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DAY-01 プロローグ

最初に接触したのは・・・

「アダマス・オブ・ザ・シーズ」略称【シーズ】

 エレェリア製造・命名の巨大船、その内部には彼らの本拠地である白亜の宮殿と同等の設備を有し、その設備の運営には船専属の自動人形メイド二百人があたり保守・管理している。

 レーダーに対する完全なステルスは勿論の事、光学迷彩を装備し、ありとあらゆる探知妨害を搭載している為、その巨体にも関わらず発見は人の手による直接接触以外存在しないとされている。

 そして、各種の結界・障壁の展開を可能とし核が直撃でも全く影響のない防御力を誇る。

 さらに、音速超過の飛行能力も備え、地球上では成層圏内であればどこでも移動可能である。


------------------------------------------------------------


 グアム島の北側の広大な海域ではアメリカの原子力空母を主軸とする空母戦闘団が「デフコン3」の警戒を維持して回遊していた、その体制は今までにない程に緊迫し、張り詰めたものであった。

 空母航空団の電子戦機や早期警戒機が護衛の戦闘機を従え、燃料を消費を考えない体制で常に上空を旋回し周囲を警戒していた。

 彼らはその耳と目を研ぎ澄まして、どんな些細な変化でさえ見逃さない様に全神経を集中していた。


 空母航空団所属の早期警戒機、コールサイン「ダンク・シュート」

「何か感知できたか?」

 電子戦機の機長が機内無線で複合ディスプレイを睨むレーダー手に尋ねる。

「いえ。 何も、衛星で登録済みの漁船と貨物船しかいません」

「そうか・・・」

 機長は言葉短めにそれだけを返した、暫く機内は緊張した沈黙に覆われる。

 操縦桿を操作していたコ・パイロットが重苦しい沈黙に我慢できなくなり機長に愚痴をこぼす。

「いったい、何なんですかこの警戒態勢はまるで戦争状態みたいじゃないですか?」

「最高の警戒をしろと言う、上からの命令だ」

 機長は機外無線のスイッチに手を掛けながら、空母の管制を呼び出した。

「ダンク・シュート(D・S)からセンター・コート(C・C)」

『こちらC・C如何した? D・S』

「機内無線にノイズが若干入る。 調整の為に暫く機外無線をオフにする、緊急時はコードSのデータ回線で呼び出してくれ」

 勿論、その様なトラブルは発生していない、無線を切る為の方便である。

『こちらC・C、了解した』

 彼は無線のスイッチを切り、念の為に機外無線とボイスレコーダーのブレイカーをカットする、これで機内は完全な密室となる。

 彼は機内無線で。

「暫く無駄話をする。 異常があれば知らせろ」

「「了解!」」

 全員から返事が帰って来る、コ・パイロットがそれを確認してから機長に質問する。

「上から? 指令(艦隊司令)の命令ですか?」

「いや。 更に上だ」

「更に上って・・・。 国防省? ! まさか!」

 操縦しながら物思いにふけっていたコ・パイロット唐突に真実に辿り着いた。


「そうだ。 大統領命令だ」

 機長には、操縦室と機内無線に耳を澄ませていたレーダー手達の息を飲む気配が伝わって来た。

 機長は機内無線以外がオフになっているのを確認してから徐に、上層部に流れている不確定情報を部下たちに伝えた。

「一時は”1”の発令も検討されたそうだ」

「「!!!」」

「”1”って! デフコン 1ですか!」

 ”デフコン 1“、通常兵器の使用は勿論の事、大統領命令次第では核兵器の使用さえ許可される状態である、まさに最高レベルの切迫した状態であった。

「なんですか! 宇宙人か地底人でも攻めてくるんですか?」

「さあな・・・。 それは判断できないが、上にいくほど焦燥感と緊迫感が増大していくのは確かなようだ」

 コ・パイロットもレーダー手達も最近の艦隊内の様子がピリピリした居心地の悪い緊張した雰囲気に包まれているのを感じていた。

「そう言う訳だから、あまりふざけた事はするなよ、どこからとばっちりが飛んで来るか分からんぞ」

「了解!」

 機長はそう言いながら機外無線とレコーダーのブレイカーを戻しスイッチをオンにした、この会話の内容は此処までと言う暗黙の命令である。

「こちらD・S。 C・Cこちらの音声はクリアに聞こえるか?」

『こちらC・C。 クリアに聞こえるぞ』

「そうか、どうやらスイッチの接触不良だった様だ」

 管制のオペレーターも何かを察したのか深くは追及しない。

「了解、異常がなくて何よりだ。 引き続き警戒してくれ」

「こちらD・S、了解」


 もし彼らに悪魔が未来予知の力を与えると囁いたら、彼らは喜んでその魂を差し出すだろう、何故なら早期警戒機、コールサイン「ダンク・シュート」はこの30分後に貴重な画像データの撮影に成功してしまうのである。


