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DAY-03 審判までの猶予

誰にとっての審判なのか?


難し話になってしまった(汗)

DAY-03 日本国 東京


 夕闇に包まれようとしている東京の道路を一台のリムジンが白バイに先導されながら止まる事なく疾走していた。

 車内に備え付けられたテレビからは官福の良いが、型通りのスーツに着られている男が何やらやたら解かりづらい言い回しで時おり手元に視線を向けながらマイクの前で喋っていた。

『え~、この様に、わたくし個人としましては~、 ・・・・・・ でありまし。 え~、・・・・・ 国家の事を、え~、検討し~、今後におきましての、前例に無き処置。え~。・・・・ をした次第であります』

「相変わらず何を言っているのか分からない言葉だ。 セリフは官僚の書いた作文の棒読みだな。 これは解説が必要だぞ」

 矢吹は暗い車内で身も蓋も無い辛辣な言葉を吐く。

 今まで黙って聴いていた秘書官が初めて自らの意見を言う。

「要約するなら。 "国内に核テロリストが侵入した、自分達の手に負えないので国連軍に指揮権を委譲します"と言った処でしょうか?」

「かなりオブラートに包んでいるがな」

「しかも、ご丁寧にテロリストは日本人に成り済ましていると言った情報付きです」

「合法的に民間人を拘束する下地が出来ているか・・・」

 助手席で今まで携帯端末で何やら話していた護衛の者が、端末の通話を切ってから彼の方に振り向いた。

「矢吹さん、たった今、自衛隊の各基地に指揮権を国連軍に移譲する様にと口頭で指示が有ったとの事です」

「ふんっ! 物は言いようだな! 詰まる所、軍権の移譲は独立の放棄に他ならない。 国連軍と言いながらその内容はG7のハイエナどもだ!」

「それだけではありません。 テロを防ぐために国連軍に日本国民の逮捕・拘束権を与えると言った条文も有ります」

 これで国連軍は日本国内で無制限の司法権を得た事になる、その事を考え矢吹は誰に聞かせるのでも無い独り言を呟く。

「アダマスを拘束する為に形振り構わずか・・・」

「何か?」

「いや、何でもない。 続けろ」

「はい、差し詰め在日米軍が当分の指揮権を持つそうです。 その後は・・・」

「国連に移譲か・・・」

「はい」


 画面からは既に首相は退席し、代わりにマイクの前に立った官僚から会見の終了が簡潔に述べられていた。

『え~、以上を持ちまして総理による緊急記者会見を終了いたします。 ご不明な点は配布いたします資料をお読みください』

 テレビ画面からフラッシュと怒号が聞こえてくる、中には"視聴者"だとか"説明責任"と言った意味のある言葉も聞こえて来たが、大半は雑音に紛れ聞き取る事が出来なかった。

「どれ程の国民が観ただろうな・・・・」

「・・・・分かりません。 緊急特番位は組まれるでしょうが、大半の国民は政治に無関心です」

「国民の関心ごとはアイドルの結婚と破局とだけか・・・」

 彼のその言葉に誰も何も言わない。

「緊急記者会見が終わりました。 どうやらCMの後に特番が始まる様です」

 矢吹はその報告を苦笑と共に一蹴する。

「ふっ・・、無駄な事を。 次の瞬間には彼らは別の特番を組む事に成るな・・・」

 しばし瞑目、誰もが次に発せられる彼の言葉を待っていた。

 ゆっくりと眼を開き、彼は覚悟を決める。

「予定通り官邸を制圧! 各省庁を完全に指揮下に押さえろ! 議員は絶対に逃がすな、地方に飛ばれて正当政府などと言った寝言を言われては敵わん! 交通機関に網を張れ!」

