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異世界のはじまり 冒険者 怒りの野菜畑 捕虜

今回は少し短め。



彼は夢の中にいた。

 音は無い。

 何とか踏ん張り、慌てて振り向いた先で、ユナが全身を朱に染めゆっくりと崩れる。

 ピチョン。

 水溜りに滴が一滴落ちる、耳に音が届く。

 ピチョン。

 額に冷く気持ちのいい感触が広がる。

 ピチョン・・・ 

 薄っすらと眼を開け、まだ焦点の合わない目で彼女を見る、ユナ。

 最悪な夢、幸せな目覚め。

 彼女は心配そうに彼を覗き込んでいる、彼女を安心させるように微笑みながら。

 「ユナ・・・。 酷い夢を見たよ、君が血まみれで倒れる夢を・・・・」


 夢 デ ハ 無 イ

 

 急激な覚醒、焦点が合う。

 横たわる身体を無理やり引き起こす、まるで弓の様に、全身の筋肉が悲鳴を上げる、呼吸が追いつかず思わず咳き込む。

「ゴホッ! ガホッ! ユナッ! 生きて!」

 ユナが声をかけるより早く、彼の背後から聞き覚えのある声が掛けられる。

「気が付いたか・・・・」

 ライナーは痛む身体を庇いながら、真っ暗の中ゆっくりと振り返る。

 そこには、青い牙のリーダーが座っていた、ニンジンを齧りながら・・・

 彼の覚えているリーダーの最後は思い出す、顔面を砕かれた絶命した光景を。

「リーダー! 生きていたんですか!」

 リーダーは苦笑を浮かべながら。

「勝手に殺すな! 俺だけじゃないぞ・・・」

 横を指差す、そちらに視線を移すと、ヒーラーとスカウトがボリボリと野菜を齧っていた。

 絶句、はっきり言って思考が追いつかない、呆然としながら再びリーダーを見る、説明を求めるように。

「何が起こったのかは、俺にも分からん。 ただ、此処の連中は直ぐには殺すことは無いようだ・・・」

 ようやく眼が暗闇に慣れてきたので、彼は改めて自分達が居る場所を詳しく眺めた、そこは木の幹を利用した天然の牢のようだった。

「どんな連中ですか?」

 リーダーは初めて困惑の表情を浮かべながら。

「直接には見ていない・・・」

「?」

「俺が観たのは葉っぱで全身を覆った奴だった。 野菜は何時の間にか補給されるから食うのには困らんがね」

 なんとも微妙な状態である         

「ちなみに武器や装備は全部取り上げられているから、何も出来ん。 脱出も難しいだろ。 それで騎士団は救助に来るのか?」

 最後に連絡したのは、彼である内容も彼しか知らない。

 ライナーは此処で初めて最後の連絡の内容を思い出して沈痛を表情を浮かべた。

「どうしたの?」

 ユナが心配そうに声を掛ける。

「救援は来ない・・・・」

 ここで全員の視線が彼に集中した。


『大臣命令でお前達に出せる飛空船は無い。我々は明後日までこの中継地点にいるから歩いてくれば間に合うだろう。 お前達はそこから独自で戻ってきたまえ』


 しばらく、お互いが持っている情報の交換と共有に時間を費やし。

「クソッ! やっぱり! あの野郎! やっぱり録でもないぜ!」

 スカウトが床を殴りながら悪態をつく、胡瓜、茄子、南瓜が投げ込まれる、食事の要求だと思われたようである。

「飯じゃねーよ!」

 悪態に反応して、葱とトマトが投げ込まれた。

「違うっての!」

 キャベツが・・・・

 話題休閑


「それで、リーダーこれからどうするんですか?」

 武器や装備は無い、救援は期待できない。

 相変わらず、探知魔法や監視魔法に反応は無く、敵の姿を見ることは出来ない。

「自力で何とかするしかないか・・・・」

 リーダーは何かを諦めたように呟きながら、全員を見ながら、ライナーの前で視線を止め。

「ライナー。 行ってくれるか」

 それは、頼みごとで無く、命令であった。

「何故、俺に? 森の中ならスカウトの方が有利だと思うが?」

「お前の方が体力がある、それに此処はどこか分からないが水の音がする近くに川がある様だ、あとは・・・」

 スカウトは肩を竦めながら苦笑。

「俺じゃ~。 一撃、喰らえば身構えていても終わりだ」

 ライナーは未だ躊躇していた、彼女を、ユナをおいて行くのを・・・

 ユナはそれを感じ取り、静かに眼を閉じてから意を決して強い意志を瞳に込めながら。

「ライナー、お願い。 私達、いえ私の為に行って」

「ユナ・・・・」

 ユナは満面の笑みを浮べて

「大丈夫! 待っているから」

 彼は全員の顔を見て、覚悟を決める。

「・・・・分かった!」

 もう! 迷わない!


