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異世界のはじまり 冒険者 怒りの野菜畑 仲間

今回はちょっと長めです。


シリアスだと思って最後まで読んで爆笑してください。

 その薄暗い部屋の中で彼は正座されていた、周りからは張り詰めた空気が漂っている。

「チヒロ君。 もう一度、繰り返してくれるかね?」

 正面に座る男が逆光の中、某対天使決戦兵器の司令みたいに顔の前で腕を組み、妙に芝居がかった口調で彼に話しかけてきた。

「いや~。 ですから~、独りであの広大な田畑を見るのって大変じゃないんですか~」

「それで・・・」

 彼を囲むように配置された机の一角から女の声で続きを促される、まるで異端審判か秘密裁判である。

「・・・(汗)。 だから、植えた野菜自体に自己管理の能力付けて、盗まれない様に自己防衛能力付加して、ついでに味が良くなる様に自己進化できるように改造したんですよ」

 何だか、ろくでもない物が出来ているようである、机の一角から質問が飛ぶ。

「村人が襲われないのハ? 森の中から出てこないのは何故ですカ?」

「え~と。 たぶん、基本は植物なので自分のテリトリーから出ない様です、あと同じ畑仕事で野菜造っているから同族と思われたのかも・・・」

「つまり、森に入らなければ当分は危険はないと?」

「はい」

 周りの雰囲気が若干緩み、安堵の声が漏れるが。

「ただ・・・。 元が野菜ですからね」

「? 何か問題でも?」

「実は・・・・・・・・


 チヒロは正座から天井からの逆さ吊りに格上げされました。


「ちょっと。村長さんの所に行って来る」

「私も行くわ」


------------------------------------------------------------


 これまでの行程は計画どうりに森の中を進むことが出来た、魔道具による中継地点との長距離連絡も問題なく会話が可能だ。

 もっとも、中継地点に大臣が乗り込んできたのは当初の予定には無かった、大臣は何かにつけて細かく報告を求めて来るのには閉口する。


 ゆっくりと警戒しながら。 

 だが、確実に歩みを止めないが。

 少し進むごとに魔道具から大声がもれる。

『まだ! 目標に着かんのか! さっさと進め! まったくこれだから冒険者などは!』

 この魔道具は音声を止める術が無いのが唯一の欠点だ、大臣の大声が響く毎に、足を止め周囲を警戒する。

 今度は、小声でトライト中隊長の声が漏れる。

『すまないな。 なるべく大臣を魔道具に近付けない様にはしているのだが・・・・』

 彼も苦労している様だ、声に疲労の色が見える様だ。

「いいえ。 何か起きましたら此方から連絡するようにしますので、魔道具を切っていてください」

『・・・ 善処しよう』

 たぶん、無理である。

 青い牙の5人は顔を見合わせて、トライト中隊長の苦労を思い苦笑、若干緊張が緩む。


 ガサッ!


 前方で不自然な音。


 ハンドサイン、周囲に展開、戦闘態勢。


 音源は一つ、周囲を警戒、監視魔法に反応は一つだけ。


 リーダーは短く低く誰何。

「誰だ!」


 ガサッ!