 この早期警戒機の機長はこの出来事を生涯、悩み続ける事となる。


------------------------------------------------------------


 エルタスの北の郊外に位置する白亜の宮殿の更に奥には、直径20kmの円形の内海が存在する、浮遊島や小島が点在し球状のドーム型結界に覆われたそこは南国の気候が再現され、様々な魚と水竜と人魚を始めとする水生の亜人種が平和に暮らしている。

 近頃は、許可を受けたエルタスの住民が保養の為に訪れ賑やかにはなっているが、それでも節度を守ってのんびりと過ごすのが一般的である。

 この静かな内海に、つい最近巨大な白亜の客船が一夜で出現したが、今更驚く者は付近には存在しなかった。

 とある昼過ぎ、巨大な船の浮かぶ沖合では一組の男女が海面に立ち話し合っていた。

「さて、リリエール、後は何かあったかな?」

 アダマスのリーダーカズマは一通り伝達事項を確認した後に、リリエールと呼ばれる金髪の流麗なメイドに尋ねる。

「いえ、特にないと思われます」

 明確の受け答えを返したのは、五百人に増強された自動人形のメイドを率いるメイド長のリリエールである。

「エルタスの事は内政と書類の処理はギルダー様に、対外的な事はエイレリア様に。 両氏から要請があり次第適切に処理します」

「うん」

「客人は丁重に応対し、別の意味での客人も非常・・に丁重・・に対応させていただきます」

「うん、特に問題ないな」

「はい」

「それじゃあ、リリエール、短い間だが後の事は頼むぞ」

 カズマは流麗なメイドに後の事を頼んでいた。

「はい、お任せください。 良い旅を、御帰りをお待ちしています」

 メイドは水面上で優雅に一礼し主人を送り出していた。

「ああ」

 カズマは海面を軽く蹴り、船上に飛び上り船の人となった、彼が乗ったのを確認してから船は霧笛を響かせながらゆっくりと内海の中央に向けて進んでいく。

 水竜や人魚が見送るように暫く並走する。


「魔導経路、異常なし。 全システム、オール・グリーン!」

「ECMおよびECCM正常に動作を確認!」

「船内設備の点検は?」

「現在、予定通り進行しています」

「エレェリア様が船の中央で儀式を行う、速やかに完了させるように」

「はい!」

「地球から送信、現座標に異常はありません」

 シーズの広いブリッジではメイド達が忙しく機器を操作している、様々な装置を動かしながら点検しているのだ。

 そんな、忙しいブリッジにカズマが入って来る、メイド達が手を止めて礼をしようとするのを手で制しながら先にブリッジに来てソファーで寛いでいたサクラの向かいに腰を下ろす。

「お帰り」

 サクラが紅茶を飲みながら手短に出迎える。

「予定通りか?」

 カズマの前にコーヒーカップが置かれ、それを口に運びながら尋ねる。

 彼女は横目で傍に控えるメイドに目くばせし、メイドも無言で頷くのを確認してから。

「今の処・・・、問題は無いみたいね」

「予定海域でエレェリアの術で転移か」

「ええ」

 二人は、それ以後、特にこれと言った会話も無く、いつも通り静かに時を過ごす。


『予定海域に到着しました』

 全船内に放送が流れる。



------------------------------------------------------------


『予定海域に到着しました』

『地球上の転移座標異常なし』

『全システム、アイドリングに以降』

 儀式をする部屋にも放送が流れる。


 その場所に音も光も無く空間転移で正装したエレェリアが現れる。

 純白のウェディングドレスに、真珠の篭手と足鎧、白金の髪に銀のティアラを付け、刃渡り2mの『百の大剣』を片手に持った姿は、正に美しき女神アテナであった、そして・・・。


