸は全く抵抗の無く、あっさりと終わっていしまった。

 強襲部隊を指揮する将軍は、予定通り国際ターミナルに臨時の司令部を設置し、そこから指揮を指すため現地に上陸した。

「上陸は作戦より順調に進んでいます。 むしろ、若干ですが予定を前倒しで進行しています」

 傍に立つ幕僚の一人が彼に現状を説明している。

 建物の外を揚陸された戦車や装甲車が激しい音を響かせながら街中に侵攻して行く。

 彼はその喧しい音に若干だが顔を顰め幕僚に説明を求める。

「順調なのは良いが。 何故、予定より早いのだ?」

「予想された抵抗が無く、設置が予想されていた障害物が無い為です」

「抵抗が無い?」

「はい。 先行させている偵察部隊の報告と、諜報の報告では大半の日本人は既に避難を完了されているとの事です」

「ふんっ! やはり、小日本は臆病者の集団だな!」

「それと、若干ですが末端の兵士が略奪をしていると言う未確認情報が入って来ています」

 将軍は薄笑いを浮かべながら、一笑する。

「誤報だ! 我が誇り高く高潔な兵士達が略奪などと言う、20世紀の日本軍の様な低俗な行為をする理由が無い!」

 幕僚達が将軍の意を汲み同じ薄笑いを浮かべる。

「ではその様に処理します」

「うむ。 小日本は過去、我が国に対して多大な損害を与えたのだ、これも自業自得と言うものだ! 目に余る者だけ現場の判断で処分したまえ!」

 それは、略奪やそれに付随する非人道的行為をある意味黙認し、上前を巻き上げる事を意味したッ命令であった。


《ゴッーン》


 鈍い金属音と共に市内に進出していた戦車が街中より飛び出し、港にを超え海上に落下して高い水柱をあげた。

「何事だ!」

 物音に驚き、港の国際ターミナルに設置された臨時の指揮所で今後の方針を部下と確認していた将軍が外に飛び出してきた。

 市内と港を分断する高速道路の高架の下から市内に進撃していた兵士達が武器や装備を捨て。出来る限り身軽な姿で着のみ着のまま必死の形相で駆け戻って来る。

 中にはズボンを穿いていない兵士も数人混じっていた。


《ゴッーン》

  《ゴッーン》


 続けざまに響く鈍い音と共に戦車や装甲車が、次々と港を超え海上に落下していく。

 それに混じって戦車砲の発砲音と機銃の射撃音が響きだすが、それにもまして鈍い音が途切れる事無く響き、黒光りする鋼鉄の塊が空を飛び市内から文字通り叩きだされて行く。


「如何したと言うのだ? 何故逃げて来るのだ?」

「判りません!」


 そして、福岡市内から大量の黒い影が飛翔した。



-------------------------------------------------------


  日本国 九州 福岡沖


 複数の空母を含む強襲上陸を支援する艦隊は、今、混乱状態にあった。

 艦隊の最後尾に位置する空母を皮切りに、次々と沈められていくのである。

 しかも、沈められ方が尋常では無かった。

 最初の空母が縦に切断されたのを皮切りに、ある艦は輪切りにされ、またある艦は縦にスライスされ、小型の艦などはさいの目切りに一瞬で分解されたのである。

 更に、混乱に拍車をかけているのが、溺れた者や落下物による死傷者はそれなりに発生していたが、艦を切断された事による直接的な死者が"ゼロ"であった事であった。

そして、これ程の惨状を作り出す存在が、レーダーを始めとするセンサー類に全く捕捉されないのである。

「何処だ! 何処からの攻撃だ!」

 中国版イージス艦[定遠]のCICではオペレーター達が各種探知機のモニターを、血走った目で皿の様に見開き敵性の反応を探していた。

 そんな彼らの努力を嘲笑うかのように、味方の識別信号が一つ、また一つと次々と消えていった。

 彼等の目の前で最後の味方空母の反応が消失すると同時に、 責任者が大声を張り上げる。

