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国のつくりかた 大浴場遭難記 その二

最初はデジャブ。

《ちゃぷん》

「・・・・・」

 デジャブ・・・・・

 青緑の木々に囲まれた直径5mほどの浅いボール状の湯船で半身を洗う、木々の向こう側が若干透けて見える、どうやら巨大な湯船の中にいるようだ。

 気が付いたら此処にいるのだ。

 何だか乱暴に運ばれて、ここに放り込まれた気がする。

 今まで誰かが傍に居た様な気がs!

「!?」

 てっ! 両隣に居るし!

 ようやく出会うことが出来た人だが、はっきり言って心臓に悪い、深呼吸でどうにかバクついていた心臓を落ち着かせて二人の女の子を観察。

 双子? 眼を瞑り、やけに存在感が薄い二人の少女は顔立ちから身体つき髪の一本までソックリであった。

 彼女は戸惑いながら現状を考える。

 二人を置いて自分ひとりで動く、これは論外である。

 この場で誰か来るのを待つ、既に二人ほど隣にいる。

 双子に事情を話して一緒に動く、おそらくこれが正解であろう。

 とりあえず、考えが纏まり、彼女は双子の左の片方に声を掛けることにする。

「あの~・・・」

 女の子はエイレリアの声に反応してパッチリと眼を開き、彼女を真正面から凝視しする。

 その視線に少々たじろぎながら双子の女の子の片方と会話を試みる。

「ここは何処で? どうやって出るのか知っていますか?」

 返事は無い、代わりに彼女の顔を瞬きもせずに凝視している、言葉が通じないのであろうか。

「え~と・・・。 言葉通じていますよね?」

 女の子が口を開き言葉を紡いだが、音は反対側から響いた。

「通じている」

「え!」

 振り返った先にも同じ顔の少女。

「私が本体・・、あるいはコインの表と裏、もしくは逆・・・」

「え~と・・・」

「他人には理解は出来ない。 あたし達ですら正しく認識している訳ではない」

 禅問答の様な話を少女は話す。

 二つの口が同時に動くが、紡がれる言葉は一つだけ。

 少女は話を区切る様に一旦、眼を閉じてから再び話し始めた。

「さて、質問に答えるね。 ここがどこかだったよね」

「ええ」

「ここは・・・」

「ここは」

「お風呂」

「・・・」

 確かに此処はお風呂だ、エイレリア達は確かに湯船に浸かっている、しかし彼女が聞きたいのは、その事ではないのだこの場所はどこかと言うことなのだ。

「え~と、お風呂じゃなくて、このお風呂のある場所がどこなのか教えてくれない」

「だからお風呂」

「・・・・」

「・・・・」

 エイレリアとミウは無言で睨み合う、二人?の認識の違いには絶望的な開きがあった。

「この場所は?」

「お風呂」

「「・・・・・」」


 お互いの名前を聞くのを忘れて湯船の中で睨み合うのであった。


------------------------------------------------------------


「間欠泉風呂で飛ばされた可能性が高いという訳だな」

 メイドの報告を聞き、仮設捜索本部で地図を見ながらカズマが呟いた。

「はい。 エイレリア様の移動に掛かる時間とウォータースライダーの移動先からエイレリア様の居そうな場所は全て調べました、後は・・・」

「間欠泉でどこかに飛ばされたと・・・」

「はい」

「・・・・・」

 サクラは少し考えてから。

「C班とD班の招集は掛けられる?」

「若干、手薄に成るのに眼を瞑れば可能ですが・・・」

 日常の業務に支障が出るのはメイドとしては余り容認したく無い事態なのだ。

「悪いけど招集を掛けて、広域の捜索をかけます。 いいよね?」

 カズマに確認を取る。

「ああ」

「分かりました、一旦、全ての捜索隊を戻して部隊を再編します」

「頼む!」

「はい!」


------------------------------------------------------------


「つまり・・・、この場所すべてがお風呂なのね・・・」

「最初から言っている」

 なんとかこうにかお互いの認識の違いを埋め、自己紹介をして、現状を確認。

 エイレリアは内心で安堵していた、ミウの案内でようやく此処から出ることが出来るのだから。

「だったら出口も知っているのよね? ここの住人なんだし?」

 ミウは彼女の期待に満ちた視線から、気まずそうに顔を背ける。

「?」

「今は時期が悪いの・・・」

「どうして?」

「仕事サボって此処に隠れているから」

「「・・・・・・・・・」」

 沈黙、完璧な静寂。

 エイレリアの顔が完璧にアルカイク・スマイルに変わった、はっきり言ってかなり怖いです。

 全ての能力ではミウがぶっちぎりでエイレリアより上位だが、場の力関係ではエイレリアがミウを圧倒していた。

「わたくしは、早く、此処から、出たいのです」

「いや、絶対に! いや!」

「何故ですの!」

「怒られるからに決まっているから!」

 今だろうが、後だろうが怒られるのは変わらない。

「じゃー! 何時まで! ここにいるのですか!」

「晩御飯まで!」

 おそらくミウの晩御飯は抜きだろうな・・・・

「昼食は!」

「非常食がある!」

 準備万端で逃げてきたようである。

 しばらくお互いに怒鳴りあっていたが、二人?とも息切れ。

「「はぁはぁ...はぁはぁ...」」

 少し落ち着いたエイレリアはある事に気が付いた。

「そういえばあなた、服は如何したの?」

「・・・・・あっ!」

「まさか・・・」

「・・・・・脱衣邸に置いてきた・・・・」


 ミウ、サボり発覚、秒読み開始。


------------------------------------------------------------


「報告します! ミウ様とミラ様の衣服が脱衣邸にありました!」

「「!?」」



「脱衣邸」

脱衣の為だけの邸宅のことです。


ミウは逃げ切れるかな? 

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