DAY-01 エピローグ
今回は早めの投稿です、休日は最高!
ようやく一日目の終了です。
東京湾上空、アダマス・オブ・ザ・シーズ甲板上
シーズの責任者である自動人形のメイドリーダーのエレシアは東京の街並みを眺めて感慨深く呟く。
「この世界も、中々・・・」
物理的に見えないシーズを監視する者が居る、おそらく魔法を使える者がこの世界にも居るのであろう。
「少々、迂闊でしたかね・・・」
『魔導に対して透明では無い』これがシーズの唯一の欠点であろう、もっともこの世界に魔法を使える者がいるとは、アダマスの誰も思っていなかったので欠点とは言い切れないのだ。
「如何いたしましょうか?」
脇に控えていたメイドの一人が聞き返す、並列思考でわざわざ言葉に出す必要はないのだが、彼女達の主は言葉に出して会話するのを好む為、彼女達は会話するのが趣味に成りつつあるのである。
「必要とあれば、シーズのステルス解き、囮にして愚か者を誘き出します」
「囮ですか?」
「ええ、この世界の魔導、少々興味がありますし、それと」
「それと?」
エレシアは後ろを振り返り、人の悪い笑みを浮かべる。
「時には、娯楽も必要でしょ」
後ろに控えていたメイド達もほほ笑み返す。
「確かに・・・、では盛大な歓迎の準備をするとしましょう」
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普通の家の普通のリビングで複数の男女が向かい合って話し合っていた、目の前に置かれた飲み物が無意味に冷めていく。
「・・・・と、言う訳か?」
壮年の男性が緊張した表情で何とか言葉ひねり出した。
「そうだね・・。 大筋でその理解であっていると思うよ」
ゲームをしていたら、異世界に転移し、その世界で好き勝手やって、ゲームの世界で無くなったから現実の世界に帰還したなど、いったい誰が想像する。
息子が戻って来たことは正直、嬉しいが怒っていいのやら、泣くべきか、叫ぶべきか、呆れるべきか、はっきり言って感情がごちゃごちゃで思わず目元を揉み解す。
藤代・達樹(普通の会社の課長)はっきり言って頭痛がしていた、妻の恵美の様にソファーで横になれたらどれほど楽であったであろうか。
「義兄さん。 落ち着いてね」
「ああ・・・」
藤代・涼子、美雨の母親の義妹は二人の娘を両脇に抱えながら、何とも困った表情をしている。
娘が戻って来たと思ったら、双子になっているのだこれで混乱しなければ、神経が図太いのではなく、神経があるのかそっちの方を疑いたくなる。
彼はちらりと息子の数磨の脇に立つ一人の女性に視線を向けた。
身長175cm位の凹凸のついたボディーラインに流れる金髪、そして長い耳。
エルフである。
イサベラ、息子の従者だと名乗った、この世界に存在しない種族の娘。
それと彼女の腕に抱かれている翼がある白猫に、彼は視線を上に向ける、そこには羽ばたかないのに空中に浮かんでいる体長約1mのクリーム色の羽毛に包まれた竜。
(人生何処で間違えたかな・・・。 俺って普通の会社員なのにな~)
現実逃避気味に、今この瞬間、ビールを飲めたらどんなに楽な事か、思わず考えてしまう。
「それで、お前たちはもうこっちの世界にいるのか?」
現実逃避している兄に代わり美雨の父親の藤代・隆也(大学講師)が話を続ける、職業柄か彼の方がまだ色々と耐性が高かったようである。
「う~ん。 それは難しいと思う、今回は短期間の予定だったし、もしこっちに居るとしても僕たちは何とか頑張って10年、ミウはおそらく1年・・2年が限度かも」
妻が二人の娘を無意識に抱きしめる、それを横目で確認してから。
「何故?」
「気が付かない? 成人している自分は分からないかもしれないけど、美雨はこの一年、身長が全く伸びていない・・・」
「「「!!」」」
カズマの父親も再起動、息子の容姿を確認するも成人男性が一年やそこらで目に見える変化など判らないだが、姪の美雨は・・・
思わず娘を凝視、その容姿は記憶の中の一年前から全く変化していない、あえて変化があるとしたら髪の長さくらいである事を知る。
「・・・・、不老不死?」
「不老ではあるけど、不死ではないと思う。 もっとも死ぬ様な事に遭遇していないから判らないが・・・」
その言葉に三人は一様にほっとして異世界での生活に幸運に涙ぐみながら感謝するが、当人たちにとっては自分たちが死ぬような怪我をするには・・・
((星の一つや二つくらい道連れにしないと無理かな? かしら?))