 返答なし。

 ハンドサイン、前方を攻・・。

 緑の葉を掻き分けて、息も絶え絶えの男が転がり出てきた。

「たっ! 助けっ てくっ れ!」

 身なりは薄汚れているが冒険者の様だ、血行は悪くない、いや、むしろ健康そのものである。

「大丈夫か! ヒーラー!」

 リーダーは周囲を警戒しながらも、出来るだけ急いで男に駆け寄り急いでヒーラーを呼んだ。

 ライナーはリーダーが放り投げてきた魔道具を受け取り直ちにトライト中隊長に報告。

「生存者発見! 行方不明の冒険者と思われる!」

 周囲を警戒しながらも、男から視線を外す事が出来ない、恋人で魔術師のユナに声だけで問う。

「周囲に反応は?」

「大型動物の反応は無いわ!」

 ユウは監視魔法で周囲は走査しながら、リーダーと男の話に耳を傾けていた。

「いや! 怪我は無い! 擦り傷だけだ!」

 ヒーラーの癒しを断りながら呼吸を整えて何とか返事をする。

「ですが・・・・」

「少し走りすぎて、呼吸が苦しくなっただけだ」

 男は青い牙のメンバーを見回しながら。

「あんたら・・・。 冒険者か?」

 リーダーが頷きながら男に質問する。

「ああ。 お前は例のエルタス村の調査に行った冒険者の生存者か?」

 最悪の返事を想像しながら質問。

「そうだ。 だが生き残りは俺だけじゃない。 あんたらも調査にいくのか?」

「ああ。 それで生存者は何処にいる? 何人いるんだ?」

「おそらく、全員だ。 全員生きているはずだ・・・」

 予想外の答えに青い牙の5人は困惑した表情で顔を見合わせる、そんな事はお構い無しに冒険者の男は必死の形相でリーダーに頼んでくる。

「あんたら、冒険者なら。 頼む! 香辛料を、無ければ塩でも良いから譲ってくれ!」

「「はぁ?」」

 その予想外の頼み毎に思わず彫像となる青い牙の面々、いち早く復帰したリーダーが困惑しながら。

「それh・」

『バグッン!』

 リーダーの顔面が突如、赤に染まり力無く仰向けに倒れた。

 誰もが動けない中、それは物凄く永い時間の中、ゆっくりとリーダーは倒れた。

 見ただけでは、リーダーの顔面は完全に潰れ即死した様にしか見えなかった。

「これは!」

 ヒーラーが何かに気づいてリーダーに手を伸ばそうとしたその時。

『バッン!』

 ヒーラーの側頭部に何かが高速で命中、赤い花を咲かせて倒れた、見ただけでは此方も即死の様である。

 刹那の間に2人も倒れた衝撃から、いち早く正気にかえったスカウトが叫ぶ。

「クソッ! ライナー! ユナ! 男を連れて逃げろ! 俺が牽制する!」

「だが!」

 ライナーは躊躇する、戦士の自分が残った方が良いのではないかと。

「俺なら足が速い! 直ぐ追いつける! 早く行け!」

 確かに、言い争っている場合ではない、男に肩を貸しながら。

「分かった! 必ず来いよ! ユナ! いくぞ!」

 まだ、呆然としているユナが何とか返事をする。

「ええ!」

 スカウトが伏せながら煙幕張りながら叫ぶ。

「早く行け! 応援を呼んで来い!」

「ああ! 死ぬなよ!」

「俺を誰だと思っている? 帰ったら一杯奢れよ!」

「フン! 直ぐ酔い潰れるくせに!」

 男達は努めて軽口を言い合う。

 おそらく、これが永久の別れとなると悟って。


 ライナーは駆け出す! 

 もう、後ろは振り返らない。


 一方、一人残されたスカウトは。

「あいつ等の結婚式、でたかったな・・・・」

 静かに自嘲。

 リーダーが一撃で倒す攻撃、しかもユナの監視魔法に引っ掛らない技術、果たして自分でどれくらい時間を稼ぐことが出来るだろうか・・・

「気配は無い・・・ 何処から来る・・・」

 その時、近くに何か落ちてきた。

「何だ? イモ?」

『ボッカン!』

 目の前で衝撃! 一瞬で意識が刈り取る一撃。

 消えゆく意識の中で何が起きたのか問いながら暗黒に落ちてゆく。


------------------------------------------------------------


 中継地点は喧騒の中にあった。

 トライトの怒鳴り声が響き渡り、報告の声が幾重にも重なる。

「一号船! もう直ぐ! 接触できます!」

「残りは準備でき次第直ぐに出せ!」

「ハッ!」

「騎士団の準備はどうなっている!」

「第一分隊は準備完了です!」

「船に乗せて出せ!」

「了解しました!」

 じりじりと時間だけが過ぎる、トライトは自分が中隊長なのがもどかしかった、一兵足なら直ぐ飛空船に乗って駆けつける事ができたのに、今の自分には剣を持っている事しかできない。

