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女の俺は世界で一番エロ可愛い  作者: 椎木唯
序章 目覚めは迷子の子猫ちゃん
8/28

④ 〜入浴しない入浴シーン〜

 食事を十二分に取り、さて寝るだけだ。惰眠を貪るぞ。どうも、睡眠暴飲暴食幼女です。

 と、考えていた時だった。幼女ではないけどな。


「本当なら水場を探したりして体を軽く洗って寝るんだけど…確か魔法、使えるのよね?」


 魔法で出した水で食器を洗っている最中、宿泊研修のオリエンテーション染みた説明口調のキルビアが口を開いた。

 魔法は使えますけど…何か? 疑問が多岐にわたり、脳の容量を侵していく。新しいレイプとしてエロ漫画のジャンルに入れられそうだね。何だよ、脳内レイプって。VRかな? ヴァーチャル世界に意味のない偏見が襲う。

 まあ、二次創作とあんま変わらないからね。

 アニメに理解のない親のような「え、プラモデルってLBXじゃないの?」的な、似ているから良いでしょこれで、感覚で結論付ける。

 説明に癖がありすぎる気がするが気のせいだ。


「うん、使えるけど…」


「頑張ればさ…お湯とかって作り出せない?」


「お湯? …ああ、入るのか」


 逆に何のためのお湯なのか。


 特になにをやる訳でもなく、妙に手際の良いキルビアを見るだけだったので直ぐに行動に移す。

 理解し、行動するまでが早いで有名なアクである。ソースはない。まあ、これも一種の自己表現みたいなものだろう。自己表現の枠組み広すぎな。


「ん? アクちゃんって魔法使えるんすか?」


 さあ、やろう、と意気込みを入れた瞬間のシェルダの介入である。宿題をやれ、と言われた息子気分だ。女なんだけどね。いや、女でもなかったわ。

 シェルダの疑問に対して洗い物が終わり、食器を片付けていたキルビアが返答する。


「ええ、使えるのよ。食事に使った水も、火も全部アクちゃんが出したものよ」


 へえ、すごいじゃないか! 見直したぞ、アク!

 と、海外的お褒めの言葉が来る、と想像していたアクは面食らう。


「…エッチっすね」


 小声でアクちゃんの出した水か…これは、商売の匂い? と、呟いているシェルダの顔面に手を向ける。


「…キモ『熱湯』」


 ウィンドドラゴンとの戦闘時に発動した水と同じ要領で発動させる。

 手で方向を示していた為、ものの見事にシェルダの顔面に向けて熱湯が噴出される。感じ的にはイカの墨攻撃的サムシングで繰り出された。


 まさか、俺、イカだったのか…? そんな疑問は若葉を食べたギルバに負けずとも劣らない悲鳴をあげるシェルダにかき消された。


 地面に軽くたまるほどの熱湯を、キルビアはゆっくりと触る。満足げだった。


「うん、ちょうど良い温度ね。…因みに湯船とかって作れないかしら」


「…よーし、アク、頑張っちゃうぞー」


 無い袖を捲り、想像力を活性化させ、湯船を造形していく。気分は神である。


 魔法を使う事に倦怠感が増していくのは…これ、MP的な概念があるのだろうか。

 先程までの意気揚々な感じはなくなってしまった。別名賢者タイムである。



 悶えていたシェルダなのだが、きちんと冷水をかけまくったので火傷にはなっていないはず。恐らく、ネイビー。つか、ネイビーって色じゃね? いや、知らないけどさ。


 逸れまくる思考とは別に仕事は捗っていく。












 時間は過ぎ、太陽も落ち、辺は暗闇に支配されていた。

 先程までの賑やかさは息を潜め、聞こえてくるのはパチパチ、と焚き火の音だけだった。


 その焚き火を囲むようにして火照ったキルビア、アク、シェルダ、ギルバ。


 お風呂タイムがその前にあったのだが残り湯を紅茶にしたためる、というイかれたイベントのせいで景色的な沈黙とは別の、蔑称的な沈黙が加速する。


 空気を変えようとギルバが声を上げる。


「こ、これには深い訳があるんだ!!」


「ウィンドドラゴンが来ても助けないわよ?」


「…すぅー、すんません」


 煩かったみたいである。


「(いやー、さすがに残り湯で紅茶を作るって発想は…ねえ? 出てこねえって。つか、俺とか泥とかに塗れていたと思うけど…)」


 それでも嬉しいものなのかな? と、常識人のように疑問に思う。

 これが両性具有の具有なしではなく、男のままで女装スタイルであったのなら同じ行動をとっていたのがアクである。さすが、アク。


 その場合、対象が自分なので自己完結的な? 自己処理的な? そんな感じなので誰かに対しての被害はないだろう。

 自分のことを棚に上げるのが大の得意であるが、まあ、行動に移していないので責められる人物は誰一人としていない。


 険悪なムードを変えよう、とかではなく純粋な疑問がアクを襲う。


「そういえばどうしてこの三人でパーティを組んだんだ? 結構、疑問なんだが…」


 変態のギルバ、妖艶のキルビア、イケメン系変態のシェルダと、意外とあってなさそうで合ってる属性同士のパーティである。

 …あれ、意外と接点はありそう?


