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異世界のはじまり 冒険者 怒りの野菜畑 帰郷

怒りの野菜畑の最終話です。



 朝日の中、森の上を二つの影が滑るように南に移動していた。

 救助された冒険者達と騎士団を乗せた二隻の飛空船は編隊を組み一路、中継地点を目指して飛行していた。

 既に危険は去った、冒険者達は、普段は見る事のできない空の風景を見ている者と、緊張が切れて寝ている者に分かれている。

 健康を極端に害した者は居ない、あの場所では、それなりに健康的な食生活をしていたのだ。

 ライナーは船床に座り何となく外の風景を船窓から見ていた、隣にはユナが彼にもたれかかり静かに寝息を立てていた、そんな素振りは見せなかったが、やはり今まで緊張していたようだ。

 彼はそんな彼女を見ながら今後の事を考えていた。

 冒険者を続けるという、選択肢は彼の頭の中には既に無かった。

 ユナと良く相談して、出来れば故郷に帰り二人で静かに暮らしたかった、もう二度とこの手を放さないように。


------------------------------------------------------------


 その中型飛空船は一見すると何処の国の船か判らなかった、船体には重武装が施され、空中戦を行う為の多くの魔道機関を搭載していた。

 国籍不明船の中だ静かな声が報告する。

「目標を視認。 攻撃準備完了しました」

「よし。 命令に変更はない、皆殺しにしろ」

「了解しました」


[黒餓騎士団]

 イースオーリ王国の編成では存在しない騎士団。

 暗殺、誘拐、隠滅など王国の暗部を一手に引き受け、その団員の八割は拘束され死刑にされたことになっている凶悪犯である、彼らは呪術式で命令に従うように呪縛されている。

 だが、彼らは今され良心が痛むような感性など持ち合わせてはいない、どの団員も殺人を平気で行なう狂信者だからである。


 全く感情の無い声が命令を発した。

「攻撃開始」


------------------------------------------------------------


 後方を監視していた騎士が、それを発見したの偶然の産物であった。

 彼は緊張が緩み、任務中は禁止されている酒類をこっそりと飲もうとして、誰も居ない後部甲板に出た所でその重武装船を発見した。

「? 何だあれは?」

 彼は酒を飲むのを忘れてその船を見ていたが、その船が急速に接近してくるのを見て、慌てて中隊長に報告するために中に戻っていった、酒瓶を手に持ちながら。

 この報告が結果的に、彼らと二隻の飛空船を救う事になる、もっとも酒を飲もうとしていた彼は後で中隊長にこっぴどく怒られる事となる。


 報告を受けたトライトの判断は素早いものであった、攻撃を受ける前に、二隻の飛空船の飛空船を直ちに急降下させた。

 先ほどまで船の在った航路に凄まじい威力の赤い魔光線が通り抜けていった、一撃で小型の飛空船などバラバラに破壊する威力であった。

 二隻の飛空船は狙いを外す様に森の直上を不規則な飛行で飛び、中型飛空船は後方上部から魔弾の牽制と魔光線を組み合わせて攻撃していた。

「クソッ! あいつ等何者だ!」

 トライト中隊長は悪態をついたが、大臣の差し金だと当たりをつけていた、彼も噂で聞いた事があるのだ存在しない騎士団の事を。

 先ほどから中継地点に救援を要請したが、おそらく間に合わないだろう。

 トライトは気付いていた、彼らを狙う船は自分達を南に行かない様に牽制している事に、北へ押し遣ろうとしている事に。

 彼はこの時、初めて国の密かな方針に辿り着いた、大臣あるいは国王は戦争を欲している事に、その為に北のエルタス村あるいは白亜の建物のそばで自分達を生贄として差し出さなければいけない事に。

