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DAY-02 死者と人形のコンチェルト

自由の戦士! 

その活躍をその目に焼き付けろ!!

強いぞ! カッコイイぞ!!

流石は超大国の秘密部隊だ!!

その戦闘力を括目してみよ!!



なんてね♪

太平洋日本近海 公海上 アダマス・オブ・ザ・シーズ上空


 エレシアは主より任された船のブリッジの上から空の一点を眺めていた、彼女の眺めている東の空は何の変哲もない平穏な光景だが、エレシアの眼にはこちらに向かって来る六つの黒い飛翔体の姿を捉えていた。

 その飛翔体は全構成要素を炭素繊維で覆われ、空に放物線を描きながら減速する事なくシーズに対して突入コースを取っていた。


【全システム オールグリーン】

【外装パージ準備】

【実行】


 船からの距離が約500mに到達した時、突如、全ての飛翔体が全く同時に空中で爆散した、黒い破片が進路上にあった船とその周囲の海上に音速の散弾としてばら撒かれる。

 エリシアの片眉が若干だが跳ね上がる、船に降り注いだ破片の全ては多重障壁の一層も突破出来ずに消失し実質的な被害は無かったが、不快なことに変わりはなかった。

「非常に不愉快ですね・・・」

 エリシアの眼は飛翔体の爆散した宙域から視線を外さない、彼女の眼には破片とは別の六つの黒い塊を捉えていた、その塊は破片や残骸とは違っていた。


【減速 開始】

【目標 確認】

【降下誤差 許容範囲内】

【修正 開始】


 何故なら、その塊はロケットモータを逆噴射させ徐々に減速しながら此方に向かって来ていた、そこには間違いなく何者かの意思が感じられた、何故なら六つ塊は微妙な加減速を繰り返し彼女の方(ブリッジの在る場所に)に向かって来ていたのだ。


【個体ロケットモータ 燃焼終了 パージ 実行】

【戦闘態勢 以降】

【全関節ロック 解除】


 六つの塊から炎を吐き出していた部品が分離、手足を広げほぼ同時にブリッジの屋根の上に轟音響かせて着陸した。


【自己珍談 開始】

【全部位 オールグリーン】

【データリンク 開始】

【衛星リンク 完了】

【戦闘行動 開始】


 六つの異形がゆっくりとその身体を引き起こした。



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日本 在日米軍 横須賀海軍施設 地下某所


 対核攻撃を想定したシェルターを兼ねた指令室では、複数のオペレーターが衛星回線を中継して送られてきた情報を的確に処理していた。

「『自由の戦士』01~06起動を確認、映像回線確立しました。 以後、コールサインW01~06とします」


「全ユニット、全システム オールグリーン」


「イレギュラーを確認しました。 脅威度判定は"F-"です。作戦行動に支障なし。 イレギュラーを排除させますか?」

 指令室正面に在る大画面の多目的ディスプレイに一人の非常に美しいメイド姿の女性の映し出される。

 指令室に感嘆と驚愕、そして溜息が思わずもれる。

 その不謹慎な声を無視する様に、鋭利と言う言葉を体現している参謀は、冷徹に淡々と命令を出す。

「現状では捕虜にする予定は無い。 W01に排除されろ」

 指令室に居た全員が困惑してしまった、世界の警察官を自認する自分たちが"無抵抗で非武装の民間人を殺害して良いのか?"と言った雰囲気が辺りを包む。

「別に殺害をしろとは命じていない、無力化出来ればそれで良いのだ。 選択肢をW01に委任しろ、脅威度は低い、01のAIは極端な行動はしないだろう。 後はディスプレイを切れ、作戦中に女に見惚れるのは不謹慎だ」

 空気が各段に悪くなったのを感じた指揮官が追加で命令を伝える、室内に安堵の雰囲気が包む。

「了解しました! W01に命令、標的を自己判断で無力化させます。 ディスプレイ・カット」

「それで良い」

 指揮官はオペレーター達が再び作業に没頭していくのを横目で見ながら隣に立つ参謀に小声で注意を促す。

「あまり余計な事を言うな」

「以後、気を付けます」

 参謀はその鋭利な雰囲気に相応しい、相変わらず感情が有るのか無いのか判断できない声で返事を返す。

 二人は・・・、二人だけは分かっていた、"自由の戦士"は確かに高度な判断能力を有するが、そこに感情に起因する躊躇いや迷いは存在しない、只、淡々と任務を遂行するのみである。

