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第三話

 「なに勝手に死のうとしてんねん!」

 いつのまにか店主がミキヤの隣まで来ていた。

「さっき妙な物音がしたから何があったかと思えば、あんた、つるりんごときにやられてんじゃないよ」

 紫の長髪がよく似合う、この魔法道具店の店長マーダさんだ。店番をしていたためか、お店のロゴが入った紺色のエプロンをかけている。年齢は非公開だが、3()0()()()ぐらいであろう。

 男勝りな性格をしているのは昔は一人で魔女を生業にして、生活していたからだそうだ。ちなみに魔女というのは魔法を使って行えることなら何でもする、いわゆる万事屋みたいなものだ。人殺しも略奪も戦争の手助けもする。結構、闇の深い人である。

「マーダさん、俺はもう死にたいんすよ。生まれてこの方、治癒魔法しか使えないし、モテないし、金もないし、将来性もない。どうしようもないんですよ」

「はぁー?あんた22にもなってまだそんな甘ったれたこと言ってんの?まだ仕事いっぱい残ってんだけど」

「もういいじゃないですか。俺の代わりなんていっぱい居ますよ」

「そんなのしっとるわボケー!」

 マーダさんの雷魔法が股間に飛んできた。

「がっっっは!」

 痛みとともに、涙と鼻水があふれてくる。くそ。こんな年になって泣くなんて恥ずかしい。

「あんたは恩人の息子だから預かってやってるだけだからな。勘違いすんなよ。そんな大きな子供の面倒なんか誰が見るか。死にたきゃ勝手にしやがれ」

 俺は反射的に自分の股間に手を近づけた。そして全神経を集中させる。すると、自分の裏側が開いて、そこからエネルギーが出てくるような感覚がある。このエネルギーを掌に集める。すると掌がじんわりと熱を帯び始め、手が白く発光する。股間が白い光に包まれるや否や、さっきの雷魔法のせいで生じた痛みがすぐに消えていく。

「やっぱり治癒魔法だけは使えるんだなー」

 正直、この程度なら誰でもできるので、これができるからといってお金にはならない。ただ唯一この魔法が使えたおかげで高校まで卒業できたのだ。まあ、それも、もうすぐ死ぬとなっては意味のないことではある。

「みぎぃ!」

相変わらずつるりん系モンスターには似つかわしくない鳴き声のやつだ。こちらに対して文句をつけているようだ。「さっきの雷危なかったじゃないか!それはそうとお前オレのこと踏んだよなぁ」。普通、つるりん系モンスターは「ぱぱぱぱぱ」くらいしか言わない。まるで人並みの知性があるようにさえ見える。

 こいつもさっきは俺に踏まれて痛かったに違いない。俺は謝罪の意味を込めて死ぬ前に、こいつのけがを治してやることにした。さっきと同じ方法で魔力を掌に集めて、白い光を放つ。それをつるりん系モンスターに当ててやる。つるりん系モンスターはまだ首元にいるので、頑張って遠くから薄眼で見れば、絵面的には草原で枕を抱えて横になっているような平和なワンシーンのように見えなくもない。

「みぎぃ?」

 つるりん系モンスターは不思議そうな鳴き声を発した。急激に痛みが消えたからだろう。

「俺が治してやったんだぜ。感謝しろよ」

「みぃ!」

 どうやら何が起こったのかを理解したらしい。さっきまでとは打って変わり、好意的な鳴き声だ。

 つるりん系モンスターはミキヤを気に入ったようだった。彼の首元に全身をこすりつけている。

「おい、やめろよ。ほんとに」

 モンスターは人間に比べて素の力が強い。ゆえに甘えられると普通に痛いのである。

 

 

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