「大義名分が必要と言う事か・・・・」

 調査など成功しても失敗していい、要はそこで、その場所で血が流れる事が必要なのだと、その血が公的な身分の血であれば完璧である。

 前方に小さく村が見えてきた、猫が鼠を甚振るような攻撃が徐々に正確さが出てきて、逃げ場が殆ど無くなってきた。

 おそらく彼の融通の利かない性格が煙たがられたのであろう、部下や冒険者は巻き添えにされるのだ、それが無念で成らない。

「此処までか!」

 彼は心の中で覚悟を決めた。


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「こんなものか」

 黒餓騎士団の飛空船の中で、二隻の飛空船を甚振りながら団長は何の感情も抱かなかった。

 命令では『エルタス村付近で飛空船を撃墜せよ』とあるだけだった。

 その結果が何を齎すのか彼には興味は無かった、彼は命じられた事に従うだけ。

「村が見えてきました」

 部下からの報告に頷きながら、彼は最後の命令を発した。

「打ち落とせ」

 この台詞が彼の最後の言葉となった。


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『ドカンッ』


「やかましい!」

 忽然と重武装の中型飛空船が消失した、換わりに薄いピンク色のゆったりとした衣服を着た少女が空中に腕を組み仁王立ちしていた。

 先ほどまで猛スピードで空を疾走していた二隻の飛空船は空中に停止し、否、静止させられていた。

 誰もが唖然として動きを止める中、少女の視線が小型船の方に向く、気まずい沈黙、少女は半分寝ぼけているようだ。

 誰もが動けない中、トライト中隊長は悠然と甲板に上がり、余裕の笑みを浮べ胸をそらした。

 全員が固唾を呑む中、彼は見事なお辞儀をして謝罪した。

「申し訳ございません!」

 寝ぼけた少女が更に怒鳴ると。

「今! 何時だと思っているの!」

 苦労人トライト中隊長さらに謝罪。

「言葉もございません! 以後! 気を付けます!」

「うむ」

 寝ぼけた少女は鷹揚に頷き、その場から忽然と消えた。


 朝の静寂だけがその場にあった。


------------------------------------------------------------


「無駄な事よ」

 中継地点では朝から蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

 大臣は奥でその様子を眺めながら、今後の事に考えていた、犠牲が出たのだ戦争は仕方が無い、軍の招集、制圧、略奪、富の分配など、どれをとってもその過程で動き方で莫大な資金が動くのだ。

 黒餓騎士団が失敗するはずが無い、いずれはあの連中も諦めるであろう。

 大臣は朝早くから起こされた性で眠気が残っていた、そして何時の間にか眠りに落ちていく事となる。


 周囲から騒ぎ声が聞こえる。

 何時の間にか眠ってしまった様だ。

「ふむ。 終ったようだな」

 大臣は目の前にいる逆光の中の二人の人間が誰なのか直ぐには判らなかった、自分の秘書官だと思って命令をした。

「おい。 祝杯を挙げる取って置きのワインを持って来い」

「何の祝杯ですか?」

 秘書官は無礼にも自分に聞き返してくる、少々怒りながら。

「決まっているだろ! あの面倒くさい騎士と薄汚い冒険者が皆殺しになったことに!」

「ほ~う。 それがめでたい事ですか?」

 自分にさらに口答えする、思わず怒鳴り。

「決まりきった事を言わせるな! 連中など幾らでも替えが利く!」

「連中が犠牲になったから戦争できるのだ!」

「なるほど・・・」

 そこまでいって大臣は初めておかしい事に気付いた、自分の秘書官ならこんな事は聞かない、そこで初めて眼の焦点があってきたそこには。

 トライト中隊長とライナーが正面に立ち、その周りを大勢の騎士と冒険者が取り囲んでいた、逆光で二人しか認識できなかったのだ。

 大臣が絶句している中、トライトが静かに語りだした。

「秘書官が全て話してくれましたよ、証拠の書類も揃っています。 これだけあれば確実に大臣は罷免ですね」

 大臣は喘ぎながらも虚勢はる。

「きっ 貴様! 誰の許しを得て! わしの荷物を荒らすか! 恥を知れ!」

「国王陛下です」

「なに!」

 トライトは慌てず最後通牒を大臣に突きつける。

「既に陛下に報告は終っています。 陛下も預かり知らぬとの事、全ての責任は大臣にあると、おっと、元大臣でしたね。 今は」

 トライトはそれだけ言うと元大臣に背を向けて歩き出した、後ろで何か音が聞こえるが気のせいであろう。

 隣をライナーが歩いているのを横目で確認し正面を向いたまま話しかける。

「私も取りあえずはお咎め無しだ。 もっとも閑職には回されるがね」

「・・・・」

「今回の依頼でかなりの金額が出ると思うが。 これからどうする?」

 かなりの金額、間違いなく口止め料であろう。

「引退します」

「そうか・・・・・。 それもいいな・・・・」

 短い沈黙の中、二人はしばらく歩き続けたが、トライトの部下が彼を呼びにきた。

「それじゃ。 元気でやれよ」

「はい。 トライト中隊長もお元気で」

 トライトは部下と共に去り。

 ライナーは青い牙の仲間の待つ場所、彼の愛する人のいる場所に歩いていった。



The End 

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「ミウ。 朝から何処に行っていたの?」

「五月蝿かったから、直蹴り入れてきたの・・・・」

「ふ~ん。 朝ごはんまでまだ時間あるから、もう一眠りしてきていいよ」

「うん、そうする。 お休み、マイ姉」

「お休み」




次回は外伝を入れる予定。

VRMMO[ワールド]の話になるはずです。


アダマスの出鱈目が炸裂します。

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