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DAY-02 誇り高きアントラクト

意外と長くなってしまったので一旦投稿します。


本来は『自由の戦士』の着陸シーンまで書きたかったんですけど。

「"パンツ一枚で土下座が嫌なら、大人しくしろ"です」


《ブッチ!》

 その時、四人の耳には確かに何か切れる音が響いた。


 そして、狂ったような音が辺りに響く。


 硝煙の匂いと射撃音が周囲を包み込み、銃弾は途切れる事なく銃身から吐き出される。


 銃声の他に軽い空気の破裂音と爆発が何度か起こる、ロバートがアドオン式グレネードランチャーを時たま発射している。

 訓練の賜物か無意識の内に迷う事無くマガジンを交換、さらに銃弾を叩き込む。


 銃声

 マガジンの落下する音

 再び連射

 薬莢が大理石の床に落ちる澄んだ金属音

 軽い破裂音

 そして爆発音


 長い様でいて、短い時間、全ての音が辺りに響き渡る。


《キッーン》

  《キッーン》


 澄んだ金属音と荒い呼吸音とがようやく彼らの耳に届き始めた時、メイドの立って居た場所はグレネードの炸裂した煙に覆われその様子は杳として知れない。


 ようやく正気に戻ったアルフレッドが先ずした事は自分の足元を確認する事であった、記憶が跳んでいる間、自分たちは何発の銃弾を叩き込んだのかその確認の為である。

 自分の足元には空のマガジンが二つ、ライフルに装着されているマガジンの残弾も・・・"ゼロ"。

 彼だけで30連マガジンを三つ分、90発のライフル弾を丸腰の女性に叩き込んだ計算になる、部下達の足元にも似たり寄ったりの空マガジンが転がっていた。

 彼は思わず舌打ちしたくなる気分に陥った、単純計算で360発のライフル弾と4発のグレネード弾、一人の人間に対しては過剰どころか、消し飛ばしていてもおかしくない攻撃を加えたのだ。


 まさか自分たち軍の精鋭がここまで我を忘れた攻撃をするとは・・・、相当精神的な疲労が蓄積していた様だ・・・。

 全員が顔を見合わせ視線でお互いの表情を確認する、暫く誰も口を開かない。


 ようやく、デビットが疲れた口調で声を出す。

「これ・・・、如何しますか・・・」

「・・・・何をだ?」

 ロバートが間の抜けた返事を返す、まだ本調子では無いようだ。

「・・・いえ、何か痕跡を回収しますか?」

「・・何か残っているのか」

 エリックが至極真っ当な返事を返す、一般常識では肉片も残っていない状態なのだ。

 もし彼らが司令部へ無線で問い合わせていれば、彼らがしている間の抜けた議論は杞憂である事を即座に知らされていたであろう。

 そして、決して彼女から視線を外す事は無かったであろう。


 3人の視線が自然と隊長のアルフレッドに集中する、誰もが彼の命令を待っているのだ。

 アルフレッドは深く深呼吸をしてから、なるべく落ち着いた声で命令をする。

「取り敢えず・・・、確認するぞ」

 遣るべき事を命じられて3人からホッとした気配がしてくる。

「「「了解」」」

「あら? 心配していただけますの? 嬉しいですね♪」

「『!?、!!?』」

 今まさに行動しようとしていた彼らの耳は、場違いな涼やかな声を捉えた。


 煙が徐々に薄くなり、そこには絶世の美女がメイドの衣装を身に着け佇んでいた、その衣服とヘアースタイルには全く乱れが無く、先ほどの銃弾の嵐が無かったかの様に一歩も動いていなかった。


