古代の英知はカビだらけ 星に成って下さいな
大虐殺!
エルタス西の山脈上から征国空中艦隊の艦影が現した。
500mを超える空中要塞を中心に無数の艦が雲霞のごとく押し寄せて来た。
四死天将は行方不明、騎士団は結界に阻まれ進めず、降下兵団は無駄に消耗していく。
要塞の司令室では総裁と呼ばれた男が、何一つ上手く行かない中でも余裕の態度を崩す事が無かった、「[
「ここまで良く抵抗したものだ、褒めてやろう・・・・。 だが、もう終わりだ」
男はゆっくりと手を振り上げて最後の攻撃命令を下そうと・・・・。
突然、視界が白く染まり、そして、何も見えなくなった。
閃光の爆発。
光の放流が収まり、眼が再び見える様になった時、そこには・・・。
巨大な艦で構成された百隻の艦が整然と陣形を造っていた。
男は若干、驚いたようだが手を止めるまではいかなかった、手が振り下ろされ全力攻撃の帯が目の前に出現した艦隊に降り注ぐ。
その光景を確認して、男は静かに席を立ち、司令室から自室に引き上げようと歩き始めたが、司令室に響いた驚愕の声に思わず振り返り目を見張る事となる。
結界や障壁を張る事無く、船体で全ての攻撃を受け止めた、無傷の艦隊がそこにはあった。
------------------------------------------------------------
敵の初撃を受けた百の艦隊の中央、戦艦形態の「やまと」と「むさし」に護られた空間でエレェリアが宙に浮いていた、その身体をウェディングドレスに真珠の篭手と足鎧、ティアラに包み静かに瞑目していた。
そして、たった一言。
「ぬるイ・・・・・・・」
風が吹く中、彼女はゆっくりと眼を開いた、眼の前では敵艦隊から狂った様に攻撃が繰り返され、光の乱舞が視界を埋め尽くしていた。
大袈裟な身振りも、言葉も無く、麾下の艦隊に命令を発した。
「撃テ」
光と炎の壁が眼の前に溢れる。
無慈悲なる攻撃が眼の前の空間を艦隊ごと焼き尽くす。
征国艦隊は、眼の前で白い光壁の向こう側に消えていく味方の艦を呆然と見つめていた。
狂った様に攻撃を繰り返し光壁の向こう側に消える戦艦。
流されるままに進み光壁に突入する輸送船。
命じられるままに兵員降下船が光壁の先に進む。
次々と何かに導かれる様に、惰性に任せて艦隊は進み、そして、この世界から跡形も無く消し飛び、消滅した。
------------------------------------------------------------
それは美しい光景だった光の壁が視界の一面に溢れ、征国の船が光の中をいくのだ。
「・・・・・・」
男は言葉も無く、その光景を見続けていた。
総帥と呼ばれる男の前で、男の全てを注いで創り上げたモノが、光の向こう側に進み続けていた。
何が起こっているのか誰にも理解できなかった、光に呑まれた船からの通信は途絶え確認の取り様がないのだ。
希望、願望、あるいは夢、光の向こう側に男の求めているモノが有る様に思えてならなかった。
新生ヴァン=オルグ征国の全てが光壁に向かい進み続ける。
まるで、殉教に殉じる生贄のように、その進行を止める者がいない。
最後に城砦状の空中要塞が光に突入して、そして・・・・。
消えた。
------------------------------------------------------------
唐突に光が消え、そこには征国の船は一隻も無く、静かな青い空と太陽、そして爽やかな風が吹いているだけだった。
「・・・・・・」
トライトと警備隊の面々は言葉無く、その光景を見つめていた。
自然と手は止まり、何時の間にか闘いの音は一切しなくなっていた。
誰もが呆然とする中、いち早く衝撃から覚めたトライトが隣で空を見上げ固まっていたルディル副隊長を小突いて命令を出す。
「おい、残敵の掃討と降伏勧告を出せ」
「あっ! はいっ! 了解しました!」
ルディルは慌てて動き始め周りに指示を出していく、周囲がにわかに騒がしくなっていた。
トライトは動き始めた部下を横目で見て、静かに瞑目する。
街の方で爆発的な歓声が響いてきた、街の人々で何が起きたのか理解している者は居ないであろう、だが、それでも歓声をあげずにはいられなかったのであろう。
歓声が途切れる事無く街中に響いた。
これがエルタスの夏祭りの最後の光景である。
後にトライトは僅かに捕らえられた狂信的な捕虜の処遇で頭を痛めることとなる。
------------------------------------------------------------
【新生ヴァン=オルグ征国】
後世、この国の事を記した書は殆ど存在しない。
短い間で成立し、そして消えた為、どの様な国家であったのか資料が残されていないのだ。
この国を指導したとされる総帥と呼ばれていた男も、その正体は謎のままである。
征国発祥とされる西方大陸は、現在も人口が極端に少なく、人々は海岸付近を中心とした生活をしている為、内陸部は魔物が跋扈する地となり、人々の調査を阻んでいる。
エルタス暦143年
バルト・T・ウェイン筆
『消えた王国』より抜粋
光の中に消える・・・・
次回は古代の英知はカビだらけの最終話です。
タイトルは
『古代の英知はカビだらけ 泣いて謝り減俸で 反省文はこちらです
』




