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異世界のはじまり 藪をつついて・・・

原文 藪をつついて蛇を出す


今回、主人公達はちょっとお休みです。

自重? なにそれの巻。


納税官

 領内の村々を回り、格村の毎年の作付けや収入などを調査し、その年の納税額を決める役人である。

 勿論、真面目で几帳面な若者がいる一方で、私腹を肥やす事に熱心なブタも当然いる。

 残念なことに、エルタスの村が所属するアルトニース辺境伯のエルタス村の担当者は後者であった。 

 本当に不幸であるそのブタが・・・・。



「まったく。 何故、わしがこの様な苦労をせねば成らんのだ」 

 その男は、非常に不機嫌であった。 

 舗装もされていないあぜ道を、無駄に豪華な馬車で揺られながら、センスの無い装飾で飾られた衣服を着た中年の男が今日何度目かの不平を漏らしていた。

 毎年、畑の作付けから収穫までの間、何度も現地に直接、足を運び不正が行われていないか監督し、報告書を提出しなければならい。

 これを基にして納税額が決まり国や領の予算が決まる極めて重要な役割なのだが、男にとっては単なる雑用でしかない。

 だが、決して旨みが全く無い訳ではない、上手く納税額を過少に報告し、差額を自らの懐に入れる。

 もちろん、やり過ぎてバレたら極刑であるが、程々で留めて置けば簡単に財を築くことが出来るのだ。 また、必要経費として計上すればある程度の豪遊も許されるのだが、その代償として毎年何度も馬車に揺られるのは我慢がならなかった。