 末端の兵士には知らなくていい事や、教えなくていい事が沢山・・あるのである。



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自由の戦士

 アメリカ軍が政府主導で研究開発した非対称戦争を対象とした機能義体。

 自己学習型の光子ニューロAIで制御され高度な判断能力を持ち、監視衛星やUAVで情報を収集し他の個体や司令部・他の部隊とネットワークを形成し高度な戦術・戦略能力を持つ。

 今までテロリストや地元の民兵組織を排除するのに誤爆を引き起こしやすい空爆か、犠牲覚悟の地上兵力の展開しか選択肢の無かったアメリカ軍が開発した、貴重な人員の消耗や誤爆の恐れのない次世代の兵器体系である。

 その大きさは人の範疇から外れる事無く今までの歩兵装備の大半をそのまま使用でき、連続48時間の作戦行動が可能であった、又、肩部と腰部に副腕を有し複数の武装を持ち替える事無く操作と交換が可能である。

 そして強力な人工筋肉と副腕、そこに装備されたワイヤーガンを駆使した空間内立体機動はそれまでの歩兵や戦闘車両では考えられない素早い市街戦闘を可能とし、航空機や衛星などの"空の目"からの捕捉を困難にさせた。

 又、各部の装甲として多積層の炭素繊維装甲を配し、歩兵が携帯可能な武器の銃弾や榴弾の破片(主にAK47やRPG―7を対象)をほぼ無力化させる事に成功した。

 これ程高性能で画期的にも関わらず、その全システムが非常に高価(主にAI関連が)で量産化の目途は無く、未だ試作品どまりである。

 その8本の手足の有る姿や空間内立体機動から開発段階で「 SPIDERスパイダー」もしくは「Octopusオクトパス」と言ったニックネーム(=コードネーム)が付けられていた。



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太平洋日本近海 公海上 アダマス・オブ・ザ・シーズ甲板


 背中に軽機関銃(LMG)とロケットランチャーを装備し、4本の副腕を蠢かせる黒い6体の異形がシーズの甲板に出現した。

 エレシアはその黒い兵士に嫌悪感しか感じ無かった、その昆虫みたいな醜悪な見た目以上にその有り様が自体が彼女の怒りを増幅させた。


〈01に命令伝達 脅威度"F-" 脅威対象を無力化せよ〉

【命令受諾】

【武装選択 高周波ブレード ON】


 彼女に一番近かった黒い異形の兵士が両腕と肩部の副腕から刃渡り50cmの刃を展開させメイド姿の女性に近づき"無力化"を開始、その他の5体はその様子に目もくれず、予めプログラムされていた"船内の制圧”を開始する為、船内に散らばろと行動を開始しようとした。


 01はエリシアに人では不可能な驚異的な速度で接近、その首を高周波ブレード薙ごうと皮膚に触れようとした瞬間。


《ガッンー!!》

 《ダンッ》

  《バッキ!!》

   《パン タン》

    《ズッ! ドーン!!》


 一連の五つの爆音が刹那の間に重なり合い辺りに響き、続いて衝撃波が伴う暴風が船の周囲に吹き荒れた、そしてエリシアの前に居たはずの01は影も形もなかった。

 発生した衝撃波を受けてもシーズは小動こゆるぎもしなかったが、招かれざる客人である自由の戦士の残った5体は、甲板上で吹き飛ばされない様に伏せていなければならなかった。


 そして船の周囲の海面が吹き飛び、空気が鳴動した、その様子は衛星から確認でき、この海域の様子を監視していた各国の上層部を震撼させ、そしてアダマスの居る日本に対して圧力を強めていく遠因となっていく。

 そして、圧力に屈した日本政府は秘密裏に"アダマスを世界に売る〝決断をする。


話題休閑


 彼女の一連の動作を観れた者はその場に存在しなかったが、その動作は単純なものであった。

 ブレードが彼女の皮膚に触れようとした瞬間、

下から蹴り上げ《ガッンー!!》、

自らもジャンプ《ダンッ》、

空中で直蹴り《バッキ!!》、(全力)

空を蹴って着地パン タン、

辺りに響く音速超過の衝撃波《ズッ! ドーン!!》、

以上である。


 おそらく、遠くでこの様子をモニターしていた者達は何が起こったのか理解はしていないであろう、01が突然消えてDLが切断されたのである、それ程の刹那の間で一連の事が起こったのである。