「さテ、軽く終わらせましょウ」


 大儀式のわりには、あまりにも軽い一言。

 転移する場所が決まっていて、転移する物が決まっている術式など彼女にとっては寝ていても失敗しない簡単で下位術であるのだ。

 それでも正装したのは、気分の問題である。

 気負いも、呪文も無く、石の剣を振るうが、その場所に何も変化はない。

 だが、船外では光で出来た立体的な球状魔法陣が高速に描かれていく。


 そして、魔法陣が完成した瞬間、衝撃も音も無く淡い光と共に巨大な船は跡形も無く消失した。

 後には海面が相変わらず静かに波をたてるだけであった。


------------------------------------------------------------


「うん?」

 アメリカ海軍、空母航空団所属の早期警戒機、D・Sダンク・シュートの機長は突如、明後日の方向に目を向ける。 

「機長? どうしました?」

 コ・パイロットは機長の奇行に思わず声を掛ける。

「いや、何か見られた様な気がしてな・・・」

 コ・パイロットは自身の手元の航法レーダーを確認してから。

「レーダーには何も反応はありませんが?」

「そうだな・・・、 レーダー手! 何か反応は在るか?」

 データリンクによって空母戦闘団全てで情報を共有しているのにも関わらず、機内無線で索敵レーダーに確認を求める。

「いえ・・・、特にこれといった反応は・・・・!! ちょっと待ってください! 何だ!」

 レーダー手の声は突如、驚愕の声に変わる。

「如何した!?」

 コ・パイロットは異常事態を感じ規定を無視して思わず声を掛ける。

「こんな巨大な! どうして見逃した!?」

「データレコーダーに異常はない! こいつ突然、現れたぞ!」

「高度なステルスか! この巨体で!?」

「敵味方識別(IFF)! BOGGYボギーか!?」 

「UNKNOWNアンノンだ! 何も反応しない! 何も発信していない民間の船でもないぞ!」

「潜水艦か?」

「バカ言え! こんな巨体、海面下でも見逃すものか!」

 後方のレーダー室からはかなり混乱した声が、機内無線を通じて流れて来る。

 管制からも何も命令は無い、向こうもかなり混乱している様だ。

「レーダー手! 方位は!」

 堪り兼ねて機長が方位を尋ねる。

「はっはい! ・・・機首を2時の方角に対象は動いていません!」

 それだけ聞くと機長は機の傍で滞空している護衛の戦闘機に向かって。

「よし! 『ダンク01』『ダンク02』護衛の戦闘機は先行しろ!」

『? しかし!』

「早急に多くの情報がいる! 宇宙人エイリアンに会えるかもしれないぞ!」

『・・・、了解した! 悪いがファースト・コンタクトは俺達が貰うぞ!』

「了解! エリア51の場所を教えてやれ!」

『早く来いよ! D01先行する!』

 2機の護衛戦闘機がアフターバーナーを吹かし音速超過で飛び去って行く、後には衝撃波と轟音だけが残された。

「機長! どれ位の時間で着きますか?」

 機長が機体の向きを変えながら、徐々に速度をあげていく。

「戦闘機なら5分くらいで目的の宙域に着く、こっちは10分後位だな」

 エンジンの出力ををあげてもゆっくりとしか速度は上がって行かず、機体の形状上あまり高速で飛び回る事を想定していない機体が、今の事態にはもどかしかった。

「機長! 管制から! ”現場海域に向かわれたし”です!」

 機長は苦笑を浮かべながら。

「命令が遅いな、衛星の通過時間は?」

 コ・パイロットが端末を操作しながら。

「20分後です!」


------------------------------------------------------------


「何だ?! あれは?」

 現場海域には超巨大な客船が停泊していた、客船の周囲を戦闘機が二機、ゆっくりと旋回している、彼らも対処に困惑しているのは見なくても分かる。

「D01から報告! 不明の客船、此方の応答に沈黙を守っています!」

 コ・パイロットが戦闘機からの情報を報告する。

「こちら、レーダー室! 不明の客船からの識別信号なし。 ・・訂正! 観測できる周波数の電波はありません!」

 何もかもが異例で前例がない、全ての判断を機長が自らでしなくてはならない。

「映像記録は撮っているか?」

「高解像のデジタル映像で撮影中です。 戦闘機も撮影をしています」

