② 〜エルダートレントの生態系〜
3000前後で停滞しています。5000の壁はデカかった。。
「エルダートレントの生態系って知ってるっすか?」
「…それ、ここでする話題? 場違いにも程があると思うけど…お願いするわ」
するのか。するんです。だって気になるもんね。
テントを張った場所から歩いて十分弱、ガルバの足が速いのなんのイラつく場面はあったが特に文句を言うわけでもなくついて言った先に見えたのは文字通りのエルダートレントの群生地だった。エルダーってついてんだしエルダーらしくしろよ、とは思う。
その後「この人数なら俺とキルビアの二人だけでやれるけど…アクちゃんはどうする?」の問いにno、と答えた結果のシェルダとのマンツーマンである。居心地が悪いったらありゃしない。てか、ちゃん付け確定なのね?
別に良いけどさ…。
俺が初めてウィンドドラゴンと戦った場所に似た開けた空間に所狭しと、バーゲンセールの特売品かのように植わっているエルダートレント。
それに対してガルバの大剣が唸りながらなぎ払い、キルビアの触媒攻撃が色々なんかし、木屑と化す。新手のストレス発散式の伐採方法だった。討伐なんだけどね。
戦いが見える少し離れた木陰に二人、息を潜めているのだが…。
では、と咳払いを一つ入れ、指差しながらシェルダは解説を入れ始める。思ったけどこれ俺ら居場所バレるくね? いや、木に耳あるとは思えないけど異世界でしょ? なんか、ほら、ありそうじゃん?
心持ち的な意味合いで不安を感じ始めるが…まあ、恐らく先輩であるシェルダが安心しきった間抜けズラを見せているので大丈夫だろう。大丈夫か?
「一ヶ月ほどっすかね? 森の中を彷徨った結果なんすけどここってエルダートレントとウィンドドラゴンが共生している森なんすね」
「共生って事は…同居ってことか?」
「それは話が飛躍し過ぎだね…そうじゃなくて、自然の摂理的に回っているってこと。ウィンドドラゴン自体に空を飛ぶ能力はないんすね。しかも肉食性で凶暴なんすけど見た目の綺麗さと、高値で売れる事から上級者に凶暴な宝石とも呼ばれる存在なんすよ」
「確かに見た目綺麗だもんな。太陽光反射しすぎて直視できないまである」
一種の自己防衛的な物なのかな? そんな事を考えてしまう。
「でも、実際のところ俺達が見てきた中でウィンドドラゴンは空を飛んでいたし、トレントを狙って滑空攻撃を着かけてきた。しかも食べる目的で。この事からエルダートレントに何らかの空を飛ばす魔法的触が備わっていて、それ目当てで襲っているって考えられるんすよ。実際、解剖してそれらしきものはありましたし」
「へぇー」
「ウィンドドラゴンが狙って食べている原因は分かったっすよね? 次はエルダートレントの方っす。
エルダートレントはドラゴン系とタメを張るほど厄介で有名なんすよ。植物系なんで再生力が強く、生半可な攻撃は効かないし、知性があるから火の攻撃は回避してくる。基本的に住んでいる所が森の中なんでこちらとしても火は使えないんすよね」
「ドラゴン系って厄介なのか。確かに、ウィンドドラゴン見た目キモかったしな…」
見た目はあまり関係ないか。
「じゃあ何で知性高いエルダートレントがここで根を張っているかと言うと…繁殖の為なんすね。ある程度強い魔物の近くには生物って寄り付かないんすよ。当たり前ですよね、食べられちゃうんすもん」
「繁殖…? ドラゴンと? て、思ったけど…種って事か」
どこかインターネットか教科書で見た果実を食って糞として運搬し、育つ植物があったことを思い出す。ほぼジャコウネコのコーヒーだな。全然違うけど。
少し、視線を戻し目の前の戦場に焦点を当てる。
ギルバがカチ上げてエルダートレントを根っこから引っこ抜き正面にぶつける。一方、キルビアは混戦が目立つようになり、ギルバに被弾する可能性を考えてゆっくりと、バレないようにこちらに戻って来る。
その表情は物足りなさを語っていた。こわ。
