野菜畑の最も永い一日 後日談&AM9:00~AM11:30
故コーネリアス・ライアン氏に敬意を
私があの野菜畑の収獲に参加したのは一八歳の時でした。
―確か、現人神様方住まう・・―
ええ、そうです、あのは白亜の宮殿の野菜畑です。
最初は市長から要請を受け、その日の内に多くの街の人々や冒険者と一緒に、宮殿の門を潜りました。
驚きましたよ、私は生まれて初めて宮殿と名の付く建物の中に入りました。
今なら理解できます、あの宮殿は当時の一般的な宮殿ではないことに、何と言いますか・・・、ものすごく洗練されているような感じでした。
簡素で有りながら優雅でしたね、唯の白い壁でさえ触れるのに躊躇したほどです。
冒険者の中には良からぬことをしようとした者も居たようですが、何時の間にか消えていました。
失礼、話を戻しましょう。
私たちは宮殿から少し離れた倉庫に通されました、そこで優雅な衣装を着た貴族の様な女性と熊の獣人の武人が私達に色々と対応してくれました。
―対応したのは、アーリア様と影丸様ですね―
ええ、そうです、アーリア様と影丸様です、あの方々の事を良く理解していない冒険者の中にはアーリア様に性的な行為を強要する者や、影丸様を見下す者もおりましたが、指一本の衝撃波で吹き飛ばされていました。
―記録ではカーキー色の作業服が支給されたと―
そうです、私たちはそこで用意されたカーキー服と装備に着替えるように言われました、後で知ったのですが渡された衣服や装備には非常に高度な防御術式が込められていました、これらを装備した者で大きな怪我を負った者は一人もいませんでした。
―失礼ですが、断った者は居るのですが?―
えっ、断った者ですか、勿論いました、愛用の装備を手放したくない冒険者が自分の装備で出撃しました、アーリア様は別に強要はしませんでしたが。
もっとも、最初の突撃で人参かジャガイモに直撃されて重傷を負いましたが。(苦笑)
その晩は白亜の宮殿に泊まる事を許されました。
―それは貴重な体験でしたね―
そうですね・・・、もっとも、私たちが寝たのは仮設の集団部屋でしたが、滅多に泊まる事が出来ないので貴重な体験でした。
―眠れましたか?―
それは、朝までぐっすりでしたね、後で聞いたのですが枕に細工がして有り床にについたらすぐ眠るようになって居たそうです。
―そうでしたか・・・―
―話を戻しましょう、あなたは確か・・・、空挺部隊に配備されたのですよね?―
ええ、私は空挺部隊に配属されました。
―訓練などは受けられたのですか?―
訓練? いえ、ぶっつけ本番でいきなり空中に放り出されましたね。
―怖くはありませんでしたか?―
勿論、怖かったですよ、早朝いきなり十六人乗りの大型浮遊機に乗せられ高速で野菜畑の真ん中に運ばれました。
―激しい攻撃に曝されたとか―
そうです、対空攻撃が凄まじく、酷い乗り心地でした、上に下、左に右とあらゆる方向に揺さぶられましたね。
操縦していたのは自動人形とか言う物のメイドでした。
―操縦しているのが人間で無いのに不安に思いませんでしたか?―
えっ 不安ですか、それは感じませんでしたね。
彼女らの操縦は堅実で非常に高度なものでした.
