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DAY-04 オベロン

お盆は・・・、疲れるだけだな(グッタリ)

 日本国 東京湾上空


 轟音の鳴りやまぬ狭い機内で30人ほどの完全装備の男達が向かい合わせに座りながら時を待っていた。

 彼らはガムを噛んだり、雑誌や端末を眺めていた、時にはジョークを交えながら笑い声があがる。

 何も事情を知らない人がこの光景を観たら、彼らは完全にリラックスし何の気負いも無いように観えるが、彼らの隊長には部下たちの内面を手に取るように理解出来た。

 彼らは緊張感やプレッシャーを紛らわす為にかなり無理をしているのである。

 その為、内規では禁止されている行為も隊長はあえて見て見ぬ振りをしているのである。

 無論、機のパイロット達もわざわざ上に通報する気などない。


 隊長の携帯端末にデータが送られて、ヘッドアップディスプレイに情報が表示される。

[目標上空まで残り6分 作戦に変更無し]

 彼は揺れる機内で器用に立ち上がり、機外のジェットエンジンの轟音に負けない様に大声を張り上げる。

「いいか! 間もなく目標地点上空だ! 作戦に変更は無い! 当初の予定通り行動しろ!」

「「Yes sir!」」

 貨物室のスピーカーからパイロットの声が流れる。

『降下5分前!』

「各自! 装備を最終確認しろ!」


『後方ハッチ・オープン!』

 ハッチがゆっくりと開き、暗い室内に太陽光が入り、一瞬目がくらむ。

 眼下に高層ビルの屋上が見えた。

 ラペリング用のロープが複数、機外に垂らされる。

「GO! GO! GO!!」

 完全装備の兵士達はラペリングロープを伝い次々と高層ビルの・・・、高級ホテルの屋上に降下していった。



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 12時間前 海上


 一隻の大型のコンテナ輸送船がゆっくりと日本の領海を南下していた。

 アメリカに本社を置く、民間の海運会社所属 コンテナ輸送船「リバティー・オーシャン」

 日本とアメリカが戦争状態に突入しても、即座に民間の交流や交易までは即座には止まる事は無い、両国とも非公式に相手を非難はしているが表だっての行動は未だ世間には公表されてはいない。

 その為、この貨物船も日本の領海を航行したくらいで、即座に海上自衛隊の艦に拿捕される事は無い。

 ましてや、この船の目的地は日本では無かった。

 表向きは・・・・。


 この船も一見すると、何の変哲の無い大型のコンテナ輸送船に見え、脅威には思えなかった。

 実際、貨物船に積まれている四割のコンテナは輸送の為に積まれ、世界各国の港で入れ替えられ運ばれて行く。

 表向きの運送業務も船を所有する運送会社も何ら怪しい所は無い。

 ただ、その貨物の全てが米軍向けの補充品で無ければ。


 アメリカ軍所属、偽装強襲揚陸艦「パール・ハーバー」。

(アメリカのジョークは本当に出来が悪いな・・・)

