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Module15.ル・シェラ散策

3000文字弱ですが、キリがいいので投下。

あれこれ部屋で考えていたら、いつの間にか昼になっていたらしい。

そら確かに、掃除できなくておばちゃんも困るわ。

ベッドメイキングをさせろと部屋を追い出された俺は、昼飯の調達も兼ねて、ル・シェラの街へ出た。

青いグリフォン亭は朝と夜はご飯付だが、昼は特にないようで、酒場兼食堂も閉まっていた。


今日の天気は晴れ。

記憶によれば確か、この地域には乾季と雨季があったはずだ。

今の時期は乾季のようだった。

雨期には、夕方にスコールが降る。

今が雨季だったら昨日はひどい目にあったかもしれなかった。

ともあれ、少し埃っぽい乾いた空気は不快ではない。


少し歩いて、大通りに出る。


この大通りは、南北を結ぶ街道「黄金の道」の一部でもある。

「黄金の道」というのは、北方を中心にかつて栄えた帝国のとある皇帝が、南にあるという黄金を求めて北から南まで石畳の街道を大胆に通したことからついた名前である。

かつての帝国は滅びたが、「黄金の道」は今もなお使われている。

そんな設定を読んだ覚えがある。


その街道が、ル・シェラを貫いている。

というよりは、街道を囲むように宿場街が発展して今の形になった、というのが正解。

南から北、北から南、それぞれに向かう旅人の補給基地であり、北からの品物と南からの品物が交換される商業都市でもある。

毎月中旬には大規模な市も立つ。


それゆえ、今も人通りは多く、露店や屋台が並ぶ広場はごった返していた。


「安いよ安いよー」

「奥さん、今日の料理に採れたてのガジェはどうだい!」

「旦那、たまには奥さんにアクセサリーのプレゼントはいかが?

 安くしとくよ~」


客引きの声はどの世界どの国でも一緒なようだ。

食べ物の屋台からはいい匂いが流れてきている。


「これはなんだい?」


俺はその1つに近づくと、並んだ商品を指差して聞いた。

店のおやじが、油の鍋から揚げたものを網ですくい上げながら答える。


「マムールでさぁ、旦那」


そういう食べ物らしいが、名前を聞いても良くわからない。

見た感じは、丸いパンに切れ目を入れて、そこへ揚げた何かと葉物の野菜とトマトっぽい野菜のスライスと一緒に挟み込んでタレをかけたもののようだ。

つまり、揚げもの系を挟んだハンバーガーみたいな感じ?


「その揚げたのは魚?」

「クウガの肉だね」


うん、やっぱりよくわからない。

鳥か獣みたいだ。もしかしたら蛙かもしれないが。

まあ、食べて死ぬようなことはないだろう。


「いくら?」

「ひとつ、3ガルーになりやす」

「一個くれ」

「まいどありー」


大きな笹の葉っぱみたいなものに包んで渡してくれる。

揚げたてのクウガの肉とやらはジューシーで、濃い目のタレとの相性もよく、うまかった。

ご飯がおいしいってのは幸せだよね。


立ち食いしながら、異郷の街並みと人種が入り混じって賑やかな人の流れを眺める。

エキゾチックで魅力的な風景。

いつでも帰れる状況なら、観光旅行として楽しめたかもしれなかった。


もし帰れなかったら…


そんな不安が胸をよぎる。


(姉ちゃん…)


家族も、友達も、仕事も、27年間積み重ねてきたものの全てが、あちらの世界にある。


(帰りたいなぁ)


噛みしめたパンはさっきより塩っぽかった。


/*/


手に残った葉っぱの捨て場所を店のおやじに聞いたら、横の箱を指差されたのでそこに捨てた。


そういえば、この世界には紙は普及してなかったな。

何かを記録するにも羊皮紙か木簡を使うしかないんだっけ。

ふむ。

嵩張って不便だなぁ、

と思ったが、インベントリがあるから俺にとってはそうでもないか、と思い直した。


色々と記録しておきたいものもあるから、と、俺は筆記用具を探すことにした。


(探すと言ってもどこから始めたものかな)


俺の持っている情報はあまり多くない。

シティマップにある情報は、ゲームの冒険者用のもので生活のためのものではない。

冒険者ギルドに、鍛冶屋に、防具屋に、道具屋。


あ、地の女神の神殿というのもある。

ゲームでは、パーティが全滅しない限り、連れて帰ってくればここで復活させてくれる。

この世界ではそのあたりはどうなっているのか。

…個人的にはあまり確認したくない。


(道具屋からあたってみるかな)


魔術師系職業でスクロール作成ができたので、その材料になる羊皮紙が売られているだろう。

なければ、そこでどこに売ってるか聞けばいい。

俺は道具屋へ向かった。


/*/


「いらっしゃいませー」


扉を開けると、としm(ry…もとい、大人の魅力な女性に出迎えられた。

彼女の名前は、マリアンヌ・パドワール。

道具屋「パドワール商店」の女主人である。

なお、残念なことに(?)結婚していて、子どもが2人いる。

まあ、旦那は1年の半分は商品の仕入れなどで旅に出ているらしいが。

旦那の名前は…仕様書には書いてあった気がするが、忘れた。


南方の血が入って浅黒い肌に、艶やかに肩に流れる黒い巻き毛。

ぼんきゅっぼんなナイスバディ、赤い唇とその口元の泣きぼくろが色っぽい。

レイチェルが清純な美少女とするなら、こちらは妖艶な熟女である。

様々な嗜好を満たす配役と言えよう。


こほん。まあ、それはさておき。


「何かお探しですか?」

「何が置いてあるんですかね?」


首をかしげる彼女に商品を見せてもらう。

初級傷薬に、毒消し、などの初心者冒険用アイテム類はあったが、中級傷薬などの少しレベルが高いプレイヤー用のアイテムはなかった。

このあたりはLV10くらいまでと想定されていたので、そんなもんだろう。

その他に、ゲームでは出て来なかったちょっとした生活雑貨みたいなのも取り扱っていた。

はさみとか、ロープとか。


羊皮紙はぱっと見置いてなかったので聞いてみると、ああ、と言って奥へ取りに行ってくれた。

倉庫に置いてあったらしい。

書くためのインクと羽ペンも持ってきてくれた。

気が効く。


羊皮紙が1枚100G、インクが1瓶50G、羽ペンが1本20Gだと言う。


(えーっと換算すると、1万円に、5千円に、2千円、かぁ

 結構高いもんだなぁ)


まぁ、需要がないからそんなものかもしれない。

俺は、羊皮紙を10枚、インク1瓶、羽ペン5本、そして、それらを入れるためのナップザック(中)をひとつ買った。

ナップザック(中)は30Gだったので、しめて1180G。


ナップザック(中)を買ったのは、インベントリにその場で収納しようとして、はたとマリアンヌが見ていることに気がついたからだった。

状況がわかるまでは、変な能力は披露しない方がいい。


「お買い上げありがとうございましたー」


軽く彼女へ会釈して店を出た俺は、宿へ帰ることにしたのだった。

TRPGでロープとランタン(たいまつ)は必需品なんだけどな。

あと、10フィートの棒…

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