両者の間には絶望的な認識のズレがあった。
もっとも、それで死ねるかどうか当人達も試す気は無い、不死身だった場合は、ただ痛いだけであるし、それで怪我をする保証も無いのだ。
しかも、戦略核弾頭の連打を喰らっても『今日は少し暑いね?』『そうかな? 普段と変わらないよ』で終わる可能性すらある。
例え話として彼らに致死レベルのダメージを与えるには。
彼らが完全な無抵抗と仮定して、幾重にも張り巡らされた障壁・結界(自己修復機能・有)を突破して、一撃で生命力(自動回復・有)を奪い、幾多の蘇生術式・再構成術式(自己再構成機能・有)を突破しなければ為らない。
無理ゲーのラスボスもここまで理不尽ではないであろう。
しかも、彼らが本当の不死身だった場合、全てが徒労に終わるのである。
異世界の神でも、ここまで不死身ではない。
実際、彼らは近い将来、異世界最強レベルの神様をその領域ごと消滅させている(無自覚)。
閑話休題
「それで、お前たちはこれから如何するつもりだ?」
結局はこの疑問の一点に集約される、彼らの息子や娘はこちらで暮らすには色々とハードルが高すぎるし、『不老』それだけで色々と不味い、はっきり言って実験室送りの良くて一生(?)監禁生活であるし、最悪は・・・・、想像するだけで吐き気がしてくる。
「その事なんだけど」
「何だ?」
「異世界に住む気は無い?」
「「「え?」」」
藤代・恵美は未だソファーで横になっている、その口から規則正しい寝息が聞こえてくる、如何やら完全に熟睡してしまった様である。
異様な静寂な室内に規則正しい寝息だけが妙にはっきりと聞こえていた。
(盗聴はさっさと潰して正解だったな)
すっかり冷めてしまったコーヒーに口を付けながらそんな事を考えるカズマであった。
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その暗い質素な造りの室内で切実な思考をする一人の女性。
(これは困りましタ・・・)
エレェリアもといアリシア・T・サインは困惑していた。
(動けませン・・・)
身体の自由が全く効かないのだ。
(起きるまで我慢できるでしょうカ・・・)
何を?と聞くのは野暮である。
彼女の眼には暗い室内も昼間の様に観る事が出来た、彼女真っ暗な室内で狭いベットの両隣を見る。
壮年の男女が彼女を抱きしめて寝ている。
ノーマン・サイン。
アマリア・サイン。
彼女の両親。
力ずくで起きる事は不可能ではないが、両親の両目には涙の跡がはっきりと見る事が出来た。
(少シ・・・・、老けましたカ・・・)
両親は彼女が思った以上に年を取った様に観えた。
再会して少し話をした、両親はこの一年、国を離れ、仕事を辞めて日本で自分の事を探し続けていたと。
(苦労をかけてしまいましたネ・・・・)
二人は涙ながらもう離れないと言った、移住の話を切り出せば、おそらく異世界まで付いて来る事であろう。
両親の愛を感じ、思わず優しい気持ちになるアリシア。
そして、やっぱり困惑の表情をなってしまう。
(それにしてモ・・・、本当に困りましたネ)
日が昇り朝になるには、まだまだ先である。
もっとも、朝になり手洗いまで付いて来ようとする両親と格闘する事になるのに彼女はまだ知らない。
(まッ、無粋な連中は【やまと】と【むさし】に排除させたから良しとしましょウ)
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地球某所
『コレデアロウカ?』
『ウ~ム・・・。 解カラン』
『念ノ為、アト二・三潰シテオクカ?』
『ソウダナ。 ソレガ良カロウ』
『手近ナモノデヨカロウ』
『ナラ・・・、アレダナ』
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同時刻 アメリカ・中国・ロシア 各某所
「監視衛星が潰されました!」
ほぼ同時に、担当責任者がその報告を受けて。
偶然にも、同時に飲みかけの飲み物を吹き出すのであった。
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「イサベラ、一つ聞くが」
「はい、何でしょうか?」
「何故? 一緒に風呂に入ろうとするんだ?」
「何故って? 第二夫人の役目とした余計な虫が付かないように監視する為です!」
「第二夫人って! 誰が! 何時! 結婚した!?」
「多少、強引でも既成事実があればそれが事実になるかと?」
「誰だ! そんな事! 吹き込んだのは!? てっサクラしかいないか!」
「はい! 『第一夫人は私だから、カズマが浮気しない様に監視する為ならいいよ♪』と言われました」
「あっ えっ お・・・」
「さっ、お背中を流しますね♪」
「まっ 待って! 俺は風呂に入るとは!」
「もう、服も脱いでいますし、今更ですね。 それと、この風呂で暴れると確実に壊れますので御両親に迷惑がかかりますよ?」
「くっ、謀ったな! 孔明!」
「それは誰か存じ上げませんが、今更ジタバタしないでください♪ あっ! それと御両親に結婚の報告をしたら、重婚はどうかと言いながら泣いて喜んでいましたよ♫」
カズマの外堀は完全に埋まりましたね。
さて、次回は外伝が二つほど挟む予定です。




