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国のつくりかた 真エルタス建国史

無茶苦茶、美化されているけど実は(笑)

『ガァッーーー!』

「がっは」

 最後の護衛が跳ね飛ばされた、今にも息絶えるような深手を負いつつも彼は最後の力を振り絞って、自らの使命を果たそうとする。

「エッ エイレリア様っ おっ お逃げ」

 彼は最後まで言うことが出来なかった、鋭い爪が彼をひき潰して肉片へと変えたからだ。

 彼女が乗っていた馬車は既にその役目を全う出来ない、横倒しになり残骸へと成り果てているのだ、彼女を護衛する騎士達はすでに倒され周囲にその骸を曝している。

 それでもアルトニース伯令嬢エイレリアは怯える事無く目の前の災厄を、肉に飢えた竜を気丈にも睨みつけるのであった。

 もはや逃げることは出来ない、馬車から放り出される時、足を挫いてしまった。

 彼女は既に覚悟を決めていた、無様に這って逃げる位なら貴族らしく、アルトニース伯爵令嬢らしく、死ぬべきなのだと。

 それでも彼女には唯一の心残りがあった、父を亡くしたばかりの母を残していく事に。

『グゥーーーッ!』

 肉に飢えた竜は彼女の心情などお構い無しに、その鋭い爪を振り上げ、まさにエイレリアを引き裂くべき振り下ろした。

 エイレリアは静かに眼を閉じるのだった。


 奇妙なことに何時まで経っても痛みが来ない。

「?」

 それとも、痛みも無く死んでしまったのであろうか。

《ズダーン!》

 物凄い音と共に振動が彼女を揺さぶり、驚いた眼を開けた彼女の眼の前には、逞しい男性の後姿が写っていた。

 青年の向こうには竜が横たわっていた、目の前にいる若者が一撃で竜を退けたのだ。

「・・・・・」

 エイレリアは言葉無くただ驚きをもって青年の後姿を見つめていた、エイレリアの視線を感じたのか青年がゆっくりと彼女の方に振り替えた。

 彼女には逆光で彼の顔が良く見えない。

「すまない。 少し遅れてしまったようだ、だがもう大丈夫だ」

 逆光に目が慣れてきて、彼の端正な顔立ちが少しずつ見えてきた。

「? 怪我をしているのか」

「・・・・・」

 優しそうな青年が彼女の方に手を差し伸べた。

「手を貸そう。 さあ」

 彼の手を無意識に取りながら、彼女は初めて彼と言葉を交わした。

「あの・・・。 お名前をお聞きしてもよろしかったでしょうか」

 お礼の言葉より、まず彼の名前が知りたかった。

 彼は困ったように、少し照れながらも自らの名前を短く名乗った。

「セオドラ」


          エルタス暦329年

          カール・フェリクス筆

           『エルタス建国史 第一章 無名の英雄』より抜粋


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 エイレリアが馬車の中で突っ伏して自身の不運を呪いの言葉として吐き出していると、突如、馬車が急停止した。

「!?」

 この世界の馬車にシートベルトとか、エアバックなどと言った便利な装備など搭載されていない、つまり、何の警告も無く止まると馬車の中は非常に酷い状態になるのである。

《ガタンッ!》

  《バフッ!》

    《ビタンッ!》

 さすがは伯爵令嬢が使用する馬車である、内装もそれなりに良い物を使っていたらしく、怪我らしい怪我も無く、彼女は少々痛い思いをしただけで済んだが、服は乱れ、髪はグチャグチャになって淑女とは言えない惨状になってしまった。

「何なのよ!」

 外の状況を確認しようと扉を開け半身を乗り出した彼女の見たものは。

 長閑な田園風景と、自らの馬を落ち着かせようと馬を降りている騎士たち、そして前方から跳んで来る白い毛むくじゃらの何か。

「え?」


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 ロックウッド・マーカス・アルフレッド三世(やっぱり長い)は、好奇心の赴くままに駆けていた。

 勿論、馬車に突っ込むつもりは無い、手前で制動を掛けて、ゆっくり近づくつもりだった。

 馬車の馬や騎士の馬が目の前で棹立ちになった、如何したんだろうと考えていて、結果、足元の注意が疎かになったのだ。

 あっ 蹴躓いた・・・・


 かなりのスピードで走ってきた羽竜が蹴躓いて、馬車の方に吹っ飛んでいった。

 参考までに筆者が調べた所によると、アフリカ象 体長約7m 体重約1t、ティラノサウルス 体長約11m 体重(推定)5t。

 ま~なんだ~、 象だとかT-レックスみたいなのが、目の前で蹴躓いて吹っ飛んできたのである。

 つまり、大惨事・・・である。


 逃げ出す馬(良かった)、吹き飛ぶ騎士や御者、バラバラに砕ける馬車、飛び散る荷物、そして真上に打ち上げられるアルトニース伯爵令嬢エイレリア(意識も吹っ飛んでいる模様)。

 お連れ達にとって幸運だった事は周囲が柔らかい牧草地であった事だろう、大した怪我も無く気絶で済み、やがて何日かぶりの熟睡を満喫する事になる。

 エイレリアはさらに幸運であった、羽竜の柔らかい羽毛の上に落下して怪我なく済んだのだから、しかし、幸運は使い果たしてしまった様である。

「ピッ! フン? クール? ペロ ペロ」(いたたた! あれ? だいじょうぶ? ぺろ ぺろ)


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「!?・・・・・・・・・・」

 セオドラはその光景を見て言葉を失う事になる、どうすればこんな光景が出来上がるのか理解に苦しむ所だ。

 村の共同牛舎で作業をしていたら、近くで大きな音が響いたので様子を見にきてみたら。

 見慣れない馬がのんびりと牧草を食べ、10人前後の人達があっちこっちで爆睡し、木だとか車輪だとかの部品や鞄が散らばる真ん中で、真っ白の羽竜が蹲り金髪の女性を両手で包み込み舐めまくり、女性を涎まみれしていた。

「なんだべか~。 なんばしようか?」

 とりあえず気を持ち直して周りを確認、草原で転がる者達に大きな怪我は無いみたいだ、金髪の女性の方は・・・・

 ロック以下略は、セオドラに気付いて嬉しそうに泣き声をあげる。

「キュル? クール♪」

「あ~、よしよし。 え~子だなおめ~は」

 羽竜の頭を乱暴にガシガシ撫でながら女性の様子を確認、涎塗れながら上等な仕立て服、ぐっしょりと濡れてはいるが綺麗な金髪と美しい顔立ち、怪我は無い様だが気絶中、と言うより魂の半分が既に出ている様な気がしないでもないが、大きな問題ではないので放っておく。

「大丈夫だべか?」

 女性の頬を軽く叩く、エイレリアは気が付くがまだ焦点が合っていない、弱弱しい声で。

「あなた様がお助けくださったのですか?」

「ま~、何のことだべか?」

 まだ意識が朦朧としている様で現状を認識していない様である、彼の言った事も耳に入っていない。

「申し訳ありませんが、お名前を伺っても宜しいですか?」

「おら~セオドラと言うだよ」

「セオドラ様ですか、わたくしエイr・・」

「ペロン♪」

「ヒッ!」(カックン)

「あんれ~ どうすっべかな~?」

「クルー ペロ ペロ」


次回は伯爵令嬢、大浴場で遭難!

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