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女の俺は世界で一番エロ可愛い  作者: 椎木唯
序章 目覚めは迷子の子猫ちゃん
11/28

どうも同性です。スカートに手を入れます。湾曲でした

確認してないので後で修正するかもです

 モンスター討伐には解体、という作業がつきものだ。


 その名の通りの作業で倒したモンスターから有用な部位を取るものである。ドラゴンなら牙、鱗、目玉…と、アンコウかよとツッコミたくなるような捨てる部分がないモンスターだ。例の上げ方がおかしかった。

 素人にはキツイ、でも専門職である解体場では手数料として素材が数%取られてしまう。なら、仕事を覚えよう! 的な役割を担うのがシーフである。シェルダの役目であるのだが…。


 ほぼ標本とかしたウィンドドラゴンの王は解体、というよりジグソーパズルに似たおもちゃ感を感じてしまう。達成感も苦労も何もないのだ。傷がほとんどない、初めて見る個体の素材に胸は躍るが存在意義が無くなっているよな…と、思わなくもなかった。

 実際、シェルダの表情は無表情だ。


「やっぱ、お前の目からして見てもアクの魔法はおかしいよな?」


 そんな事務的な解体を見ながらギルバはキルビアに話しかける。

 ながらについさっき起きた超常現象を思い出していた。


 やっていたことは魔法に理解の少ないギルバでも理解ができる。

 視界を奪って、逃げ場を無くし、急所に必殺の攻撃を当てる。剣士であるギルバと似たような戦法である。だが、精度が段違いであり、それを後押しするような魔法の強度があった。


 対峙した時に言った、大人数で準備を万端な状態にしてやっと挑める相手なのだ。可愛い表情で癇癪をおこしながら倒せるレベルの相手ではない。歴戦の戦士、と豪語しても良いギルバでさえ足が竦んでしまったのだ。


 さて、ある程度の知識のあるキルビアは何と言うか。どこかワクワクとした少年のような心持ちで待つ。



 戦闘後、一言二言交わし、人が切れた人形のように眠りこけてしまったアクの頬を何度も撫で、愛でるように見ていたキルビアはふっ、と顔を上げた。


「…理解はできるの。最初に使った魔法の名前は『ストーンバレット』、次に足を沈めたのが『泥沼の縛り』、最後は詠唱強化っていう補助魔法をかけての『ストーンバレット』。理解はできるのよ…」


 膝の上に頭を乗せ、発動の媒体にしていたアクの手をじっくりと見る。戦闘中に浮かび上がっていた魔法陣は今は出ていなかった。そして流れるようにマシュマロのような肌触りの手を遠慮なく触る。吐息が熱くなってきた。


 普段見ることができない百合園に鼻の奥の血のダムが崩壊しかねない、と気を改め、気合を入れて入れ直すギルバ。最初は魔法量の限界を迎え、絶えてしまったのだと顔面蒼白だった数分前が嘘のようである。空気感すらも元に戻せる良い子なんだね、アク。


「理解はできるけど威力と、三種類の魔法を同時に発動できるスペックがよく分からないの。ツインズマジック、として二つ同時の詠唱は習ったことはあるけどそれを実現できた人はいないし、いたとしても伝記上」


「伝記上のさらに上をいく三重詠唱か…まさか、な」


 ふと、どこか聞いた事ある話がギルバの頭を過ぎる。

 それを見逃す甘い女ではなかった。キルビアは追及する。


「まさかって、何か思い当たる節でも? アクちゃんの今を治せる?」


 普段の和らげな大人びた表情とは違う、必死な形相に思わずギルバは後ずさってしまう。だが言葉の中の助けたい、そんな気持ちを理解する。


「…聞いた話なんだけどな。亜人族って知ってるか?」


「ええ、聞いた事あるわ。サキュバスとかでしょ?」


「最初にそれが出るあたりキルビアだよな…。まあ、そんな感じだ。魔法に適性のありすぎる種族に与えられる種族の総称だな」


 他に、ワーウルフ、ドワーフ、エルフとかもいるな。と、付け足す。

 前者二つは魔法適性でも肉体強化に適性があり、後者は純粋な魔法詠唱に適性がある。サキュバスはゴリゴリの後者である。


 それがアクちゃんと関係あるの? キルビアは続きを促す。


「ああ、ある…と思う。確証はねえ。ねえが人間でここまで魔法に適性のある奴なんて…ほら、あれだあれ。えっと…」


 老化が始まっているのか必死に思いだそうと頭を叩く。寧ろ出ていっている感じ。ホコリか何かかな?