実を言うと自動人形だと知ったのは終わってから暫くした後でした、参加した殆どの者が彼女たちを人間だと思っていましたね。
中には求婚する者も居た位です(笑)
―そうでしたか(苦笑)―
―それで、一番攻撃が激しかったのは何処ですか?―
目標地点の攻撃は特に酷かったですね、事前の予定では空中に静止して降りる予定でしたが、滞空する事が出来ずに高速で円を描くように飛んでいる処を投げ出されました。
―確か・・・、自動降下魔導機で自由落下に近い速度で降下したとか―
ええ、そうです、魔導機のお蔭で安全に着陸する事が出来ましたよ、もっとも、空中にいる時は考える余裕なんてなく、無我夢中でしたが・・・。
中には、途中で怖くなって手動に切り替え降下速度をゆっくりにする者も居ましたが。
―ゆっくり降下する方が安全では?―
いえ、安全ではありません、ゆっくり降下していると集中攻撃を食らうんですよ、障壁を展開しているので平気ですが、爆炎に包まれながら降りた者は衝撃で使い物にはならなくなっていましたね。
―苦労なさったのですね―
そうですね・・・、今考えても非常に苦労しましたね。
もっとも、本当の苦労は大地に降りてから始まりましたが・・・・。
エルタス暦43年
ジャーナリストC.R筆
『白亜の現人神』外伝『最も永い一日』より抜粋
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「くそっ! ここは何処だ・・・」
先ほどまで周囲にいた仲間たちは、襲撃を受けて個別に迎撃している間に、いつの間にか散り散りになってしまった。
遠くの方で破裂音や怒声が聞こえ、そちらの方に向かおうとしても周囲に反響して方向が判らなくなってしまう。
事前説明で言われた、はぐれた場合は目標地点に向かえと言われた事を、彼は今更ながら実感していた。
彼は完全に方向を見失っていたのだある。
「チクショウ! 運が無いぜ!」
早く仲間と合流したいという気持ちだけが焦り空回りしていた。
もし、彼が仲間の様子を知る事が出来ていれば、彼はかなり運の良い状態でいることを知る事だろう、もっとも、彼がそれを知るのはこの日の終わりを迎えなければいけないのだが。
今はまだそれを知ることはない。
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「油断するなよ・・・」
所属部隊がバラバラの十人ほどの集団が目標地点に向けて野菜を収穫しながら道を切り開いていた。
臨時の集団の隊長が注意を促すのを全員が無言で頷いて返す。
もし、彼らの中に未来を予知できるものが居たら、間違い無く進路を変更した事だろう、彼らは知らない内に徐々に危険地帯に足を踏み入れようとしていた。
やがて彼らの周囲から音が消え、背の高い緑の茎が密集する林の中にいた。
「何の野菜だこれは?」
隊長が思わず首を傾げる、そんな彼を隊員が震える声と肩を乱暴に叩きながら注意を向ける。
「たっ隊長・・・」
「!? どうした?」
肩を乱暴に叩かれ少々気分を害しながら振り向いた彼の目には、全員が視線を上に向けて愕然とした表情の隊員達の姿だった。
隊員たちの視線の先をいぶかしながらゆっくりと目を向け、固まる事となる。
隊長の視線の先には緑の皮に包まれた流線型の実がなっていた。
「トウモロコシ・・・・」
隊長はその実の正体を知り絶句する。
【トウモロコシ】
チヒロが創った野菜の中で一二を争う無理ゲー野菜で、収穫するのに非常に危険を伴う凶悪な穀物である。
実を収穫しようとする者の呼吸を感知し、空中に飛び出す、複雑な軌道を描きながら全方位から突撃を仕掛けて来るのである。
しかも、例え突撃を躱しても、近距離で炸裂し粒を撒き散らして来るのだ。
どこの世界にオールレンジ攻撃してくるトウモロコシが有ると言う突込みは脇に置いておくとして。
無論、これで終われば唯の散弾攻撃だが、このトウモロコシはさらに凶悪である、何故なら粒一つ一つに誘導性能があり、二酸化炭素を吐き出す場所に誘導されるのだ。
つまり、口の中である。
そして、口の中に入った粒は水分と反応して発熱し破裂、そしてポップコーンに成るのである。
想像してみよう、口の中で生成されるポップコーンの様子を、しかも一粒では無い大量に破裂する様子を・・・。
ポップコーンはかなり美味らしいが・・・。
はっきり言って喰らう者には気休めにもならないな。
もっとも、二酸化炭素を吐き出さなければ空中に飛ぶこともなく、例え空中に飛んでも粒を撒き散らす事は無いので空中でキャッチして収穫すればいいのである。
誰がそんな変態行動を出来るかと言う突込みも脇に置いておく。
アダマスの面子であれば二十四時間位、息を止める事は不可能では無いが、普通の人間は長時間息を止める事は無理だし、オールレンジ攻撃してくるトウモロコシを空中でキャッチするのは不可能である。
事前に酸素ボンベなどの装備をちゃんと準備が出来れば比較的安全に収穫が可能であるのだが。
いきなり遭遇した時は潔くあきらめ、可能であればテレビとソファーを用意しカウチポテトを楽しむのも一興であろう。
チヒロ曰く、「ポップコーンが勝手に出来たら便利だよな~」
話題休閑
