異世界のはじまり 役人は死ななきゃ直らない
原文 馬鹿は死ななきゃ直らない。
≪店内で迷惑行為をしたお客様は、店長の独断で排除させていただきます BY サクラ≫
『カフェ・あだます』。 イースオーリ王国アルトニース領の村エルタスの北に広がる小麦畑の更に北にある白亜の邸宅の柵の手前、一見してレンガ造りの見える、こじんまりとした建物。
カフェの内装も植物が飾られ、カウンターの横にはこの世界では珍しい紙の本が小さな本棚に置いてあり、非常に落ち着いたセンス良く纏められていた。
今日は、サクラの手伝いとしてエルフのイサベラと貴人のアーリアがメイド姿で給仕していた。
午前中のピークが一段落した(もっともお客様は畑仕事中に小休止に訪れる村人だけだが)休憩中、カウンターに座りコーヒーやケーキを摘みながら他愛の無い話をして、そろそろランチの支度の話になった、丁度その時。
『ガッシャッ!』『ジャッリン! リンッ!』
荒々しく店のドアが蹴り開けられ、来店を知らせるベルが耳障りな音を奏でた。
サクラたちが声を掛ける間も無く、七人ほどの武装した男達が無遠慮に耳障りな足音を立てながら入ってきた、足を引っ掛けて椅子が倒れるのもお構いなく、荒々しく目に付いた椅子に座り、中にはテーブルにどかりと脚を乗せふんぞり返る男達。
「おい! この店は! 客に酒もださないのかぁ~!」
「へへっ!」
「ね~ちゃんよ! 酌くらいしてくれよ~! なぁ~?」
男達は卑猥な笑みうかべ、黙っているサクラ達をいやらしい目で舐めるように全身を見て、中には既に衣服のボタンに手を掛けている者もいた。
「みなさん。 いけませんな~。 行儀良くしていただかないと」
最後に店に入ってきたゴテゴテに装飾で飾られた衣服を着た小太りの中年の男は、表面上は紳士的に振舞いながらも、欲に塗れた表情を隠そうともせずに話しかけた。
「私もね。 事を荒立てようとしている訳では無いんですよ・・・」
中年男はカウンターに近づきながら話し続けたていた、女達が怯えて硬直していると思い込み。
「ただね~。 この様な立派な建物を建てると成ると、さぞやお金が掛かった事でしょう」
(もう少し、脅して・・最後は少し妥協してやれば・・・・)
「いえね。 納税官たる私としては、税金を払わない者に甘くする訳にはいかないんですよ」
三人を舐めるように順番にみて、舌なめずり。
「ああ! もちろん、皆様がこの国の国民で無い事は承知しています」
「ですが、これほどの屋敷と成りますと手続きには莫大な手間と資金が掛かるものですから・・・」
カウンターの前の椅子にどかりと腰掛、脂ぎった顔をサクラに近づけ、荒い息をしながら。
「わかるだろ~?」
一方、鉄壁の営業スマイルの仮面を被った彼女は表情を崩す事無く。
「では、お客様のご要求は何ですか?」
男はぎらついた目で承諾と受け取り、手を伸ばそうとして。
静寂に包まれた店内で、物言わない凍った彫像が八体
「やれやれ。 この愚か者達は如何なさいますか、サクラ様?」
イサベラは何事も無かったように静かになった店内で、これからのこと彼女に尋ねた。
「そうね・・・。 先ずはアーリア。 その邪魔な彫像を表に出しといて」
「はい! 分かりました」
手で運ぼうとした彼女を制して。
「あっ! 手で触る必要は無いわよ! ちょっとやそっとじゃ壊れないから蹴りだしといて」
「はい! 蹴りだしときますね」
「お願いね! それとイサベラ、悪いけどミウを呼んで来てくれるかな? あとあの子にマジカル☆スティックVer.3.6も持ってくるように言っといてね」
「分かりました」
イサベラがミウを呼びに行くのを横目で見送りながら、アーリアが表に蹴り出し終わった不細工な彫像の塊を見ながら。
「さてと! こっちも準備しとこうかな・・・・」
「サクラ姉! 何か用?」
イサベラに呼ばれてカフェの前に来た彼女は、直径5mほどの球体の前で作業をしているサクラに声を掛けた。
彼女は振り返りながら。
「丁度良かった! 今、終わったところよ!」
そこのは直径5mの真っ白な球体がサクラの後ろに鎮座していた、ミウは当然の疑問を彼女にぶつけた。
「何これ?」
「中にゴミが入っているけど、単なる氷の塊よ」
「ふ~ん・・・。 でっ、私はどうするの?」
彼女は首を傾げながら尋ねた。
サクラは南の一点を指差しながら。
「え~とね。 この方角と、この角度で思いっきり打ち出して欲しいの!」
「いいけど・・・ 叩いた瞬間、割れちゃうじゃないの?」
当然の疑問である。
「大丈夫よ! 結界と障壁でしっかり固めといたから。 ついでに慣性制御とか、自動解凍も付けといたから!」
「でも、ゴミでしょ? 他の所に捨てて問題無い? 不法投棄にならない?」
気にするところは、そこでは無い様な気もするが。
「平気よ! 持ち主に返すだけだから」
「うん! ならいいや!」
いいんだ・・・・。
「お願いね♪」
「了解♪」
片手に3mのスティック(棍棒)を持って、片足のつま先で軽く直径5mの氷塊を宙に浮かべてから。
スティクを両手持ち、完璧なバッティングスタイル!
