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女の俺は世界で一番エロ可愛い  作者: 椎木唯
第一章 力で商人のヒモになりたい
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発表会! 心持ちは純情で

 数日後ーー


「初めまして、貴女がアクちゃんね! これからよろしくね〜。アタシの事はマリッサちゃんって呼んでもらって構わないわよ〜」


「あ、そっすか…よろしく願いします、マリッサちゃん。…さん」


「あら〜? さんは入れなくて良いわよ? 入れない方が可愛さのレベルが上がるじゃない」


「すぅ…そっすね、確かにそっちの方が響き的に可愛いっすね…」


 なぁなぁと過ごしていたらモルリ商会の新商品ーーまあ服だがーー発表になった。

 事前にあるよー、とは言われていたけど自室で寝てた所をいきなり突撃してくるか普通? 俺が朝に致すタイプの人だったら今後の人間関係に差し支えるぞ? 冗談だが。

 にしても、いきなりメイドっぽい格好の人が入ってきた、と思ったらすぐさま移動の為に適当な服を着させられたし、直ぐに馬車に乗せられて移動させられた。女性相手で生着替えを披露とは…そー言うプレイだと考えれば寝ぼけた頭を覚ますのに十分すぎた。


 数分の移動後に個室に案内される。先導され、入室すると…マリッサちゃんと名乗る妙に高身長なオネェが居た。クネクネしながら喋る姿はどこかチンアナゴを彷彿とさせるが…似ても似つかないだろう。唯一似ている部分は“チン“だけである。チンアナゴも不名誉よな。

 まあ、それ以前に新作発表…の前段階の試作品だっけか? の発表でもそれ相応の礼儀とかマナーとか敷きたりとかあるもんだろう。素人がいきなり初日でランウェイ歩けますか? って話。いつ教えてくれるのかな? と、待っていたら現在である。いやー、日本じゃ無いって以前結論付けたけどリアルにここまで放置されるとは。新作着放題って条件なかったら闘技場に鞍替えだぜ? そしたら…エロエロなアサシン装備で舞ってやるよ。

 そんな妄想は置いといて、生前は自室でランウェイ気取って色々やっていたけど…それは自己満足でしかない。つか死んでないし。My little アク君はお亡くなりになったが…まあ、付け焼き刃にも見たないお粗末なレベルであるのだ。

 いきなり今日です! って言われるのはまあ極論別に良いとして…半分忘れていた俺の責任だし。でも、その、魅せ方の説明とかあっても良いんじゃないですかね…? アプローチするのは俺だけじゃ無いでしょうに。


 そんな感じの心持ちでなんやかんやマリッサちゃんに自己紹介をする。スリーサイズとか聞かれても知らんぞ…と、思ったけど少し前に測った記憶ないのにピッタリなサイズの衣装が置いてあった事を思い出した。ファンタジー要素を変態場面で出さないで欲しいんだけど…。

 まあ、そんな些細な事はマリッサちゃんが持ってきた服を見て一瞬で吹き飛んだ。


 一言で言って仕舞えば身に纏うタイプの天使である。


 フリフリのフリルが印象的なミニスカートに、ピンクと白のタイツ。黒のローファー。徐々に視線を上げると見えてくる謎のロゴがど真ん中にプリントされたピンクのTシャツ。そして一体型で袖から長袖が見えている。

 身に纏うタイプの天使である。天使は天使でも、背負うタイプの小学生向けワンセットであるが。謎に既視感があるのはそう言うことか…懐かしい、まだ女装趣味の片鱗しか出てなかった頃の初々しい小学生アクちゃんが出てしまう。そんな格好の女子結構見たわ。結構声の大きい活発系のね…。


 と、そんな服を見て、ヤベェマジでこれ着て花の舞台に立つの? 俺の初デビューが子供向けってマジ? 子供がターゲットにしては俺を起用って刺激強すぎないか? と、戦慄しているとマリッサちゃんは間違えたとその服を仕舞う。間違った…? 何を? 何処が?

 まあ、間違えたのなら記憶から消し去るが…。


 そう言って衣装ケースからゴソゴソと取り出したのは…至って普通な民族衣装である。自信満々に掲げられたそれを見て、何が凄いとか何が優れているとかは全く分からないんだけど…。分かる事は踊り子のようなちょっと奇抜な衣装ってだけである。全然普通じゃなかったわ。

 そんな夜の怪しいお店で踊り子をやってそうな衣装を受け取り…え、マジっすか。


「ターゲットは『夜の町』つまり、ちょっとそっち系の子が狙いね。まあ、準備段階ってだけだから直ぐに販売って訳にはいかないんだけど…って、妙に乗り気ね? 普通はそっち系だから、印象的にも嫌われやすいジャンルなんだけど…」


