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DAY-06 END CREDITS

ようやくLANが直った!!!!

日本国 東京 首相官邸執務室


 その室内は部屋の主の性格を表す様に、華美な装飾や、自らの権威を高める事を意図した高価な物などは徹底的に排除されていた。

  さして広くない室内に複数の机が持ち込まれ、部屋の主から出された指示を速攻で処理し、端末にデータを打ち込み、不明な処の指示を仰ぎ、関係各位に指示する為、足早に室内外を出入りするのである。

 室内にはキーボードを打つリズミカルな音が静かに満たし。

 時おり人の声や室内外を行き来する足音が響き、書類を捲る紙の音と、紙面にペンの走る音が聞き取る事が出来た。


 部屋の主、矢吹総理は右手で端末を操作しながら書類にサインと印をし、左手で書類を捲りながら携帯端末にメールを打ち込み、右耳と肩で電話の応対をしながら、左耳で関係各所からもたらされる報告や秘書官からの質問に耳を傾けながら、口を休める事無く動き続けているのである。

 時おり、脇に置いてある軽食のお握りやサンドイッチが、魔法の様に消え、ペットボトル入りのミネラルウオーターのフタを開ける音が響いたと思ったら、空のボトルが脇のゴミ箱に投げ込まれる乾いた音が鳴るのである。

 それらの行動を挟んでも、彼の口は止まることなく言葉を発し続けていた。

 

 本来、これらの仕事は彼の、総理大臣の仕事ではない物も多いが、今朝から昼過ぎまで都内を覆ていた濃霧の為、唯でさえ少ない事務方のトップや中間管理職が歯抜けの様に抜けてしまい、本来ならある程度、整理されて送られてくる情報も、未処理の生情報のまま書類の束となって、彼の執務室まで来てしまっているのである。


 いつの間にか消えていく軽食を横目で見ながら。

(何時、食べているんでしょうか?)

 厚さ1cmにも及ぶ書類の束を片手に持った役人の一人が率直な感想を持ち。

 矢吹総理の机の前に進んでいき、来訪の要件を言おうとした瞬間。

「え?」

 彼が瞬きする間に手からいつの間にか書類が消え、驚きで硬直した彼が数度確認する様に瞬きする間に、彼の手の中に再び書類が出現するのであった。

 錯覚かと思い、書類の束を捲り、素早く目を通すと所々に走り書きの指示や斜線が引かれているのである。

 周囲を見渡せば、驚いて硬直しているのは彼一人だけであった。

 相変わらず執務室はごった返していて、部屋の四隅に立つSP達は微動だにしない。

 秘書官たちは慣れたもので、次々と入れ替わり立ち代わり机の前を行き来していた。

 彼は無意識の内に歩き出し、書類の束を所属する部署に持ち帰る為に廊下を足早に進みながら。

「その内。魔法でも見せてくれそうですね」

 十分に魔法か手品の範疇だが、彼はその様に考えずにはいられなかった。



------------------------------------------------------------


 どうも、最近はトラブル関係の報告を持ってくる事がやたら多くなった秘書官の一人が彼に声をかけた。

「総理」

 手を休める事無く、頭だけを動かし声をかけられた方に目をやった彼は、思わず渋面を作ってしまった。

「今度は何事だ?」

 本人にとっても周囲にとっても、まことに不本意だが、彼が持ってくる報告で吉事であった事の例が無い。

 最近では、周囲から率先して厄介事を押し付けられる傾向にある。

 矢吹本人にとっても、それはそれで非常に分かり易い為、非常に助かるのだが・・・・・。

 凶事の発生を喜ぶバカは、頭の逝っている有名私立探偵だけで十分であるし、彼は探偵では無く一国を預かる政治家である、渋い顔の一つも出て来るのである。


 ・・・の筈だが。

「え~・・・・・。 何と表現したものか・・・・」

 今日はやけに歯切れが悪く、困惑しているのである。

「はっきりせんな・・・・」

 一旦、全ての作業を止め、落ち着いて秘書官に向き合う。

 いつの間にか室内から音が止み、誰もが彼の言動に注視していた。

「面会希望者・・・。 いえ、多分、お客様?、もしくは来賓もしくは・・・、国賓かと?」

「? ・・・・・・つまり、面会を拒否できない人物だと?」

 彼の中で漠然としたものが導き出されようとしていたが。

「人と表現して良いものか・・・・」

 無意識の内に痛くも無い胃の辺りを撫でながら。

「それは・・・・、つまり・・・・"アレ"か?」

 何故か、ハッキリと表現してしまうと後戻りできない様な気がして、思わず現実逃避に走ってしまうのである。

「"アレ"が何を指しているのか存じませんが。 お考えの答えで間違いないかと」

 渋面を作りながら、思わず天を仰ぎ見る。

 頭の中で、ぐちゃぐちゃな線が渦巻く。

 数秒の現実逃避の後、覚悟を決めて秘書官に言葉を投げかける。

「待たせるわけにはいかんな・・・・。 誰がどちらにいらっしゃるのだ?」

 総理の問いに秘書官が口を開きかけた瞬間、驚愕し思わず言葉を失い、固まってしまった。

「? 如何した?」

 矢吹は秘書官の変化に訝しがるが、周りを見回してみると他の秘書官や、彼の護衛のSPも全員が彼の方を見て彫像となっていた。

 訓練を受けていない事務職の文官は兎も角、厳しい訓練を受け彼を守る立場のSPが固まるなど、尋常な事では無かった。

 その瞬間、彼の頭の中で古めかしい電球が灯り、物凄く嫌な予感に襲われた。

「・・・・・・・まさか」

 彼は振り向きたくなかったが。

 数秒の覚悟の後、溜息と共に、意を決して目の前で言葉を発しない彫像を、言葉を話す人に戻す事にした。

「・・・・・、その方は何処に居る?」

 秘書官は機械の様な全く感情のこもっていない声で、彼の予想通りの答えを返した。

「・・・・・・・総理の後ろです」

「は~・・・」

 彼は何かを悟った表情で、肩を落とし溜息を吐き、疲れを隠す事を諦め、椅子に座った姿勢のまま身体ごと後ろに振り返る。

 そこには・・・・。

 白金髪の髪の碧眼の美女が、空中に腰かけ、人懐っこい笑みを浮かべ、彼に向かって手を振っていた。


 女性、エレェリアは、誰もが魅了する微笑を浮かべていたが。

 矢吹には、それを素直に受け取る事が出来なかった。

 彼は、彼女の背中に天使の純白の羽と、悪魔の黒い尻尾が同居しているのを感じていた。


 そして・・・・。

 彼女はイギリス英語の非常に綺麗な発音で挨拶をする。


「Hello Mr. Yabuki」



 さて、どんな難題が持ち込まれるのか。



 次回 「DAY-06 NEWGAME+(仮)」

 次でDAY-06の終わりです。

 DAY-07が始まります。

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