エルタス建国史
美化しすぎです。
「エルタス」
この現在において、世界でこれほど栄えている国は、過去において例がなく、この国が始めは小さな農村から始まったなどと誰が想像できるであろうか。
この国家が今の繁栄があるのは二人の稀代な名執政官によって創られたのは余りにも有名な話である。
「ギルダー・エルタス」
「セオドラ・エルタス」
親子二代でエルタスの基礎を築いた政治家である、本書では彼らの軌跡をほんの少し紹介するものとする。
――中略――
「ギルダー・エルタス」、彼には多くの二つの名が存在する。
「エルタス建国の父」「名執政官」「稀代の政治家」そして最も有名な二つの名が「眠る事の無き名君」。
彼は息子セオドラと親子二代にわたりエルタスの建国に従事した名執政官である、後世の政治学者や歴史家たちは「ギルダーがエルタスと言う名器を造り、セオドラが銘酒を注いだ」と謳われるほどの政治家である。
彼が一度、執務室に入ると最低でも10日は出て来る事は無かったとされる。
当時のエルタスは急激な膨張期にあり、常に人手不足が深刻であったとされている、だがその様な混乱期にあってもエルタスの政治が滞ったとされた記録は現在においても発見されていない、この事が彼がいかに優れた政治家であったか証明するものである。
彼は常に執務室に在り、決して政庁の職員や側近を近づける事は無かった、氏の周囲は常に彼が私的に雇ったとされる使用人のメイド達が控えており、氏と職員の間を仲介していたとされている。
彼女たちは非常に優秀であったとされる記録が残されており、現在においてはギルダー氏が私的に雇用した秘書であったするのが現在の評価である。
では、なぜ彼女たちを秘書としてではなく、メイドとしてしていたの疑問に残るが現在の研究においてはその疑問は、ほぼ解決されている。
当時、エルタスは人材だけでは無く資金面でも不足しており、私的とはいえ秘書として登録すれば規則により政庁から給料として一定の賃金を支払わなければならない、即ちそれはエルタスの税金である。
しかし、ギルダー氏の使用人のメイドであれば、その給料は氏の給料から支払われる事になる、それはエルタスの財政に少しでも余裕が生まれる様にする彼の気遣いであろう。
この様にギルダー氏の、この細やかな気遣いは現在においても見習うべき政治家の資質であろうと考えられている。
また、この時期に映された記録映像や写実画の中にはギルダー氏の立ち姿を一片たりとも存在しない、彼は常に執務の為に机に向かい、決してその場所から立ち上がる事は無かったとされる。
側近や職員を遠ざけたのは、彼らが氏を気遣うのが執務に邪魔であったからとされている。
後年、氏が全ての公職から離れた後に、幾度かインタビューに答えている、その記録は現在も残されており。
そこには彼が常に「私はただの村長であった」と答えるギルダー氏の姿が残されている、常に謙虚さを忘れない彼らしい姿である。
エルタス暦219年
エルタス中央大学 政治学博士 バトソン・リース筆
『稀代の政治家』より抜粋
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「うゅぬぅっぺらー!!」
執務室と表札の付いたドアの向こうから意味不明な奇声が政庁の廊下に響き渡る。
何事かと集まる職員や警備員が、その奇声の発生場所がギルダー氏の執務室だと分かると、何事も無かったかの様に通常業務に戻って行く。
その執務室から奇声が響くのは日常の一環で注意すべきことではないからである。
そればかりか、彼があと何日間、執務室から出て来ないか賭けの対象になっているほどである。
「もうー! 嫌だ! 家に帰りたい!!」
一人の壮年の男が書類に埋もれた部屋のなかで盛大に喚いていた。
「ギルダー様! どうして! そう我儘なのですか! 第一、家に帰って何をするつもりなのですか?」
傍に控えていた非常に美しいメイドが苦言をする、因みにその手には危ない薬の入った無針高圧注射器は既にない、証拠隠滅は完璧である。
「それは・・・。 食事や・・・、睡眠を・・・・」
美人にきつい絶対零度の視線に曝されて、しどろもどろに言い訳するギルダー氏。
「お腹が空いているのですか?」
メイドのきつい一言。
「いや・・・」
栄養剤のお蔭で空腹は感じない。
「眠たいのですか?」
メイドの更にきつい一言。
「・・・いや・・・・」
ばっちり目が覚めて爽快である。
「疲れているのですか?」
メイドの絶対零度の詰問。
「・・・・・・・・・いえ」
むしろこのままトライアスロンが出来るくらい力が余っている。
「なら、何が問題なのですか?」
「いや~、ほら・・・・・、!! そうそう家族も心配しているじゃないですか!!」
メイドの詰問に何とか言い訳を考え、尤もらしい言い訳を思いつく。
それに対して、冷静に返事を返すメイド。
「ご家族から連絡がございました」
「?! 何時!?」
「つい先ほどです」
「やっぱり心配しているじゃないか! なら!」
明らかに喜色を浮かべ、早速、帰り支度をしようと椅子から立ち上がろうとするが、いつの間にか彼の脇に移動したメイドによって力ずく座らされる。
「いえ。 1週間ほど旅行に行くので宜しくとの事です」
「え・・・・・・・・」
彫像と化すギルダー氏。
そんな彼の姿を無視して、彼の目の前にメモをかざしながら説明を続けるメイド。
「此方が、奥様直筆のメモです。 お土産の希望が無かったので適当に買って来るとの事です」
「・・・・・・・」
石化中。
「ちなみに、ご子息のセオドラ様、アルトニース伯爵令嬢エイレリア様、アルトニース伯爵夫人ユーリア様も一緒に行くと言っておれれました」
「・・・・・・・」
まだ、石化中
「では、此方の書類の処理をお願いいたします」
更に、積み上げられる書類の山が目の前に出現する。
「・・・・・・・・・はい」
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彼はこの激動の時代を常に先頭に立ち、牽引し、前に進んだのだ。
その姿勢、決断力、意思、それは今現在に置いても受け継がれるべき彼の遺産である。
後世の政治家は彼を指針として常に自らを鍛えるべきである。
『稀代の政治家』後書きより抜粋
こうして歴史は造られていきます(笑)。