「「はい!」」



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DAY-03+1 アメリカ合衆国 ホワイトハウス某所


「・・・・結論から言いますと、日本国内の在日米軍基地は自衛隊と警官によって即座に制圧されました。 詳しい事はお手元の端末のデータをご覧ください」

「我が軍の犠牲者はゼロか・・・」

「若干の負傷者はおりますが、全て軽傷です。 そして全ての装備は鹵獲されました」

 大統領は感嘆していた、資料を観るかぎり何処にも漏れが無い。

「・・・・・見事だな。 逃げ出せた国会議員は皆無か?」

「はい。 各交通機関は真っ先に押さえられました。 全員が都内のホテルに監禁され、反抗した者は拘置所に放り込まれました」

 大統領は、若干だが議員の現在位置があっさり解明されたのに違和感を覚えた。

「彼に賛同した議員は居るのか?」

 少しの違和感を振りほどきながら質問を続ける。

「かなりの人数が彼に賛同しましたが、解放された者は皆無です」

「・・・・簡単に主義主張を変える者は信用ならん、と言った処か」

「おそらく。 彼はかなりドライな性格をしている様です」

「・・・東京の今の状態は?」

 国務長官が質問する。

「特に規制はされておりません」

 モニターにニュースから街頭の様子など複数のリアルタイム映像が映し出される。

 ニュースでは文化人と称する者達が平和憲法厳守、憲法違法、説明責任や国民の知る権利と喚き、街頭では普通の出勤風景と、戦争反対と言ったプラカードを掲げたデモ行進が行われていた。

「・・・国務長官、誤訳は無いのか?」

 大統領は困惑した表情で翻訳された字幕に指を指しながら、対面に座る女性に話しかけた。

「大統領、誤訳はありません。 何か不明点でも?」

「いやな、言っている事は字幕で理解できるのだが・・・、この者達は現実を認識しているのか? 今更"説明の義務"など聞いて何の意味があるのだ?」

 既に世界は動いている、アメリカの艦隊も数時間後には自衛隊と戦闘状態に突入するかもしれぬ現状で、政府の手足を縛ろうとする行為が大統領には信じられなかった。

「一種の現実逃避の部類と推測されます」

「ふむ・・・。 このヤブキと言う、クーデターの首謀者はどう言った人物だ?」

「一言で言うなれば"切れ者"です」

 大統領に尋ねられた国務長官は渋面になりながら、言葉をひねり出した。

「この男が外務大臣をしていた半年間、我が国は外交交渉で一回も有利な展開は有りませんでした」

 彼女の発言には苦々しいものが浮かんでいた、ハッキリ言った思い出したくも無い様である。

「それほどか・・・・」

 大統領は当時の外交の苦戦を思い出していた。

「はい、私の前任者は健康を害して職を辞した程です。 私が先ずした事は各国と共同して日本に圧力をかけてこの男を排除する事でした。 2・3の外交的優遇を約束したら即座に切ってくれましたが・・・」

 圧力と飴に屈した日本政府は有りもしないスキャンダルをでっち上げて、尻馬に乗ったメディアがとびつき連日連夜彼を攻撃した、そして政府は彼を内閣と与党から追放した。


「それより、此方の方が問題かと」

 CIA長官が話題を変える。

「中国の艦隊にロシアの空挺部隊か・・・」

 中国の大規模な揚陸艦隊が日本海を横断、目的地は北九州の辺り。

 ロシアの空挺軍団がウラジオストック近郊から離陸、北海道・東北地方を視野に入れている可能性がある。

「四方八方からか・・・・。 我が軍の現状は?」

「在日米軍を除きますと・・・、グアムからの空挺部隊が一番速いかと・・・、あと数時間で日本の領空に入ります」

 大統領は暫し眼を閉じ、机の上を指で規則正しく叩く、彼の考えを纏める時の癖である。

「・・・・・空挺部隊を東京に進出させろ、日本の首脳陣と議員を救助させるのだ」

「正当性を主張するのですね?」

「そうだ。 "クーデターの打倒"いいスローガンではないか」



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DAY-03 日本国 東京 首相官邸


「きっ君は! なっ 何をしているのか分かっているのか! とても正気とは思えっ 思えん!」

 官福のだけは良い、白老の男が豪華なソファーに座りながらブルブルと震えていた。

「十分、正気ですよ総理、いえ前総理。 "戦争を引き起こすのは狂気では無く、冷徹な思考の元で起こされるのだ"、そう言う事です」

「何だそれは?」

「今更! 命乞いか!」

「まあまあ、お互いに冷静になろうじゃないか」

「矢吹君、話を聞こう。 君もこの様な対立は本意では無いだろ?」

 総理の周りに座っている閣僚から次々と罵声と懐柔の声があがるが、立ち上がる者は皆無であったが、相手が沈黙している事に気を大きくした大臣たちがヒステリックに喚きだす。


