Module5.青いグリフォン亭
宿屋を探そう。
そう思い立った俺は、路地裏の暗がりでマップを開いた。
いや、実は大通りで突っ立って「マップオープン」とか操作を始めたら、
「おじさん何してんの?」
とハナ垂らしたガ(ry…もとい子供に声を掛けられたため、慌てて路地裏に入ったともいう。
周りを見回してみたら、大人の住人も不審そうに見ていたので、ぶつぶつ呟きながら空中に手を振る俺はかなり怪しかったのだろう。
なお、おじさん呼ばわりは、かなりショックだった。
6歳ほど歳の離れた姉が子どもを産んで、「おじさんですよー」と赤ん坊に紹介された時以来のショックとも言える。
27歳はおじさんじゃない!お兄さんだ!
こぶしを握り締め、誰ともなく宣言してみる。
が、そのこぶしは自分のものとは思えないほど大きくごつく、防具の一種であるグローブに包まれていた。
果たして今の自分の外見はどうなっているのだろう?
疑問ではあったが、周囲に鏡になるものもなく、ひとまずその疑問は保留してマップに意識を戻した。
マップは現在シティモードになっている。
先ほどまではフィールドモードだったが、街のアイコンをダブルクリックしてシティモードに切り替えたのだった。
…まあ、そんな操作をしていたらガ(ry…子供に見とがめられたわけだが。
今は路地裏なので人目はない。
心おきなく手を動かして、マップを広域表示に切り替えた。
ル・シェラの全景が表示され、青い点がいくつかその上で緩やかに明滅する。
赤く輝く点はフィールドモードと同様にPCの位置である。
なお、ゲームではマップに他のPCがいた場合、黄色い点が明滅するようになっていた。
少し期待したのだが、黄色い点はマップには表示されていなかった。
(いるわけないか…)
それほど期待していたわけではないが、改めて確認してみると結構落胆するものだった。
もう何度目かわからないため息をかみ殺して、マップ上の青い輝点を確認する。
冒険者の宿「青いグリフォン亭」は、ゲームと変わらぬ位置にあった。
(えーっと、大通りに出て、2つ目の角を右に入ったところ、ね)
ゲームで見慣れた通りを歩き、宿にたどり着く。
そのたたずまいも、ゲームで何度も見たままであった。
ただ、看板と思われる板に書かれた文字と思われる文様は俺の知らないものだった。
じっとそれを見つめていると、「青いグリフォン亭」の文字がポップしてきたので、間違いはないようだった。
ドアを開け、中に入る。
「いらっしゃいませーお泊りですか?」
にこやかに営業スマイルで迎えてくれたのは、看板娘のレイチェルである。
「CGまんまだなぁ」
「はい?」
しみじみと彼女を見て感想を述べると、レイチェルの目が点になった。