『バッカーン』(打撃音)
『ズッボーン』(音速突破)
『パリッ』(?)
白い球体はアッという間に空の彼方に消えていったが。
「あっ!」
「イサベラ? どうしたの?」
「障壁一枚貫通しました」
「えっ?」
「おそらく。 予定より飛距離が伸びるかと・・・・」
「大丈夫よね?」
「この世界の第二宇宙速度は突破していませんので・・・ 何処かには落ちます・・・」
「「「・・・・・・・」」」
暫しの沈黙。
サクラは諦め清清しい表情で肩を竦め。
「まぁ~いいわ♪ ゴミ掃除も終ったし、少し遅くなったけどランチの準備をしましょ♪」
「はい!」
「分かりました」
「サクラ姉! あたしも手伝う!」
「ちゃんと手を洗うのよ♪」
「ハーイ!」
翌日、村長が訪ねて来ても。 完璧に忘れて「そんな奴、来てた?」の一同なのでした。
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ローレリシア帝国
この大陸の中央に位置する強大な大陸国家である、街道や港が整備され交易や貿易が盛んで強大な軍事力を誇る、その中核となるのが古代の技術を解析して造り上げた空中船団である。
他の大陸との交易や貿易で得た莫大の富が、その強大な兵力を支えている。
北方に位置する小国イースオーリ王国とは同盟国ではあるが扱いは属国扱いであった。
ローレリシア帝国 帝都アンスム 帝城 昼過ぎ。
帝都アンスム全体を見下ろす小高い丘全体を城とした、広大な面積と幾重にも張り巡らした結界と障壁に包まれた難攻不落の城塞。
いや、その城は既に都市に均しい威容を誇る巨大都市である。
その城の中央には天を突く塔が四方にそびえ、その中心に皇帝権威を示す更に巨大な主塔がそびえる。
その日は雲ひとつ無い快晴で、心地よい穏やかな微風がふく、穏やかな午後であった。
凶事を予感する様なもの何一つ無く、又それを指摘する者もいなかった。
それは突然、天より降って来た、帝都と帝城に幾重にも張り巡らした結界や障壁を簡単に貫通し、非常事態の警報が響き渡る前に、四方にそびえる塔の一つ、西の塔に着弾。
西の塔を完全な瓦礫へと変え、衝突の衝撃波は帝都と帝城に吹き荒れ、魔法で強化されていない全ての硝子窓を破壊し、多くの人々をなぎ倒した。
幸いなことに、これほどの災害にもかかわらず重軽傷者は多数発生したが死者は一人もいなかった。
事態に対処する為に、騎士団と魔術師隊そして近衛騎士団が第一級の戦闘態勢で即座に行動を起こし、瓦礫と成った西の塔に集結した、彼らはそこでイースオーリ王国の納税官と名乗る男と兵士達を拘束するのだった。
役人のその後
帝国役人A「ねぇ。 そちらの役人と兵士だと名乗る者が、お城壊したんだけど」
王国役人B「えっ! それ本当? 名前は?」
A「え~とねぇ。 H~Oと名乗っていたけど。どうなの?」
B「ちょっと確認してみるね」
A「早くしてよ」
B(おい! そんな奴らいたか? ・・なに! いるだと!)
王国役人C(どうしますか? 下手すると戦争ですよ!)
B(・・よし! 隠せ! そんな奴はいない! 書類から削除しろ!)
C(りっ了解! 妻子は?)
B(離縁! いや! 財産全部相続させて! 婚姻自体無かった事にしろ!)
C(了解しました!)
A「まだかな~」
B(!)「お待たせしました!」
A「おっ! どうだた?」
B「人数が多くて遅れましたが! そんな奴ら全くいませんでしたよ!」
A「えっ! それ本当?」
B「はい! 生まれてきてもいませんでした!」
A「へぇ~。 なら~」
B「煮るなり! 焼くなり! 好きにしてください!」




