招かれた不思議
みなさん、招き猫はご存じですよね。
そう、あの招き猫です。
右手を上げれば金運を招き、
左手を上げれば人を招く。
では、両手を上げれば何を招くんでしょうか?
これは両手を上げた招き猫が招く不思議な話。
三月三十一日(1日目)
その出逢いは突然でした。
真紘はいつものように親友の美紀と下校途中、町によって買い物をしていました。
「ねぇまひろ、こんなとこに骨董屋なんてあったかしら。」
ふと美紀の指差す方を見るとそこには不思議な雰囲気の店がありました。
「本当だ、こんなとこに店なんかなかったのに。それにすごく不思議な雰囲気ね。」どことなく西洋の建物に似た門構えに綺麗な字で骨董屋と書いてありました。
「面白そうだし入ってみない。」そう言って店に入っていく美紀の後ろに真紘もついて行く。
カランコロン
優しい鈴の音をくぐり店を見渡した。
「いらっしゃいませ」
その時、真紘の体に衝撃が走った。
キリッとした切れ長の目。
スラッとした小さな鼻。
ピンッとたった耳。
そう真紘は恋をしたのである、、、。
、、、招き猫に。
「ありがとうございました。」
カランコロン
「衝動買いとはこのことか。」と美紀に笑いかける。
「それにしても不思議な招き猫ね。両手上げてるなんて。」
「お店の人は、両手を上げてるからお手上げだって言ってたけどね。まぁ部屋に飾っておくよ。」そう言いながら別かれ道の前に立つ。
別れ際
「そういえばまひろ、明日英語のテストよ。勉強してる。」その言葉に招き猫を落としかける。
「あ、忘れてた。帰って勉強してないと。みきはしたの。」
「まぁね。じゃぁ勉強頑張って。バイバイ。」
「うん。バイバイ。」
家に帰りいろいろしていると時間がたち、十一時半を過ぎていた。
机に両手を上げた招き猫を置き勉強にとりかかるものの。
「あぁ、テストめんどくさいなぁ。」招き猫の頭を撫でながらこぼす。
「これじゃあ本当にお手上げだね。」
「明日が来なければいいのになぁ。」真紘はそのまま眠りの中に入っていく。
その時を思えば、両手を上げた招き猫が少し笑っていた気がする。
1日目終了