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長い眠りにおはようをしよう

私は深い眠りのゆりかごで

今だ眠り続けている


いなだコルト



それは夜が渦巻き

暗い寝室をどろっとしたスープのように

感情を冷たく焦がしながらまわっている

つきがたいような生活の中で

私は目をコロコロと直径15センチ以内の

ほどほど小さな箱庭の中

巡らせスリ潰し楕円形に変形させながら

一歩も動かずに止まった思考を動かせて遊んでいる

月が交代しバトンタッチした頃

意識は徐々に深淵に沈み

無駄な機械的情報を

感情へと変換させ

同じようなファイルの並ぶ棚へと移行し

1冊無駄なファイルを増やす

これをあと何年繰り返すのだろう

何年も変えていないような枕に沈み

徐々に意識の電源がショートしかけたとき

全てを台無しに壊す暴音が小さな部屋に響き鼓膜を震わす

「まだ寝てんの

ハロー

ハロー

グッデイグッデイエブリワンワン

オールワン」

その変質することなく

何時も同じ音量声量は

まごうことなく暴力であり

アンダーグラウンドに刺す

PTAよりも鋭く

抗欝剤より強いだろう

結局の所

それは殺虫剤に他ならず

私の快楽的睡眠を削り

会話という残業は

私の精神をゴリゴリと

神聖なる山を掘削するがごとく暴論であり

生活のために正義をふるう

後を考えない馬鹿以外に思えない

「それでさ 今日は学校行かないの」

こいつは一体いくらつかまされているのか知らないが

毎日ぼけを咬ましてくる

大学に行っているのはこいつだけであり

私は仕事をしている

それ以外に何も言うことはなく

何をこぼけているのだ

「朝食と夕食が逆転してると胃がひっくり返っちゃうよ」

胃はひっくり返るような奇妙で珍妙なことは

哺乳類では中々実現が難しいであろう

「だからさ ウインナーパン買ってきてあげたよ

 じゃ」

ノイズを最大レベルに音量を上げたような雑音が去り

いよいよ目がさえてしまった私は

青い画面の中に飛び込んだ

まるで溺れた虫のように




夜というのは静かでも無く暗い

昼間は日光により空気が暖められ変化するものが多いのだろう

その分夜はその変化量が少ないに違いない

もし夢が存在するのであれば

昼間という現実的物質が

夜にファンタジーとなり

空間に放出されていてもおかしくは無い

しかし現実問題

人間という脳味噌から繰り出される感情問題は

非常によくできており

現実を無視すればこれ程面白いボールも存在し得ない

しゃべればしゃべり返す

当分この程度の受け答えでも

機械よりは上手く機能できている

少なくとも機械っぽくは無い


目の前の机

無機物と安さを兼ね備えたような

このなにもない部屋の中央の端に置かれた

そのベニヤのように合成された木材は黒いペンキに塗られ部屋に置かれ

彼女の 放崎蓮型がその前にお味噌汁を持って座っている

「それでさー

教授が言うわけ

今日じ・・」

私はうんざりしていた

話を聞く分には良い

しかし

それでいいのか

私はそれに興味を持たないどころか

興味を持たないように仕向けてさえ居た

事実興味は無いが

多少なりとも相手に合わせるのが礼儀であり

「わたし

決めたわけ

今日はお味噌汁を飲むってさ」

その思考は到底理解できず

まるで

宇宙猫が

算数のプリントを前に立っているような

意味のわからなさを私は感じていた

「あんたも飲みなよ泪」

今の所 こいつ以外に名前を呼ばれたことは無いが

果たしてこいつは何が楽しくて

わざわざエレベーターも無いこんなマンションに来て

わざわざお味噌汁を作り飲み

会話をしているのだろう

一方通行と思われるそれは

さらに不要さを積み重ねて

マイナスイメージを持たせているように思っている

「何でうちに来ているんだ」

久し振りに話した気がする

私の喉から出た振動は

空回りするような思考経路の電気ではなく

空気を振動させてこの世にころりと出る

彼女はお味噌汁を置き

此方に向いて口を開けた

「付き合おっか」





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