「貴様ら! 何をしているか! これも全て貴様らの責任だぞ! 帰国したら揃って軍法会議にかけて、収容所送りにしてくれる! 覚悟しておけ!」

「このエリートである、俺の足を引っ張りおって! だから貧民は使えないのだ!」

 一人興奮状態の彼には、室内に満たされる殺気に気が付く事は無かった。

 もっとも、それは暴発する事なく、別な事態によって塗り潰される事となる。


 音も光も無く、その破壊は静かに、そして一瞬で引き起こされた。


 決して日の光が入る事の無いCICに、突如、陽光が差し込んだのである。

「「!!!!!!」」

 暗い船内の照明に慣れた目には、その光はいささか刺激が強すぎたのである。

「なっ? 何事だ!」

 その問いに答えられる者はその場に居なかった、全員、目が眩み視界を奪われていたのである。

 永遠とも思える短い時間が過ぎ、眼がようやく慣れてきた処に一つの影が彼等の頭上にかかる。

 逆光の中で、その影が人(?)と辛うじて判別が出来た。

 CIC責任者はその影が、この惨状を確認しに来た味方であると疑いもしなかった。

「何者だ? いや! 誰でもいい! 状況を把握する、とっとと手を貸せ! このノロマが!」

 その暴言の返事は。非常に簡潔であった。


「随分と大言を吐く者が居ると思ったら。 強者では無く、言葉を喋る豚であったか」


 かなり長い時間、その言葉の意味を考えた末、CIC責任者はタコの様に真っ赤になり怒鳴り散らした。

「? ・・・・・何! 貴様! 所属と階級を名乗れ! 軍から放逐の末、収容所に送ってくれるは!」

 彼はかなり頭の回転は鈍い様である、今だ影が味方の兵士だと勘違いしていた。

 そして、彼を除くCICに居た全員が既に気づいていた、その影の主は決して味方の兵士では無いことに。


「生憎と豚と漫才を遣っている暇は無いのでな、直ぐに終わらせるとしよう」

「?・・・・貴様。 何者だ?」

 ここでようやく影の主が味方では無いと気付き始め、初めて陽光に慣れてきた目を凝らしその姿を凝視する、そこに居たのは・・・・。


 3mに届く程の身長を有する、大刀を担いだがっしりした和装のサムライの姿であった。

 もっとも、その容姿は尋常では無かった、通常の人の頭が有る位置にあったのが強大な獣の頭・・・。

「熊?」


 そう、そのサムライは直立した熊の姿していたのである。


 アダマス、チヒロの従者、熊の獣人の侍大将"影丸"であった。


 混乱のあまり、頭のネジが纏めて弾け飛んだ責任者が、口から泡を吹きながら。

「こっ! この畜生!」

 腰の拳銃を影丸に向けて構えた。

 それに対して影丸はただ一閃、無造作に空を大刀で薙いだだけであった。

「「「「!! ?!」」」

 ただ、それだけでその場に居た全員が身体の中を冷たい金属が通り抜ける感触を確かに感じた。

 誰もが切られたと思い、慌てて身体をまさぐり傷跡を確認しようとする、そこで彼等は初めて異変に気が付くのである。

 服、下着、眼鏡など、身体に着けていた装備などは真っ二つに切り裂かれているのに自らの身体には傷一つないのである。


「我の刀は切るべき"物"と、切らぬ"者"を選り分ける事が出来る」

 混乱の中、静かな声が辺りに響き、全員の視線が声の発せらた一点に注がれる。

 CIC責任者は拳銃の残骸を影丸に向けたまま固まっていた、ついでにズボンと下着を切り裂いたのかズボンが彼の足元に下がっていた、下着と共に。

「早く逃げた方が良いぞ。 船もついでに切り裂いたからのう」

 その言葉と共に、軽く艦を蹴り宙へと跳んで行く。


《ギッン!》


 金属の擦れる鈍い音が響き渡る。


 その後は混乱である。


