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女の俺は世界で一番エロ可愛い  作者: 椎木唯
序章 目覚めは迷子の子猫ちゃん
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裸族云々カンヌン② 〜森の中〜

続きです。

 背後に聞こえる伐採染みた咀嚼音に危機感を覚えろ、って言う方がおかしい事案である。

 伐採で危険な事は人がいる方向に倒すことである。そんな事実の前にドラゴンなんて夢物語世界の生物は存在しない。

 存在しないのだが可憐な眼で見つめる世界には実在してしまった。心は心霊スポットで幽霊を見てしまった大学生である。

 無我夢中でその場から立ち去る。


 泥に塗れて全裸で駆ける姿は現代人にあるまじき原始人のそれだった。まあ、世間体と命を天秤にかけたら命を取るよねって話。可能性としてあのドラゴンが草食系で俺を助けてくれようとした可能性……は原子レベルに存在する。


 取らぬ狸の皮算用である。

 寧ろ気を取られ過ぎて死にかけるまであるレベルだ。


 森に全裸放置な時点で人生ハードモード確定なのに物語の存在と対峙するってそれどんな無理ゲー? 無理難題に立ち向かう根性は備わっていないので…。




 何十分か。

 微かに残る獣道を進んで行き、咀嚼音が一切聞こえないくらいまで遠くに離れることができた。


 相手は空を飛べる時点で逃げるもクソもないと思うけどな。卑怯すぎんだろ、俺にも羽をくれよ、とは道中思ったが女体化に加え人外化は本格的に心にくるのでやめて欲しい話である。

 将来の夢は空を飛ぶ事です、て今時幼稚園生でも言わないぞ? 言うかもしれないけど。


 先程よりは幾分か木々が生茂り、よく分からない花の群生地とも取れる場所に腰を下ろす。

 純白の肌に対して労る気持ちゼロである。


「ふぅ…危険生物に襲われるよりは幾分かマシになったけど…これ、俺迷子になってないか?」


 迷子以前に何がマシになったのか。


 そんな事が頭を過るが考えるだけ無駄である。明後日の天気を考えるくらいに無駄である。明日の天気を知れよ未来人かよ。

 どうも、異世界に連れてこられた人畜無害の青年です。


 深緑が目に優しい、そんな緑化社会的概念の木を背もたれにして座っているが…これもエルダートレントでしたってオチは止めてくれよ? 将来安定な生活を送って子供を作る、と言う夢が木との性交渉で重ね塗りされてしまう。

 全然アブノーマルじゃ無くて心配しかないわ。


 立ち上がり二、三歩離れる。


 根元から生茂る上部までじっくりと観察するが…木に対しての理解が常緑か落葉かの二択しかない俺にとっては無駄な時間でしかなかった。寄っかかった瞬間に襲って来てない時点で人畜無害確定認定なのだが…。


 と、そこまで考えある事を思い出した。

 流石俺である。


「凝視っ! …マジで視界の端に映るのゲーム感がして現実味ないんだけど…」


 凝視、と名称を叫び凝視する。文字の通りである。言ってて恥ずかしくなったわ。これが自己完結型の羞恥プレイ? な訳。



名称;フールダ

年月;36年

属性;樹

好きな物;太陽光、新鮮な水、大地の栄養

嫌いな物;可燃物

特徴;成長が早く、腐食しにくい。加工のしやすい木、代表格である。


 先の合コンの自己紹介よりはためになる内容だった。フールダって何だよ。モンスターの名称か? それとも木としての個体名か?


 微かに残る知性がそう訴えるが…エルダートレントの時とは違い木として、植物としての好きな物が明記されているのを見るに、植物確定であろう。ちょっと上等な物が好きな所に人感を感じるが…植物だって我儘を言うのだ。怖。


 エルダートレントの変態的触手があった事による精神的ダメージが大きい気がするが…相手は男の子だったのだろう。そうであれば理解し、納得し得る。

 確かに女の子との距離感って掴めないよね。出会って初日で胸を触りたくなる気持ちも理解できなくはないよ?

 でもそれを行動に移すのは理解できないけどな。この変態がっ!


 この情報が信じるに値するのか…なんて野暮なことは考えず、信用して寄っかかって座る。今度こそ、この皮袋の中身を確認するのだ。

 必死に抱えて走ったあの時の俺を褒められる中身であって欲しいんだけど…。


 そんな期待を胸に秘めながら皮袋から一つ一つ、プレゼントを取り出す幼心を呼び起こしながら出していく。


「…えっと、質がクソな村人的服が一式。心許ない刃こぼれが目立つナイフ。場違いな程に綺麗な手紙」


 初めてとも言える女性下着に心躍らせながら足を通し、胸を固定する。これがブラジャーとかだったのなら女装趣味の経験を活かすしかなかったのだが生憎とスポブラタイプだった。まあ、それでもエロス。心の中はピンク一色である。

 まあ、体は砂に塗れているので不快感が大きいが。


 肌触りがクソなシャツと、校則が厳しい学校並みのスカート丈にびっくりドッキリしながら腰に装着する。


 一呼吸を置いて、


「粗悪品じゃねぇかっ!!!!」


 俺は在庫処分担当ですか?


