人形
私は人形が好きだ。
人間とは違い口応えはしないし何より手間が掛からない。
愛情を注いで憎しみで返す、と言うこともない。
人形は素晴らしい。自らの手で作り上げた人形ならば尚更だ。
手間暇かけて作りあげた人形を愛でる時間に私は幸せを感じる。
人によっては気持ち悪いと私をなじるだろう。
私の見た目はお世辞にも整っているとは言い難い。むしろ醜い部類だろう。
だが、そんな容姿について人形は何も言わない。私の無償の愛を受け入れてくれる、唯一の存在だ。
しかし、人形の手入れは大変である。それは精密なものほどだ。
私は毎日欠かさず人形の手足を動かし関節が動くか確認をする。
様々な部分を触診し異常がないか確認する。もちろん異常が見つかればすぐさま修理する。
「ァァ…」
ふと、なにやら声が聞こえた気がした。部屋には人形しかないのに、だ。
私は部屋を見回す。
そして、視界に動く影を見つけた。
私はそこまで歩いて行く。コツ、コツ、と皮靴が立てる音を響かせて。
私は先ほどなにやら動くものを見かけた場所まで歩いて行った。そこには人形しかないはずだった。
だがそこには人形などなかった。
「おや、いけない子だね」
そこには人間がいた。美しく腰まであるブロンドの髪をもった少女だ。
「ここは人形がある場所だ。人間はいちゃいけないんだ。分かるよね?」
私は優しく、諭すように告げる。少女は私の容姿に怯えているのか震えるばかりだ。
私は手を伸ばす。
「い、嫌ぁ、イヤァいやぁぁぁ…!」
その手から逃れるように、少女は縮こまる。
その様子に私は苛々させられる。私は怖がらせようとしているのではない。少女に言い聞かせようとしているだけなのだ。
この部屋には人形しかいてはいけないと。
「ほら、こっちへ来なさい。なにも酷いことをしようなんて思ってるわけじゃないさ」
少女を無理矢理捕まえると私は隣の部屋に連れて行く。
そこには様々な器具や薬品が置いてある。そして部屋の中央には大きめの椅子が鎮座している。
椅子に少女を座らせる。そして机にある液体の薬品を一つを取り少女の口に流しこむ。
「苦くないよぉ」
私は少女を怖がらせないように出来うる限りの笑顔を浮かべる。
少女は薬を飲むのを拒むので鼻を摘む。そして薬品を口に含ませ吐き出させないように閉じる。
目に涙を浮かべて少女は我慢するがやがて耐えきれず薬品を飲み込む。
暫くすると身体がぴくぴくと痙攣し出した。そうして落ち着いたころには少女の瞳は人形のような澄んだ瞳になっていた。
「いい子だねえ、じゃあ、お部屋に行こうか。みんなが待ってるよぉ」
私は人形を抱えて隣の部屋に移動する。
全く、人間は煩わしい。
人形なら楽なのに。
私を見て怖がることもない。私の全てを受け入れてくれる。
私の性欲も、私の愛も、私の肉棒も全て全て受け入れてくれるのだ。
さあ、今日も人形達に愛を注いでやらないと。
夜は短いのだからね。