表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/119

野菜畑の最も永い一日 PM3:00~次の日&後日談

最後は気象大変動。


サブタイトルを若干変更しました。

「な~、もう一度話し合おう」

 チヒロの真剣な声が静かに語り掛ける。

 リンゴの巨木に対して・・・・。

 唯一同行していた、空挺隊員は頭痛と共に地面に手を付き黄昏ていた、何やらブツブツと独り言が聞こえてくる。

「ブツブツ・・・・、なんで、どうし、とっとと切り倒せばいいのに、なんでいきなり説得しているの。 全然、理解できない、おれはどうして此処に居るのだ? おれって・・、何? ブツブツ・・・・・」

 どうやら彼の精神力と正気度も限界が近い様である。

「いや~、だから。 あのな、そうじゃなくて・・・」

 なんかチヒロとリンゴの木との間で意思の疎通が出来ているし、植物と会話できるなんて彼以外は不可能であろう、彼の持つスキルの謎の一つである。

「そうそう、あの頃は・・」

 昔話に突入したようである、まだ、時間がかかると思われる。


------------------------------------------------------------


 エレェリアが空挺隊員とトラクター部隊を引き連れて結界によって遮断された場所に突入した。 

「みんナ! 無事ですカ?」

 彼女が果物樹木の包囲網を百の大剣で物理的に切り開きながら、撃墜されたガルダ達が遭難(?)していた場所に現れた。

(あれ? どうしたの?)

 クリーム色の小竜が梨を齧りながら念話で返事をしながら首を傾げる。

「え~ト。何をしているのですカ?」

 エレェリアは思わずそう尋ねずにはいられなかった。

 後ろに続く空挺隊員も思わず目を見張り絶句している。

 そこには大きな石柱によって形成された結界の中に、立派で大きなログハウスが出来上がっていた。

(ん~とね、別荘造り?)

 白い飛猫のタマがブドウから抽出された極上のワインを舐めながら何故か疑問形の返事を返した。

「・・・どうしテ、この場所に別荘なんか造る事に成ったのですカ?」

 ガルダの黒い羽を撫でながら尋ねた。

(チヒロに頼まれた)

(そうそう)

(外が騒がしくても無視して良いて言われた)

 予想外の返事を念話で返す三匹、あまりの事に絶句するエレェリア。

「・・・・・・」

(聞いていないの?)

「聞いていませんヨ」

(チヒロは皆の許可を貰ったと言っていた)

(そうだね、念話は無視して良いよと言われたから、接続切っていた)

 三匹の話す、あまりの内容に言葉が出ないエレェリア。

「・・・・」

(((・・・・)))

(本当に聞いていない?)

「えエ・・・」

(心配した?)

 タマがすまなそうに小声で尋ねる。

「少シ・・・」

(ごめんなさい・・・)

 頭を下げるガルダと、それに続くクッキーとタマ。

 それに対して、やさしい笑顔で三匹の頭を撫でながら気にする事は無いといった感じで返事を返すエレェリア。

「いいのですヨ、悪いのはチヒロなのだかラ。 それより立派な別荘を造ったのネ。 中を案内してくれなイ?」

(良いよ! あのね・・・・)


