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古代の英知はカビだらけ 空から間抜けが降ってくる

現在進行形で綱渡りをさせられている人と、再登場の二人が出てきます。

 夏祭りは絶好調である!

 エルタスの街では二名を除いた誰もが騒いでいた、一人はもちろんギルダー市長で現在進行形で執務室に缶詰中、そしてもう一人が伯爵令嬢エイレリアである。


「お祭りですか・・・、それって美味しいですか?」

 移動中のリムジンの中でエイレリアの口から思わず愚痴が漏れた。

「エイレリア様、次はローレリシア帝国大使との昼食会です、昼食後は少々休憩を取る事ができます」

 御付のメイドが、彼女の愚痴を完全にスルーして次の予定を告げる。

「何か注意することはあるかしら?」

「今回は挨拶ですのでそれほど警戒は必要ないと思います、安易な下知を取られる約束は交わさない方が良いと思われます、後は帝国の酒類は強いのでお避けください」

「ありがとう」


 ギルダー市長が表に出てこなくなってしまったので、対外的な仕事が全て彼女に集中しているのである。

 この機会にこの街と繋がりを持ちたい商人に貴族に外交官など、一山幾らの数が彼女の下を訪れて愛想笑いを振りまいて、朝から晩まで会談、会食、パーティーに晩餐会、そしてスピーチなどが続き、彼女は既にグロッキーの一歩手前である。

 もっとも、メイド達は彼女が綱渡りから落ちない様に絶妙な加減で制御しているのだが。


 スケジュールは立て込んでいるがギルダー氏の仕事よりはましである。

 彼女の下に派遣されている自動人形のメイドは始めから彼女に仕えるように設定されているので、彼女の体調を完璧に管理してくれているので、食事に睡眠などしっかり摂ることが出来ているのだ。

 もっとも、御付のメイドによって、生かさず殺さず、キレない辺りをギリギリに見極められ、スケジュールを管理される事が幸運かと問われれば即答は出来ないであろうが。


 もっとも、ギルダー市長が部屋で強制的に缶詰になろうが、面談や会食の連続でエイレリアの表情が笑顔で固まろうが、普通の人々にとってはどうでも良いのである。

 街中の大通りでは様々な屋台だ軒を連ね、広場という広場では大道芸が催され、何処からかこの世界には無い移動遊園地なるものも設置されたりしている。

 その上空を昼間は飛空船が途切れること無く飛び交い、夜間は華麗な花火が打ち上げられる、たまに酒場で調子に乗った馬鹿が吹き飛ばされたりするが概ね平和裏に祭りは進行していくのであった。


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 夜の街を数多くの花火が様々な色で綺麗に街中を染め上げる頃。

 街中の高い尖塔に人影が一つ、薄いピンク色の優美なドレスを身に着けた貴人、花火の光がその姿をこの世界に浮びあがらせる。

 もし昼間にその姿を目撃した者がいたのならば、自殺の為の身投げと勘違いしたことだろう、もっとも彼女が足を滑らして地面に激突しても傷一つ付かないであろうが。

 アーリア、マイヒメの従者の一人。


 彼女は今、祭りの雰囲気を心から楽しんでいた、眼下の大通りが出店や屋台の明かりとイルミネーションで光の川の様に見える、笑い声や乾杯の音があちらこちらで聞こえる、だが、それは彼女の望む音ではなかった。

 彼女は待っているのだ、どこぞの馬鹿が調子に乗って騒ぎを起こすのを。


 程なくして彼女が望んだ行動を起こした馬鹿が索敵に引っ掛かった。

 アーリアは可憐な、そして獰猛な微笑を浮かべて、夜の街に踊りだした。


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 夏祭り期間中の警備や交通整理の為に、急遽編成された警備隊の仮設本部の前にその塊は投げ込まれた。

