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DAY-04 東海青竜王

眠れる竜は起こすべからず


 中国の大規模な揚陸艦隊が九州に接近中と言う報告を受けたのは数十分前の事である。

 既に中国艦隊に随伴していた空母群から制空権を奪取しようと攻撃部隊が発艦していた。

 各地に展開されている自衛隊の部隊は後手に回るのは否めなかったが、中国・ロシア・アメリカと多くの軍隊が接近する中で安易に部隊を動かすわけにはいかなかった。

 安易な戦力の集中は戦力の空白地帯を生み出す、現状で最良なのは敵の目標が確定された段階での集中しか無かった。

 中国の艦隊は洋上で二手に分かれ、本隊が鹿児島の吹上浜を目指し、空母を要し強襲を目的とする分遣艦隊が博多を目指して進出していた。

 その為、敵の航空戦力主力は北九州に集中していた、四国および中国地方に配備されていた航空部隊が緊急発進し、北九州を目指した。

 全戦闘機が広島上空で戦列を整え、指揮系統を整理する。

 無駄な作業の様に思われるが、戦力の逐次投入やバラバラの命令系統では戦場では混乱するだけである。

 全戦闘機を統括するコールサイン"西槍リーダー"は全機の状態を確認するために全部隊に通信を送る。

「西槍リーダーから全機に通達! 北九州上空では既に戦闘が行われている模様! 相手はステルス機だ! レーダーの反射率が極端に薄い! 全機! 気を引き締めて行け!」

 次々と了解の返事が返される、彼のヘッドアップディスプレイ(HUD)には部隊の簡略化されたデータリンク図がグリーン(正常)に染まって行く。

 表示されている通信状態のチェックリストが問題なく埋まって行き、彼に戦列が整った事を教えてくれた。

「北九州上空では現在大規模のECM(電子戦)が展開中である! 既に戦端が開かれたとの未確認情報も入っている」

「なお、流れ弾や撃墜地点は気にするな! 既に現地では戒厳令が発令されている、よっぽどの物好きか、間抜け以外はシェルターに避難済みである」

 通信機から複数の苦笑が漏れてくる、彼は此処で一旦間を置き、全員が聞いているのを確認してから。


「全機! ゴーアヘッド(進撃せよ)!  間抜けどもを日本海に追い落とせ!」

『『了解!』』


 雲一つない蒼空を鋼鉄の猛禽達がソニックブームの轟音を撒き散らし駆け抜けて行く。



-------------------------------------------------------


「なんだ? これは・・・・・・」

 その言葉と共に"西槍リーダー"は言葉を失った。

 北九州上空では確かに戦端が開かれていた。

 その空戦は激戦と言う言葉でさえ生温く感じるほどの激しい戦闘であった。


 蹂躙


 HUDに拡大投影された戦闘の映像では、敵軍の戦闘機は砕かれ、引き裂かれ、空中で爆発し、火球と共に消失してた。

 オープンチャンネルに中国語の喚き声と怒鳴り声、そして悲鳴が引っ切り無しに飛び込んで来る。

 恐怖に耐えられず逃げようとする機も存在はするが、例外なく引き裂かれ、四散して消えていった。

 この激戦での味方の損害は・・・・


 "0"


 ・・・損失機なし。


 九州配備の部隊は空戦空域を遠巻きに見守るだけであった。


 突如、無線に通信が割り込む。

『こちら九州配備機指揮機、コールサイン"剣雲リーダー"。 応援部隊の指揮官は誰だ?』

 彼は慌てて返答する、状況に着いて行けず現地の指揮機に到着の報告をしていない事に気が付いたのである。

「?! こちらコールサイン"西槍リーダー"。 すまない、連絡を取るのが遅れた」

 剣雲リーダーからは苦笑が漏れる。

『気にするな。 此方も十分前は同じような状態だった』

「感謝する・・・・・。 それよりこれはどういった状態なのだ? 現状を説明してくれ?」

 HUDの拡大映像に目を遣りながら詳しい説明を求める。

『あ~、そのな・・・。 こっちも詳しい事は判断できん!』

「? それはどう言う・・・・」

『取り敢えず此方と敵対行動はしていない。 かなり出来た頭を持っている、それは間違いない』

「・・・あれでか?」

『ああ・・・。 一番最初は急接近してきてな、ぐるっと回って戻って行ったよ。 何か? 笑われたな~・・・』

「・・・・・・」

 彼は絶句して言葉が出て来ない、それに構わず西槍リーダーは言葉を続ける。

『こっちも迎撃に参加したら、とばっちりを喰いそうだから現状待機だ』

「とばっちり?」

『ああ~。 連中あの巨体で亜音速でクルクル回りやがる、しかもいきなりホバーリングしやがる』

 もう一度、映像を凝視する。

 確かにその場で旋回してたし、空中で静止していた。



「・・・・・・・龍だよな?」

『どちらかと言うと西洋のドラゴンだな』

「さようか・・・」

『さようだ』

 蹂躙劇を背景として、何とも間の抜けた会話が交わされる。




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[眷族の召喚]