 エレェリアの後ろに続く隊員たちは、彼女と三匹の会話を聴きながら。

「・・・・なあ、おい。 エレェリア様て・・・」

「ああ・・・、そうらしい・・」

「動物と話す事が出来るようだな・・・」

 念話の出来ない彼らには、彼女が「にゃ~」「カアッカアッ」「クル~」と言った鳴き声を発する猫やカラスと小竜に対して普通に会話している様にしか聞こえなかった。

 彼らは三匹を引き連れた彼女が和気藹々と会話しながらログハウスの中に入っていくのを見送りながら、間違った認識だけが、彼らの周囲に広がっていくのであった。


------------------------------------------------------------


「隊長! 砲台の制圧に成功しました!」

 伝令が息を弾ませ、慌てた様子で彼の前に駈け込んで来た。

「そうか! ついにやったか!」

「はい! それと・・・」

「まだ何か有るのか?」

「はい! 野菜どもの連携が崩れてきました!」

「何! それは本当か!!」

 隊長は驚愕し、思わず強い調子で詰問してしまった。

「あっ はっはい!」

 その声に驚き硬直する伝令、その態度を見て、隊長は咳払いを挟み気持ちを落ち着かせて、更なる報告を求める。

「すまん、少々興奮してしまったようだ。 それで」

「はい! 野菜は近くに近寄れば今まで通り反撃しますが、離れていれば沈黙を守っています。 これで各個撃破が可能となり収穫速度が上がりました! 今日中に全ての野菜と果物が収穫可能です!」

