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三、一室にて


 日が暮れ始めようとする頃、ルナは貢をとある部屋の前に連れてきていた。部屋の扉にはこう書かれた札が掛けられていた。


『Halstand's Room』


 文字は英語。だのに、なぜ日本語が通じるのだろうか? と、そんなことが貢の頭をよぎるが、気にしたら負けだと思い、敢えて聞くことはしなかった。


 そんな貢に気付くはずもないルナは、扉をノックし、


「ハルさん、連れてきました~」


と言った。どうやら先程の魔導師の部屋のようである。中から低く(しゃが)れた声が聞こえてきた。


「入れ」


 ルナは扉を開く。部屋を見て貢は自分の目を疑った。貢の眼に映るは、巨大な魔法陣、見たこともない花や植物、七色の煙を吐くフラスコなど到底この世のものとは思えない光景であった。


「おぬし……貢といったか。ここに座れ」


 石製に見える椅子に座る老人が貢に言う。貢は言われた通り、老人と向かい合っている椅子に座った。


「わしはハルスタンド=ファウスト。魔導師じゃ。ハルと呼んでくれ」


 魔導師ハルは簡単に自己紹介をした。貢は軽く頭を下げる。すると、


「すまぬ! わしのせいでこの世界に……」


とハルが深く頭を下げた。貢が慌てて言う。


「いや、もう大丈夫だって! 終わったことはしょうがない!」


 嘘ではない。貢は既に頭を切り替えているのだから。


「それに……おれはあんたにこの世界で生きていく術を教わろうと思ってるんだ」


「……そう言ってくれると……ありがたい」


 ハルは頭をゆっくりともとの位置へ戻す。


「では、本題に入るぞ」


 ハルは真剣な面持ちになった。


「まず、この世界のことから教えよう。この世界の大きな特徴は、魔術の存在だ」


 この世界において、魔術は炎や雷を起こす、魔獣を召喚するなどの大規模で戦闘的なものから、石鹸の泡立ちを良くする、食物の腐敗を抑えるなど家庭的なものまで幅広い。後者に関して言えば一般人も当然に使っておる。

 つまり、この世界で生きる上で、魔術を心得ることが大前提なのじゃ。


「魔術を心得る……おれが?」


 貢はきょとんとした顔。


「そうじゃ。おぬしは召喚のときに魔力、即ち、魔術の源となる力を大量に浴びておる。しっかり修業すれば会得に三日もかからんじゃろう」


 その顔がじわじわと綻んでいく。


「おれが魔術使い……すげぇ、すげぇよ!」


 椅子から立つ。そして貢は、頭を下げ大声で言った。


「じいさん! 早くおれに魔術の稽古をつけてくれ!」


 貢の勢いに応えるかのようにハルは立ち上がり、


「よし! 早速修業へ入るか!」


と言って、貢を連れ部屋を出ようとした。しかし、今まで空気と化していたルナが二人を引き止めた。


「夕食の時間なんですが」


「あっ……」


 彼らの勢いは思わぬ形でせき止められた。貢とハルは時間と夕食を喰ったあと、三日間の修業へ入ったとさ。


修業は軽く説明する程度で行く予定です。あしからず。

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