乱れた黒く、でかい帽子をかぶり直す。一々色っぽいのがムカつく。いや、ムラつく。まあ、エロいのは正直な所だし良いよねって話。俺、男じゃねえし。女でもないけどな。
「…ここまで話聞こえていたけど。てか、ここまで来れるアクちゃんに説明っているかしら…? って、思ったけど今時、生態なんて知らなくても倒せる時代なのよね。無手って事は魔法使いって事でしょ。エルダートレントには効きは良いと思うけど…」
効果は薄いらしいのよね、私魔法使いじゃないから聞いた話なんだけど。
そう言いながら長いスカートを畳むようにして座り、一緒の物陰に隠れる。ふわりと香ったこの匂いは…香水? いや、覚えがあるぞこれ。
ふんふんすんすん、変態チックに嗅いでいると流石に気になったのかキルビアが顔をこちらに向けてきた。
「そんなに私匂うかしら…?」
「…この匂いはエルダートレントの種子っすね。因みにキルビアさんならどんな匂いでもいけるんで、俺」
ほぼノータイムで平手が飛んでくる。目の前でイチャつかないで…と、思ったがガチの平手打ちっぽかったので見て見ぬ振りをした。ほら、触れぬ神に祟り無しって言うじゃん? そんな感じ。
叩かれた頬を抑えるシェルダに目を向けず、「ん!」と、関白亭主並の意思表示で続きを促す。てか種子って匂いするんだね、初耳だわ。異世界だししゃーなしだね。
光景の印象が強すぎて言葉もうまく出ないわ。どうも、繊細なアクです。優しくしてね? 月のお小遣いは一万でいいよ。そんな優しい養ってくれる人を募集中です。それ以前に迷子ってのが面白いよな。全然面白くないけど。
「は、話は戻すんすけど…えっと、エルダートレントの繁殖っすよね? ウィンドドラゴンに種ごと食べられて体内で移動して生息域を増やしているんすよ。まあ、生憎とこの森から出ていないみたいなんすけどね、ドラゴン。その結果の二種族のみの生態系って事っす」
「そもそも個体としてはそこそこ強い種な訳だからwin-winな関係が出来上がっている今に他種族は淘汰されてしまうって訳なの。まあ、これが木属性のみのモンスターで良かったわ」
「そっすよね、これが火属性との共生だったら…最強の再臨って感じすよね。まあ、死んでないみたいなんすけど!」
テンション高めだが笑ってないところを見るにそういう感じなんだろう。何だよ共生って。属性は…何となくわかるけど。
ってな訳でスキル発動! ギルバはまだ奮闘している。頑張るね、あの人。
名称;火属性と木属性の共生
「本来は一つのみを抱えて生まれてくるのがドラゴン系の普通なのだが、何らかの影響(環境、親、食事等)によって二つ以上の属性を抱えて生まれてしまう事。一番有名なドラゴンで‘獄風のイニシエラ‘がある。己から噴出する爆風に炎を入り混ぜ、ジェット機のように推進力を経て空を飛ぶドラゴン。
最後の発見が九ヶ月前の人亜大戦での低空飛行である。その際の損害がお互いの陣営を含め、4万を超える。一番身近な災害である」
オイオイオイオイ。おい。ついでにおい。
共生云々カンヌンを飛び越えての説明が出てきたんだけど? 何だよ獄風のイニシエラってカッコ良すぎかよ惚れたわ。
しかも文章から想像するにジェット機系のドラゴンでしょ? 何だよ、男心わかってるじゃん。歩く災害ならぬ、空飛ぶ災害だけどな。出来れば伝記上の存在になって欲しいです。
エルダートレントとウィンドドラゴン。そして中二感をくすぐるドラゴンの存在、とこの瞬間だけで満足感たっぷりの話を聞けた事に満足である。
「ダァ、らっしゃああああぁあああぁぁ!!!!」
説明も終わり、ちょうど良いころ。最後のエルダートレントを伐採するギルバの声が聞こえた。
知ってるか、これでも40過ぎなんだぜ? 嘘だと思うだろ? ぎっくり腰に気をつけてね…。
優しいアクちゃんだったのだがギルバに向ける視線は痛い人を見る目である。自分の親が、と考えてみたら関わりたくないもんな。キルビアが母親だった場合はむしろ歓迎するけどな。