DAY-04 ゴースト
再開します!
夏バテ、夏風邪気味・・・
疲れが溜まっています(汗汗汗)
日本国 首都 東京
日が変わり、朝日も昇らない暗闇の中、閑静な住宅街を二台のありふれた大型のステップバンが音も無く家々の間を抜けて行った。
途中、一台がマンホールの上で一旦停止、暫くしてから再び動き出した。
やがて『高野』と表札のかかった一軒の屋敷の前で別れ、屋敷を囲む壁の正反対の位置に静かに停車した。
二台の車からは直ぐに反応は無く、まるで車が自然の風景に違和感無く溶け込むのを待っているかのようである。
どれ程時間が経過したであろうか、二台のバンの天板が音も無く持ち上がりそれぞれの車から三人の真っ黒な者たちが姿を現した、彼らは周囲を素早く警戒してから、素早くしかも静かに車を足場にして壁を乗り越え姿を消した。
そして、周囲から違和感が無くなるのを待っていた二台の車は、止まった時と同じく音も無くその場を後にするのであった。
辺りに再び静寂が訪れ、この場所に先ほどまで二台にステップバンと6人黒ずくめの侵入者が居た痕跡は何一つ残されていなかった。
壁を乗り越え侵入した者達は直ぐには動かない、完全に闇に同化するのを静かに待つ。
気配で壁の向こう側に居る車が離れたのを確認しそれから暫くしてから動き出した。
手順と役割は完全に頭に入っているため余計な動作は必要ない、声を掛けあう事も、ハンドサインを交わす事も無く屋敷の庭の木々の間を音も無く闇に紛れ、ゆっくりとだが素早く進んでいった。
やがて庭を抜け屋敷の壁際にて六人は合流、揃った彼らを観ると一人だけ背が低く身体つきからして如何やら女性の様である。
揃った彼らは直ぐには行動を起こさない、表面上は侵入者に焦りは無い何かを待つ待っている様である。
時だけが無意味に過ぎる。
それは唐突に訪れた、辺り一帯から明かりという明かりが一斉に消え、僅かに聞こえていた空調の唸るような音が止む、侵入者の仲間が地下の送電線を切断し停電を引き起こしたのだ。
だが、侵入者たちにとっては絶好のチャンスでも彼らは動かなかった。
突然、周囲に明かりが戻り空調が再び動き出す、停電に備えた予備電源に切り替わったのである。
もし、この時点で屋敷に侵入していたら間違いなく警報機に引っかかり、通報されていた事であろう。
明かりが戻ってから三十秒ほどで再び明かりが消える、今度は周囲の明かりは消えずこの屋敷だけが完全に停電していた、彼らの仲間が予備電源を落としたのである、もっとも異常を検知した警備員や電力会社の人間が来るまで僅かな時間しかないが彼らにとってはそれで十分であった。
彼らはサプレッサーを装備したPDWを構え、ゴーグルの暗視装置を起動してから、リビングに面したガラスドアの鍵を素早く開錠、屋敷内に侵入を果たす。
彼らは闇に包まれた室内でも迷う事は無い、事前の情報収集で室内の様子は完全に頭に入っているのだ、室内の様子は"完璧に整えられ"彼らの仲間が集めたデータと"何一つ変わらなかった"。
彼らは室内を物色する事なくリビングを抜け二階に続く階段を音も無く駆け上がる、二階も静寂に包まれ誰もが眠っているのは疑い様がない、彼らは迷う事無く目標の眠っている寝室のドアの前で初めてその動きを止めた。
此処まで完全に気配を消し音も無く進んで来た彼らであったが、ここからはそう言う訳にはいかない、多少の荒事と騒動になるのを覚悟しなければならない。
ここで初めて一人の侵入者が仲間の一人に視線で合図を送った、おそらく彼がこの集団のリーダーと思われる。
仲間の一人で唯一の女性と思われるものが無言で頷き、隠密任務中にも関わらず覆面とゴーグルとマスクを外す、マスクの下から現れた顔は。
セミロングの茶赤髪、綺麗と言うより、可愛いと言った方がしっくりくる顔立ち、無表情だがぱっちりとした目元から陽性の雰囲気を作り出すその顔立ちは・・・。
サクラこと藤代(旧姓・高野)・さくらと瓜二つであった、彼女はサクラの趣味・嗜好、これまで受けてきた教育・癖などを出来うる限り集め造り出した身代わりである。
情報収集の過程で今晩は彼女が一人でいる事は確認済みである、彼らは、彼らの組織は彼女に自信を持っていた、おそらく短時間なら両親すら騙せるほどの出来栄えなのだ。
無論、彼らもずっと騙し通せるとは考えていない、だが短時間でも時間を稼げれば御の字なのである。
彼女は髪を手櫛で軽く整え、リーダーと思われる男に目線で軽く合図を送る、それを合図に全員が乱れても居ない呼吸を整え、銃に非致死性のテーザー弾の安全装置を解除、鍵に静穏性の爆薬を仕掛け、室内への突入態勢を取る。
《ポン!》
軽い破裂音と共に一斉に一糸乱れぬ動作で室内に突入、就寝している目標を一気に確保する為にベットに駆け寄ろうとする。
所要時間、僅か一秒!