「機を船の周囲を旋回させる。 モニター情報を回してくれ」

「了解!」

 機長の手元の多目的端末に撮影されている映像データが転送されてくる、彼は機を半自動に設定し、データを検証する。

 拡大投影された映像は船の上甲板の手すりもはっきりと観る事が出来た、そして、すぐに違和感に気づく。

「船体特徴はオアシスクラスの客船の様です」

 レーダー手がデータネットワークを検索し船体形状を特定し報告を上げてきた、直ちに端末情報が更新される。

「太平洋にいるのか?」

 コ・パイロットが尋ねる。

「いえ、全船の所在は確認されました。 全て大西洋です!」

「じゃあ! あいつは何だ?」

「こいつは幽霊船か?」

 機長の呟きが全員にはっきりと聞こえた。

「え? どういう事ですか?」

「なぜ、上甲板に人が一人も居ない?」

「「?!」」

 全員が慌てて映像を確認する、これ程の船になれば乗員乗客合わせて7000~8000人の人が居るはずである、上甲板に人っ子一人いないのは異常である。

「戦闘機にも確認しろ! ”人を観たか?”と」

「了解!」

 連絡を取っている間も機は船の周囲を旋回し情報を集める。

「機長! 船名が確認できました!」

「! データを!」

「はい!」

 端末には船首が大写しで映し出されていた、そこには・・・。


《ADAMAS of the Seas》


「ADAMAS? アダマス?」

「オアシスクラスの客船にこの船名は登録されておりません!」

 機長は部下の報告を聴き流していた。

(当然だ、先ほど確認し全船が大西洋に浮かんでいるのだから、ではこの船は何だ? 本当の幽霊船か?)

「戦闘機から報告! ”船上に確認できた人影なし”です」

「そうか・・・」

「それと管制から連絡! 現状を維持しろと。 もうすぐ海兵隊を乗せたヘリが現場海域に到達すると言っています」

 機長は苦笑いを浮かべながら。

「現状を維持しろと言われても、俺達は空を飛んでいる事しか出来ん! カミカゼするわけにもいくまい」

 機内は一時、笑いに包まれる。

「全くです」

「飛び降りますか?」

「一番乗りしたいのか?」

「当然だ! ? ! 何だ?」

 レーダー手が情報ディスプレイを見て言葉を失う。

「如何した?」

「赤外線放射が消えていく!」

「何? そんな馬鹿な! 見せろ! ・・・赤外線だけじゃないぞ! レーダー反射も小さくなっていくぞ!」

「可視映像は変化していない! アクティブ・ステルスとでも言うのか!」

 アクティブ・ステルス、光学迷彩と同じで現状では実験レベルを脱しない未完成の技術。

「可視光線以外の反応が完全にロストしたぞ! どういう事だ?」

「機長!」

 レーダー手の会話に耳を傾けていた機長にコ・パイロットが声を掛ける。

「今度は如何した!?」

 驚愕の表情で船の方を指さしながら。

「船が・・・」

「?!」

「消えていきます・・・」

 確かに見えていた船が、まるで蜃気楼の様に少しずつ薄くなり風景にとけるように消えていく。

「「・・・・」」

 戦闘機はその光景に驚き、慌てて距離を取ろうと離れていく。

 誰もが言葉なく、船が完全に消えるまで、その光景に見入っていた。

「完全に消えた・・・」

 機長が何とか言葉を紡ぎ、コ・パイロットが何とか情報端末に視線を戻し、データを確認する。

「全観測機器・・・、船の痕跡を観測できません・・」

「データレコーダーは?」

 夢や幻を見たのではない事を確認するため、今までの記録を確かめさせる。

「・・・問題なし。 全ての記録がそこに今まで船が存在した事を示しています・・・」

 機長はもう一度、今までそこに在った船の事を確認した。

「幻ではないのだな」

「はい」

「・・・・・」

 誰もが言葉を失う中、機外無線から管制の連絡が入る。

『C・CからD・S! 現在上空を衛星が通過している。 データリンクの映像に船が映っていないぞ! トラブルか? カメラを船に向けてくれ。 繰り返す。 カメラを・・・・



 空母航空団所属の早期警戒機が記録した全データは[ダンク・レポート]として、永く語り継がれる事となるアダマスと初めての接触の記録として。



無線連絡には色々と決まり事が有りますが、テンポが悪いので省いています。


次回、日本に上陸?

そこまで進められるかな?

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