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国のつくりかた 大浴場遭難記 その一

とりあえず風呂でしょ。


伯爵令嬢はとりあえず〇〇です。

『大浴場』、その魅惑の言葉の響きに、日本人なら抗うことは非常に困難であろう、アダマスの面々が地下世界に創り上げたそれは一辺20kmの正方形の敷地に二百以上の湯船と、山あり谷あり森あり湯河に湯湖がある超巨大施設なのである(ちなみに混浴である)。

 ついでに人間以外も出入り自由であるので羽竜とかケルベロスとか八脚馬とか仲良く入っていたりする。

 つまり、不慣れな者が下手に歩き回ると遭難間違いなしの場所なのである。

 それはさておき


《ちゃぷん》

「・・・・・」

 白い砂浜に穏やかな波が打ち寄せては引き温かいお湯が半身を洗う、湖面の向こう側は湯気が立ち込めてみる事が出来ない。

 気が付いたら此処にいるのだ。

 乱暴に衣服を脱がされ、全身をくまなく洗われ、此処に放置された様な気がするが意識が混濁している時だったのでそれが何時だったのかはっきりしない。

 今まで誰かが傍に居た様な気がする。

 ようやく意識が覚醒し、周囲を確認する余裕が生まれたが、周りの風景があまりに幻想的過ぎて現実なのか、夢なのかしばらく判断できなかった。

「此処は・・・・」

 自ら発した声を聴いて、ようやくここが現実だと認識する。

 温かい砂浜に手を突き自ら立ち上がる、そこで初めて自分が一糸も付けていない事に気が付くが別に恥ずかしいとは思わない、普段でさえ独りで着替えた事すらなかったからだ。

 周囲をもう一度見回すが、風は吹いていないので視界は湯気の所為で遠くまで見渡せない、気温は温かく風邪を引く心配はなさそうだが、むしろ湿度が高い所為か汗ばんで来る。

「何処に向かった方が良いのかしら・・・・」

 独り言が虚しくもれる。

 とりあえず、波打ち際を歩く事にする。

 彼女が湯煙の中に消えていった、残された足跡も打ち寄せる波でその形を失うのに大した時を必要とはしなかた。

 自動人形のメイドが戻って来た時には、彼女の姿は完全に消えていた。


 PS・山岳遭難での注意事項、道に迷った時は無闇に歩き回ってはいけない。


 <アルトニース伯爵令嬢エイレリア大浴場で遭難>


------------------------------------------------------------


「アルトニース辺境伯か・・・」

「その令嬢ね・・・」

 カズマとサクラは談話室でコーヒーを飲みながら、今朝のロック以下略の脱走騒ぎの事を考えていた。

 セオドラが羽竜と令嬢を連れて来た時は、エイレリアの余りに酷い惨状に話を聞くより先に、メイド達に大浴場に放り込むように命じた。

 他の護衛の騎士や馬車の御者、そして御付の侍女は村人総出で村長の所に回収されている、幸い全員たいした怪我も無く寝ていると言うことなので、しばらく村長に任せる事にした。