 アクと出会って二日目であるにもかかわらず、妙な関心を持っているキルビアは驚異的な脳の回転を見せ、ギルバの先をいった。


「聖女、とかかしら? 神聖神教会の聖書に出てくる人」


 ビビビビンっ!! と、頭の毛が正解です、と訴えてきそうなほどの勢いで頭をあげる。表情は便秘三日目の朝。解消され、トイレから出てきたおっさん並みのすっきりとしたものだ。


「それだ! んで、あるにしても聖女とかぐらいしかいねえわけだ。まあ、それも真実か知らねえけどさ」


「…そう考えると亜人って見るのが妥当なのかしらね。でも、主張的な部位がどこにもないじゃない」


 ワーウルフなら猛烈に良い毛並み。ドワーフなら筋肉質な体に低身長。エルフなら病弱なまでの肌の白さと金色の瞳。

 それぞれが魔法に適性があるため、それぞれの属性に連なる主張的な部位が出てくるのだ。

 キルビアの上げたサキュバスで考えるなら猛烈に異性を誘惑するフェロモンと…男女共に意見がある美顔。


 考えてみるとますますアクの種族がサキュバスに思えてきたキルビア。


「キリッとしていて鋭さを感じるものの、人をどこか惹きつけてしまう黒い瞳に、可愛らしい鼻に親指ほどにしか開かないんじゃないかと思うほどの小さな口。……そうよね、どこをどう見てもアクちゃんはサキュバスよね」


「いや、それにしたら強調的なスペードの形の尻尾が生えてねえんだよな」


「それは気のせいね」


 コンマ数秒の世界でキルビアは即答する。あまりの速さにギルバの脳は追いつけていなかった。


「きっと、尻尾はこの服のせいで隠れているのよ…ほら…」


 そう言って大雑把に短く切られたスカートの中に手を伸ばす。完全なセクハラである。いやセクハラを既に通り越し、痴漢まである。強姦すらワンチャン?

 アクが今、起きていたのなら「この、同性愛者が! せめて同意をとれよっ!!」と、内心で叫びながら嬉々として受け入れていただろう。

 全てはキルビアの顔が整っているのが悪い。美女なら何をやっても絵になって犯罪的ではなくなるのだ。


 寧ろ心地良さそうな表情を浮かべるアク。なすがままだった。


 服装はボロボロのウェディングドレスに材質が底辺のパンツである。申し訳程度にスポブラが胸を押さえつけている現状だが全然余裕がなかった。成長期である。よかったね、満足感たっぷりだよ!

 初日以外、ほとんどボディータッチをしていないアクである。2人目のボディータッチ者がキルビアなことは幸運なのか不運なのか…。まあ、表情を見るに幸運だと思っていそうだ。

 バレなきゃ犯罪ではなく、ただのスキンシップである。捏造真っ最中だった。


 ゆっくりと、すべてを許しているアクの柔肌に這い寄るようにしてキルビアの手が秘所に向かっていく。尻尾の場所は尾てい骨じゃないのか。分かってか、分からずか。キルビアの手の勢いはマシ、高速チカンが炸裂する。


「あ…れ? もしかして…ない…? そんな訳は…」


 一切の抵抗がない、摩擦力ゼロの湾曲を疑問に思い、もう一度トライする。縦列駐車みたいなものである。痴漢の縦列駐車って…。

 そんな風にツッコむのは誰1人としていなかった。ギルバは顔を真っ赤に染めながら両手で視界を隠している。案の定指の隙間から見ているが。


 トライし、トライする。

 何度も何度も同じ動作を繰り返す中でキルビアの頭の中の火照りは徐々に冷め、思考のギアが回ってきた。


 サキュバスらしき部位はない。ならどんな種族だ? マーメイドか? それは魚人だ。論外。じゃあ、ハーピィ? それも論外。あれは空飛ぶ老婆だ。必死に悩み一つの結論が出る。


「生殖器のない体に中性的な声、この部分から考えると…まさかの龍人?」


 リザードマン?