 と、ほぼベールのような衣装を受け取り、輝かせながら見ていた所に言われる。

 そっち系って言われた時は少し抵抗はあったが…


「でも、俺が興味あるんで大丈夫です! 寧ろ、新しい扉が……じゃなくて、これも俺の仕事ですので。勿論喜んで来させて頂きます」


「うーん…欲望が見え隠れしたけど、まあ前向きなのは嬉しいわ! 着方って分かるかしら?」


 全貌を把握し、自信満々に言い放つ。


「余裕」


「…そ、そう? なら、アタシは先に諸々の準備に入るから着替え終わったら休憩しててね〜」


 ヒラヒラと手を振りながら、ウィンクと同時に退場するオネェ。こんなファンタジー世界に典型的なオネェいるのか、とびっくり仰天して見るフが、女装趣味のある変態と比べれば世間体の良さではオネェに軍配が上がるだろう。オネェさんの持ち物を見るにスタイリストさんっぽいし、学生だったあの頃だと比べるのも烏滸がましい程の身分の格差だろう。今は俺の方が上だけどな? 可愛さも、妖艶さも、仕事の重大さも。

 何人の手が加えられたのか、それとも1人で作り上げたのかちょっと判断しずらいランジェリー…おっと、服に着替える。まあ、そっち系がターゲットならランジェリーであってるのか? 下着で人の前に出るのか…?


「…最高じゃねぇか」


 以前は男として、性別の壁があって自己完結型で終わってしまったが、今は違う。正式に女として定らているので…正確には両性具有のブツなしってマネキンも驚きのツルペタ具合だが…まあ、盛らなくても十分に胸はあるし、ヤスリがけでもされたのか?  と、思ってしまう程の股間は女として定義して良いのか疑問が浮かびそうになるが、マジで微々たる差である。この場に俺しかいない現状、俺を判断するのは俺の主観だけであるのだ。

 …結論、人目に出れる完璧ボディーを手に入れた俺に羞恥心といった感情は無いに等しい!

 俺美女だしね。ナイスバディーだもんね。美女だし。




・・・・・・・・・・・



 若干、これで良いのか? と不安になる程布面積が無い、服とも言えない衣装を身に纏った俺は十分弱全身が映る鏡に張り付けになり、食い入るようにして見ていたのだが…その時にマリッサちゃんが入室する。


「…準備終わったからメイクしに来たわよ〜。……おっと、捨てた筈の男が溢れそうになったわ」


 一瞬男の表情になったマリッサちゃんがこちらをガン見する。そんなジロジロ見られると…興奮するじゃねぇか…。

 似合わないとか、変とかそんな感情は一歳浮かばない訳である。俺に似合わない服は無いってね。服の製作者は別に、素人ってわけじゃねぇんだ。普通に腕があるだろう人が作った服と、世界一エロ可愛い俺が混じったら。


「夜の蝶…いや、サキュバスの女王…?」


「絞り尽くしちゃうぞ♡ って、やっぱりランジェリーじゃん」


「まあ、水着も下着のようなものだし? ランジェリーも水着のようなものなのよ」


 ランジェリーで海の近くのコンビニ行ける根性は流石に無いですね…流石の俺も。


 マリッサちゃんにも太鼓判を押され、いざ会場へ! まあ、試作段階なのでお目通しって感じらしいけど。お目通しってお偉いさんが沢山いるっぽい響きだよね…。まあ、今は合法的にランジェリーを着られる環境に感謝を…!!

 終わったらモーリをからかいに行ってやろう。


「モーリ…来ちゃった…どう、似合ってる?」


 って言えば一発KOだろう。やってる事ほぼデリヘルだけどな。…幼馴染シチュ?

 来ちゃったでランジェリーはマズイでしょ、と思わない事もない。つかマズイ。痴女のレッテルが貼られそうだけど…まあ、その時はモーリを巻き込もう。そうしよう。


 舞台の裏である場所に案内され、説明される。


「ここを出ると左奥に丸い台があるからそこまで歩いてね。台に乗ったら誰かが良いって言うまでその場で適当にポージングして待機。良いって言われたら元の場所に戻ってね? 何人か壁際で待機しているからそこの列に並んで終わり。…まあ、言っちゃえば動くマネキンって感じね」


「マネキンっすか。…俺を見てそう思っていられる人は何人いるんだろうな」


「自信満々ね。流石、アタシのメイクの施しようが無い程まで完成された美を誇るアクちゃんだわ…」


 まあ、俺なんでね? メイクのかべを超える存在なんすよ…。手の施しようが無いってね! 良い意味で使う瞬間初めてだわ。

 軽く髪をセットされただけだが…それでも、以前の俺と見違える程に可愛くなった俺が佇んでいると、促す声が聞こえた。


「じゃ、行ってきます」


「うん、行ってらっしゃい」


 盛大なマリッサちゃんの見送りを受けながらガンガンに照明が当てられている舞台に出る。

 一瞬、光源の多さで瞼を閉じてしまったが……座っているお偉いさん方は逆に目を見開いていた。そこまで光当てる事ある? ってぐらいに照明がんがんなのだ。多分、ちょっと角度とか諸々含めると隠した場所が透けて見えそうだなぁ、と思ってしまう。

 まあ、見えてもセンシティブな部分は無いのだけど…。そんな事は見ている人達には知らない事である。


 圧倒的な美と、エロの塊を目前にした彼らを襲ったのはーー


 有無すら言わせない、圧倒的な静寂だった。




 魅力の海に沈め、野郎どもーー

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