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善行!中古車屋さんの前の街路樹が枯れていたので、ヒールをかけましたの

 僕の家は貧乏の方だ。いや、貧乏だ。

 母子家庭だ。

 贅沢は言えない。

 そりゃ、発展途上国の家庭よりは恵まれている。

 日本にだって僕の家よりも貧乏な家があるだろう。

 しかし、僕は辛い。

 クラスに似非金持ちがいるからだ。


 本当の金持ちなら、人の家計なんて興味が無い。貧乏人にでも普通に接してくれる。

 余裕がある。


 しかし、似非金持ちは、人と比べてしか幸せを感じられないから、厄介だ。

 いつも、僕の家計のことをイジって、話題を作って、仲間内で笑って、優越感に浸る。


 今日、スーパーに買物に行ったら、その似非金持ちに見つかった。

 学校の上位カーストだ。

 買物籠には、高級な牛肉や果物を沢山入れている。

 ジャース?酒、お前らは中学生だろ。



「おい、和樹、何買ってるの?うわ。モヤシだ」

「キャ、ダメだよ。祐介~、和樹君、母子家庭で貧乏なんだからな」

「俺ら、これから、祐介君のタワマンで誕生日パーティに招待されているの。お前も来るか?祐介君、いいだろ?」

「ああ、プレゼント用意できたらいいよ。俺のパパは年収3000万だぜ。セレブに相応しいプレゼントだぜ?」

「「「キャハハハハハハハハハハ」」」


「僕はいい」


 ・・・嫌な奴らだ。僕は佐々木和樹、今日は母さんに頼まれて、夕飯の買物にスーパーに来た。母さんのモヤシ炒め美味しいのだから。


「お前の母さん。お前が頼めば、パパの店で雇ってやってもいいよ。パパは中古車販売の支店長だ。もっとも、便所掃除かな~」


「何を!」


 ・・・僕は拳を握った。


「和樹殿!お待たせしましたわ」


 その時。エリ姉さんがやってきた。エリ姉さん。16歳だ。僕の家で居候しているコスプレ外国人だ。

 本名は、エリザベスト・フォン・ローエングラム、異世界のお姫様の設定だ。

 紫のドレスに・・・腰まである黒髪、目はエメラルドグリーンなので外国人と分る。

 釣り目なので、悪役令嬢の設定かな。


「和樹殿・・・・月の物用品は、探し終わりましたわ。(キャ)」


「「「何」」」

「スゲー、美人」

「何?何のアニメ!」

「日本語上手!」

「ドレス、着ている」


「ねえ。俺の誕生日パーティに来ない?ギャラ弾むよ!」


 ギロリ!


「結構ですわ。これから、和樹殿のお母様のモヤシ炒めを食しますの。美味ですわ」


「俺のパパ、TVCMにも出ている中古車屋の支店長なんだぜ。そうだ。アニメのBlu-rayを買ってあげるから付いて来なよ」


「スリープ!」


 ガタン!


「え、祐介君、どうしたの」

「おい、祐介!」


「さあ、和樹殿参りましょう。エスコートをして下さいませ」

「ええ、この国ではスーパーではエスコートをしないよ」

「まあ、そうでしたわ。迷子にならないように手をつないで下さいませ」


 ギッチリ!


 僕は耳元で小声で聞いた。


「エリ姉さん。一体何をしたの?」

「フフフ、3日間眠るスリープをかけましたの」

「ええ、また、魔法の設定生きているの?」


 ・・・不思議な人だな。


 ☆


 帰る途中、あの嫌な奴、山本祐介の親父が支店長をやっている中古車屋さんの前を通ったら、エリ姉さんが、何かに気が付いた。


「大変ですわ!瘴気よ。この中古魔道馬車の商会の前だけ芝生、植木と街路樹が枯れていますわ」

「あ、本当だ。この店の前だけ綺麗に枯れている」


 ・・・この世界にも瘴気があるのかしら、いえ。聖女の勤めよ。払わなければ。

 瘴気の発生源はわかりませんわ。瘴気を払って、様子見ね。


「和樹殿、少々、お待ち下さいませ」

「ええ、ここで、元気な玉のシーンを再現するの?」


 エリ姉さんは両手を挙げて、天に何かをツブヤイタ。正直、恥ずかしいけど、エリ姉さんは外国人で美人だから、イタクはないが・・・いや、むしろ神秘的だ。


「・・・女神様・・・どうか・・・私に・・魔を払う力を・・・」


 ピカッ!


「あ、何か、光った?!」


「ふう。これで、数日間、しばらく、様子を見ましょう」



 ☆次の日、中古車屋店長室


「君、環境整備がなってないじゃないか?草が生えているぞ。あん?山本君、支店長の代りはいくらでもいるのだぞ!」


「ヒィ、統括マネージャ!すぐに、除草剤を撒きます!」


 ・・・・


「はあ、はあ、はあ、これで、しばらくは生えてこないはずだ」

「支店長、こんなことをしたら、行政に怒られますよ」

「ああ、黙って言うことを聞け!」


 しかし、しばらくしたら、この女、エリザベストが様子を見に来た。



「あら、あら、また枯れているわね。エイ!」


 ・・・・


「ヒィ、また、芝生が生えて来た。街路樹も息が吹き返した!統括マネージャーに怒られる。良し、もう、街路樹は切れ!土は、コンクリートで覆い尽くせ」


「支店長、それをやったら」

「ああ、年収何千万もらえる店なんてないんだ。言うことを聞け!」

「「「はい」」」


 しかし、丁度、市役所の役人が巡回にやってきた。


「・・・ビックリモーターさん。ここは市の財産ですよ。何をやっているか!」


「だって、街路樹と植木があると、車が見えないだろう!」


「アホ!器物損壊罪だ!」


 ☆☆☆


 え~ニュースです。中古屋販売会社、ビックリモーター聖女市支店で、街路樹を切ろうとしている社員が見つかりました。調査の結果、恒常的に、環境整備と称して、除草剤を撒いていたようです・・更に、内部告発で不正が見つかり・・・


「まあ、嫌なニュースね。和樹の学校に勤めているクラスメイトいたんじゃない?」

「ああ、いたけど、あまり、親しくないな」

「そう」

「お母様、モヤシ美味しいですわ」


「そう・・・外国人の方に口が合って嬉しいわ」


 ☆学校


「佐々木君、一緒に帰らないか?相談したいことある」


 え、山本が、俺に?いつもの仲間は?


「何故?」

「親父、失職しちまって、タワマンを追い出されたんだよ。そしたら、仲間はずれにされた。お前の家、生活保護だろう?だから、上手いやり方教えてくれよ」


「違うよ。母子家庭の手当をもらったけど、父さんが残してくれた家があるよ・・・それに、母さんは働いているよ!!」


「そうか!母子家庭の手当か。なら、それをもらうように、離婚してもらうわ!」


「おい、ちょっと待て」


 ・・・山本はアホだ。母子手当、月4万円ぐらいで、別居をしたら、余計失費がかかるよ。それに、違法だ。



「まあ、僕には関係ないけどね。だけど、一応、市役所に連絡をしておくか。どうせ。形だけの離婚だろうから、家計は一緒だろうね」


 山本は離婚し、母親に着いていき転校をした。

 市役所に連絡をしておいたから、調査は厳しくなるだろう。通帳の提出も求められるだろうな。



 エリザベストの魔法で、ここまでの事態になっているとは、思いもしない和樹であった。



最後までお読み頂き有難うございました。

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