 艦長はこの艦名を耳にするたびに内心で苦笑を漏らさずにはいられなかった。

 かつて旧日本軍に奇襲を受けた地名を、奇襲専門の艦の名前とする、何とも皮肉の効いたネーミングセンスである・。

「艦長! 後10時間で東京に最接近します」

「強襲部隊の状態は?」

「特に異常は無いようです」

「そうか・・・、出来れば早く出てって欲しいんだがな・・・」

 艦長はこの昼間の強襲作戦には反対であった、偽装貨物船の偽装が剥がれた時、待っているのは他国の軍艦による攻撃である。

 この艦には強襲部隊以外の武装は持っていないのである、攻撃に曝された場合、反撃すらできないのである。

 夜間の奇襲であれば何とでも言い訳が出来たが、昼間では周辺の眼が多すぎるのだ。

 妥協の産物として、東京からかなり離れた海上で発進して、回収はしないという作戦で艦長は表向きは納得したのだ。

 艦長は視線を下の方に向ける。



 その時、コンテナを内部で結合した偽装貨物室の内では最後のブリーフィングがおこなわれていた。

 臨時に設置された大型ディスプレイの前で黒人の指揮官が強襲部隊の兵士達の前で作戦の説明をしていた。

「高空支援は無人攻撃機を出撃させる、コントロールは強襲部隊に一任する上手く使え。 装備は以上だ!」

 ディスプレイに東京上空の写真や周辺の3DCG映像、ホテルの見取り図などが次々と表示される。

「目標の人物たちは東京都内のホテルの上階に軟禁されている。 ここだ!」

 周辺地図に円が描かれる。

「このホテルの半径500mに部隊を展開。 一時的に制圧する! 同時にホテルの屋上から降下、目標の人物たちを10人前後奪取する」

 画面に人の顔写真が並べられ上か下にゆっくりとスクロールされて行く、その中で幾つかの人物の顔写真が赤い斜線が引かれピックアップされて行く。

「奪取する人物の人選は現場の判断に委ねるが、ブラックリストの人物は確実に除外しろ! 目標たちの顔を良く覚えておけ!」

 赤い斜線が引かれた顔写真が大写しになる。

「ブラックリスト人物たちは前内閣の主要メンバー達だ! 例の放送の後こいつらの評価は最低だ! 間違ってもこいつ等は持ってくるなよ!」

 兵士達から笑い声が沸き立つ。

 指揮官はその笑いがある程度納まったのを確認してから説明を続ける。

「目標を奪取後は周辺の車両を使い部隊単位で横田基地に向かえ! 纏まって行動するな! 出来る限り分散・撹乱し追撃を振り切れ!」

 ホテルから基地まで幾つもの青い線が引かれて行く。

 次に横田基地の平面地図が表示される。

「基地は現在制圧されているが、警備は緩い」

 地図に衛星からの情報が次々と書き込まれていく。

「後方から奇襲し、輸送機を奪取! 基地要員を救出し彼らの力を借りグアムに向かえ! 飛び立つ事が出来れば民間人を乗せている事を公表するのを忘れるな、それで撃墜される事は無い!」

 最後に地球儀が表示され、横田からグアムまで飛行経路が描かれる。

「本作戦は以後、正式名を『妖精の輪(fairy ring)』とする。 暗号名『アラモ』だ!」

 指揮官はここで一旦、言葉を切りブリーフィングに参加している兵士達に語り掛ける。

「いいか! この作戦は非常に困難な物になるだろう、諸君らを挽肉にするようなものだ! 遠慮は要らん脅威は確実に排除し、全員生還しろ! 以上だ!」

「「「Yes sir!」」」



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 日本国 東京



 都内高級ホテルの屋上に降り立った兵士たちは、屋内に続くドアを突破し次々とホテル内になだれ込んでいった。

 屋上では5人の直属の部下と共に残った部隊長が東京都内を見下ろしていた。

 無線機には次々と情報が流れ込んで来る。

『無人戦闘車両、投下完了! 周辺の掃討にあたる!』

『周辺を制圧中! 民間人は無視しろ!』

『幹線道路! 現在、警官隊と戦闘中! 数台の車両を完全破壊!』

 近くではステルス仕様の垂直離着陸輸送機が轟音を撒き散らしながらホバーリングし、備え付けのミニガンで地上を掃射していた。

 隣ではキャビンの代わりに無人戦闘車両を複数搭載した輸送機が低空で車両を切り離していた。

 遠くの方で爆音と黒煙が上がる、無人戦闘車両が投下された辺りだ、部隊長はヘッドアップディスプレイを素早く確認する、無人戦闘車両のコントロール状態は[ハンズフリーモード]。

 即ち、完全AI制御で、味方のシグナルを発しない者を無差別に排除する状態である、兵士たちはこのモードの事を皮肉を込めて[ターミネーター・モード]と密かに名付けている。

 その時、無線機に突入班からの連絡が入る。

『こちらアルファ! これより目標の居る階に到着!』

『ガンマ! 準備良し!』

『こちらベータ! 指示を待つ!』

 部隊長は端末に全部隊が予定通り配置に着いたのを確認してから静かに命令を発した。

「突入しろ」

 足元で複数の爆発音と振動が起こった。



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 ホテル内


 高級ホテルの上層階の複数の非常階段の入口を同時に爆破し突入した兵士たちは、ペアとなり訓練通り手前の部屋から次々と錠前を破壊、ドアを蹴破り室内を検めていった。

「クリア!」

「クリア! 次!」

 無人の室内が続く、廊下の反対側からも破砕音が続く。

「クリア・・・、妙だな・・・」

「確かに・・・」

「どうして人っ子一人いないんだ?」

「・・・! 待って!」

 曲がり角で班長が全員を止め、警戒態勢を取らせる。

「テキサス!」

 少し間があってから曲がり角の向こうから。

「サンダー!」

 合言葉が返される、全員が緊張を解く。

 この回に居た全員が合流する。

「脅かすなよ、ブラザー・・・」

「驚いたのはこっちだよ」

「もぬけの空だ・・・」

「こっちもだ・・・」

「情報が間違っていたのか? 他の階は?」

 班長が皆の議論を手で制して、他の部隊との交信をする。

「待て! ・・・それは、本当か? ああ、了解した!」

「目標を確保したのか?」

 その言葉を発した本人があまり信じていない事態を言う。

「いや・・、他の階層も空だ・・・」

 全員に嫌な予想と現実が流れる。

「罠か?」

「ああ、確実にな」

「これから他を探している時間は無い。 完全武装の自衛隊が迫っている! 制空権の確保も限界が近い。 直ちにプランB『エスケープ』に移るぞ! エレベーターシャフトを確保しろ! 地上まで垂直降下だ! 地上に降りて車両を奪取する!」

  プランB『エスケープ』、非常時による完全逃避行動計画。

「「「了解!」」」

 彼らは直ちに行動を起こす、それは部隊で一個の生き物の様に有機的なものであった。



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 ホテルのフロントウインドが銃弾で破砕された、砕け散ったガラスの向こうから複数の兵士達が流れる様に表に出て来る。