 と、ゴワゴワ感を全身で感じながら何も入っていない皮袋を背もたれにしていた木に叩きつける。ごめんな、お前に恨みは無いんだ…。


 ある程度気が済むまで皮袋を踏み躙りながらストレスを発散する。自分より非力な相手には強く出れる。これは人間故、しょうがない事なんだ受け入れてくれ皮袋よ…。


「はっ、口では嫌そうな事を言っても…ほら、ここは素直に語ってんじゃねえか。素直になっちまいな? 楽になるぜ?」


 別に恨みはないです。










 俺の中のイマジナリーフレンドがドMかもしれない、と気づきたくない事実が発覚してしまう。イマジナリーフレンドが皮袋な時点で精神的異常を感じるが…もうちょっとカッコいいイマジナリーフレンドが良かったな。利便性でしか見れねえよ…。


 これが類は友を呼ぶ、か…。いや、誰が変態だっ! 俺だ!


 素直に自分の気持ちを受け止め、上がった呼吸を沈め、ゆっくりと皮袋を座布団に地面に座る。リアクションをしっかり取ったわけだしそろそろ手紙読んでもいいよね? ダメって言われても読むけどさ。


「何々…?


『 異世界にようこそ! ウェルカムニューワールドだね! いきなりですが貴女はこの世界で生きてもらいます。女装趣味をコスプレに昇華させたんだから感謝してよねっ。転生させる手違いで両性具有の両性が無いバージョンだと思ってもらって構わないよ。

 前の世界に関しては貴女の存在を一から抹消してるから気にしなくて良いよ! 大サービスってやつだね。

 んで、この世界の説明なんだけど魔法って概念があるよ。以上!

 一から十まで説明したら自分で知るって言う楽しみがなくなっちゃうもんね! あとは「ステータス」って念じて貰えばある程度の自分のこと情報は見れるから! じゃ、新世界でよろしくねっ!


  by神isゴットor私』


…え、何そのハッピーメール染みた唐突な文句。今時の悪徳業者でももう少し情報は提示すると思うけど…」


 そして最後の自己主張の強さ。自己顕示力は異様な程高い、と俺は見るね。そうじゃなかったらただのナルシストか。理解はできないけどな。



 まあ、当初想像していた異世界説はエルダートレントとドラゴン、そしてこの怪しさてんこ盛りの神からの言葉で説では無くなった訳だ。


 内容で幾つか気になったところはあるが…両性具有の両性がないバージョンって何だよ。何そのハンバーガー肉抜き、野菜抜き、バンズ無しみたいな良いとこ抜きは。tsって判断なのかは分からないけど女体化したなら女の子としての機能におっかなびっくりしながら適応していくまでが楽しみの一つでしょ? と、実感三秒で語る。

 どうして良いとこだけ省いちゃうの…と、嘆きの声が上がりそうになるがまだおっぱいがあった。なら許そう。後はそこまで気になる内容じゃなかった。


 俺の交友関係に関しては…まあ、女装趣味がバレる心配がないって利点を考えるとリスクよりリターンしか無い。何その俺の人生。女装趣味って言う汚点でしか語れないみたいじゃん。実際そうだから何も言えないけどさ。



 女体化と言えば、で二つ三つ目辺りで出てくる髪の問題も、自動的にショートカットかボブ、そこら辺まで短く切られているので

「俺、髪結べないんだけど…」

「分かった。なら私が結んであげるわっ!」

「ちょ、誰が三つ編みにしろって言ったんっだよッ」


 みたいな女友達とのキャッキャッウフフも何もない。

 現状、この場にいるのは俺と植物なだけでそんな展開に無理やり持っていこうとしても無理なんだけどね。寧ろ植物が勝手に動き出したらトラウマ確定である。エルダートレントの一件が強すぎた。写鏡的な意味合いで。

 俺がエルダートレントであの状況だったら迷わずに下半身に触手を伸ばすまである。それどころか足を狙って移動手段を封じるところから始めるまである。ワンチャン俺の方がエルダートレントに対して適性があるような気がしてならない。触手無双って、それどこのエロ同人だよ。