 急に発せられたキルビアの言葉に蜥蜴人間の図が頭を過ぎる。直ぐに振り払う。恐らく言っているのは二重詠唱と同様、伝記上で語られる『龍人』の事だろう。そう、あたりを付ける。まだ顔の火照りは取れていない。寧ろ、少しはだけたアクの姿にギルバのギルバもハッスルしてしまいそうだった。発射三秒前である。


 龍人。

 リザードマンのような二足歩行の蜥蜴ではなく、しっかりと人間の形を持ち、持った上でドラゴンの力を使える最強の名高い種族である。その特徴は出し入れ可能な爪、鱗、翼。そして両性具有の具有なしである。

 何だよそのハンバーグの豚肉なし、牛肉なし、玉ねぎなし的な良いとこ抜きの生物は。と、思わずギルバはツッコんでしまう。誰にだよ。


 出し入れ可能なドラゴンの特徴は確認できないが、生殖器がない特徴は龍人にしか当てはまらないものだ。恐らく、種族は確定なのだろう。

 半分涙目のキルビアが優しくアクを抱き抱える。


「う…うぅ…アクちゃん、そうなのね…。生殖器がなかったのね…」


「いや、どんな悲しみ方だよ…」


 今の今までギルバが目の前にいることに気がついていなかったのかギルバが言葉を発し終わる前に手元に落ちていた拳程の石を掴み、無造作に投げつける。鈍い音を響かせて胸の装甲が少し凹む。同時にギルバが背面に倒れた。一発KOである。

 その音を聞き、作業を中断したシェルダが振り向く。


「え、何の音っすか? 奇襲? …え、ギルバ何やってんすか?」


 無情な投擲がシェルダをも襲う。身軽な格好であるシェルダの左側面、後頭部にギルバのよりひと回り程小さいが石が命中する。犯人はキルビア…と、地面に書き残し崩れた。

 パーティメンバー4人中3人脱落である。エルダートレントとかドラゴンとか襲われたらどうするんだ。そんな危機感は一切なかった。


「アクちゃん…」


 より一層近づけ、デコを合わせる。変態だった。変態も一周回って常人になるかな、と思ったらそうはならなかった。感動的なシーンにすら思えない。だって、惨劇の主犯格はキルビアだもの。



 ふと、どこか顔に当たる空気で意識を取り戻したアク。直前の戦いを思い出し、思いっきり立ち上がる。直後、鈍い痛みが頭部を襲った。


「ッ!! っま、今大丈夫か!? …て、えぇ?」


 意識を失い、視界を閉じていたことによる明暗でクラクラするがそれでも目の前の光景は理解できた。


 ギルバは胸を押さえてノックダウン。シェルダは仰向けに倒れ何か書いていた。キルビアは何故か白目でカエルのようにひっくり返っていた。


 ふと体に感じた違和感に自分の服装を見る。大いにはだけていた。エロスもエロスである。おっぱいの頂点も見える寸前、三秒前である。


「頂点って何だよ…つか、何? 俺襲われていたの? 性的に」


 だから今の惨状なのか。

 俺を巡っての三つ巴。勝者はいなく、生き残ったのはアクだけ。


 そんな考えが浮かぶ。んな訳はねえわな。

 直ぐに切り替える。シェルダの近くに見えるきれいに揃えらた素材たちを見るにあのドラゴンは倒せたのだろう。倒せたのにこれって…と、疑問が浮かぶが無理やり納得する。だってギルバ達だもの。しゃーない。


 結婚生活30年目くらいの寛大な心で理解し、はだけた服装を直す。練習の終わった柔道部並みのもろだし具合だった。いや出てるじゃん。大袈裟だった。


 よく分からないが…無事そうなキルビアとギルバに冷水を浴びせさせ、起こすことに。危ないもんな。森の中だし。



 意外にも常識人なアクだった。被害者とも言える。

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