「一号船! 合図確認! 生存者を視認! これより降下します!」

 間に合ったか、中継地点で安堵の声が漏れる。

「直ちに回収して! 帰還させろ!」

 トライトは直ぐに命令を発するが、後ろから更なる命令が発せられた。

「まて! 今の命令は撤回する。 一号船の着陸は許可しない、直ぐ帰還させろ」

 先ほどのからの喧騒が嘘の様に静まり返り、誰もが動かない中、大臣が手を軽く叩き。

「どうした? 早く命令を伝えろ! 首になりたいのか?」

 魔道具を操作していた兵士がトライトを伺いながら、恐る恐る一号船に命令を発信する。

「いっ 一号船。直ちに高度を上げ、帰還せよ」

『どう言う事だ! 目の前にいる! 早く救助しないと! 中隊長殿! 再考をお願いします!』

「大臣の命令だ! さっさと帰って来い! 命令だ!」

『!・・・・・』

「復唱しろ!」

『了解。 直ちに帰還する』

 連絡をした兵士は我慢できず、その場で椅子の上に崩れ落ちた。

 そんな兵士の肩を大臣が満面の笑みを浮かべながら軽く叩き労った。

「それで良い。 どうした? 何を固まっている? 調査は終りだ撤収の準備をしろ!」

 トライトは等々、我慢できなくなり大臣に詰め寄った。

「どう言う事ですか! 大臣! 彼らを見捨てるなど!」

 大臣は本当にめんどくさそうに、聞分けの無い子供を諭すように。

「如何したのかね? 中隊長。 何が問題なのかね?」

 トライトが絶句しているのもお構いなく。

「良いかね。 たかが冒険者風情を助ける為に、貴重な飛空船や騎士団は出せないと言っているのだよ」

「しかし!」

「冒険者など、また雇えば良い。 それより今回の失敗を検証して、次の調査に活かせば良いではないか」

「さて、わしは国王に報告する報告書の内容を考えなくてはならない、これで失礼するよ。 まったく無能な冒険者ほど使えないものは無いな」

 大臣が去り、静寂の戻った。

「クソッ!」

 『ガッシャン!』

 トライトが床に叩き付けた剣の音だけが虚しく響く。


------------------------------------------------------------


「もう直ぐだ! 頑張れ!」

「ハァ! ハァ! ハァ・・・・」

「後ろは!」

「何も反応しない!」

「クソッ!」

 トライト中隊長と何とか連絡は取れた、もう直ぐ救援と援護が来る。

 相変わらず後方から反応は無い、仲間のスカウトはもう・・・・

「すっ すまないっ もうっ 少し体っ が動けばっ・・・まんっ きつい はしっ だがっ 君のっ なかっ・・」

「口動かすより! 足動かしてくれ!」

「しかしっ これっ・・・だっ け・・」

「見えた! 合図を上げるわ!」

 ユナが飛空船を見つけて、魔法で決められた合図を打ち上げる。

 その合図を目指して飛空船はゆっくりと降下を開始した。

「助かった・・・」

 張り詰めたものが緩み、安堵し自然と笑みが漏れる。

「?」

 突如、飛空船が降下を止め上昇を始めた。

「どうして・・・」

 一瞬の自失の後、ライナーは魔道具に向けて叫んだ。

「おい! どういうことだ!」

 魔道具から今まで聴いたことの無い冷たく無機質な声が流れてきた。

『私は大臣の書記官だ。 大臣命令でお前達に出せる飛空船は無い。我々は明後日までこの中継地点にいるから歩いてくれば間に合うだろう。 お前達はそこから独自で戻ってきたまえ。 以上だ』

 ライナーは魔道具から流れる言葉が理解できなかった、思考が纏まらず動くことが出来なかった、その時。

「危ない!」

 突然! 突き飛ばされる!


 全ての音が消える。


 何とか踏ん張り、慌てて振り向いた先で、彼が先ほどまで立っていた場所ではユナが全身を朱に染めゆっくりと倒れる所だった。

 周囲には相変わらず鬱蒼と緑が茂る森の中、肩を貸していた男が力無く倒れこむ、後頭部が赤く染まっている。

 上空では、次第に遠ざかる飛空船。

 残されたのは彼、独り・・・・

 思考が定まらない・・・・・

 叫びだけが深い森に木霊する。


「なぜだぁぁぁぁぁぁ!」


                         To be continued 

------------------------------------------------------------


 一方 エルタス村 村長邸

「つまり・・・ その野菜に捕まっても直接には害が無いと言う事かね?」

「はい。 おそらくトマトやイモをぶつけられて拉致され、丁重に監禁され野菜を沢山食べさせて貰える、といった処です」

「それは・・・。 トマトはともかく、いい事の様に思えるが?」

「味付けされていない生野菜を三食、食べることが出来ればですけど・・・」

「・・・・かなりきついな・・・・」

「ですよね・・・・」

「しかし・・・。 何故だね?」

「「・・・・」」

「?」

「肥料の為みたいですよ」

「・・・・・なるほど」


次回予告

 暗黒の檻の中、光は失っていなかった

 彼の眼はまだ死んではいなかった

 囮になってくれた仲間の為に

 ライナーよ、今はただ走るのだ

 一方、トライトは救出の為に独自の行動を起こす

 そして、ライナーの手の中に一振りの魔剣が・・・

次回 「冒険者 怒りの野菜畑 捕虜」



高速でぶつけられたトマトはかなり痛いと思う。

ヒーラーは気が付いた瞬間、トマトぶつけられて気絶しました。


野菜達も本能的に誰かに食べて貰いたいんですよ。


ちなみに救助された男が言いたかった事は

「すっ すまないっ もうっ 少し体っ が動けばっ・・・まんっ きつい はしっ だがっ 君のっ なかっ・・」

「すまない。もう少し体が動けば、満腹で腹がきつくて走れないんだ。 だが君の仲間は死んでいないと思うよ」


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