 と、触れないようにしていたステータスについて考える。


 手に持っている手紙をもう一度読み返す。


「…うーん、何度読んでもステータスって念じて、て書いてるよな。ステータスって何だよ新しいカメの名前かよ」


 それはタートルな。


 いつの時代にゲーム用語をリアルで使う奴がいるんだよ…と、一瞬投げ出しそうになったが結構一定数いるよなって新事実を思い出した。そろそろバーチャル空間に異世界転生しないかな。した場合、デスゲームの始まりを俺は強く望む。

 バーチャル空間でデスゲームって何だよ。ほのぼのしたものしか思い浮かばない俺は平和主義者です。


 現状を何が変える手段がステータスかもしれない、と希望的なんやかんやで強く念じる。

 今度は視界の端では無く、a4用紙的なサイズ感で目の前に出てきた。


名前;アク

性別;両性具有の両性無し

職業;無職

レベル;1

ステータス

『華奢な女の子』

魔法

『無し』

ユニークスキル

『真実を告げる瞳』

称号

『異世界転移者。異世界転生者。両性』




 と出てきた。

 ここまで両性具有の両性無しを引っ張ってくるのか…。


 そして名前アクって…悪ってことか? 変態は悪だもんな! 納得しかなかったわ。いや、自分から悪ですって言いふらす事になる可能性が…?

 まあ、異世界だし気楽に行くか。名前以上に気楽ではない部分が見えるけどな。


 職業無職って…まあ、確かに学生は職業じゃ無いもんな。…お嫁さんって職業じゃ無いよな?


 小学生、隣の女の子が将来なりたい職業でお嫁さん、と書いたことを思い出しました。仕事ではないだろ…と

、思っていたのだが


<職業が『無職』から『お嫁さん』に変更されました。次、変更する場合は一ヶ月の期間が必要です>


 脳内に無機質な女性の声が響く。

 え、お嫁さんって職業なの? そんな驚きは他所に、クレーンゲームのように地面から数センチ浮き上がった。え、え?


<職業『お嫁さん』に変更されたので装備が『村人の一式;粗悪品』からドリームドレスに変更できます>


<変更しますか?>


 同じように脳内で響き…目の前にステータスと同様の半透明な板が浮かび上がり<はいorいいえ>の選択肢が出てきた。


 ドリームドレスって…てか、やっぱり入っていた服粗悪品じゃねえか…つか、明記されるほど粗悪品ってエグく無いか? このゴワゴワ感は着慣れてないからって事じゃ無いんだな…。

 現代社会の幸せな衣食住に囲まれた中、柔になってしまった肌を軽く恨み、だが一方で女の子なら餅肌よね、と二律背反のように悩んでいた自分がバカバカしくなってくる。


 ドリームドレスの語幹に夢小説のような同じ空気を感じるが…まあ、ドリームって言うくらいなのだ。夢を見させてくれよ?

 そんな期待を込めて<はい>を押す。押す。押す…これ、反応悪く無いか?


 合計五回ほど押してやっと反応した半透明な板を睨み付けていると全身からあわゆい光がこぼれ出ていく。これは…俺の生命力? 死期を悟った猫は姿を消すと言われる。まあ、この話は関係ないのだが。

 ポリゴン化してしまいそうな現状が、空中に浮いていると言う事実と相まって本当に生命力が物質化して抜け出しているような気がしてならなかった。てかこれ結構目立つけど…ドラゴンとかに気付かれないよな?


 あまりにも目立つナウに危機感を覚えつつ身を任しているとまた、同じように無機質な声が脳内で響いた。


<スリーサイズ確認しました。二秒後にドリームドレスが換装されます>


「は、二秒後? って…」


<…換装完了しました。では、新しい新婚生活を>


 いや……新婚どころか未婚なんですけど…。



 あまりにも一方通行な声に突っ込む気力が出てこない、嘆くような声を上げる。


 測った訳では無いが二秒後、きっかりと全身を覆うようにして純白のウェディングドレスが出てきた。

 薄いベールで顔を隠し、身を包む純白のドレスは女としての象徴である胸をしっかりと持ち上げ、華奢で今すぐにでも折れてしまいそうな足を隠すようにスカート部分が伸びている。今まで素足だったのだが、高さ四センチ弱はあるのでは無いか。バチバチに高いヒールが履かれていた。


 十人中十人が口を揃えて言うだろう。


「結婚式から抜け出してきたのか?」


 と。




 確かに。

 確かに、結婚は女の子の夢と聞く。


 素敵な男性と交際して、お互いのことを深く知り、結婚して豊かで華やかな家庭を築く。確かに夢だ。ドリームだ。果てなきドリームなのだが…。


「森の中でウェディングドレスって…場違い感すごく無いか?」


 もっと他に言う事はあったのだが…フワフワで、重量を感じさせないドレスに心までフワフワになってしまったようだった。夢心地とも言う。


 すぅー……満更では無いね。

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