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Module13.大魔術師の塔

本格的にゲームに潜ることにした俺は、画面出力をヘッドマウントディスプレイに切り替えて、それを装着した。

メガネのようなそれの両脇のビデオカメラで両手が認識されるように微調整した後、ゲームを開始する。


「ゲームスタート」


目の前に、グラン・ロウレルの世界が広がる。

このディスプレイは立体視に対応しているため、リアル感・没入感はなかなかのものである。


開始した位置は、前回セーブして終了したシェランド草原だった。

ここから、剣氏がいるとみられる大魔術師の塔までの道のりは遠い。

というか、このキャラクターではクエストをほとんどクリアしていないので、まずそもそも移動できない。

フレンド登録していれば飛ぶこともできるが、それもしていない。


じゃあどうするのかって?

ちっち

こういうときのための開発者の強い味方「デバッグモード」ですよ。


開発中のプログラムには、プラグラムの状態を直接見たり、いじったりすることのできるモードが存在していることが多い。

グラン・ロウレルのアルファ版にもそのモードがあった。


もちろん、ユーザにそんな機能が悪用、つまりチートに利用されると困るので、ベータリリースからは取り除かれている。


(今さっき取り除いたんだけどな!)


そう、チート防止のためにその機能を取り除くのを忘れていたので、あわててさっき取り除いたのだった。

ゲーム開始前に、ビルドの終わっていた正式版と置き換えたからばっちり、のはずである。


(…危なかった)


もちろん、デバッグモードに入るのは簡単ではないのであるが、世の中には探し当てる猛者というのが必ずいるものである。


ともあれ、今はその機能を存分に活用させてもらうつもりだった。

決められた特殊な手の動きをおこない、


「デバッグモードオープン」


メニューを開く。

一般プレイヤー用にわかりやすく作られたゲームの画面と異なり、それは素っ気無いただの項目と数値の羅列である。

俺のキャラクターの現在のステータスデータ、位置データなどが並んでいる。


俺は、位置情報を書き換えると「更新」ボタンをクリックした。


/*/


出現したのは、大魔術師の塔12F「実験室」の前の通路だった。

マップで間違いないことを確認してホッとする。

「実験室」内部に直接飛ばなかったのは、オブジェクトやキャラクターとの座標が被ってバグってしまうというような事故を避けたかったからである。

一度壁に埋まって抜けなくなったことが…


現実であればノックしてから入室するところだろうが、ゲームにはそういう機能はなかった。


「お邪魔しマース」


呟きながら、扉を開ける。

そこには、キャラクターが二人いた。


(二人?)


データ上は一人しかいなかったはずだが、と思いつつ様子を伺う。


戦士風の鎧を着た背が低めの女性キャラクターが一人。

頭上に浮かぶキャラクター名は「ミスティ・バード」。

立っていたそのキャラクターは、こちらに気が付いたのか、手を振る挨拶を送ってきた。


そして、魔術師風のローブを着た男性キャラクターが一人。

頭上に浮かぶキャラクター名は「ミィ・トゥール」。

しかしこちらは、名前の色がプレイヤーキャラクターを表す黄色ではなく、NPCを表す青色になっている。

そう、まさしく、その名前はこの塔の主、大魔術師の名前であった。


そして、その大魔術師はしゃがんで床に何かを描いていた…魔法陣?


≪タク・ヨッシーって、もしかして吉田さん?≫


「ミスティ・バード」からプレイヤー間の1対1通信であるダイレクトメッセージ(DM)が飛んできた。


≪そうだよ。君は?≫

≪山口ですー。吉田さん、こんなところで何してるんですかー?≫


何してるのかはこちらが聞きたい。

そう応えようとしたところで、男性NPC「ミィ・トゥール」が立ち上がった。

俺に気づかずに、手にした巨大な剣を掲げて、呪文の詠唱を始める。


「アルロウレリア・ジュラル・ディクス・ミィ・トゥール…」


その声に反応するように、魔法陣が光を放ち始める。


え、もしかして、これって何かやばいんじゃないの?


焦るが、どうしていいのかわからない。

ミスティ、もとい千鳥は焦ってないようで、ちょっと困ったような表情でこちらを見ている。


≪えーっと、これは何してるの?≫


詠唱を終えた大魔術師が大剣をおろして、初めてこちらを見る。

その目が驚愕に見開かれ…


…世界は光に包まれた。

ようやく異世界へw

一段落したので、一休みします。

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