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 未だ暗い内に、こっそりと地面に降り伏せて時を待つ。

 徐々に眼が慣れてきた、周囲は野菜畑のようだ、静かだ。

 耳を澄ませて、水の音を探り川もある方位を慎重に見定める。

 川は、畑の向こう側のようだ、人影は無い。


 突如、上の方で爆発音、周りが一瞬、明るくなる。

 猛然と走り出す!

 後ろは振り返らない!

 身体の横を何かが高速で掠める、足を止めない!

 足が柔らかい物を踏む、足裏から衝撃! 身体が宙を舞う。

 走っていた為、前方に投げ出され地面に叩きつけられ、一瞬息が詰まる。

 怪我は? 無い! 立ち上がる!

 川は? 目の前! 

 突如! 真後ろから巨大な物体に跳ね飛ばされる! 

 川岸まで地面を転がる。

 衝撃で気絶寸前・・・

 後方で連鎖的な衝撃!

 再び宙を泳ぎ、川に落下 激流に流される。


 気を失い、ライナーは、ただ流されていく。


------------------------------------------------------------


「中隊長・・・ それは大臣の命令を無視するのですか?」

 集められた騎士の一人が心配そうに発言する。

 全員の視線が自分に集まるの感じながら、トライトは人を食ったような笑顔を浮べ。

「いや。 私は大臣の命令に無視なんかしてないぞ」

「しかし!」

「私は、ただ大臣の為に周囲を偵察したいと言っているだけだよ、この辺りは危険が多いからな冒険者が行方不明になるほどに、だろ?」

 一同が中隊長の詭弁に唖然とする中、いち早く復帰した騎士が人の悪い笑みを浮かべながら追従する。

「確かに、地上にいるのは危険ですな。 何せ我々は森の中は不慣れですから」

「だろ~」

「しかし、それは屁理屈ですよ?」

 トライトは完全に開き直り。

「屁理屈だって理屈の内だ! 違うか!」

 全員が必死に笑いを堪える中、騎士の一人が賛同する。

「確かにそうですな」

 トライトは一旦、言葉を切って真面目な顔付きとなり。

「二隻でぎりぎりまで近づき上空で待機、異常を発見したら調査の為に接近し、必要とあれば着陸する。 何かか質問はあるか?」

 沈黙が辺りを包む。

「よし! 行くぞ!」

「応!」


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 川の流れが緩やかになっている浅瀬、一人の男が流れ着いていた。

 気を失った男の前には、一振りの短い片刃の剣が地面に突き立っていた。

 まるで、自らの主が現れるのを待つように・・・・


 ただ、そこにある・・・・・


                         To be continued 

------------------------------------------------------------


 一方 アダマス作業棟 鍛冶場のゴミ捨て場

「あれ~。 何処やっちゃたかな?」

「どうしたの? カズマ?」

「あっ! サクラ、此処に捨ててあった片刃の剣知らないか?」

「うんうん。 知らない」

「おかしいな?」

「それが無いと、何か問題どもあるの?」

「いや! 失敗作だから潰して再利用しようかと思って・・・」

「ふ~ん。 それでどんな剣なの?」

「うん。 生きている植物は何でも切れるけど、肉はさっぱり切れない」

「・・・・・ 武器としても包丁としても微妙ね」

「だろ・・」



次回予告

 ライナーは遂に起った!

 仲間の為に

 囚われた人々の為に

 彼の手の一振りの剣が輝き

 剣が振るわれる毎に道が切り開かれる

 トライトは間に合うのか

 そして、大臣が静かに暗躍を始める・・・

次回 「冒険者 怒りの野菜畑 反撃」



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