「・・・それと、ここはお前たちの様な平民が土足で入った良い所では無い!」

「無礼者共! 銃を置き! この場所から出ていきたまえ!」

 本来、神聖で彼等など選ばれたエリートである閣僚以外立ち入れない場所に、野戦服に身を包んで自衛隊員が銃を持ち土足で睨みを利かせている事に、彼らは我慢がならなかった。

 そして、返答は言葉では無く行動で示された。

《カチッ》

 銃の安全装置を外す音が妙にハッキリと室内に響いた。

「まっ 待って!」

「暴力では何も解決はしない!」

「じゅっ 銃をしまえ!」

 次々と命乞いと罵声と悲鳴が室内を満たす。


「静かにしたまえ」

「「!・・・・・・・」」

 矢吹の静かな声が喚いている者達を黙らせた。

「総理、私が何も知らないと思っていましたか?」

「なっ何の事だ!」

「私を追放した裏の事情も、G8の秘密の協定の事も」

 総理は眼を見開き、顔を真っ赤にさせながら矢吹に指を突き付けた。

「!!! きっ貴様! それは! 総理にしか知る事の出来ない! きっ 機密事項だぞ!」

 総理とは対照的に矢吹は冷静に言葉を淡々と紡ぐ。

「機密事項か・・・。 外国の圧力に屈し国益を損なわせる条約を喜々として結び、国民を他国に売り渡す。 それの何処が機密なのですかな」

「すっ 全ては政府の為だ! 国民に知らせて余計な混乱や不安を与えるべきでは無い!」

 彼は総理の言葉に少し悲しくなりなりながら言葉を続ける。

「国民の為では無いのですか?」

「政府が在っての国民だ! 素人共は余計な事を主張すること事態が間違っているのだ!」

「そして、国と国民を売り渡し、国民に塗炭の苦しみを強いると?」

「全ては国益と政府の為だ! それに一時的な事だ! 国家千年の大計に何も知らない国民が口を出すのが間違っているのだ!」

「・・・・・」

 室内に沈黙と総理の荒い息だけが響く。

 暫くして、矢吹は溜息と共に言葉を紡いだ。

「知っていた事で有ったが、知らせたく無かった事でもあるな・・・・」

「何を言っている!」

「ここで交わされた会話の全てが全日本に生中継されていると言う事ですよ」

 全閣僚の間に衝撃が走る、全員が周りを忙しく見回し何かを探そうとしていた。

「なっ なに!」

「盗聴か!」

「・・・・・・正確には盗撮ですが」

「非常識だ!」

「ぶっ 無礼にもほどがある!」

 今さら慌てて顔を隠そうとする者、ただ喚き散らす者など反応は様々であるが、ただ一点共通する事がある、一瞬にして権力と言う魔力を失った老害と言う事が彼らに共通していた。

 室内のドアが開かれ、数多くの自衛隊員と警官が踏み込んで来た。

「連れていけ。 ただし礼儀は忘れるな」

「ハッ!」

 殆どの閣僚は腰が抜け自力で立つ事も困難で隊員たちによって両脇を抱えられながら連れ出されて行く。

「放せ! 無礼者共!」

「私を誰だと思っている! 大臣だぞ!」

「ええい! お前たちの様な野蛮人が触れて良いスーツでは無い!」

「下がれ! お前たちとは身分が違う!」


 全員が引きずられて連れ出された、そして誰も居なくなった室内で矢吹一人だけが残された。

 生中継は既に終わっている。

 そして矢吹は静かに思いを巡らす。

(先に地獄へ行き私の席を掃除していろ。 私も直ぐに行く事となる)


 彼は懐に忍ばせたオリハリコンの結晶を服の上から無意識に触った。


 その時、彼は、矢吹は確かに聴いた、六人の神々の祝福の声を。


 そして迷いの無い足どりで室内を後にする。


 後ろは決して振り向かない。


 扉は閉じられ室内は完全に無人となるが、突如、空間が揺らめき漆黒のゴスロリ服にアメシスト翼を持つ二人の少女が姿を現した。

「・・・・・・・・」

 何も語ること無く二人の少女は、現れた時と同じように空間を揺らめかせながら姿を消した。


DAY-03がようやく終わります。


最後に本当に短い一話が入ります。

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