その場に居る全員が微動だにしないが、息を止める事は出来ない、勿論、酸素ボンベなどの用意など出来ていない、中には緊張のあまり荒い息をする者もいるが誰も咎める者はいないしそんな余裕もない。
《シュー》
何処からか空気の漏れるような音がする、隊長が武器を構えながら静かに低く呟く。
「来るぞ・・・・」
誰かの唾を飲み込む音が妙に大きく聞こえた。
《バッシュ!》
一つ目が飛翔すると、周囲から連続した飛翔音が響き、緑色の流線型の実が空中を埋め尽くす。
隊長は大きく息を吸い、絶叫する。
「収穫しろ!!」
「「おおー!!」」
隊員たちの雄叫びが辺りにこだました。
その呼吸に導かれてトウモロコシの一団が軌道を変更し彼らに向かって来る。
五分後、玉砕。
救助に来た本隊が見つけた時には、地面に横たわる彼らから破裂音と共に、身体が痙攣する様子が見る事が出来たとか・・・。
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「なっ!」
彼は前方で緑色の物体が空中に飛び上るのを見たて、思わず絶句する。
それが、事前に教えられていたトウモロコシだと瞬時に理解できたが、それと同時にあれが打ち出されるという事は、あの下に仲間がいるという事に気が付いた。
彼は、それと同時に走り始めていた、胸の内は一刻も早く仲間と合流したいという気持ちでいっぱいだった、トウモロコシが危険だという事はあまり気にしなかったのである。
途中で遭遇した野菜は切り伏せ時には躱しながら走り続けた。
《ズドーン!》
もう少しで到達しようとした時、進行方向でいきなり爆発が生じ、地面が激しく揺れ、反射的にその場で伏せる。
短いが濃い経験から、この場所で爆発など絶対に吉事ではないからである。
土煙が納まるのを待ってから、全身の筋肉は何時でもダッシュ出来るように力を込めながら、ゆっくりと警戒しながら抱腹前進で進む。
爆心地には巨大なクレーターが形成されていた、その光景を見て、もし自分がもう少し早く進んでいたらと思うと喉がカラカラに乾き、汗が止まらなかった。
未だ土煙に覆われた中心付近で、妙に濃い存在感があり、何か居る様に感じた。
「何かいるのか?」
徐々に煙が晴れていく、そこには・・・・。
高価だと分かるソファーに腰を下ろし、優雅に足を組み、コーヒーを飲む青年が座っていた。
「え・・・・・・・・・・・」
確かに似合うのだが、あまりにも場違いな場所でそれを見て、思わず絶句する。
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最前線では激戦が繰り返されていた、その歩みは亀のようにゆっくりで遅々として進まなかった。
「このままでは・・・・」
前線の隊長の口から思わず弱気な発言が漏れる。
後、何か一つ押し出せるものがあれば・・・。
無いと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。
時間だけが無意味に過ぎていく、隊長は別な戦線に部隊を振り分けて、突破を試みるべきではないかと考え始めた。
「伝令! 伝令はいるか!」
周囲に声をかけて伝令を探すと、すぐ脇で声がする。
「ハイ! ここに!」
「直ぐに後方に行き、指揮されている方に伝言を頼む」
「分かりました! では、内容は?」
「うむ、突破は困難なので・・・・! なんだ!」
急に周りで歓声が上がる。
「おい! どうした?」
手近で歓声を上げている部下に問いただす。
「セオドラです! セオドラが援軍を引き連れて参戦されました!」
「なに! 本当か!」
部下が後方の一角を指で示しながら。
「はい! あそこに! 羽竜と一緒にこちらに向かって来ます!」
隊長がそちらの方向に視線を向けると、真っ白い羽毛に覆われた羽竜が物凄い勢いで駆けて来る処であった。
「『クオーンー』」
辺りに羽竜の雄叫びが響き渡り、それに倍する歓声があがる。
あっという間に彼の前を駆け抜けて、前線に突撃する、一匹が進路を外れて、隊長の目の前に来た、その背には・・。
「いや~、すまねいだ。 街さにいた、羽竜を纏めんのに、時間くってしまっただ。 大丈夫だたか?」
部隊長はそののんびりとした口調に思わず苦笑いを漏らしながら。
「いや、丁度いいタイミングですよ! ようこそ! お待ちしておりました!」
「んだか~、そんじゃ、いくださ!」
そう言うと前線に駈け出して行った、周囲には彼を称える歓声が途切れる事はなかった。
「「セ~オドラ!」」
「「セ~オドラ!」」
「あの~、指揮への伝言はどうしますか?」
その声で隊長は脇に居た伝令の事を思い出す。
「前線の突破は間近! これより総収穫を始めると伝えろ!」
「はっはい!」
隊長は伝令が駈け出して行くのを横目で見ながら、周りに声を張り上げる。
「全部隊! 突撃せよ! 只、前だけを向いて行け! 我に続け!」
隊長自身が武器を片手に駈け出して行く。
「『おおっ~~!!』」
野菜狩りが更に激しくなって行く。
時刻は、まだ昼前の事である。
街の方で飼っている羽竜を引き連れてセオドラ参戦!
真っ白な竜に乗った〇オナルド・〇ィカプリオが味方のピンチ颯爽と現れたのイメージしてくれれば近いと思います。