「おい! 後どれ位で次の宿場に着くのだ、野宿などもってのほかだぞ!」

 男は護衛の兵士に今日幾度目かの問いを発し。

 護衛の兵士は内心はウンザリしながらもその表情を表に出さずに、馬上でにこやかに返事を返した。

「大丈夫ですよ。あの丘を超えれば今日の宿場です。 明日は、あと半日の距離で村に着きますよ」

「そんな事は! 分かっている!」

 兵士は心の中で舌打ちしながら、だったら聞くなよ、内心で思いながらも、役人が着服する税のお零れを期待していた。

 着服するなど誰でもやっている事である、しかし周りの護衛やお付にある程度の金をばら撒かなければ告発される。

 そんなやり取りの間に馬車は丘を越え今日の宿に到着した、明日の昼過ぎにはエルタスに到着する予定である。

 彼らはまだ知らない、村が想像を超えて変わっている事に、神や悪魔が可愛く見える連中が住み着いた事に・・・・


 翌日も変わらず役人が乗る馬車があぜ道に揺られ、乗り心地は最悪であった。

 男は朝から苦虫を噛み締めていた、内心では「村の連中は何をしている、何故、道を整備しない」と見当違いの不平を思いながら。

 道の整備は領主の領分で必要性を訴えるのは役人の役目、つまり役人である男が報告しなければ、何時まで経っても道は整備されないのだ。

 村の境界の橋を渡り終わったとき、突然、馬車の揺れが無くなった。

「何だ?」

 役人と護衛そして馬車の御者も驚いたようで、馬車を慌てて止め、今まで目を向けなかった地面に対して目を凝らした。

 目の先には、土のあぜ道ではなく。 石畳でしっかりと舗装された立派な道が村の中まで永延と続いていた。

 全員の思いを代弁するように、護衛の兵士の一人が馬上からが呟いた。

「何時のまに、この様な道ができた? 春先には無かったはず・・・・」

 おそらく、彼らは誰かが声を掛けるまでその場で彫像ように固まっていたことだろう。

 もっとも、後の事が予想できたら、彼らも彫像でいる事を選択したであろうが。

「あの~。 如何されましたか?」

 丁度、通りかかった村人が彫像にもとい納税官一行に声を掛けた。

「いや。 なんでもな・・・ ?!」

 護衛の隊長らしき人物が馬上から声の方に視線を向けて、再び絶句することになる。

 一行に声を掛けた村人は、一行の横を馬が牽かないのに動く馬車の様な物に乗り、幾つもの荷車を牽引していたのだ。

 現代の地球の人であればそれが何であるか理解したであろう、トラクターと。

 だが、この異世界では馬の要らない荷車など存在しない、在るとしたら魔道士が造った魔道具か国家規模研究されている古代魔法具くらいであろう。

 断じて、そこら辺の農民が農作業で使っている物ではない。

 しかも、周りを良く見れば、田畑のあっちこっちで同じ様なモノが動き回っていた。

「あの~・・・」

 村人が心配そうに声を掛ける。

 隊長が何とか正気に戻って、気を取り直し。

「いや。 大丈夫だ」

「はぁー」

「それより、今回の来訪は納税官の視察である」

 まだ、呆然としている役人に変わり、隊長が用件を村人に説明する。

「それはそれは! 遠い所から・・・」

「村長は村に居るかな?」

「はい! そういった事であれば先に行って、村長に知らせてきます」

 此処からだと村まで間だ距離がある、馬車と馬の方が速いような気もしたが、報せてくれると言うなら。

「そうか、頼めるか?」

「はい! では!」

 いきなり! トラクターは石畳の上を瞬く間の内に駆け抜けていた、再び唖然とした一行を置き去りにして。


 一行が何とか村に着いたとき彼らは再び唖然とする事となる、村の様子が全く違っていたのだ。 

 村全体が石造りの立派な城壁に囲まれ。

 全ての家は石造りの二階建てになり。

 村外れの倉庫は家よりも巨大な建物へと変貌し。

 全ての住居の窓は王都でも滅多に見られない透明な硝子の窓が嵌められていた。

 一行は周囲を見ながら、無意識に馬足を動かし何とか村長の家まで来たが、村長の家も立派な庭と総三階出ての石造りの建物に変貌していた。

 連絡が届いていたようで村長が直接、玄関先まで一行を出迎えていた。

「ようこそお出で下さいました。 長旅でさぞお疲れのことでしょう」

「さあ、どうぞ。 難しいお話は明日にして、今日の所はゆっくりとお休みください」

 驚き疲れていた一行は村長の言葉に心から甘える事とした。

 もっとも、室内の設備を見て、余りゆっくりとは休めなかったようだが。

 勝手にお湯の出る、個人向けの浴室と便所(ユニットバスに温水洗浄便座)。

 スイッチ一つで明かりの付く照明と食物を冷やして置ける箱(天上照明と冷蔵庫)。

 などなど・・・

 この世界では単なる宿泊施設でも現代文明はオーバーテクノロジーの塊なのである。


 翌日の朝食後。 役人は余り疲れの取れない顔で応接間に通され、村長に心配されていた。

「納税官殿。 お体の調子が悪いのですかな? 余り顔色がよろしくない様ですが?」

「いっ! いえ! 心配には及びません」

 役人は書類を手に早速、報告をしようとする村長を制止し。

「そうですか・・・。 では、今年の作付けのご報k」

「その前に村長!」

「如何なさいましたか?」 

「うむ。 春先にこの村に来た時とは村の様子が全く違っているので、その理由を聞きたい」

「そのことです、実は・・・・」


 最初は大人しく聞いていたが、話が進む内に次第に興奮を隠せないようになっていき。

「なるほど。 では、その旅人が・・・・」

「はい。 お礼にと。 此方としましては別によかったのですが、ついでとか片手間とか言われては断りきれませんでした」

「では、その旅人と言う奴らは今何処にいますかな?」

「北の畑の奥にある白亜の建物に住んでいます」

「なるほど・・・・・」

 男は目を鈍く光らせながら、欲にまみれた頭をフル回転させていた。

 余りに不自然な沈黙に村長は。

「納税官殿?」

「これは失礼した。 なぁーに! 今日はこれからその旅人とやらの様子を見て来たいと思いましてな」

 村長は安堵し、今後の予定を考えて。

「そうでしたか。 でしたら・・・、報告はその後と言うことで宜しかったですか?」

 男ははやる気持ちを隠しながら、何とか落ち着いた演技しながら。

「そうですね・・・。 それでお願いいたします」

「では。早速! 向かうとしましょう!」

 もはや、喜色の表情を隠そうともせず席を立ち、部屋を出て行くのだった。

 独り取り残された村長は頭を傾げながら。

「はて? 納税官殿は何をあんなに急いでいるのだろうか?」




 一方、アダマス運営の食堂『カフェ・あだます』では、エプロン姿のサクラが料理の準備をしながら。

「さて! 今日は誰が来るのかな~♪」

 獲物じゃなくてお客様を楽しそうに待っていた。


『カフェ・あだます』の入り口のドアのには、こんな張り紙がしてあった。

≪店内で迷惑行為をしたお客様は、店長の独断で排除させていただきます BY サクラ≫



次回で消える連中なんか脇役A・B・Cで十分。


村に対してのお礼は本当に片手間です、作業時間で20時間位かな・・・


さて、ブタ(役人)はどの様にして消えるか分かるかな?

殺人はしないよ。

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