 我に返った兵士達は普段の結束力や訓練は何処に忘れてきたのか、倒れた者を踏んづけ、殴り飛ばし、突き飛ばし、押し合い圧し合いをしながら、我先にと艦から逃げ始めた。


 影丸は次の艦に向かいながら、その様子を上空から溜息と共に観ていた。

「ふ~。 何とも・・・強者との出会いは得難いものだな・・・・」



 十分後、全ての艦が切り裂かれ波間に消え、魚の住処へとその姿を変えた。



「さて、如何したものか・・・。 仲間内での本試合も周りの被害が尋常ではないから止められているしの~」

 空を見上げながら。

「・・・・・何処かに手ごろな小惑星でも堕ちて来んかの~」



-------------------------------------------------------


 日本国 九州 福岡市内


「誰か! 何とかしろ!」

 福岡市内を迷彩模様の装輪装甲車が爆走していた。

 車内では、強襲部隊を指揮していた将軍が恥も外聞も無く喚き散らしていた。

 同乗する僅かの護衛の兵士達は必死に各方面に連絡を取ろうと奮闘していたが、その結果は芳しくなかった。

 派遣されていた全ての艦隊は海の藻屑となり、戦闘機や爆撃機などの航空戦力は消耗尽くされている。

 そして、将軍が率いていた強襲部隊は僅かな抵抗の末、陸竜たちによって踏み潰され、蹴り飛ばされ壊滅していた。

 しかも、ふざけた事に陸竜たちは厚い鱗に覆われた約150mの巨体にも拘わらず、アスファルトに足がめり込む事無く平気に歩くし、ビルを潰す事無く屋上に鎮座するのである。

 無暗に街を破壊する事なく、戦車や装甲車などを駆逐しているのである。

 そして、今は二百数十頭の陸竜たちが捕まえた戦闘車両で・・・、



 キャッチボールをしていた。


 手加減全開で尻尾を使い打ち合っているのである。


 偶に力加減を間違えバラバラ打ち壊す事もあるが、手近にある走り回る装甲車や、ひっくり返った戦車をすくい上げ再開するのである。


 勿論、これには深い訳が有る。

 それは敵があまりにも脆弱で街の被害を出さない様に排除を命じられていて、しかも彼等の主であるクッキーが昼寝中である為、何とも暇なのである。


 つまり、これは彼らによる壮大な暇つぶしであるのだ。


 やられる方はたまったものではない、遊びの為に嬲り殺されるのである。

 もっとも、竜たちは生身の兵士には見向きもしない為、死傷者の数は驚くほどs少ないが、彼等にとって何の慰めにもならなかった。



 そして、また一台、戦車が空中で砕け散り、陸竜の一頭が傍を走っている装輪装甲車に目を付けた。


 装輪装甲車の車内では将軍が頭を抱え意味の無い独り言を呟いていた。

「・・・儂はこんな所で死んで良い人材では無い。 そうだ! 絶対に間違っている・・・・」

 既に彼は正気を失いかけていた。


 そして・・・・。


《ガッン!》


 一瞬の浮遊感と共に車両が宙に舞い上がる。

 車内に悲鳴と衝突音と苦痛が飛び交う。


「栄光・・・ 何かの間違い・・・・・ 現実の・・訳が・・・・」

 彼は最後の瞬間まで現実に戻って来る事は無かった。




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 博多市内某所 ショッピングセンター


《ガっシャン!》


 指揮系統から外れた三人の兵士達がショッピングセンターの正面玄関のガラスを叩き割り店内に侵入した。

 傍受した無線では陸上自衛隊が掃討作戦を準備中であるらしかった。

「くそ! このまま終わってたまるか!」




 うっ 後ろ!!


 一番、不味い所に入っていった彼等の運命は!

 南無・・・。


 次回は「ノルン」

 DAY-04はあと二回ほどかな?

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