「どんな用なんだろうね」

 サクラがコーヒーに砂糖を投入しながら、独り言の様に呟く。

 カズマはカップ内のコーヒーを眺めながら、自分の考えを纏めながら。

「この付近が辺境伯の領地だからだろう」

「それで」

「この領にとって五つの村は作付け面積で5分の1の規模だ無視は出来なかったんだろう」

「ふふ・・、国は当てに出来ないしね」

「横槍が入るのが怖かったんだろうな」

「そういえば・・、伯爵て何処行ったの?」

「城と一緒にぶっ飛ばした・・・」

「それで、令嬢が来たと・・・」

「そういう事」

「「・・・・・」」

 暫しの沈黙は突然、破られた。

「大変です! エイレリア様が大浴場で遭難です!」

「「は~?」」


------------------------------------------------------------


「ここは、何処でしょうか?」

 一方、エイレリアは完全に道に迷っていた。

 砂浜に沿って歩いていたまでは良かったのだが、滝の様な所いわゆるウォータースライダーで足をとられて急流に乗ってさっきとは違う場所に運ばれてしまったのである。

 しかも、スライダーには重力魔法も兼用して逆に流れる様にしてある所もある、つまり下から上に流れる場所もあるのだ。

 溺れなかっただけ運が良い方で、方向感覚などとっくの昔に開店休業状態である。

 エイレリアの流れ着いた場所は比較的狭い円形の湯船(直径約20m)。

 彼女は一つ学習した、無闇に動き回るべきではないと、誰か来るまで温かいお湯の中にいるのだのんびり浸かって待っていた方が良いと、ゆっくりと湯に浸かって眼を閉じる。

 その判断は非常に賢明であるのだが、その湯船が間欠泉風呂・・・・・でなければ。

『間欠泉』とは一定期間でごとに熱湯を噴出する、つまり間欠泉風呂とは一定期間ごとにお湯と浸かっている人を大浴場の何処かに飛ばすジョーク風呂である。

 しかも、魔法やら魔道機を潤沢に使って飛ばされた者が衝撃を殆ど感じない安全設計。

 彼女は髪と顔に心地よい風を感じた、ぼんやりと薄目を開けると鳥の様に空を飛んでいるかの様に風景が流れる、その非常に心地よい感じに再び眼を閉じたのだった。

 その心地よさは湯面にお湯と一緒に叩き付けられるまで続くのだった。


《ドッボーン!》


------------------------------------------------------------


『緊急! 緊急! メイドA班及びB班は浴場装備で大浴場に集合されたし! これは訓練ではない! 繰り返す! これは訓練ではない!』


 大浴場のエイレリアが最初にいた砂浜では、水着姿のメイド達が二人一組で次々と捜索に出発していく、ある者はウォータースライダーを使い、またある者は浮遊機で空から捜索を開始する。

「第三班! 〇二三に到着、反応なし!」

「第九班! 一二九で捜索開始!」

「第一班から入電! 〇五四に反応無し! マーカーを設置後移動します!」

 砂浜の急遽建てたテントの仮設捜索本部には次々と報告が送ら、大テーブルの地図に情報が書き込まれていく。

 水着姿のサクラはパイプ椅子に腰掛け地図を見ながら苦笑する。

「まさか、これが役に立つ日が来るなんて思わなかったわ・・・」

 同じく水着姿でパーカーを羽織ったカズマがサングラスで表情を消して、近くのメイドに確認を取る。

「広域索敵魔法や転移魔法及び監視装置は使用不能だったな」

「はい。 のぞき及び盗撮・盗聴防止の為、広域妨害が敷かれています」

「解除は?」

「現状では不可能です。 解除には主様四人と従様八人の同意が必要ですし、解除に丸一日掛かります」

「安全対策も見直す必要があるか・・・」

「必要は無いと思われます。 主様及び従様が大浴場で遭難は考えられておりません」

「それはそうだ、迷ったら飛んで帰ってくればいいのだから」

「はい」

「分かった、ありがとう。 引き続き捜索を続けてくれ」

「了解しました」

 カズマは苦笑を浮かべながらサクラの方に視線を向け。

「冗談で作った計画が役に立つ日が来るとは思わなかったよ」

 彼女は出されたトロピカルジュースを飲みながら。

「大浴場は広いから遭難したら大変だ~て笑いながら作成したっけ。 カズマも飲む?」

「いただこう」

「トロピカルジュース追加ね」

「はい」


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 エイレリアは完全に気を失い、大きい湯湖の小島に打ち上げられていた。

 彼女に近づく影が二つ・・・・




セオドラは意外と紳士ですよ。


大浴場には領域外に秘湯エリアが在るとか。

誰が造ったのかと言うと、全員が勝手に自分達の専用風呂を作成したとか・・


訂正

 大浴場が一辺2kmは小さいと思いましたので20kmに訂正します。

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