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Module16.フレンド

ここまではあげておきたかったので、あげておきます。

2700文字ほど。残り、30パート120000文字程度を想定。

宿に戻ると、掃除のおばちゃんの活躍によって、部屋がすっかりきれいになっていた。

これぞプロの技?

例の壷も空になっていて、掃除してあった。

中身の行方については…考えないことにしよう。


俺は、ナップザック(中)を肩から下ろして、中のものを取り出し、インベントリに入れようとした。

…あれ?インクが入らない。

羊皮紙は入った。

インクと羽ペンが入らない。


なぜ?


インベントリには入らないものと入るものがあるらしい。

試しに、手当たり次第に部屋にあるもの(壷を除く)を入れようとしてみて、どうもゲームでアイテムとして認識されているもの以外は入れられないようであるという結論になった。


(むむ、意外な制限が)


ゲーム内アイテム以外は、普通に持ち歩かなければならないようだ。

早速ナップザック(中)が役立つことになってしまったようだ。


まあ、入らないものはしかたない。

俺は、羽ペンを1本残して、4本をナップザックへ入れた。


こうした「気づき」というか、色々試してみた結果をメモしておこうと、筆記用具を買ったのだった。

さっそく、メモを取る。

部屋に机がなくて書きにくかったが、野外でも書くことを考えると、何か下敷きになるいたか何かを調達したほうがいいかもしれない。

あと、書いた後のペン先とかを拭くものが必要かも。


そんな細々したことの検討を終えてから、考えごとを再開することにした。


(ええと、どこまで考えたんだっけ)


1.元の世界へ帰還するのが最終目標

2.帰還する方法を大魔術師ならば知っていそうである

3.大魔術師を捕まえたい

4.しかし、大魔術師が住んでいる場所へ行くのは困難

5.前使ったデバッグモードでの移動は使えない


このくらいか。


(あと、今そこにいるとも限らないんだよな)


少し、考え方を変えてみよう。


6.最後に見たとき大魔術師は千鳥のキャラと一緒にいた

7.千鳥は事情を知っていそうで、今も大魔術師といる可能性が高い


たとえ今は一緒にいないとしても、大魔術師の居場所を知っているかもしれない。

何にしろ、千鳥のキャラに連絡を取るのが妥当だろう。


…どうやって?


俺は再び自分の真っ白なフレンドリストに涙した。


フレンド申請するには、その相手のキャラクター情報を開く必要があるのだが、そのためには、同じマップエリアにいるか、検索で探す必要がある。

検索で探すには文字入力が必要だが、キーボードがない。


うーんうーんとひとしきり唸る俺。


何か他に手段はなかったか…

キャラクターの情報を見る、見る…

名前が表示されていてリンクがある情報…

…あ!


俺は、ひとつの可能性を思い出して、チャットログウィンドウを出した。

ダイレクトメッセージのタブをクリックする。


あああ、あったあ!


そう、あの時、千鳥のキャラクターからダイレクトメッセージが飛んできた。

そのログがまだここに残っていた。


 ミスティ・バード: タク・ヨッシーって、もしかして吉田さん?

 タク・ヨッシー: そうだよ。君は?

 ミスティ・バード: 山口ですー。吉田さん、こんなところで何してるんですかー?

 タク・ヨッシー: えーっと、これは何してるの?


俺は、感涙にむせびながら、「ミスティ・バード」という名前をクリックした。

「ミスティ・バード」のキャラクター画面が表示され、名前の横に「フレンド申請」のボタンが並んでいるのを確認する。


何もためらうことはない。俺は即座に申請した。


申請が承認されるまでどれくらいかかるのか、そもそも承認してくれるのかとか、その前に通じているのかとか、色々考えられる問題はあったが、それらの心配はすぐに解消された。

フレンド承認されたメッセージが来たのだ。


うおー!!!


思わず喜びの舞を踊る。

…落ち着け、俺。


フレンド承認されてしまえば、できることがぐっと増える。

まあ、まず現状確認だな。


チャットウィンドウを再び開き、音声ボタンをオンにする。


「もしもーし、山口さん、聞こえるー?」


しばらく、間が空いた。


『はいはいはーい。山口でーす。吉田さんですかー?』


うむ、明瞭に聞こえる。携帯電話みたいだ。電話はないけど。


「うん、そうだよ。今、どこにいるの?」

『えーっと、ロウランディア王国の王宮ですね』


ほう。


ロウランディア王国は、西方にある大国で、かつて、魔王が世界を滅ぼそうとしたときに、これを封印した勇者が建国した国である。

魔王と戦うために助力してくれた地の女神ロウレルに感謝して、その名が国名の一部となっている。

地の女神信仰はこの大陸で広く見られるが、この国では特に篤く祭られており、その神殿の力は強い。

度重なる魔王軍の侵攻に対しては、国々をまとめる中心的な役割を果たしてきた。


よって、魔王の覚醒を阻止するためのストーリーシナリオ「大魔術師の帰還」以降は、この国が主要な舞台となっていく。

その王宮を、勇者と大魔術師が訪問、ねぇ…


『吉田さんは今、どこなんですか?』

「ル・シェラだね」

『えw なんでそんなところにw』

「なんでだろうねw」


多分最後にセーブしたのがシェランド草原だったから、ということだろうが、事情を説明するようなことでもない。


「剣さん、一緒にいるの?」


そう、これが大事。


『あ、ええ、さっきまで一緒で。

 今は王様と話があるからと、ひとりで謁見されてます』


やはり同行しているようだ。

ていうか「剣さん」でそのまま通じるのな。

ミィ・トゥール=剣氏確定、と。


「俺、そっちに合流したいんだけど、

 フレンドで飛んでって大丈夫か、剣さんに確認してくれる?」


そこらへんの野っぱらや、大魔術師の塔なら、今飛んでっても良かっただろうが、大国の王宮だとさすがにまずいかもしれない、と気を使ってみる俺。


『あ、はい。わかりました。

 ただ、この後会食があるとか言われてたので、しばらくかかるかも』

「わかった。俺も飯食ってくるからさ。

 夜遅くなってもいいから、折り返し連絡してよ」

『はーい』


音声チャットを切って夕食へ。


今日の料理は、ポークピカタっぽい肉に衣をつけたソテーに、ピリッと辛い香辛料の効いたスープ、いつものパン、というものだった。

これもなかなかいける。


これで、ここの料理も食べ納めかと思うと感慨深いものがある。

食堂兼酒場の料理人さん、ごちそうさまでした。


/*/


折り返しの返事が来たのは、夜も更けた深夜であった。


『用意しておきますから明日の朝に来てください、とのことですー』

「了解。直前になったらまた通話入れるわ」


そして、翌朝、俺は宿を引き払うと「ミスティ・バード」の元へ飛んだのだった。

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