 そんなアクの内心とは別にキルビアが口を開く。


「やっぱり、アクちゃんは可愛いねぇ〜。その口調って誰を真似してるの?」


 ふふっ、と愛でるように言う。言うが当の本人であるアクは内心、怒り心頭である。

 度胸がもっとあったのならば「盛りニストに人権は無え。お前は今から男だ!」と言っていただろう。嘘である。


 直ぐに言い換える。


「お聞きしたいことがあるのですがお時間よろしいでありますでしょうか? 出会った当初より兼ねてより疑問に思って事がありまして、お三人がパーティを組んだお経緯が気になっておりまして…」


「反発ぅ…何すかね? 敬語が敬語になってないっすね。頭痛が痛いに通じたものを感じるっすよ」


 今まで黙っていたシェルダがここぞとばかりに突っ込んできた。


「うっせ、残り湯紅茶野郎。一丁前に文法を語ってるんじゃねえよ、まず常識を学べや」


「ひっ、辛辣っ」


 シェルダが怖がる仕草を見せ、そのついでで薪を焚べる。エルダートレント製だ。乾いているのに生きてるって…モンスターって不思議だねえ。


 辛辣、と声に上げるシェルダなのだがギルバと一緒にやった残り湯紅茶は見逃せるものではない。

 しかも残骸を見るに2、3杯は余裕でおかわりをしている。

 特殊にも程がある性癖。さすがのアクでも理解は示せない。キルビアなら…可能性はあるが好感度的概念で行動には移せないだろう。


 入れ替わるようにしてギルバが話始める。


「…俺は、剣に自信があったからな。冒険者ギルドで依頼を受けようと思ったんだ。だけど、一人の受付はできません、最低後二人はお仲間を見つけてくださいって…意味がわかんねえだろ? 何だよ、ドラゴンくらい一人で討伐できるっての」


「そう言って前帰ってきた時、半死半生だったわよね? 確か相手は…」


「ウィンドドラゴンっすね。その仇討ちでここにきたんすけどこの有り様で…」


 白い目でギルバを見る二人。

 その様子を見るに迷子になったのはギルバが原因と見て良いだろう。


 その視線を振り払おうと声を上げる。


「うっせ! 良いじゃねえかよ、アクちゃんと会えたんだから!」


「それ、犯罪的ね。ロリコンは…さすがに容認出来ないわよ?」


「俺は別にロリじゃねえよな?」


 シェルダの方を見る。数秒悩み、良い笑顔で


「元気な子供が産めそうっすね!」


「…セクハラな。それ」


 悪びれもなく言っているので悪者ポイントに大きな加算である。自意識のない犯罪者が一番怖いのだよ。


 その一言に空気が凍ってしまう。


 ギルバが咳払いをし、無理やり繋げる。


「ま、まあ、とにかく出会いは適当だよ。あまりもん同士ってやつか。数ヶ月前は他人同士だったんだけどなあ」


 握り拳を作り、ガチ目に殴りかかろうとしているキルビアと、それに対して煽りを入れながら華麗な身のこなしで避けていくシェルダ。

 その光景を和むように見ながらギルバは続ける。


「でも、ほら、人間ってのは慣れる生き物だからさ。他人、っていう皮はなくなっちまったよ」


 良い話風にまとめてはいるが…


「(でも変態集団だよな。別名社会不適合者。知ってっか? 巷では冒険者の別名ってフリーターって言われてるらしいんだぜ?

 そんな俺は性転換かつ迷子だけどな。貞操に危機を覚えますわ)」


 貞操以前に貞操ねえだろうが。


 残り湯ではない紅茶を飲み干し、立ち上がる。


「じゃ、先寝るわ。確か見張りって交代するよな?」


「ん? ああ…でも、まあ、いいわ。明日も結構歩くと思うし、出会った初日記念って事でゆっくり休めよ。その分明日は早いぞ〜」


「新手のセクハラね、それ」


「は? んな訳ねえよな、な?」


 女は怖いです。


 ギルバの静止の声に後ろ髪を引かれる感じはあるが…生憎のショートヘヤーである。

 風呂上りのしっとり感も十分であり、アクにしてみればそんな悲痛な声はただのキューティクルを労る超音波にしか感じない。何その生命体。美容の鬼かな? 


 ゆっくり休めよ、そんなギルバの言葉が原因か、少し前から眠気が異常だったのだ。どうも、眠れる森の美女です。ショートヘヤーの美女って絵本でもそこまで聞かないよな。


 妙に重い目蓋に抗いながらテントに潜り、寝袋に包まる。

 話では1人見張りでローテーション、との話だったから1人部屋的テントも後数時間で終わりを迎える。今更ながら男2人は言わずもがな、キルビアに対しても危機感を感じるものがある。あのノリはお母さんだ。俺には分かる。


 そんなことを考えながら夢の世界に旅立っていった。

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