「急げ! 班単位で行動しろ! ルートは各自の計画通りだ!」

 部隊長が大きく腕を振り、大声を張り上げる。

 地上を制圧していた部隊は既に撤退を開始していた。

「モタモタして居たら、航空支援を受けずに鬼ごっこをする羽目になるぞ! 急げ!」


《ズッダンー!!》


 その時、彼らの目の前に轟音と土煙を巻き上げ、巨大な物体が地面に叩きつけられた。

 彼らは驚愕の中で訓練で染みついた本能に近い行動を即座に起こした。

 直ぐに遮蔽を取り周囲を警戒する。

 土煙に一番近い所に居た兵士が墜落した物体を確認する。

 それは彼らを此処まで運んできた、ステルス仕様の垂直離着陸輸送機だった。

「何が起きった?」

 答える者の居ないを問いが思わず発せられる、彼は直ぐに機体の各部を観察する。

 輸送機からは炎は出てはいない、高度が低かったのが幸いしたようだ。

 その為、大破する事なく原形を保っていた。

 状況はおかしいが、機体はかなり無茶な不時着をした様な状態である。

 その時、彼はコクピットで僅かに動く何かを見つけ、慌てて目を凝らす。

 そして、パイロットと目が合い、彼は大声を張り上げる。

「生きているぞ! 生存者あり!」

 その言葉に我に返った機体近くの兵士達が一斉に機体に群がる。

「メディック! こっちだ!」

「残骸を退けろ!」

 医療兵が機体によじ登り隙間から応急処置を始める。

「おい! 大丈夫か? しっかりしろ!」

 彼らの周囲では機体の切断が開始されていた。 

「・・あっ、くっ・・! かか・・」

 パイロットが苦しげに声を出す、何かを伝えたいようである。

「ん? 如何した? 何を?」

 医療兵が周囲の騒音の中で聞き取ろうとして、彼の口元に耳を寄せる。

「く・・・、黒・・。 か・・踵・・落とし・・」

 何とかそれだけを言い、彼は気を失う。

「おい?! しっかりしろ!」

 その表情は妙に満ち足りたモノであった。

 彼は慌ててバイタルを確認する、数値は安定していた即座に命の危険は無い様である。

 ホッとする中、ある疑問が頭を占める。

「黒? 踵落とし? 何の事だ?」

 その時、周囲から驚きの声が起こる、彼は即座に周囲に視線を向け確認する。

 そして視線を上に向けた時、彼は衝撃の光景を観てしまった。



 一方、彼らの後方では一つの騒ぎが巻き起こっていた。


 機体に群がって救助をしていた兵士達とは別に、ここから脱出する為に車両を確保しようとしていた兵士達は・・・。


《ドーン!》


 一つの打撃音と共に、遠方から無人戦闘車両が飛んで来て、彼らの前で転がるのを目撃した。

 勿論、車両には空を飛ぶ機能などは搭載されていない、現に車両は完全に破壊され煙を吹くだけである。

 それより彼らの眼はある一点に釘付けになっていた。

 それは車両の残骸に刻まれた、特大の拳の跡。

 実際に目にした情報を整理するなら、無人戦闘車両を殴り飛ばし、ここまで吹き飛ばした者?が居るという事である。

 唖然として動きを止めていた彼らは"それ"を目撃する。


 無人戦闘車両を肩に担ぎ上げて、道路の中央を彼らの方に向かって来る"ドワーフ"。

 それはどっからどう観てもドワーフである、彼らの母国が創ったファンタジー映画の中から抜け出してきたような正統派ドワーフである、思わず"○ムリ!"と叫んでしまいたく位の外見のドワーフがそこに居た。

 そして・・・。

「この出来そこないの"おもちゃ"の持ち主はお前らか?」


 この瞬間、兵士達は「ああ~、終わったな・・・」と悟りを開いていた。




 スカートをはためかせ、身体を回転しながら傾いて墜落した機体の一番高い所に降り立つメイド。

 呆然とその光景を見続ける兵士達には想像すらできなかった。

 上空から降り立つメイド、ディアナ・オパールが上空で輸送機に対して踵落としを炸裂させ、地上に叩き落としたなどと・・・。

 もっとも、その事実を知ったとしても彼らには更に重要な事があった。


 それは・・・・。


「黒」


 誰かがぼそりと呟き、彼女の眉がピクリと僅かに跳ね上がる。


 彼らの運命が決した瞬間である。



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 おまけ


 後に自衛隊に捕虜、もとい保護され病院に収容された彼らは二種類に別けられた。


 ドワーフに投げられ生身で宙を飛ぶと言う貴重な体験をした者と。


 メイドに蹴られ激痛の中で至福の体験をした者に。




 因みに、メイドの攻撃を避けようと努力した者は皆無であったとか・・・・。





彼らはスカートの中で観たのは、お察しの通りの物です。


因みにガーターの勝負○○です。


 次回は「DAY-04 ティターニア」


 先に脱出した地上制圧部隊の運命は?

 キーワードは「Good Job」



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