そこに場違いな陽気な声がかけられる。
「随分と・・・、のんびりとした登場ね」
「「? !!」」
ベットの向こう側、テラスに続く窓際で月明かりの中、自然体で佇む巫女装束の女性。
突然、声を掛けられ、思わず自失してしまい無言で驚愕する侵入者達。
窓際の女性は溜息と共に首を振り本当に呆れたと表現し、言葉を続ける。
「こうも簡単に引っかかってくれるとは・・・。 何て表現したらいいか判断に困るわね」
彼女は彼等、侵入者を無視して表面上は意味不明な話を続ける。
「疑問に思わなかったのかしら? 貴方たちの仲間が収集した"完璧に整えられ、何一つ変わらない室内"の様子に?」
彼女、サクラと侵入者との間に有る、"完璧"にベットメイクされ整えられたダブルベットに歩み寄り、ベットのシーツの上に手を乗せ、シーツに皺が出来る。
その動きや状態に何一つ不自然な様子は無く、侵入者達はサクラの行動の意味を理解できず、警戒し彼女から距離を取る。
「完璧に整えるなんて、人が生活していたら絶対に有り得ないのよ」
その言葉と共にダブルベットが寝具と共に僅かに発光し光の粒子を撒き散らして、音も無く砕け散る。
「なっ!」
誰とも判らない、驚愕の声が漏れる。
現象だけを観れば、彼女がベットを素粒子レベルで分解した様にしか見えなかったのである。
侵入者のリーダー格は驚愕の声をあげるのを寸前に自制した。
(まっ! まさか! 物質の構造を自在に操れるのか?)
リーダー格の思考はこの場に居た全員の思いと共通するものであった。
サクラは手を顔前に持ってきてパタパタと振りその考えを否定する。
「ああ~、違う、違う。 出来なくはないけど・・・、今はそんなめんどくさい事はやっていないよ」
「?! なっ! なに! まさか考えを!」
自分の考えに適切に答えを返したサクラに、リーダー格の男は自制出来ず驚きの声を出した。
「思考が垂れ流しよ。 もう少しブロックしないとダメでしょ!」
サクラは、そんな事はお構いなく無茶な事を平気で垂れ流す。
完全に思考がフリーズし、固まる侵入者たち。
「話を戻すわね。 実はこの室内にある家具だけでなく、屋敷内に有る物や屋敷それ自体・・・。 ま~正直に言うと壁を除く敷地内にある全てが"触る事の出来る立体映像"みたいなモノなのよ」
「「??????」」
言っている言葉が理解できずに混乱する侵入者達。
「混乱するのは無理ないわね。 正直なところ結構、大変だったのよ・・・。 停電に合わせて明かりを付けたり消したりと魔導具を使って維持していると言ってもそんな事をリアルタイムでしかも不自然にならないように制御するのって・・・」
言葉と共に懐から淡く青光を放つ5cmほどの立方体を取り出し右手に持つ。
「「・・・・・・・・」」
完全に固まってしまった彼らに更に追い打ちがかけられる、自分達の行動を思い返してみても周りの風景や感触に不自然な事など思い当たらない。
サクラは立方体を指先で軽く弾く、合わせる様に室内の全てが一斉に青白い光が流れ、波の様に広がる。
「「!!!」」
「本当は直ぐに捕まえても良かったんだけど・・・。 面白い女性ヒトが居たから、此処までご招待したのよ♪」
「「?・・・・ !!」」
侵入者の五人は最初、何を言われているのか理解できなかったが、考えが追い付くと共に驚きと共に後ろを振り返る。
彼らの最後尾のドア付近には目の前の女性と瓜二つの女性が、困惑と混乱の表情で呆然と辺りを見回していた。
「いい線、いっていますよ。 だから・・・」
サクラは一旦、事がを切り、優しい笑顔でもう一人の自分に語り掛ける。
「だから、おいでなさいな・・・。 使い捨てされるより有意義な人生を約束します」
「? !!」
「貴女に今まで無かった、自由も、家族も、未来も・・・」
「・・・・・・・」
その真摯の言葉にもう一人のサクラは動揺する。
それは道具として育てられ、自由も名前も無く、家族すら無く、自己の意識も関係なく未来まで決められていた彼女にとってこれ以上の贈り物は無かった。
「?! 貴様!」
会話の外に置かれ無視されていた男たちは、サクラの言葉と、それに動揺する道具・・を観て瞬間的に激昂する。
訓練された素早い動作でマガジンチェンジ。
非致死性のテーザー弾を殺傷能力の高い多弾芯フレシェット弾に交換。
四人がサクラにPDWの銃口を向け、リーダー格がもう一人のサクラにその銃口を向けた、此方の指示に従わない道具など必要としないのだ、早急に処分した方が後腐れも無く手間も省けるのである。