  VRMMO[ワールド]において、殺さずに屈服させた同種族のNPCを召喚できる神族クラスだけだ習得できるスキルである。

 習得方法はアクティブなNPCを殺さずに一定数屈服させる事など非常に難易度が高い(神族クラスだと手加減してもオーバーキルに成ってしまう)

 その召喚数に上限が無く、相手の諒承さえ取れれば万の軍勢でも即座に揃える事が可能ではある、しかも召喚した後にMPの継続消費などのデメリットは無く、送還しない限りその場に居続ける事が可能であるが。

 エルフの場合はエルフなど、プレーヤー種族が人間(神族)の場合、人族しか召喚出来ないし。

 ゲーム内ではNPCは独自の生活をしている為、例え召喚できても戦闘準備が出来ていない状態だったりする事が多く。

 同種族と言う縛りの為、ユーザーにあまり意味の無いスキルであった。

 逆に動物系SNPCが習得した場合、大量の高位モンスターを召喚すると言う荒業が可能である。


 通称、公式チートスキル。


PS.

 投稿された動画では、狼系SNPC二匹を従えた巫女姿のPCがケルベロスやフェンリルなどの高位狼系モンスターを万単位で召喚し、動画を投稿したプレーヤー達を蹂躙する光景が・・・・。

(注・動画を投稿したパーティーは18人でした)



 戦士系PC・A

「おかしいと思ったんだよ、単なる決闘に何も無い荒野を指定するなんて・・・」


 盗賊系PC・B

「いやいや、回避って無理でしょ・・・。 避けた先で跳ね飛ばされ、後は無茶苦茶で・・・」


 魔法使い系PC・C

「すまん・・・。 話しかけないでくれ・・・。 思い出しただけで酔って来る・・・。 うぷっ(以下自主規制)」


 ネット動画を見た若者(街頭インタビュー)

「HA! HA! HA! ナイスジョーク!」




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 ミウの従者、小竜のクッキー。

 体長1m弱のクリーム色の羽毛に包まれ、クルクルとした目の可愛い小竜、因みに性別はオス。


 しかし、その実態は。

 一匹で下位の神ならタイマンで喧嘩もでき、二~三匹で高位の神を滅ぼせるエンシェント・ドラゴン・ロードも、尻尾を巻いて逃げ出すか、犬の様に腹を出し服従するかの二択を迫られる、竜種の頂点に君臨する竜である。


 九州地方に接近する中国の艦隊を相手にする為に出張って来て、取った手段が・・・・。


 "眷族の召喚"


 陸・海・空の三属性の高位竜種をそれぞれ二百数十頭を召喚し、後は任せたのである。

 理由は・・・・。



「めんどくさい」



 ・・・・・・・・・・・からである。




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「どうしろって! 言うんだ!」

  中国のパイロットはコクピットで叫んでいた。

 最新鋭のステルス機を駆り日本の自衛隊基地に奇襲を仕掛けようとし、逆に奇襲を仕掛けられ一方的に蹂躙されて行く僚機の末路を観ながら(支援する余裕など彼にもなかった)、彼はこの作戦を思いついた上官を今すぐ殴り飛ばしたかった。


(何が! 簡単な作戦だ! 最新のステルス機を使えば鎧袖一触で終わるだ!)

 思った事を即座に喋る事など出来ない、この機には秘密裏に盗聴録音するシステムが搭載されている事を彼は確信していた。

 帰投後に待っているのは政治犯として投獄、または軍法会議の後の銃殺刑である。


「くそ! 何故当たらない!」

 先ほどから、機銃弾は明後日の方向にばら撒かれ、ミサイルは迷走状態である。

 八〇~一〇〇m級の巨体にも関わらず、最高速度は音速を超え、尻尾のカウンターウエイトを利用した重心移動で驚くほど旋回半径が狭い(その場で一回転するほどである)。

 まぐれで攻撃が当たっても、鱗で覆われた身体には機銃弾は簡単に弾かれ、ミサイルでも傷一つつかない。

 逆に擦れ違いざまに、爪で翼を引き裂かれ、尻尾で砕かれ四散する。

 もっとも物理的に撃墜される方はまだマシである、運よくコクピットに直撃しなければ(注・衝撃で気を失わない事が前提)、ペイルアウト(緊急脱出)の可能性がある。

 逆にブレスの直撃を受けた機体は、気が付かない内に爆発、消失である。


「!・・・・」

 何度目かの急旋回、空中分解寸前の機動。

 歯を食いしばりGに耐えるが、それとて僅かな延命にしかならない事を彼は知っていた。

 コクピットに暗い影が落ちる。

「?!」

 眼を限界まで見開き、頭上で彼が最後に見た物は。


 彼に向かって振り下ろされる強大な尻尾の一撃。




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 博多市内某所 ショッピングセンター寝具売り場


「ふ~あ~・・・・」

 誰も居ない売り場の大きなダブルベットの上で一匹のクリーム色の小竜が羽毛布団に包まれ・・・。

「すー・・・、すー・・・」



 ・・・・・お昼寝中であった。

 狼系SNPC二匹を従えた巫女姿のPC・・・。

 一人しか居ないね(笑)


 クッキーが召喚した竜は、全て最低でもエンシェント・ドラゴンクラスです。


 次は陸竜か、海竜か?

 そして、もう一人参戦予定です。

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