《ドサッ!》

 勤務時間がもう少しで終ろうとしている時間に、その音が窓の外から聞こえた時、次に起こる事が想像出来てしまい、トライトは思わず天井を見上げて溜息をつくのであった。

 トライト警備隊隊長、彼はイースオーリ王国の騎士を退官後は故郷でのんびりしていたが、同じく退官した元副官のルディルに誘われて、エルタスの警備隊に再就職したのである。

 警備隊本部は市庁舎の中にあるのだが、祭りの期間中は大勢の臨時隊員や利便性を考え街の大公園の中に臨時本部を仮設したのだ。

《コンッ! コンッ!》

 仮の部屋の仕切り壁をノックし、ルディル副隊長が苦笑いを浮かべながらトライトの下に来た。

「報告してくれ」

 答えは分かっているが、書類から眼を離さずに発言を促す。

「はい、中央の酒場で調子に乗った冒険者三名が、投げ込まれました。 幸い意識が有りますので直ぐに調書を始めます」

「そうか、苦労をかけるな」

「いえ、こちらもある意味助かっていますから。 もっとも、めんどくさい事を丸投げされている様に感じますが」

「それが、おそらく正解だろう」

 その正直な返答に、トライトも思わず苦笑を浮かべて応じる。


 仮設本部を設置してから、入り口前に何時の間にか問題を起こした者が投げ込まれる様になった。

 試しに、入り口前の広場にX印を地面に書いてみたら、次からは正確にそこに投げ込まれる様になったのはご愛嬌であろう。

 投げ込まれる者も、詐欺師から冒険者崩れに札付きの悪党、ついでに酔っ払いと多岐にわたり、捕まった経緯も多岐にわたった。

 しかも、ボロ雑巾の様な姿で、よっぽど怖い目に遭ったのか取調べにも素直に応じている、中には泣いて保護を頼む者さえ居た程である。


 トライトとルディルは勤務時間が終る僅かな間、他愛の無い会話を交わしていた、その時。

《ズガンッ!!》

「「?!」」

 その爆音と共に窓がびりびりと振動し床が大きく揺れる、本部にいた隊員達が次々と表に駆け出していく。

「随分と派手に投げ込まれたな・・・・」

「よっぽどの大物でしょうか・・・・」

 二人は他の隊員が報告に来るまで間の抜けた会話を交わしていた。


 平の隊員が慌てて駆け込んできた。

「報告します!」

 トライトは平隊員とは逆に非常に落ち着いた態度で報告を促す。

「今度は誰が投げ込まれた」

「いえ! 人ではありません!」

「「?」」

 思わずトライトとルディルは視線を交差させる。

「戦闘用と思われる小型の飛空船が墜ちました!」

「「?! は~? 何だそれ?」」

 二人の声が見事に重なった。


 トライト隊長、ルディル副隊長、残業決定。


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 闇の中、魔法の光で照らされる広場で周辺を警戒していた警備隊員は総じて首を傾げるのであった。

「何なんだ、これは?」

 広場に墜落したそれは壊れてはいるが何とも奇妙な形状をしていた、例えるなら卵を横に倒して人の手と足を付けて鳥の翼を付けた様な形だ。

 空を飛ぶにも、歩くにも不便な形をしているのだ、何とも中途半端な形である。


《プッシュー》

 軽く空気の抜ける音がして、卵が上下に割れていった。

 警備隊が各々の武器を構えて警戒する中、光の中で卵の中から奇妙な兜と鎧を着た人物が静かに立ち上がった。

 誰もが固唾を呑み見守る中・・・。

 鎧姿の人物は静かに周囲を見回してから、警備員の方にゆっくりと歩き出だした。

 

 そして・・・・、卵の下部に蹴躓いた。


 あっ、倒れた。


 ・・・・・・・動かない。


 どうやら気絶したようである。


「・・・・・・・・・」

 誰もが心の底から突っ込んだ。

(何しに来たんだ、この間抜け)




エイレリアとギルダーのどっちが不幸かな?


次回は月曜日の夜に更新します。

『古代の英知はカビだらけ 馬鹿が来たので蹴り返した』

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