 そして、直蹴りをまともに喰らった01など欠片も存在していなかった、膂力の桁が違いすぎた為おそらく素粒子レベルまで分解されてしまったのであろう。


 彼女は激怒していた、彼等・・、その異形を観た瞬間、その"人の尊厳を踏みにじる”その有り様に。

 ""人の脳を部品として利用した""その存在に。


 そう『自由の戦士』には大統領にすら知らせていない機密が存在する。

 その中枢操作系には『軍法会議で裁かれ、処刑された兵士の脳がAIの代用品として使用されている』のである。


 彼女はその存在を手で触れるのさえ汚らわしく思っている、そして一瞬でも長く見るのでさえ苦痛であった、死後の安息さえ無視するそれはアンデットより悍ましかった、それが主より預かりし船の上に存在すること自体、許せなかったのである。

 エリシアは瞬時に終わらせる事を決意する、今まで出した事のない全力、しかもようやく少しずつ馴染んできた異世界でパワーアップした全開で。(注・アダマスの面々の様な急激な変化では無く、少しずつパワーアップしていた能力値の事)


 ”結界強度 増強”

 ”障壁強度 増強”

 ”慣性中和 駆動”

 ”外部情報 遮断”


 そして戦闘は一秒にも満たない無音の瞬間で終了する、エリシアが5体まとめて蹴り上げ、一蹴りの範囲攻撃でまとめて弾いたのである。

 指令室では突然全通信が途絶し、そして二度と復活しなかったのである。

 結果で情報を遮断された横須賀海軍施設の司令部や各国の偵察衛星は、その様子を最後まで確認する事は出来なかった。


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日本 在日米軍 横須賀海軍施設 地下某所


「・・・・・・・・・」

 室内は沈黙に覆われていた、誰もが身動き一つせずただコンピューターとエアコンの唸る音だけが静かに室内に響いていた。


 起こった事に対して明確に説明できる者はこの場所に存在しないであろう、あれほど冷静で鋭利な参謀でさえ、固まり、ただディスプレイを空ろな目で眺め、呼吸するだけの存在に成り下がっているのである。


 01から信号が途絶したと思ったら、衛星からの映像が途切れ、残ったユニットからも通信が切れ、動揺している内に衛星からの映像が復活し、自由の戦士が全て消えてしまったのである。


 ディスプレイには巨大客船の甲板上に佇むメイドを真上から映しているだけであった。

 突然、メイドがその綺麗な顔と鋭い眼で彼らを睨んだ、その場に居た誰もが息を飲み必死に否定する、

 "そんな事は有り得ない"と、地上から偵察衛星のカメラを視認するなど有り得ないと。

 しかし、誰もが心の片隅でもしかしたらと言う疑問が膨らむのを止める事が出来なかった。

 そして彼らの動揺を見透かすかの様に、右手で銃の形を造りディスプレイ越しの彼らに向ける。


(バン)


 彼女の口は確かにそう動き、銃を撃つ動作をする、自分の胸を思わず押さえた者は一人や二人では無い。

 そして、ディスプレイはブラックアウト、衛星からの信号が途切れる。


 室内は沈黙に覆われていた、誰もが身動き一つせずただコンピューターとエアコンの唸る音、そしてディスプレイのノイズ音だけが室内に静かに響き渡る。



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日本国東京都内 成田空港出入国ゲート


 一人の特徴の曖昧な男が手荷物も無く、税関手続きを通る事なく日本に足を踏み入れた。

 その男に一人の典型的な日本人ビジネスマンが近寄り声を掛ける。

「お待ちしておりました、ラルヴァ様」

「この国は相変わらず騒がしいな」

 両手をズボンのポケットに突っ込みながら、ラルヴァと呼ばれた男は人混みを掻き分ける事無く出口に向かい歩き続ける。

「それがこの国の魅力の一つかと」

 一歩後ろから日本人ビジネスマンが後に続く。

「何か変化が有ったのか?」

 日本を統括する責任者自らの出迎えなど、普通は有り得ない事に彼は感じていた。

「はい。 在日米軍の協力者からの情報です。 特殊部隊と木偶人形が殲滅されたと連絡がありました」

「ほ~・・・」

 その報告を聞きラルヴァは若干驚きの声を発したが、歩みを止める事は無かった。

「俗人共も頑張った方だな」

「はい」

 ビジネスマンの方も特に驚きや焦りは無かった、只、淡々と事実を告げただけである、それ以降、二人は適当に雑談を交わしながら出口に向かって歩き続ける。

 やがて二人は空港の外に出て、そこで待機していたリムジンに乗り込み、交通渋滞とは無縁の速度で都内に向かうのであった。





はい、終了。


解説の方が確実に長いね。


格言

「メイドさんを怒らせてはいけません。 色々な意味で命に係わります」

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