「なっ! どうやって(銃弾を防いだ)!」

 エリックが思わず驚きの声を上げるが、驚きのあまり最後まで疑問を言う事が出来ない。

「ん? もしかしてこれの事ですか?」

 彼女は左手にいつの間にか持っていた袋の口に右手を突っ込み中身を取り出して見せた、手の中から潰れていないライフル弾が3つ、地面にこぼれ澄んだ金属音を三度響かせる。

 驚愕のあまり絶句しているチーム4の4人を尻目に彼女は言葉を続ける。

「掃除をする身にもなって欲しいですね。 こんなにゴミをばら撒いて、拾い集めるのが大変だったんですよ~」


「なっ!」

 誰もが絶句する中、エリック慌ててライフルからマガジンをリリース、ポーチから新たなマガジンを銃に糾弾しようとする。

 床に落ちようとする空マガジンを観て、彼女の目元がほんの少し吊り上がる。


《バッチンー!!》

「がっは!!」


 10m先に立って居たメイドが瞬時に移動しエリックの立って居る場所に出現した、代わりにエリック肺の空気を全て吐き出しながら後方に弾き飛ばされる。

 勿論、彼女は十分手加減していた、もし全力で弾いていたらエリックは生身で音速超過の弾道飛行をした人類初の例として歴史に刻まれた事であろう。

 そんな事はお構いなくちょっと怒った女性の涼やかな声が辺りに響く。

「ですから。 モノを捨てないで欲しいのですよ~」

 彼女は左手に袋を持ち、紫電を纏った右手に空のマガジンを摘まむ。


 彼女の両脇に立って居たロバートとデビットは反射的にアサルトライフルを床に落とし、ロバートはコンバットナイフを抜き、デビットはPDWパーソナルディフェンスウェポンを構えようとする。


《《パッン!》》

    《《どさ》》

 二重の衝撃音が響き、ロバートとデビットの二人は白目を剥いて同時に床に崩れ落ちる。

 その真ん中では、降参する様に両手を上げたメイドが静かに佇む。

 数瞬後、まるで予め予定されていたかの様に彼女の両手に五つの物体が落ちて来る、右手に二丁のアサルトライフル、左手に袋と袋の開いた口にコンバットナイフとPDWが吸い込まれる。

 彼女は二丁のライフルを袋に突っ込みながら、本当に呆れた様な声と溜息を吐き出す。

「は~。 本当に~、人の話を聞かない人たちですね。 貴方はどうですか?」

 彼女の問いを聴いてもチーム4で唯一意識の有るアルフレッドは即座に答える事は出来なかった。

 倒れた二人が規則正しい呼吸をしている事が確認できることから、おそらく気絶しているだけだと分かるが、目の前の女性のポーズから二人の首に打撃を与えて意識を刈り取った事が伺える。

(・・・・そんな事、本当に可能なのか?)

