DAY-06 GAME START
今年の更新は最後かな・・・・。
黎明の時、かつて自立式電波塔で最高を誇った東京スカイツリー頭頂部、一匹の白い猫が下界を見下ろしていた。
普通の猫ではこの様な場所まで来る事は出来ないし、まして、600m以上の外界に身を曝そうなどとは考えないし、本能的にも拒絶するであろう。
その背に白い翼が有り、その眼には英知の光が有った。
もっとも、その視線には若干だが無邪気なものがまじているのだが。
翼を持つ白猫の名前は、カズマの従者の一人?(一匹?)"タマ"、情報管制に特化した彼女の眼には下界、東京都内の様子、それこそネットを流れる膨大な情報から、街中を忙しく動き回る人の呼吸から脳波までを手に取る様に把握できていた。
そんな彼女が猫特有の何もない空を観る動作をしながら、東京都内で一点だけ不自然な場所に並列思考の一つを集中させていた。
東京都内で複数存在している、この世界では一般的では無い魔術的な結界が施された場所(注・皇居など)で、更に異質な結界が張られている場所を走査しながら、数時間前に貰ったおやつの事を考えていた。
若干だか時間が有ったため、街中で結界の施された中で、一番、強固で静謐な雰囲気を発していた場所にお邪魔したのである。
彼女はそこで、その場所の主らしい優しそで、そして少し寂しそうな老夫婦から、おやつを貰い、優しく撫でて貰ったのである。
(先ほど貰ったおやつは美味しかったですね~)
少し重くなったお腹の中を考えながら、舌に残った味に思いを馳せていた。
(・・・・でも、少し寂しそうでしたね)
本来なら、主や仲間たち以外からの手など許さない彼女が、それを許したのである。
(眷族の誰かを派遣した方が良いでしょうか・・・・)
(後でみんなと相談してみましょう)
丁度、その時、並列思考の一つが異質な結界が施された場所から動きが有った事を知らせてきた。
(さて! お仕事、お仕事)
思考を切り替え、上空に視線を向け、仲間の一人?(一羽?)に念話を飛ばす。
遥か上空で一羽のカラスが、東京上空を優雅に円を描きながら飛んでいた。
東京スカイツリーの頭頂部に居たタマと同じく、こちらも普通のカラスでは無い。
確かに姿・形は街中でよく見る事の出来る、普通のカラスの姿をしているが、全長4mもあれば普通のカラスと言い張る事は不可能だろう、 しかも飛んでいる高度が普通では無かった。
高度約2万m。
普通のカラスは兎も角、大抵の鳥は飛ぶ事すら出来ないと思われている高度である。
かつてこの場所を飛んでいた超音速旅客機コンコルド以来の来訪者である。(注・旅客機ですら高度1万mが精々である)
因みに、確認されているものとして、高度1万1000mで航空機と起こしたバードストライクをおこした鳥は実在する。
と言うか、高度2万mと言えば、対流圏をぶっちぎって、成層圏のオゾン層のある辺りである。
普通の生物が生身でその場所に留まる事は、まず不可能なのだ。
チヒロの従者の一人?(一羽?)"ガルダ"である。
ガルダは、東の空に太陽を眺めながら、定められた合図を待っていた。
もっとも、ガルダも真面目とは程遠く、得意の天候操作で、時たまはるか下を通る旅客機の進路上にある積乱雲を退かしたり、雲の形をライオンや象、又は鯨に造形して、旅客機の乗員をからかったり、乗客の目を楽しませて、遊んでいた。
〈ガルダ。 そろそろ、お願いしますね~〉
遥か下の下界からタマの念話が飛んできた。
どうやら、暇つぶしの時間は終わった様である。
〈了解した〉
ガルダは短い返事と共に、自らの力の一端を解放した。
【対流操作 開始】
【大気循環系 干渉】
【海流循環系 干渉】
【惑星環境系 改竄】
東京の空模様が、映画のCGで処理された映像の様に変化を始めた。
まるで、早送りで再生している様に、雲が千切れ、重なり、渦を成して行くのであった。
東京湾では暖められた海水面から大量の暖かい水蒸気が発生させ都内に流し、上空からは冷たい空気を一気に引き摺り下ろし水蒸気にぶつける。
それらを都内の地表近くに留まる様に大気に層を作り、微調整を施し。
大気を逃がさない様に地形に沿った、低干渉だが強固なドーム状の結界で全てを覆った。
その結果、東京都全域は この時期ではあり得ない自分の足を視認するのも困難な濃密な濃霧に覆われたのである。
あらゆる公共の交通機関は麻痺し、自動車も走るのを諦め、人の移動が完全に途絶えたのである。
政府は都内にある全ての放送局を使い、緊急の臨時ニュース全世帯に流し、都民に屋内に留まる様に指示をだした。
放送局ではキャスターも出勤できない為、夜勤明けで局内に足止めをくらった、スタッフが慣れない原稿をたどたどしく読み上げたり、深夜番組が終わり仮眠中の芸能人を叩き起こし(注・文字通り"叩き起こした"スタッフも居た)、急遽番組を制作した。
ここ数日間の世界状勢の激変の収束と、戒厳令が解かれ、日常を取り戻そうとしていた東京は、再び静寂に包まれた、廃墟の様な街にその姿を変えたのである。
大混乱に陥った、放送局とは別に、政府の各省庁は混乱なくその業務を遂行していた。
ここ数日間の激務の為、ほとんどの職員が省庁内に泊まり込んで居たのである。
中には、部下の殺意の溢れた視線に気が付かず、鈍感にも自宅に帰宅していた一部の管理職の部長や課長が自宅に足止めを喰らい、部下達の大笑いのネタにされた者もいたが、概ね混乱無くその業務を遂行していた。
因みに、一部の鈍感な高級官僚達は後に総理直々に呼び出され、総理自身の放つ死神の大鎌が盛大に振るわれ、左遷されるのであった。
後日、首相官邸 執務室
矢吹総理「予算の不適切な私的利用、職務怠慢・・・・。 何か、言い残す事はあるかね?」
部長A「え~、英気を養い、余裕を持った態度を示す事で、部下達の志気向上を・・・・(滝のような汗)」
矢吹総理「(書類を捲りながら)北海道の知床半島で、エゾシカを密猟者から守る為の監視の仕事が在るんだがどうかね? ヒグマとの遭遇率が非常に高いが・・・・」
部長A「え~。 自分としましては、持病がありまして急激な環境変化は・・(滝のような脂汗)」
矢吹総理「そうか。 なら西之島なんてどうかね? 最近、再び火山活動が活発になって来たから、無人の監視システムから、有人の詰所に変えようと考えていたところだ」
部長A ドッタ!
秘書官「気絶したようです」
矢吹総理「廊下に捨てて来い。 署名は代筆、捺印は拇印で十分だろ」
秘書官「何処に飛ばします?」
矢吹総理「本人のたっての希望だ、寒い地方は勘弁してやる。 沖縄でシーサーの目撃情報の収集だ」
秘書官「・・・・・見つかりますかね?」
矢吹総理「さあな?」
余談だが、後に老夫婦の元に全長5mの神獣・白虎が来るのはもう少し後の話である。
正月は暇そうなので、何とか更新をしたいと考えています。




