異世界のはじまり とりあえずあれこれ
異世界に行ったらまずすること。
普通は混乱するよね、慣れるの早いけど。
太陽が中天にあり。
心地よい微風が草原を吹き抜け。
遠くに広大な山脈を望む、広々とした草原のちょうど真ん中あたり。
ほんのちょっと小高い丘の頂上、大小の岩が転がる場所。
人によってはピクニックにぴったりな場所で、大小18の異なる姿が思い思いの格好で横たわっていた。
どれくらい、時が過ぎただろうか・・・・
金色の髪のエルフがまどろみの中から、ゆっくりと目を開けた。
まだ焦点の合わない目で周囲をぼんやりと見回し。
無意識の内に、自分の膝の上で丸くなって気持ち良さそうに眠っている、翼の有る白猫の背中を撫でていた。
瑠璃の軽甲を纏った青年の上で視線が止まり。
「!?」
突然の覚醒!
膝の上の猫などお構いなしで駆け寄る。
叩き起こされた、猫の抗議も無視!
青年が自分の求めている相手である事を眼で確認。
体の状態の確かめ、規則正しい寝息に安堵の溜息。
起こさない様に、寝苦しく無いように体勢を整え、恐る恐る手を伸ばし、青年を膝枕。
青年の黒髪を、そーっと愛おしく整え、優しい笑み。
後ろから抗議する猫は。 当然、無視!
ふと。 自分自身の行動を頭の中で確認。
今、自分は何をしているのだろうか・・・・
以前の記録は憶えている。
決まりきった言葉だけを話、命じられたこと意外の行動はしなかった、思考はしていたが決められたパターンの反復。
では、今に自分は?
決まりきった言葉だけを話していない。
命じられた行動でもない。
自ら考えて行動した、いや、感情で行動していた。
自分に感情があるのか? 何故? 考えが定まらない。 考え! 思考している? どうして?
彼女は周りの状態が全く眼に入っていなかった、猫の抗議の鳴き声で、周りで眠っていたものが、徐々に眼を覚ましていたことに。
後ろから怒気を孕んだサクラが揺ら揺らと近づいて来たことに。
「あんたら! なにやってんの!」
鬼神降臨! 修羅場勃発!
サクラはバーサークしていた。
イサベラはまごまごしている。
カズマは寝た振りを続けた。
話題休閑
怒号、悲鳴と泣き言、爆音・・・は無く、作者自主規制の応酬が吹き荒れ何とか現状の確認など、どうにかこうにか何とか全員が落ち着くまで約2時間、もっとも感情の無い連中もいたが。
「さて。 とりあえず全員、落ち着いたな」
「イサベラ。 此処は異世界で、地球やゲームの・・ [ワールド]の世界でもないで、間違いないな?」
全員が喋ると混乱すると言った理由からカズマ達六人と、SNPC筆頭のイサベラ(ギルマスのSNPCだから)が話し合っていた。
「はい。 タマのフィールド索敵とクッキーとガルダによる、上空からの地形の確認、ライオンとタイガー、やまととむさしによる地形の照合で[ワールド]のどの地域とも照合できませんでしたので、ゲームの世界はないのは確認されました。 それに・・・」
「?」
彼女は少々、言いよどんだ後。
「私たちSNPCに。 その・・・、感情と言われる物が有る事が・・・」
「[ワールド]の中ではないといった根拠か」
「はい。 チヒロ様」
どんなに優れたVRMMOでも、イサベラの様な繊細な感情や表現、無意識に出る仕草、その様なものまで人間の様に再現できないのだ。
たとえ、それが比較的細部まで自由に設定できるSNPCでもである。
ミウが自分の手を見ながら。
「それに。チヒロ兄、此処まではっきりと自分の指紋や毛穴まで確認できるよ」
「ゲームじゃ、ありえんか・・・・」
その様子を横目で見ながら
「じゃぁー。 ステータスやアイテムボックスは何で使えるの?」
「その事が、此処が地球ではない(・・・・・・)の証明なのです。」
「?」
「サクラ様、地球ではその様なことが出来ないと、聞きましたので・・・」
「確かにね・・・・。 こんな能力、現実で使えたら凄く便利でしょうね」
「つまリ、異世界ですカ・・・・」
その場にいる全員が世界を認識するのを待っているかの様に、暫しの沈黙。
全員が沈黙に絶えられなくなる寸前、カズマは落ち着いた、近所に買い物に行く様な感じで。
「さて。とりあえず、住む処でも確保するか」
「随分と、落ち着ていますね」
あきれた様な声でマイヒメが突っ込みを入れる。
「戻れるの何をしたら良いのか解らない、それでも腹は減るし、野宿は御免だ、だったら当分できる事から始めよう」
イサベラは、ほんの少し嬉しそうに微笑みながら、タマを腕に抱いて。
「お供いたします、カズマ様」
「おお! これからもよろしくな!」
「はい!」
サクラはライオンとタイガーの毛皮に埋もれながら、二人の様子に何だか面白くなさそうにしながらも。
「はい、はい。 それで何処行くの?」
ミウは手を繋いだもう一人のミウ(ミラ)と肩にクッキーを乗せ、指先で南を指しながら。
「カズ兄。サクラ姉。クッキーが南の方に村が在るって」
エレェリアは機械の人馬やまとに腰掛けながら、むさしを引きつれながら。
「空ヲ、飛んで行きましょうカ?」
チヒロは巨大なカラスを撫で、苦笑しながら隣に立つ獣人に声を掛ける。
「おいおい! 威嚇してどうするよ。 なー!」
「左様。 たいした距離ではないの歩きが良いかと」
マイヒメはたった今造った椅子から立ち上がりながら、ドワーフと貴人に声を掛ける。
「あ! 途中で家の材料採っていいでしょうか?」
「うむ。 どれ、道でも創るかの」
「マスター。石畳で舗装は必要ですか?」
全員の準備が出来たの眼で確認した後。
カズマは号令をかける
「それじゃ! 行くか!」
彼らの行く先には何があるのか。
彼らはこの世界に何を齎すのか。
創造か。
破壊か。
繁栄か。
破滅か・・・・・
破滅は無いな、破滅するのは彼らと対立する愚か者だけだ。
こうして、彼らは異世界での一歩を大地にて刻んだ。
「ねえ! 誰! 8止めているの!」
「クッ! パスだ! ハートの5早く出せ!」
「ふっふ~ン♪ パスは3回までですヨ♪」
一歩を・・ きざ・・・
ま~・・・なんだ~
中には空飛ぶ絨毯に乗って歩いてすらいないな。
草原のほんのちょっと小高い丘から、南方にある村まで間には小高い山と森に小さい湖があり直線距離で約10km。
石畳で歩道と馬車道の分かれ排水溝もある幅5mのローマ街道に劣らない直線で立派な道が突如出現した。
翌朝、村の住人はこの道を見て首を傾げるのだった。
石畳と橋10km 建設時間 2時間。
「歩き易い方が良いよね」
「そういえば、途中でモンスターとか猛獣に会った?」
「ふむ。 作業中何か弾いたような弾いてないような・・・」
「・・・・まっいか~!!」
異世界での一歩を大地にて刻んですらいない連中。
次回 村を訪ねよう(仮)
村に着いても普通な訳がない!