 自問自答しても答えは得られない。

 映画や漫画で良くある技だが、現実での再現は不可能・・・である、実際に実施した場合は意識を刈り取る事が出来ないか、頸椎を叩き折るかのどちらかである。

 現実ではそんな都合の良い技など無いのだが。

 彼の目の前でそれを現実させた者が居た、しかも、見た目は屈強な兵士でも武術の達人でもない、メイド姿の妙齢の女性なのだ。


「あの~。 お話を聞いていましたか?」

 彼は相変わらずマイペースのその声でようやく現実に引き戻される。

「ああ。 すまない、少々考え事をしていたのでな」

「そうです。 では、改めてお聞きします。 大人しく降参していただけませんか?」

「そうだな・・・。 ・・・いや、遠慮しよう」

 彼は少し迷いながらもしっかりとした口調で断る、彼女はそんな彼の様子に心底、不思議そうに見ながら。

「うん? ですが、勝算はゼロですよ?」

「ま~あ~。なんだ、降参するのは、格好悪いからな~」

「矜持、ですか・・・」

「・・・矜持、そんな恰好の良いものじゃないよ、部下が抵抗していたのに俺だけ降参する訳にはいかないだろ~?」

 肩を竦め、しょうがないと言った感じで、ワザとらしい言い訳をする。

「クスッ、・・・なるほど。 ・・・では、お相手させて頂きます。 ですが残念なのですが、全力を出すほどの相手ではございません」

「そうか・・・、それは、本当に残念だな・・・」

 ほんの少し目をつぶってから、何かを気付き言葉を続ける。

「そう言えば、名前を聞いていなかったな。 教えてくれないか」

「これは失礼いたしました。 私の名は"マリア・パール(Maria Pearl )"と申します。 以後お見知りおきを」

 苦笑が漏れる、彼は勘違いをしてしまったマリア・パール(真珠の聖母)とても本名とは思えなかったのである。

「本名は・・・。 教えて貰えないのだな・・・」

 ちょっと傷ついた気分になり、まるで十代の少年の様に感情が思わず顔に出てします。

「いいえ。 この名前が私の固有名詞です。 私をお創りになった主様が"色や番号じゃ味気ない"と申され宝石の名を与えてくださったのです」

「それは申し訳ない。 それでは此方も名乗るとしよう。 アルフレッド、アルフレッド・ウェイラインだ」

「アルフレッド様ですね」

「ふっ、様は余計だがね」

 アサルトライフルの弾倉を丁寧に交換し、左手にPDWを構える。

「さて、図らずも一騎打ちの様な感じになってしまったが。 少し古風だが名乗りをするとしよう」

 迷いの無い微笑を浮かべながら、両手の銃を構え。

「アメリカ陸軍特殊部隊所属チーム4隊長 アルフレッド・ウェイライン少佐」

 誰もが引き込まれる笑顔を返しながら、マリアは左手に持った袋を丁寧に脇に置き。

「アダマス・オブ・ザ・シーズ所属管理メイド マリア・パール」


 二人は同時に声を発する。

「「参る!!」」



 アルフレッドは前に出る。

 銃で戦う以上、距離を開けた方が有利であるが、その様な当たり前の考えで彼女の意表を付けるとは思わなかったのだ。

 それ故に前に出る、


 刹那の瞬間、彼女の姿が目の前に迫る。


 両腕に衝撃。


 一瞬で銃を取り上げられた、左手に痺れが走る。


 全身に激痛が走る! 視線が反転する? 投げられた!!


 意識が遠のく・・・。 手はまだ動くか?


 右手は? まだ動く!


 ナイフを! 人差し指と中指で抜く! 手からナイフがすり抜ける・・・。 クソッ! 


 此処までか・・・。


 目がかすむ・・・。 ・・・ナイフが力なく宙を漂う。 


 彼女が・・、マリアが二本の指でナイフの刃を挟む。 


 彼女の表情は? 驚愕? 称賛? 何故?


 彼女の、マリアの口が確かに! 言葉を・・・


「見事」


 意識が暗黒に堕ちる・・・・・・・・・。


 会心の笑み! なあ・・・、俺も 捨てた 物では  無い  だろ?



 マリアは感動していた。

 自分の足元に横たわる男は、二度も自分の予想を超えてみせたのだ。

 一度目は銃を奪い取る時、彼は銃を構えた瞬間、右手を銃のグリップから放していた、その行動の為、彼の右手を完全に痺れさす事が出来なかった。

 二度目は彼を投げる時、打撃点を僅かに外され一瞬で意識を刈り取る事が叶わなかった。

 そして、ナイフを抜く事を許し、自分に"ナイフを掴む″と言う余計な動作を一つさせたのだ。

「本当に見事ですよ」

 お世辞も嘲りも無い真の称賛、もし穏やかな表情で気を失っている彼に意識が残っていたら、照れて明後日の方を向いた事であろう。

 マリアは周りを見回し、薬莢で散らかっている床を見て。

「掃除は・・・、他の同僚に任せましょう」

 床に横たわる四人を見ながら。

「・・・この方々を労われなければなりませんね。 戦士に相応しい待遇を・・・」

 彼女はチーム4の四人を迎賓室に運ぶのであった。



 もっとも、その運び方を見る者が居れば、とても丁寧に運んでいるとは言えなかった。

 四人のベルトでそれぞれの手足を縛り、その先端を持ち猪の様に引きずっていたのだ。


「手は二つしかありませんし。 二往復は面倒ですからね。 これ位は許容範囲でしょ♪」


 もし、チーム4の四人に意識があったら、声を大にして突っ込んだであろう。

「何処が許容範囲だ!!」と・・・



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日本 在日米軍 横須賀海軍施設 地下某所


「ベレー・チーム4のDL途切れました。 全ユニットとの通信途絶。 作戦をフェイズ2に移行します」


「司令。 作戦通りです。 作戦を次の段階に移行します」


「うむ。 敵の防衛兵力はどうなっている?」


「計画通りです、船の各部に分散する事に成功しました」


「宜しい。 『自由の戦士』の現在位置は?」


「予定通りです。 後・・・、五分で到着します。『自由の戦士』01~06、状態は完璧です」


「良し。 全オペレーターはユニットのバックアップから『自由に戦士』の制御に回れ」


「『「Yes sir』」


アメリカ軍の秘密部隊『自由の戦士』とは?

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