「よし! 全部隊に通達! 収穫速度を上げろ! 掃討戦だ!」

「了解しました!」


------------------------------------------------------------


「マイヒメ様! こちらの倉庫がそろそろ限界です!」

「少し待ってね。 あと少しで十棟完成するから・・・・。 良いわよ、こっちに運んで頂戴!」

 何時、見てもどうやって造っているのか分からない建築速度である。

 木材やモルタルなどの材料が独りでに動いて建物を造っている様にしか見えないのである。

「・・・あっ! はい!」

「それにしても・・・、収穫量がこの時間帯で跳ね上がったわね・・・」

 お茶を飲みながら休憩がてら運び込まれる荷物の量を数えながら正直な感想が漏れる。

「何でも、野菜の連携が崩れて収穫速度が上がったそうです」

「へ~。 あっそれはこっちね! ちゃんと分類するのよ」

「はい! すいません!」

 彼女は休憩中でもちゃんと荷物の内容確認を忘れないのである。

 ピストン輸送で次々と運び込まれる野菜、多くの人員が交通整理をしなければならないほどの混雑が辺りで起こっている。

 マイヒメはその状態を見ながら。

「少し道幅広げるかな?」


 この一言により、いつの間にか高速道路の様な立体交差を含む一大ステーションが完成してしまうのであった。


-------------------------------------------------------


 仮設の本部では、サクラが各戦線からの報告を纏めていた。

「収穫量が予定の八割を超えたわ」

 その報告を聴きながら。

「各部隊の合流も進んでいる様だな」

「ええ。 大部隊に成った事によって、更に収穫速度が上がったわ。 今日中に終わりそうよ」

「ああ。 それと、少し前に広域妨害が解除されたな」

「そうね・・・。 これでチヒロの居場所を特定できたわ」

 サクラは肉食獣の笑みを浮かべる。

 ミウは先ほどからうずうずしていて。

「サク姉! そろそろ行こうか?」

 我慢できなくなり提案する。

「ええ、行きましょうか?」

「うん!」

「カズマ、悪いけど・・・」

「息をしていれば何をしてもいいぞ」

 エレェリアからの報告を受けているのだ、彼の態度も非常に冷たい。

「善処するわ。 行きましょう♪」

「うん♪」

 二人は本部を出て、空に駆け上がり、野菜畑の方に飛んで行く。

 カズマは、それを見送りながら友の冥福を心から祈るのであった。


-------------------------------------------------------


 チヒロはリンゴの木の残骸の上で夕焼けを見て、世の中の無常を噛み締め黄昏ていた。

「争いは・・・、何も生まないな・・・」

 この戦いで数多くの命が散って逝った(人間の犠牲者は0)、何と虚しい勝利なのだろうか。

 彼も多くの命を殺めて(野菜の事である)この地に立っている。

「我々はこの犠牲の上に何を築けるのであろうか?」

 彼は思わず自らを受戒する。

「そうだ! 我々は、いや! 私はこの勝利の上に新たな命を育てなくては為らない! それがこの戦いで散って逝った命に報いるただ一つの・・・」

 彼は両腕を太陽の方に広げ、無駄に神々しい姿勢をとりながら、力強く宣言する。

「償いなのだ!」


《ぱち ぱち ぱち》

 後ろで白けて湿った、いかにも心が全く籠っていない拍手が起こる。

「いや~、全く持ってその通りでございますチヒロ様」

 ただ一人の観客である空挺隊員が心無い追従をする。

「そうかね?」

 後ろを振り向かずに、自身でかっこいいと思っているポーズのまま、少々照れくさそうに返事を返す。

「ええ。 ですが私としましてはチヒロ様の今後が心配でなりません」

 意味不明の感想を返す空挺隊員、不思議に思い思わず問い返すが。

「? それは

     「ええ、本当に良い演説だったわ。 遺言としては完璧ね」

 別の声に遮られて最後までいう事が出来なかった。

「!!?」

 驚いて振り向いた先には。

 超巨大なガトリング砲を構えたサクラ。

 大きな棍棒とハンマーを構えたミウとミラ。

 既に百の石剣の展開を終えているエレェリア。

 その後ろに居るクッキー、そしてガルダ。

 タマを抱いて輝く光板100枚を出現させているイサベラ。

 禍々しいハルバードの刃を確認しているマイヒメ。

 地面を軽く蹴りながら身体の調子を確認しているアーリア。


 別々の武器を構えている全員に共通しているのが、満面のアルカイック・スマイルを浮かべている事であろう。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(汗 汗)


「とっ! 取り敢えず! 話し合いを要求する! 争いは何も生まない! 虚しいだけだ!」(汗)

 かなり必死に弁明するチヒロ。

「大丈夫よ♪ 争いじゃないわ♪ 単なるじゃれあいよ♫」(笑顔)

 笑顔で頷く女性陣、そのじゃれあいが命に係わるのだ。


「いや~。 羨ましいですな~、これ程の美女達の視線を一身に集めて」

 彼女たちの後ろで明後日の方を向きながら他人事の様な感想を述べる空挺隊員。

「なんだったら変わろうか」

 取り敢えず悪あがきをするチヒロ。

「私は他人の幸運を横取りするほど欲深くはありませんので」

 やはり目を合わせる事無く宣言する隊員。


 ガトリング砲から砲身の回転音が響く。

「そうよ、もう少し喜びなさいよ、チ・ヒ・ロ♪」


(おれは明日の朝日を拝めるだろうか)

 これが彼のその日の最後の思考になった。

 後は本能に赴くまま南の方向に飛び出した。


 彼は南に逃げようとした処、針路を予想して待ち構えていたカズマに北方に蹴り飛ばされ、人外未開地を一晩中逃げ回る事となったとか。


 その日、北方の人の住まない地から一晩中、打撃音と破壊音、閃光と光爆に光線が乱舞し人々を恐怖せしめたと言う。


 この年を境にして気象の大変動が起こり世界中を混乱させる事になる、北方の地で起きた変事を伝え聞いた人々は、この変事を『魔王の嘲笑』と名付けて代々語り継がれる事となる、恐怖の代名詞として。


 もっとも、エルタスは全く影響を受けずにさらに発展して行く事になるが、代表であるギルダー氏はまたも執務室に缶詰になる事になる。

 おっ? どこかで悲鳴が・・・聴こえるわけないか、あのメイド達はそのような暇は与えるほど甘くはないからね。


 ちなみにどうでも良い話として、リンゴの巨木の残骸の隙間からリンゴの若木が芽吹いているのを誰も知らなかったとか。


-------------------------------------------------------


 私の体験した事は以上です・・・・。

 詰まらない話でしょ? お役に立てれば良いのですが。


―いえ。 大変貴重な話を伺いました―


 そう言ってもらえると嬉しいですね(苦笑)


―今日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました―



            エルタス暦43年

            ジャーナリストC.R筆

         『白亜の現人神』外伝『最も永い一日』より抜粋




あの連中が北極圏で暴れまわれば当然の結果ですね。

エルタスに影響? 有るわけないです。

彼らがその程度でどうにかなる軟な物を創る訳無いじゃないですか。


次回は外伝の予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