「処分する!」
もう一人のサクラは混乱と驚愕の為、若干、動作が遅れた、銃を構えるどころか目を瞑り両手で目の前を庇うのが精一杯であった。
「邪魔です」
次の瞬間、サクラの言葉と共に家具や部屋など、屋敷を含む敷地内の全てが掻き消えた。
侵入者の五人の男たちは為す術もなく落下し地面に叩きつけらた、彼らの完全装備が仇となり受け身も取れず、全身打撲と複雑骨折で地面の上で激痛のあまり悶絶するのであった。
もう一人のサクラは落下を免れた、彼女をサクラが力場で空中に支えていたのだ。
何時まで経ってもやって来ない苦痛と、肌に優しくあたる風を感じ彼女は恐る恐る眼を見開く。
そして、空中に浮かぶ自分と足元が無い感覚に驚き。
「きゃっ!?」
サクラと瓜二つの声で悲鳴をあげ、空中でバランスを崩し ものの見事に空中で転倒してしまった。
「クスッ」
サクラはその姿を見て、自分でありながら自分が絶対にしない動作を観て、思わずコロコロと暫く笑ってしまうのであった。
ようやくバランスを取り何とか空中で態勢を立て直した彼女が見たのは、自分とそっくりな人物が笑う姿であった。
「ちょっと!」
彼女は自分の立場も状況も忘れ思わず文句を言ってしまう。
「くっくく・・・。 ごめんなさい・・。 ぷっ」
「も~! 数磨に言い付けてやるから!」
自然と記憶に刷り込まれたセリフが出る。
「"数磨"じゃない。 "カズマ"よ忘れないで」
笑いを収め真摯な表情で答える。
「"カズマ"?」
「そうよ。 "カズマ"よ」
「・・・・・・・そっか」
言葉を発せずに何度も名前を繰り返す、何気ない仕草が本当に自分にそっくりである。
思わずもう一度、彼女を観察する、その表情、仕草・癖は本当に自分、サクラに似ていた、それと同時に少し悲しくなった。
人格まで作り変える刷り込みは元に戻すのは非常に危険な事であった、彼女の場合、元の人格が在ったかさえわからない、下手をしたら人格が無かった可能性の方が高かったのだ。
サクラの予想はある意味真実を適切に見抜いていた。
彼女の本当の年齢は五歳、遺伝子を調整され代理母より生まれて直ぐ外部の環境と隔絶された人工羊水の中で育てられる、カプセルの中では筋肉に常に刺激を与え衰えない様に処置されていたのだ。
必要になったらVRMMO技術で頭に情報を書き込み、身体を修正・調整してから使うのである。
便利な道具として。
「・・・・ねえ」
「なに?」
「姉妹になりましょうよ」
「え?」
サクラは自分に右手を差し伸べる。
「私達は家族になるの」
自分自身が遠慮がちに、不安そうに聞き返す。
「・・・・いいの?」
左手を差し伸べる。
「勿論! 母様も父様も喜ぶわ」
「・・・・・」
自らに差しのべられた両手を見て、若干の躊躇、思わず自分の足元を覗き見て落下して行った仲間だった者を闇の中で探す。
「所詮は二階からの落下だから訓練された人たちだから死にはしないわよ」
サクラは視線を向けずに断言する。
「カズマも喜ぶわよ♪ 両手に花ですもの♪」
とことん自分には甘いサクラである。
「さあ!」
言葉に誘われ自分自身の手に恐る恐る触れた瞬間、強引に引き寄せられる。
「あっ」
そして抱きしめられる。
「・・・・始めまして"私"」
驚きが収まると自分自身を抱きしめる。
「・・・・よろしくお願いします"私"」
この日の日の出前、東京近郊で三件の家屋と、北海道で一軒の酪農家の家屋が敷地ごと消失し、跡には23名のロシア系らしい重傷者だけが銃刀法違反で逮捕された。
後に彼らの尋問によって、明らかになった襲撃者の人数は24人だったが、最後の一人だけは最後まで発見されなかった。
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おまけ
「本当に酷いんですヨ! カズマさんハ! 私にあんなに綺麗な船の相手をしろなんテ!」
「でモ・・・、好きにして良いと言質は取りましたシ・・・」
「如何しましョ♪ 如何しましョ♪ 原子力空母だけでも何とか無傷で鹵獲したいですネ・・・」
両手に花? それとも両手に手錠?
あっ! イサベラを入れたら3人か? それとも2.5人かな?
次回は『DAY-04 レヴィアタン(仮)』の予定
エレェリアとアメリカ海軍の大艦隊との決戦!
・・・・・・決戦になるのか?




